このウィキの読者になる
更新情報がメールで届きます。
このウィキの読者になる
最近更新したページ
最新コメント
【AH協会】 by awesome things!
609 ◆dWeYTO/GKY小ネタ by check it out
609 ◆dWeYTO/GKY第9話02 by check it out
609 ◆dWeYTO/GKY第9話08 by awesome things!
775 ◆dWeYTO/GKY第1話06 by awesome things!
775 ◆dWeYTO/GKY第1話02 by check it out
609 ◆dWeYTO/GKY第6話02 by awesome things!
リンク
まとめサイト
http://ss.ga4.net/

2ちゃんねる
http://www.2ch.net/

FF11の板(蟹)
http://yy10.kakiko.com/ff11ch/

ネ実
http://live19.2ch.net/ogame/

ワイルドカード(アイコン素材)
http://www.aurora.dti.ne.jp/~keiko-t/
Wiki内検索

緑茶 ◆vUu2nK2xdY 帰りたい男

ヴァナ・ディールにやってきた男が、どうにかして現実世界へ戻ろうとする話です。




第一話


長かった。本当に長かった。
朝起きたら、このヴァナ・ディールの自キャラになっていた時はどうしようかと思ったものだ。
だか、それも今日これまでだ。今振り返れば、ヴァナ・ディールという世界も悪くない。
ここウィンダスで知り合った子ミスラも、悪戯好きだがとても可愛かった。
果てしない冒険の末、ガラス瓶に少量ほど入っているの秘薬「リアルニモドルン」を飲み干せば、
彼女ともお別れだ。…そんな時だった。
その子ミスラが悲しい別れをしないためか、満面の笑みでこちらに駆け寄ってくる。
あぁ、なんと愛くるしい姿だろうか、最後に抱きしめてあげよう。
テッテッテッテ…短い腕を大きく振りながら走ってくる。
抱きしめたら、彼女の名前を何度でも呼んであげよう。
テッテッテッテ…リボンが先に付いている尻尾が揺れている。
最後に頬に軽くキスもしてあげよう。
両腕を大きく広げ、胸を広げた。さぁおいで、と言わんばかりに。

「鉄拳!ネコぱんちにゃぁぁぁぁぁ!」
広げた腕の先にあるガラス瓶に、手首のスナップを利かせた彼女の拳がクリーンヒットした。
ガシャーン!と割れる音。そして液体はウィンダスの大地に流れ落ち、すぐさま乾き、吸い込まれた。
子ミスラは「にゃにゃにゃにゃ〜」と言い素通りしていった。
それは可愛い悪戯だった。彼女の背を見て、軽く泣きながら言った。
「これからもヨロシク。ヴァナディール」

