BBSPINKちゃんねる内で発表されたチャングムの誓いのSS(二次小説)を収集した保管庫です

   チョンホ×クミョン  恨雪       睡蓮様


青白い雪明かりが照らしている。
いてついた空気が、深紅の長服を羽織る身体に、
しんしんと染みてくる。
凍える身体より、心はもっと冷えて、震え出す。
その奥に隠し続けてきた熱い思い。
滾れば滾るほど、この身の凍えがつまされる。
クミョンは、ただ、待っていた。
先ほど、その家の下男取り次ぎを頼み、主人を呼びだしてもらった。
出てきてくれるだろうか、このような深夜。
雪さえも凍りつくこんな夜に。

心を決めなくてはならぬ。
思いを断ち切らねばならぬ。
愛しい男。なれど、政敵。

女官でなければ、添い遂げることができただろうか?
いや、女官でなければ、出会うことすら叶わなかったであろう。
女官は王様の女。
我が身は我が身のものでありながら、我が身のものでは無い。
もし、女官が自ら思いに従い、恋に身を捧げるならば、
それは王に対する裏切りであり、人知れず処分されても仕方のない事。

門の潜り戸を抜けて、現れたその官に目礼した。
「少しだけ、お時間を頂きとうございます。」
心の震えが、声に現れなかっただろうか。
ミン・ジョンホを案内しつつ、夜道を行くのは不思議な気分だった。
この時が全てであろう。
クミョンがクミョンとして、チョンホがチョンホとして、並び歩くのは。

クミョンはその家に着くと、チョンホを部屋に通された。
入念に整えられたその食卓は、華美ではないが、いずれも手の込んだものだった。
「お座りください」
クミョンは、云った。
「何でしょう」
いぶかしがるチョンホに、クミョンはいま一度、云った。
「お座り下さい」
チョンホは、勧められた座に腰を下ろした。
クミョンは、酒器を取り、無言のまま、チョンホの前の杯に注ぎ入れた。
「どうぞ、お召し上がりを」
「一度でいい、王様でなく、大事な方のために、料理を作りたかった」
秘めてきた思いであった。
ようやくその思いが、言葉になると、あとは堰を切ってあふれ出す。
長年の思いと、そして断ち切らねばならぬ決意の言葉と。

チョンホは、ためらいがちに、並べられた料理に箸を伸ばす。
いっそ、チャングムに義理立てして、そのまま去ってくれたなら、まだ思いも断ち切れよう。
だが、この男の優しさが、クミョンにまた未練が芽吹かせる。
「その茸は、南海より特別に取り寄せたもの。
珍味かと存じます」
チョンホは、勧められるままに小皿に盛った。
そのきのこ料理が、特に気に入ったのか、皿の半分ほども平らげた頃、
クミョンは云った。
「身体を温める効果が高いので、このような寒い晩には最適でございましょう。
気分も安らいでおられるのではありませんか。」
云われてみれば、先ほどまでの緊張した気分が、いつの間にかほぐれ、
それどころか、クミョンを前にして、くつろいでいる。


「本当に、人の思いとは、困ったものでございます。」
クミョンは、チョンホの横に座した。
「チョンホ様」
クミョンが、チョンホの背中を抱いた。
「チョンホ様、どうか、どうか一夜のお情けを。」
「最高尚宮、なりません。
それは、王様に対する裏切りではありませんか」
クミョンの、その大胆な行動に、チョンホは敢えて官位で呼びかけた。
しかし、そう諫めながらも、体内より湧き出る熱が、自身の精気を煽るように感じた。
思わず、息を飲む。
「ただの一度で良いと、申し上げております。
どうか、どうかお情けを。」
長年の、クミョンの思いを薄々悟ってはいた。
だからこそ、避けてきた。
いじらしいと思えば、情が移るのだ。
自分にはチャングムがいる。
男として、ひとたび心に決めた人を、裏切る訳にはいかない。
「あなた様とわたくしは、宮廷におきましては敵と味方。
いずれは、あなた様に対して、非常なる手段を下さねばならない日もまいりましょうし、
あなた様が、このまま我が一族に対しての風当たりを強くなさいますならば、
この身も処分される日もありましょう。
ですが、わたくしは、このまま手折られぬ花として散るのは嫌でございます。
尚宮職に上がる年頃となれば、もはや王様の御情を頂戴することも叶いますまい。
宮中に侍る身であればこそ、美しさには自身もございますのに、
なぜ、手折られる事もなく、花園で朽ちてゆくしかない。
この身を哀れと、思し召せ……」


