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虎 ◆tQar3mtsYE 15スレ目 本編3

187 名前: 虎 ◆tQar3mtsYE 投稿日: 2006/11/02(木) 01:57:46.65 ID:sWbDKFON

 日付も変わろうかという深夜に外へと出たトラは、はたと歩みを止める。
「…………?」
 何かが、違う?
 シャントット宅を出てすぐの所で、辺りをぐるりと見渡す。
 これといって何かあるわけではなく、リアルのほうで見たシャントット宅周辺の風景と同じ
 ものが広がっている。植え込み・道・そして遠くに見える星の大樹。何もかもがゲームと同じ
 のはずだ。
「気のせい、かな」
 大方ゲーム内の風景のイメージが強すぎて、いざリアルな風景にとってかわったからなんとなく
 不自然に感じたに違いない。そう納得し再び歩みを始めようとして……違和感は確信に変わった。
 視界の片隅で何かがきらりと輝く。
「植え込みの奥に何か…………?」
 植え込みの奥に、暗い天に爛々と輝く満月に照らされた何かが控えめに自己主張していた。
 大した物じゃないだろうとは思ったが、万一シャントット博士の私物だったりしたら大問題だ。
 責任の所在がどこかに関わらず俺が探す羽目になってしまうんだろう……。加えてどんな
 とばっちりを喰うかわかったもんじゃない。
「一応拾っとくかね」
 関係無かったらその辺に捨てとけばいいしな。
 そう思って控えめな自己主張を繰り返すそれに手を伸ばし、掴む。


188 名前: 虎 ◆tQar3mtsYE 投稿日: 2006/11/02(木) 01:59:06.70 ID:sWbDKFON

「どれどれ……っと。なんだ、只の空き缶か」
 正真正銘ゴミだった。軽いため息をついて、何も考えずに拾った空き缶を投げ捨て
「って空き缶んんんンン!?」
 投げ捨てようとしたそれをもう一度しっかりと見る。何の変哲も無い空き缶だ。表面には
 『ドクターペッパー』と記されてある。
「よりにもよってドクターペッパーかよ……ってまてまて、問題はそこじゃないだろ俺」
 そう。問題は「なぜ」「空き缶が」「この世界に存在しているのか」だ。
 紛れも無くリアルの物品がヴァナ・ディールに存在するはずが無い。ヴァナには缶ジュース
 なんて存在はしないのだから。
 やっぱりこれは夢なんだろうか。そう思ったとき、一つの記憶が蘇る。
『来訪者はヴァナ・ディールに3つだけリアルの物を持ち込める』
「そうか、だからンなモンがヴァナにあるのか」
 またもや一人で納得し……大きなため息をついた。
「どこの馬鹿だよドクターペッパーなんて持ち込んだのは……」
 偶然か、それともこれを持ち込んだ来訪者が相当な好事家だったのか。
 ともかく、一つ判った事がある。
「やっぱゴミだわ」
 手にしたドクターペッパーを思いっきり放り投げると、遠くでぽちゃりと着水音が聞こえた。
 星の大樹の周りの池に落ちたようだったが、トラは気にせずオバケの家へと足を向けた。


189 名前: 虎 ◆tQar3mtsYE 投稿日: 2006/11/02(木) 01:59:40.87 ID:sWbDKFON

 ギイィィ…………
 オバケの家の扉を開ける。当然のように中は真っ暗だったが月明かりに照らされてなんとか
 中の様子が見て取れた。そしてその中には小さな人影が一つ。
「アジド院長、遅くなりました。
 ……それで、話ってなんです?しかも博士に聞かれたくないって」
 まさか博士の暗殺計画ですか?と冗談交じりに言おうとして……止めた。
 部屋の中に居た小さな影が一気に倍以上の大きさまで伸びたのだ。
「……お前、誰だ」
 よくよく見てみるとどうやら先ほどは屈んでいただけらしく、その影は黒いローブを身にまとった
 ヒュームの男だった。男は未だ黙して語らない。
「もう一度だけ聞く。お前は誰だ?」
 背負ったダークスタッフに、静かに手を掛ける。
「名は既に捨てた。今ここに在るのは来訪者を消すためだけに存在する器に過ぎない」
 抑揚の無い声で男は言葉を紡ぐ。
「ってことはアレか、『赤い鎧を着た人間』のお仲間ってわけだ」
 わざわざ夜中にご苦労なこって、と平静を取り繕う。内心は張り詰めた空気に今にも押しつぶされ
 そうになっていて心臓が8ビートを刻んでいるが。
 そして、男は答えない。答えはしなかったが、代わりにすらりと片手剣を抜き放つ。
 これがこいつの返答か。