投稿日: 2006/11/02(木) 07:26:50.22





第二話


「なんだって!?帰る食事があるって!?」
「そうにゃ!図書館で見つけたんだにゃ!ママも食べたら、かえる〜とかなんとかいってたにゃ!」
 このヴァナ・ディールという異世界に、いつの間にか迷い込んだ俺は、帰る方法を探していた。
 ここウィンダスという国で仲良くなった子ミスラと話をしていたところ、ググリュートゥーナという魚を使う、
そんなメニューがあるらしいというのが分かった。
詳しいレシピを調べる前に漁師ギルドへ寄り、新鮮な魚を調達した。
さすがに生魚をもって図書館に入るわけにはいかないので、モグハウスに一度立ち寄ると。
「おさかなさんにゃ〜!おいしそうだにゃ〜!じゅるじゅるじゅるりッ」
「なぜここにいるッ!いや…それはいい…もう一度出掛けていくのに、魚は置いてくが絶対に食べるなよ!?」
 以前、この子ミスラのおかげで現実世界に戻り損ねた記憶が蘇り、念入りに釘を刺した。
「わかったにゃ〜。戻ってくるまで我慢しとくにゃ〜!」
 はつらつとした笑顔で返事をする子ミスラは何と愛おしいことか…いやいや、帰る方法を探さねば…。
 図書館へ着くと、サンドリアから来たのだろうか、ここでは珍しいエルヴァーンの種族の人が魔道書を読み漁
っている。その横で料理の本を広げる自分のなんと情けないことか…ええい、ここは見た目を気にしている場合
ではない。次々と例のレシピを探して本を積み上げる。図書館に長居するなんて何年ぶりだろう…。
 ようやくの末、目的の本を見つけた時には、既に日は暮れていた。モグハウスへ急いで戻ろう。
「おかえりなさいにゃ〜。夕飯作っといたにゃッ!」
 どこから持ってきたのか小さなエプロンをした子ミスラが新妻のように出迎えた。かわいい…いやまて。
俺の視線の先に、子ミスラの向こうに、きれいに料理されたググリュートゥーナが見える…これは…。
「あー…食べはしなかったけど、調理しちゃったのね…」
「そうにゃ!一緒に食べようと思って、我慢して食べなかったにゃ!えらいにゃッ?」
 待ってくれるなら、調理をする前から待っていて欲しかった…と言葉には出さず、ため息をついた。
 もう一度子ミスラの後ろで美味しそうな湯気を立てているググリュートゥーナに目をやる…おや?これは…
「これってもしかして、この本の?」
と借りてきた料理本に指を差す。
「そうにゃ!将来お嫁さんになるから、料理はバッチリなのにゃッ!」
腰に手を当てて胸をそらす子ミスラ。誇らしげに頭にある耳も、ぴんと立っている。
よくやった!名誉挽回とはまさにこのことだ!
「えらいッ!将来立派なお嫁さんになるぞ!もう…」
 俺の嫁にしたいぐらいだ!と言うのは流石に息を飲んで声にはしなかった。
「やったにゃー!ほめられたにゃー!さっそく一緒に食べるにゃー!」
 テーブルに着きナイフとフォークを手に取ると、体に染み入るような、食欲をそそる良い香りがする。
 これを食べ終われば、現実世界に戻っているのだろう。目の前の彼女と、このヴァナ・ディール最後の晩餐を
楽しむのも悪くは無い。一口ほどに切り分けられたトゥーナの切り身を口に運ぶと、上手く味付けされた魚の肉
が舌の上でとろりと溶ける。
慣れない所為か一日中図書館で本を読んでいた体は、酷く疲れていたようだ。言葉にするならこれは…
「そう…まさしく、生きかえるような味…あ〜…そういうことね…」
「おお!ママと同じこといってるにゃ!かえる味にゃー!」
 それじゃあ、蛙の味みたいじゃないか、と思いつつも軽く泣きながら舌鼓を打った。
「まだしばらくヨロシク。ヴァナ・ディール」