クミョンの悲嘆を聞きながら、
チョンホは思考に集中できなくなっていることに狼狽えていた。
飲み過ぎたわけではあるまい。
なるべく杯を重ねぬようにと留意していた。
だが、どうだろう。
頭の奥がクラクラし、何となく酒に酔った状態になっている。
いや、厳密には違う。
もっと、こう、頭がどんよりとする。
そのどんよりとした頭の片方で、欲望が芽吹くのを感じる。
欲望は体内の気脈を下り、会陰に精気を送り込む。

クミョンの装束に焚きしめられた香の匂い。
結い上げられた髪の香油の匂い。
それらがクミョンの女の匂いと混ざり合い、
チョンホの欲望に火をつけようとしていた。

「いや、それは……」
チョンホは、必死で自制しようとしていた。
「お情けでございます、チョンホ様」
クミョンは、チョンホに対面してひざまずき、
チョンホの右手を取ると両手の中に包み込んだ。
白い指先は冷たく、沸き上がる熱情に汗ばむ手に快い。
「すべては一夜の夢。
渡来の茸が見せます夢でございます。」
クミョンは、チョンホの手を、自らの懐に差し入れた。
硬い梨の実のようだ、とチョンホは思った。
正気が、小さな箱に閉じこめられて、自分はそこから見ている。
そして、欲情に流されていく自分を、冷ややかに見ている。
流されるまいと思うが、突き上げるものが、チョンホを支配してゆく。
気づけば、チョンホはクミョンの細い腰に手を回し、
激しい接吻をかわしてた。


「チョンホ様…、あっ、チョンホ様」
激しく揉みし抱かれる梨は乱れた襟元からこぼれようとしていた。
自分を失っていくというのは、こういう事なのだろうか。
現れた乳房。
ツンと上を向く木苺を口に含むと、クミョンは声を出すまいと唇を噛む。
その慎ましげな有様ながら、膝を割ろうと足を勧めると、
自ら開いて、その足に絡みつく。
しかしながら、何を怖れているのだろう、微かに震えるその背中。
チョンホは、チョゴリをたくし上げ、足の間に手を差し入れる。
じっとりと湿るその中の、小さな突起を指で弄る。
「い、いや、あっ」
慎ましやかな喘ぎ声である。
女官たちには、王の急なお召しに応じられるように、
一通りの事は教えられている。
房事を重ねる毎に、王様の好みに応じて作法は変えられてゆくのだが、
初回は何事も慎ましくあらねば成らないとされている。
乱れまいと勤めながら、快楽のうねりに飲み込まれてゆく有様は、
艶やかにして、淫らである。
「大好きでございます、チョンホ様。」
クミョンの手が、チョンホの装束の帯に伸びる。
チョンホの装束を脱ぐ手伝いをしながら、クミョンの肌は、
上気して梅の花のようである。
猛るチョンホのものに手が伸びる。
もう冷たくはない。
僅かに触れて、手を引っ込め、そして決意したように握るその仕草が初々しい。
そして、両手でそっと包み込むと、おずおずと口に含んだ。
張り型などで練習したのだろう、その動きは多少ぎこちなさを感じはするが、
男の快楽の生ずる壷を確実に捉えている。
体中の血が、快感の渦に巻き込まれる。

チョンホを思って濡れそぼる、クミョンのその場所に、今度はチョンホが舌を這わせる。
「い、いけません、そんな、嫌。」
クミョンが膝を硬くする。
しかし、チョンホの行為にほぐれ、開かれている。
チョンホはいやらしい音を立てて、その場所を愛撫していた。
火のつくような快楽に、クミョンの宮女としての慎みは燃え尽き、
気が付けば、淫猥な喘ぎに変わっている。
「チョンホ様、もうだめ。
入れてください、あなた様のお情けを。
でも、終わりたくない…」
チョンホは、その場所に突きいれた。
幾度かの揺さぶりのうちに、クミョンは両目を硬く閉じ、
座布をきつく握りしめて絶頂の海を漂っていた。
チョンホの体内の精気が太陽のように輝き、
熱の猛りを迸らせる。

体内の熱の醒め行く有様に、
チョンホは自らの失態を後悔した。
後悔しながら、激しい眠気に襲われて、
いつの間にかまどろみに落ちてゆく。

雪明かりの中、クミョンは静かに待っていた。
思いを込めた、儀式の余韻が、
唇に、腰に、乳房に、まとわりつく。
そして、秘め事の残り香が、雪の中で凍てつき、
そしてクミョンの恋心さえ、この冷たい夜に凍り付き、
落下して砕け散るのを待っていた。

男の背中を見送った。
あれは、もう、只の敵。

−−おわり−−


*タイトルと作者様名を修正いたしました。(2009/01/25)
 作者様名を048→047に修正いたしました。すみませんでした。(2007/12/05)


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