190 名前: 虎 ◆tQar3mtsYE 投稿日: 2006/11/02(木) 02:00:06.99 ID:sWbDKFON

 何秒位だっただろうか?月明かりに照らし出されたオバケの家を支配していた静寂を、黒ローブの
 男が唐突に破った。
「……シネ」
 静が動へとシフトする。
 脚に力を込め一足飛びで切りかかろうとする黒ローブだが、流石にだまってやられるつもりなんざ
 シャントット博士の良心ほども持ち合わせちゃいない。
「意識を刈り取れッ、スタンッ!」
 咄嗟にダークスタッフを抜き放ち黒ローブへとスタンを放つ!
 詠唱をほぼ必要としないこの魔法はやはり頼りになる。FF11をやってて何度この魔法のお陰で
 経験値のロストを免れたことやら……と、そんな事を考えている場合じゃなかった。
 脚に力を込めて今にも飛び掛らんとする体勢のまま、黒ローブの動きは固まる。
「ふぅ……モーグリに魔法の唱え方を習っておいてよかったぜ」
 しかしながらスタンの効果は保ってせいぜい後1、2秒。
 ここは素直に博士に感謝しておくことにして、魔法の効果が発動したのを確認するや否やトラは
 身を翻し距離を取ると、再び向き直り魔法の詠唱を開始する。
「シヴァの抱擁は汝を氷結の呪縛へ誘う……バインドッ」
 詠唱が完了すると、地面から飛び出した氷のツタが黒ローブの足へと絡まりその自由を奪う。
 黒魔道士のソロの常套手段だ。接近した敵をスタンで封じ、その隙にバインドで脚を止める。
 詠唱の完了の数瞬の後に黒ローブは意識を回復するが、その足はすでに封じた後だ。教本どおりの
 戦法であればここでグラビデなりスリプルなりを入れる所だが、まだこいつには聞きたい事がある。


191 名前: 虎 ◆tQar3mtsYE 投稿日: 2006/11/02(木) 02:00:56.07 ID:sWbDKFON

「さて、見ての通りお前さんの動きは止めさせてもらった。命が惜しいなら質問に答えろ。
 ……何故来訪者を襲う?」
 臨戦態勢のまま黒ローブへと問う。だがやはり黒ローブの返答は無い。
「だんまり、か。
 俺こーゆーの好きじゃないんだけど、人の命を狙うからには自分の命を捨てる覚悟が出来ている
 って事だからな。俺もまだ死にたくないし……悪いが仕留めさせて貰う!」
 ダークスタッフを地面に突き立て、精神を極限まで集中させる。
「イフリートの灼熱の魔炎はその身を焦がし、その身を焼き、その身を消し去る……されど魔炎は
 猛り狂い汝の心も焼き尽くし、そして魂すら焼き尽くす……ただの一つの欠片も遺さず」
 紡ぎだす詠唱は黒魔道士屈指の必殺魔法
「フレアッ!!」
 極限まで圧縮した魔力を目の前の一点へと向かい放つ!

 ズガァァァァァァン!!

「グ………ァ…ッ!!」
 解き放たれた魔力は荒れ狂う炎となり、眼前の黒ローブを容赦無く吹き飛ばし、石畳へしたたかに
 打ち据える。


192 名前: 虎 ◆tQar3mtsYE 投稿日: 2006/11/02(木) 02:01:49.07 ID:sWbDKFON

「く………結構しんどいなこりゃ」
 魔法の発現と共に襲ってきた疲労感に片膝をつき肩で息をする。
 黒ローブの男のほうはというと、服の端々が燃える中倒れこんだままだった。だったが、まだ
 息はあるらしく僅かに胸が上下していた。
 トラは地面に突き立てたダークスタッフを頼りに立ち上がると、黒ローブの傍までよたよたと
 歩み寄る。
「どうだ?軽軽しく人の命を消そうとした代償は」
 ざまぁねえな、と鼻で笑う。しかし黒ローブの男はこちらに目を向けると意外な言葉を発する。
「君……すまないね。命を…………狙ったりして」
 息も絶え絶えに投げかけられたその言葉に、トラは思わず目を丸くする。
「今更何言ってんだ?まさか『赤い鎧を着た者』に操られてました、とでも言うつもりか?」
「不本意だけど…………そういう事だ…………」
「……何だって?」
「よく聞くんだ。僕たち来訪者は……赤い鎧を着た集団…………フェイトに命を狙われている。
 そして僕みたいに……黒いローブを着た者たちはその尖兵…………ゴフッ」
 魔法の衝撃で内臓でも破れたか、血を吐く黒ローブの男。慌てて介抱しようとするが無駄だ、
 と目で制されてしまう。