投稿日: 2006/11/18(土) 02:05:59.40




第三話


 ここはどこだ。いや、俺は知っている。ここは自分の部屋のベッドの上だ。
 開けっ放しだったのだろうか、窓から吹き込んでくる微かな風に揺られるレースのカーテン。壁に掛けられて
いるブレザー、ネクタイにズボンは通っている学校の制服だ。勉強机にはパソコンが置かれ、そのディスプレイ
には流れる景色をバックにFinal Fantasy XIの文字が―――。
 そう、俺は今までこのゲームの中の世界ヴァナ・ディールに閉じ込められ、帰る方法を探していたのだ。
 それがどうだろうか、その時と同じようにいつの間にか現実とゲームの世界を行き来したらしい。今思えば、
あの世界も悪くはなかった。自分で帰る方法という道を切り開いていく精神や、挫けない心を持てたと思う。
そして出会った人たち、中でも常に一緒にいた子ミスラには何度励まされたことか、最後に挨拶だけでもしたか
ったものだ。
 それらを思い出すように目を閉じる。
 次に目を開けたら、またヴァナ・ディールに戻っていたらゾっとしない話だな。はは……。
 確かめるように静かに目を開けると同じ天井が見える。安堵のため息と共に体はベッドに沈みこんだ。すると
ドタドタと玄関の方から騒がしい物音が聞こえてくる。
「おじゃましま〜―――。おはよう―――。」
「おはよう―――、まだ寝てる―――。」
 部屋のドアは閉まっている。会話はよく聞き取れないが、どうやら幼馴染が一緒に学校へ行くのに俺を起こし
にきたらしい。…まったく、どこぞの恋愛ゲームみたいだな。ふと疑問がいくつか浮かび上がったが、けたたま
しく叩かれるドアの音に思考はかき消された。
「はいるよ〜。あ〜、やっぱり今日もまだ寝てる〜。起きろー!にゃ〜ッ!」
 寝たフリをしている俺を揺さぶってくる。というか「にゃー」とか言うな、あの子ミスラを思い出すだろ。
 そうか、もしかしたらあのヴァナ・ディールの世界は俺の夢の中の出来事で、あの子ミスラは逆にこの幼馴染
をモデルに形作られたのかもしれない、そう考えると少し照れくさい。
 わざとらしく開いた目に入るのは、チェック柄に膝上丈のスカート。自分のものと同じブレザー、その胸元に
は緑色の小さなリボン。見下ろしているその表情からは小さく微笑んでいるのが伺える。そして―――。
 目の錯覚か…さも何事もなかったかのように、頭の上に猫のような耳が、ミスラと呼ばれる猫人間の耳が。
 女子高生の格好をしたミスラ、いや背丈からしてみれば女子中学生だろうか、意外と似合っていて可愛らしい。
「ニヤニヤしながら夢みてるにゃ〜。早く眼を開けて起きるにゃ〜!」
 何を言っているんだ、もう目を開けて起きてるじゃないか。目を開けながら、更に目を開ける何てことが出来
るわけが―――……出来た。
 二度目の開眼で見えたものは板張りの天井に、覗き込む子ミスラ。そして、サラサラと小さな噴水の音が聞こ
える、そこは冒険者用の居住施設モグハウスだった。
「夢か…そうだよな。そもそも、小中高と全部私服の学校だったし、レースのカーテンなんてなかったし、中の
良い女の子の幼馴染なんて居るわけもないし、ベッドじゃなくて布団で寝てたし。いやでも、しかし、制服着
たミスラも可愛かったな。はぁ、色んな意味で起きたのが悔やまれる」
「なにブツクサいってるにゃ〜、朝ごはん食べにいくにゃ〜!」
 何ゆえにこの子ミスラは朝一番からテンショントップギアなのだろうか、羨ましい限りである。
 子ミスラに連れられるように外へ出れば見慣れた街並みが飛び込み、朝の心地よい風が身を包む、登った太陽
の眩しさからは確かな現実感が伴われた。
 この世界から意地でも現実へ戻ってみせる。俺は空に向かって挑戦的に言い放った。
「おはようッ、ヴァナ・ディール!」

