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もう一人のヒロ◆dWeYTO/GKY第1話03

 そう間を空けたわけでもないが、再び踏んだバストゥークの地はいつもと変わりはなかった。
 時刻はもう夕刻から夜に取って代わる頃だったが、街の活気は相変わらずだ。旧港区の方に行けば、仕事をあがって歓楽街に繰り出した水夫や港の人足でより盛況し始めている事だろう。

 まず手始めに、飛空艇会社を出てすぐの場所にある天晶堂へと足を運んだ。
 天晶堂と、それに雇われた連中はどこか殺気立っていて、近寄りがたい雰囲気が漂う。

 見張りは見知った顔だった。
 目で合図をして、事務所に入る。護衛を手で制して自分でその扉に手を掛けた時、中から怒鳴り声が聞こえた。
「いいか、天晶堂に逆らったらどうなるかもう一度教えてやれ! ハンパな事はするな。俺の顔に泥を塗るような真似をしてみろ、家族郎党全員切り刻んで、バストア魚の餌にしてやるからな!」
 軽く肩をすくめて、ドアをくぐると、リンクパールに向かって殺気立った目の男ががなり立てていた。
 天晶堂バストゥーク支部の首領、カゲトラだ。

「外まで聞こえてるぜ。少し落ち着いたらどうだ」
 中にも用心棒らしい男が数人いて、こちらをいかめしい顔で睨んだ。
「ヒロか。中央にゃ関係ねえ事だ、黙ってて貰おう」
 用件は例の倉庫爆破だろう。こいつらの気が立つのも無理はない。
「落とし前はとうについてるはずだぜ。サンドリアのくされ貴族どもからせしめた利権は、決して面子を潰すようなものじゃないはずだ」
「仲間が殺されてるんだぞ、分かってんのかウスノロが!」
 ああ、やっぱりね。もう一度肩をすくめる。
 旧港区の倉庫が爆破され、そこにいたシュムザサという男が殺された。



「あんたこそ、アルドの顔に泥を塗るつもりか? シュムザサは中央の人間だぜ。アルドがサンドリアと決めたとおりにするのが筋ってもんじゃねえのか」
 そう、殺されたのはジュノ天晶堂の人間だ。客分としてここに滞在していたが、鼻つまみ者だったと聞いている。
 倉庫が吹き飛んで出た損失は決して小さくないが、落とし前がついて、処分されるものはしかるべき処分を受け、中央とサンドリアから充分の補償を受けている。
 それを未だに四の五の言うのは、本音を言えばもっと取り分が欲しい、という事か。

「アルドも中央も関係ねえ、ここは俺の街だ。口出しはさせねえぞ」
 カゲトラは白目がちの目をぎょろりと剥いて肩を怒らせ、用心棒どもも空気を察して立ち上がった。
 おれは反対に目を細めると、数歩前に出た。殺気立った男どもを見回す。
「バストゥーク天晶堂は、中央と手を切り手前らで凌ぐ。そう言う事かい、つまりは?」
 カゲトラの顔ににわかに怯えが宿る。そこまでのつもりはないだろうが、そんな事はないと即座には言いづらかろう。それこそ面子というものがある。
 しかし不用意な発言をしておれに肯定と取られれば、それは謀反だ。おれには即座にカゲトラを処分する権限が発生する。
 多勢に無勢な上に、こいつらは素人じゃないが、断じて専門家でもない。あまりあてにならない言い方だが、メリポレベルの冒険者全般から見れば練習相手になりません、という連中だ。

 いずれにせよ「怖い」とは感じなかった。どう動いて誰をどの順番で殺せば一番効率がよいか。
 そんな事を考えていると、カゲトラが折れた。
「そういう事を言ってるんじゃねえんだ、ヒロ。俺達はただ……」
 おれは首を振り、
「報告を聞こう。中央に上げる資料があるなら、それも」
 おっさんの泣き言めいた言い訳など聞きたくもない。
 せっかく下手に出たところを無碍にあしらわれて、カゲトラよりむしろ用心棒どもが色めき立つ。しかしカゲトラがそれを制した。