193 名前: 虎 ◆tQar3mtsYE 投稿日: 2006/11/02(木) 02:02:41.24 ID:sWbDKFON

「ハァ……ハァ……
 そして黒ローブを着た者たちは……フェイトに帰順したか、若しくは洗脳された来訪者で
 構成されている。ハハ……捨て駒って奴だね。仮に僕みたいに黒ローブが来訪者に返り討ちに
 遭ったとしても、彼らにとっては厄介な来訪者が一人減っただけの事なんだ」
「あんた、操られてたのか」
「まぁね……でも、これは僕の不始末さ。気に病む事はない。
 …………なんかこういうシーンって、ゲームの中ではよくあるよね」
「馬鹿か。ヴァナ・ディールはゲームの中の世界だろ。あと台詞がチープすぎる」
 そういやそうだったね。そう言って男は弱々しく笑ってみせる。
「どれ位操られてたかな……ずっと意識はあったけど、もう覚えてないや。でもそれも君のお陰で
 終われるんだ。ありがとね」
 だんだんと、上下する胸の動きが緩慢なものになっていく。
「そうだ、もし他の黒ローブに会ったら……可能ならどうにかして解放してあげてくれないかな?
 もし不可能だと思ったら…………せめて楽にしてあげて欲しい」
「出来ればもう二度と出会いたくないっての……」


194 名前: 虎 ◆tQar3mtsYE 投稿日: 2006/11/02(木) 02:02:56.15 ID:sWbDKFON

「うん。一番いいのは二度とフェイトに出会う事なく君がリアルに戻る事…………
 ここだけの話、何人かはリアルに戻る事が出来たらしいよ。聞いた話だから本当かどうかは
 判らないけど…………
 でも、操られるまでに僕が調べた限りでは『この世に在りてこの世に在らざる者』っていうのが
 何かの手がかりになっているって事だけはわかったんだ……
 ね、わがままだと思うけど……僕の後を引き継いでくれないかな」
「言われなくても帰る為ならやってやるさ」
 その言葉を聞いて、男は心底ほっとしたのかとても安らかな笑顔を浮かべる。本当は……苦しい
 はずなのに。生きていたいはずなのに。
「よかった。それじゃこれを受け取って」
 言うと男は懐から薄汚れた茶封筒を取り出し、渡してきた。
「これから先、君が十分に力をつけて旅立つ時にこれを開けてね……僕の調べたものを隠した場所を
 記した地図が入っているから」
 何も言わずに受け取り、頷く。
 男は最後ににこりと笑うと、静かにその目を閉じて最後の言葉を紡ぎだす。
「それでは…………良い旅を」
 その言葉を最後に黒ローブの男の姿は風景に溶け込むようにして無くなっていった。
「…………あんたもな」
 トラは目を瞑ると只一つその場に残った黒いローブに向かって十字の印を切る。
 そして再び目を開けて……


195 名前: 虎 ◆tQar3mtsYE 投稿日: 2006/11/02(木) 02:03:30.49 ID:sWbDKFON

「!?」
 満月に照らしだされて石畳に映る自分の影に、さらに大きな影が被さっているのに気づいた。
 そしてそれは剣を振り上げている!
(一人じゃなかった……!?)
 咄嗟に飛びのこうとしたが、先ほどの魔法の代償がまだ大半が残っていて思わず足をもつれさせて
 前のめりに倒れてしまう。
「畜生ッ!」
(折角後を託されたってのにもう終わりかよ!)
 そして振り下ろされる剣。

 しかし。



196 名前: 虎 ◆tQar3mtsYE 投稿日: 2006/11/02(木) 02:03:45.05 ID:sWbDKFON

「エアロ!」
 唐突に聞こえた声、ついでざむんという音と共に石畳に映った影は上下に分かれる。
 声のしたほうを振り向くと、そこにはある意味黒ローブよりも恐ろしい人物が立っていた。
「シャントット……博士…………なんでここに……?」
「オーッホッホッホ!ワタクシを出し抜こうなんて一千年ほど早くてよ?トラフィック。
 貴方の行動はモーグリを通してばっちりくっきり筒抜けですわよ!」
「成る程ね……さすが博士、そこにシビレる憧れるゥ、ってか…………?」
 モーグリの野郎、後でしばく。
 そんなことを考えていると、
「大体貴方は肝心な所でポカを…………」
 説教を始めるシャントットが周りの景色ごとぐるりと回転する。さすがシャントット博士だ。
「トラフィック、ちゃんと聞いてますの?」
 ドサッ
「あら?」
 目の前が急に暗くなり、ブラックアウトした。
2006年11月19日(日) 23:48:57 Modified by ID:6/8PM8EgBQ




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