投稿日: 2006/11/27(月) 06:24:11.74





第四話


 それはちょっと考えてみれば、当たり前のことであり、何も特殊なことではなかった。
 俺はこの世界の住人ではない、ヴァナ・ディールと呼ばれるファイナルファンタジー11というゲームの中の世
界に気が付けば居たのだ。ゲームの中の世界と言っても、衣食住は事足りているし、この世界に住む人とのコ
ミュニケーションも何ら問題なく取ることが出来た。
 そう、俺は少し油断していたのかも知れない。
 昨日もこの世界から元の現実世界に帰るために、海へ潜ってある物を探していた。
 結論からいうと、ある物はガセネタで、いつものように骨折り損の草臥れ儲けだったわけなのだが、それ事自体
は気にすることでもなかった、迂闊にも濡れた体のまま疲労に身を任し眠りについてしまった事を除けば。
 頭痛に発熱、咳が止まらず体がだるい。察しの良い方は既にお気づきだろう、俺は風邪をひいたのだ。
 モグハウスと呼ばれる冒険者用の居住区のベッドで寝ている俺の視線は、ゆらゆらと揺れるランプの光だけを
追っていた。その静寂を壊すように入り口の扉が騒々しく叩かれる。……やめてくれ頭が割れる。
「あっそびにきったにゃー!」
 意せずして、俺の頭痛を更に酷くした彼女は、ゲームの中のキャラクター、猫耳とお尻についた尻尾がチャーミ
ングなミスラと呼ばれる種族のその子供だ。
 彼女は日ごろから俺に付きまとって遊んでいる。この世界において異質な俺に、孤独という闇に落ちないように、
笑顔を与えてくれる大切な存在でもある。だが流石に今日は、流石に今日だけは勘弁してくれ。
「むむむ!どうしたにゃ?元気ないにゃ〜」
「あぁ、そうなんだ。ちょっと風邪をひいたみたいなんだ、今日はそっとしておいてくれ……ッゴホ」
「カゼ……それは病気の事かにゃッ!?」
 俺が頷くと、彼女は「お薬もってくるから、ちょっと待ってるにゃ」と、踵を返して街へと戻っていった。
 薬か、ゲームの世界には万能薬と呼ばれる何にでも効くアイテムがあった、風邪にも効くのだろうか?
 子ミスラが去った後の俺は相も変わらず、空ろな目で天井にあるランプの光を仰いでいる。人は病気にかかると
弱気になる。俺は元の世界に戻れずこのまま衰弱して死んでしまうのではないか。風邪が治っても下らぬ事で命
を落とし一生を終えてしまうのではないか。そんな思考が頭を過ぎる。
 しばらくして、再び扉が開き、薄暗い室内に光が差し込む。
 彼女だ、子ミスラが薬を持って戻ってきたのだろう、風邪に苦しむ今の俺には彼女の存在は正しく天使だ。
 すがる気持ちと、安堵のため息と共に彼女の姿を確認すると――。
 白衣の天使とはよく言ったものだ。彼女は小さいその体にフィットする白いナース服を着ていた。
「その格好は一体……どこから持ってきたんだ?」
「この服は、連邦看護制式衣にゃ!看病するなら、これを着ていけと言われたにゃ!」
「さいですか……いや、それよりも、その肩に担いでいるそれは……」
 聞くまでもない、俺はそれを知っている。病院などでよく使われている、針を刺して液体を体内に注入する医療器
具。注射器だ、黄色い液体が中に見える。が、デカすぎる、物理的にアレに刺されたらやばいだろ。
「もちろん中身は万能薬にゃ!シャントット博士が、これを使えば一発で回復って言ってたにゃ!」
 "ニヤァ"と口の端がつりあがる不敵な笑みと共に、注射針の先端がキラリと光る。
 その日、街中に響き渡るほどの絶叫がモグハウスの一室から聞こえたことは言うまでもあるまい。
 ――翌日、俺のベッドの中には寄り添うように子ミスラが可愛らしいパジャマ姿で寝ていた。
「むにゃむにゃ……おはようにゃ、寒そうだったから暖めてあげたにゃ」
 俺の為に親身に……だが、彼女という誘惑に負けず俺は現実世界へ戻るのだ、俺は心の中で泣きながら言った。
「その手には乗らないぞ!ヴァナ・ディール!」