 こちらの天晶堂が握っている情報も、中央と大差がない。
 サンドリア貴族シュヴィヤールとシュムザサが個人的に対立し、シュムザサはシュヴィヤールの令嬢を懐柔して囲い込んだが、シュヴィヤールが実力でそれを奪還し、シュムザサに報復した。
 サンドリアは事が表沙汰になるのを厭い、天晶堂といくつか協定を結んで利権を譲り、爆破事件は爆発事故だったという事で同意を取り付けた。

 いかついこいつらには過ぎた高級なソファに身を沈めて報告を受け、軽くかまかけなどもしてみたが、少なくともこいつらは「シロ」だろう。
 束ねた資料をいくつか受け取ると、おれは今更な挨拶を述べて事務所を後にした。
 要は、「バストゥークの連中が来訪者やGMに関わる情報を握っている」のではない事が分かればそれで充分なのだ。より詳細な調査はもっとちゃんとした連中が後からしてくれる。
 ドアを出るなり、カゲトラの罵声と何かが砕ける音が聞こえた。

 カゲトラが分を超えて欲の皮を突っ張らせているのは確かだが、それでもやはりバストゥークの中で「落とし前」をつけたい気持ちは分からないでもなかった。
 天晶堂は商社だが、組織はヤクザやギャングみたいなものだ。
 後ろ暗い事もする。危ない橋も渡る。それをするのは組織が怖いからだ。そして同時に、それが出来るのは組織が助けてくれるからだ。
 天晶堂に立て付いてのうのうと生きている人間がいるなら、天晶堂は「怖くない」事になる。
 天晶堂の人間が殺されたのに報復がなされないなら、自分達が似たような立場になっても天晶堂は助けてくれず、同じように「見過ごしてしまう」かもしれない。
 今は小さくとも、組織の土台を揺るがすほころびになりかねない。これはそんな事件なのだ。

「難儀なこったな、マフィアっつーのもよ」
 カゲトラよりもむしろ末端の人間に同情を覚えて、おれは小さく呟き、次の目的地に足を向けた。
 爆破されて、今は新しい倉庫が建てられているという、バストゥーク旧港区だ。



 活気と喧騒に包まれた旧港区の歓楽街を通り抜け、後ろ髪引かれる思いで天晶堂倉庫街へとやってきた。
 あたりはすっかり暗くなっていたが、いくつか照明が設置されていて、ある程度の状況は見て取れた。

 以前見たのはいつだったか忘れたが、もうすっかり見違えてしまった。
 倒壊した三五八倉庫、爆破された倉庫群。最初三五八と聞いた時は、一体いくつ倉庫があるのかと思ったものだが、何の事はなかった。
 一桁目の三は所在が旧港区である事を意味し、下二桁が実際の倉庫の番号だ。通し番号ではあるが、あちこち欠番があるようで、冒険者のモグハウスに改装されたものも含めてここには三十ほどの建物があるに過ぎない。
 天晶堂が所有しているのはそのうち、六かそこらだ。
 被害にあった建物はまだあちこちに焦げ跡のようなものがあるのですぐ分かったが、便乗して大改装がなされると見えて、他の倉庫類も取り壊され、解体された石材が積み上げられていた。
 中身は一旦、別の倉庫に押し込んであるのだろう。

 夜衛がついているようだが、話が分かりそうな奴はいない。
 出直すとするか。今日中に全部終わらせるつもりだったが、査察は明日に回して、アルベルトとの合流を先に済ませよう。

 いずれにしても、まずは飯と宿が先だ。
 天晶堂の宿を使ってもいいが、せっかくギルが有り余る組織にいる身分。
 おれは何か真面目な事を考えるふりをしながら、ねぐらと食事を求めて歓楽街に取って返した。


もう一人のヒロ◆dWeYTO/GKY第1話04?
609 ◆dWeYTO/GKY まとめ
2009年08月10日(月) 17:01:14 Modified by jikyaramatome




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