投稿日: 2006/12/09(土) 20:56:20.81






第五話


 正月になれば門松を飾る。それはヴァナ・ディールでも同じ事らしい。季節のイベントがあるおかげで時の流れ
を感じ取ることが出来る。この世界へ来てどれくらいが経ったのだろうか、俺は現実世界へ帰りたいのに……。
 ――帰れないでいる。それどころか、あるもので拵えたコタツの所為で……。
「あったかいにゃー。ぬくぬくにゃー。もう出たくないにゃー」
 今日も子ミスラがコタツの中に入って丸くなっている。もちろん俺も此処から出て、現実世界へ帰る方法を探し
たいのに――この宇宙最強の暖房器具とも言われるコタツの誘惑の前に屈している。
「ところで……年末の時も少し思ったんだが」
 そう、年末にモグハウス内の大掃除をしたときに気が付いたことがある、本当ならもっと早く気づくべきなのだろ
うが、放り出された現実……いや、非現実の前にそこまで頭が回らなかったのかもしれない。
「にゃにゃにゃ? 部屋が汚いのはコタツさんが外に出してくれないからにゃ」
「いや、まぁ、それはそうなんだが。そうではなく……」
 実際モグハウスの中はコタツの中から手が届く範囲にモノやゴミが散乱している。これを誰が片付けるか――
俺、子ミスラ、そしてモグハウスの名前の由縁、モーグリであるはずだが、そのモーグリが。
「なんでこのモグハウスにはモーグリがいないんだ?」
「にゃッ! 気づかなかったにゃッ! なんでにゃッ!?」
 コタツから子ミスラが飛び出して聞き返して来たが、分かるわけがない。うん、聞いた俺が悪かった。ってぇ!
「その格好は一体……そしていつ着替えたッ!?」
「これはハレギというやつにゃ! ……フリソデだったかにゃ?」
 振袖とは独身女性の正装で、晴着として、晴れがましい席で着用するもので、この子ミスラもいつかはお嫁に
……いや、どこぞの馬の骨とも知れない奴の手にいくならば、この俺が……いや、そうじゃない。
「普通の振袖は、そんなミニスカ風ではないッ!」
 ではないけど、それでも良い気もするが、伝統衣装を乱すというか、この華奢な生足も……ううむ。
「こっちのがコタツの中でも動きやすくていいにゃ。それに、これからエトと追いかけっこするにゃ」
 エト? 干支のことか。そういえば年始にヴァナ・ディール内の至るところに干支を模したモンスターが徘徊する
イベントがあったな、今年の運勢が占えるとかなんとか……おみくじみたいなものか。
「いつまでもコタツの中に居るわけにもいかないし。いっちょ行ってみるか」
「いっやたーにゃー! 一緒にいくにゃー!」

 今年の干支は――亥のはずだが……どうみてもブガードなものと壮絶な追いかけっこをした挙句に出た結果が。
――『去年と同じくらいの運勢でしょう』
 それはあれか、今年も現実に戻れないってことか、そうなのか? と、途方に暮れながらも帰路についた時に目に
止まったのはモグハウスへ通じる入り口に飾られた門松、そしてモグハウスの管理を任されているミスラ。
 もしや、もしかして、レンタルハウスからの移動手続きをしてないからモーグリがいないのか? そういえば、こっち
の世界に来てから、あのミスラと会話した記憶はないな……ということはやはり。
「どうしたにゃ? いっぱい遊んだから、あとはコタツで一緒にぬくぬくするにゃ!」
「ん……あ、ああ、そうだな」
 もう少し、この子ミスラと二人だけの正月気分を味わうのも悪くはないか……いつ現実世界へ戻って永久の別れが
来るかもしれないのだから、せめて正月ぐらいは――。
 そして、いつもと変わりなく晴れ渡っているサルタバルタの空を仰いで俺は世界に向かって年始の挨拶をした。
「今年もよろしく! ヴァナ・ディール!」

投稿日: 2007/01/07(日) 03:04:37.49






第六話


 年末になれば大掃除をするというのは、まぁ言ってみれば決まりごとみたいなものであろう。そう、それが朝
起きたらヴァナ・ディールと呼ばれる世界にいた俺の今の住まいになっているモグハウスと呼ばれる部屋で
あってもだ。いや、もちろん掃除はしたさ、大晦日前日にな。んで、その日から小正月を迎えた今日までぐー
たらと過ごしてしまい……この酷い有様は、足の踏み場もないとは良く言ったものだ。
 だが、後悔はしていない。生涯で初めて年越しを女の子と二人っきりで過ごせたのだから。もし、そこに問題
があるとしたら、彼女は頭の上に耳がついていて、お尻には尻尾が生えているぐらいだ。その容姿を簡潔に表
現するならば猫人間と言う他ないであろう、ミスラという種族のその子供だ。可愛いから問題じゃないけどな。
 さて、人間というのは(猫人間含む)、怠ける環境が出来てしまうと、どこまでも怠けてしまうものだ。年始など
は一日だけ外で走り回った以外は、モグハウスに急ごしらえしたコタツに足を突っ込んでウィンダスが誇る魔
法新聞社のバックナンバーを読みふけっていた。なかでも面白かったのが『密着!噂の女冒険者!』の項だっ
たが、途中からライター休暇の為しばらく休載と出ていた。やはりどの世界でも休暇と怠惰は必要なのだ。
 そして今日も俺はコタツの中に足を突っ込んで、うたた寝という坂道をノンブレーキで下り始めたところだ。コ
タツの中では、いつもと変わらず子ミスラがモサモサと丸くなっている。
 このまま眠りにつき目覚めたら、ここへ来たときと同じように、いつのまにか現実世界へ戻っている……なん
て、そんな事も考えてしまう。そうなってくれれば、どれだけ嬉しいことか。掃除もしなくていいしな。
 そんな怠惰の道を極めんとする俺の脳裏に浮かんできた言葉は『立つ鳥跡を濁さず』である。その意味は、
立ち去るものは、あとが見苦しくないようにすべきであること。だってさ、どうする? まずいね、これは。
「……よしッ! 今日からまた現実へ戻る活動開始! コタツも撤去! 掃除するから出たでた!」
 とりあえずはコタツの中に、かれこれ半月ほど埋まっている子ミスラのサルベージから始めようと、コタツ布団
をめくってみると――半裸の子ミスラが、何事かと眠い目を擦りながら起きてきて、目が合った。
「――にゃにゃにゃ、おはようにゃ。……しかたないにゃ……お着替えするから待っててにゃ」
 はい、わかりました。とそんな感じでコタツ布団を戻すも、既にコタツの特有の赤い光に照らされた子ミスラの
半裸姿が脳裏に焼きついてしまっている。……もう少し、見て……いやいや、子供とはいえ女性の着替えを覗く
ほど落ちぶれてはいない。
 今日はこの子ミスラにも、住み込みのメイドが如くたっぷりと仕事をしてもらおう。実際にほとんど住んでいるよ
うなものだし。いや、まて、全国の健全青少年諸君が考えているような妄想上の仕事ではなく、単純な掃除、洗
濯、家事一般である。何もやましい事などこれっぽっちもない。もしあるとしてもジュノのバザー税程度なものだ
ろう。
 だが、そんな俺の禁欲っぷりにいとも簡単にひびを入れたのがコタツから出て来た子ミスラであった。どこにそ
んなものを用意していたかなどという無粋な事は言わないが、黒のワンピースに、レースのフリルがついた白い
エプロンドレス、腰で結んだ大きなリボン、そして猫耳に邪魔にならない小さなカチューシャ、その姿は俺の理想
のメイド像と全く持って違わなかった。あまりの可愛らしさに今にも後から抱きしめたくなるほどだ。
 悶えている俺をよそ目に当の子ミスラは、この衣装で百人力と言わんばかりの掃除を始めている。途中ゴミの
山から発掘される、わけの分からないアイテムやら玩具やらに子ミスラが「にゃんだこれー?」と心を奪われるも、
その山は日が暮れる頃には二人の手によって片付けられた。
 このゴミの山発掘作業で何か帰る手掛かりが出てくるのではないかと思ったが、結果的には隠された地下室に
ある不思議な井戸や、槍に射抜かれた妖怪、あまつさえ伝説の巨人の影などは、これっぽっちも見ることが出来
なかった。やはり、現実世界に戻る努力は他人に頼っていては駄目だ自分の力で切り開かなければ。
 久しぶりに気持ちの良い疲労感に包まれ、その夜は綺麗になったモグハウスのベッドで眠りについた。
 「おやすみ。ヴァナ・ディール」

投稿日: 2007/01/21(日) 16:08:15.90
2007年02月09日(金) 21:22:18 Modified by ID:ZQCwcnVLDQ




スマートフォン版で見る

×

この広告は60日間更新がないwikiに表示されております。