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緑茶 ◆vUu2nK2xdY 帰りたい男8

ヴァナ・ディールにやってきた男が子ミスラに振り回されながら
どうにかして現実世界へ戻ろうと試行錯誤の毎日。
果たして報われる日は来るのか?
苦労人の主人公と天真爛漫子なミスラ二人が贈るハートフル珍道中!?




第八話

 「……はあ」
 春の陽気がそこまで来ていると感じられる季節。冒険者達はヴァレンタインだとか何だとかにうつつを抜かし
日々を謳歌している中、俺は自分の部屋を見てトンベリも真っ青な溜め息を一つ吐いたところだ。
 少し語弊があったかもしれない、今目の前に広がるのは自分の部屋ではなく、自分に充てられた冒険者用滞在
施設のモグハウスのそれだからだ。
 もちろん、そんな施設など、地球上のどこにでもあってたまるものではない、世界は二十一世紀に突入し、現代
社会を生きているはずの俺に「冒険者」などという時代錯誤もいい加減な名前がつく施設に居るのがおかしいと
誰しもが思うであろう。
 あるとすれば、それは娯楽の一つであるテレビゲームの中ぐらいなものである。それこそ俺自身もFinal Fantasy XI
なるオンラインゲームを、数ヶ月前までやっていたのだ。
 ……やっていたはずなのだが、それがどうしたことだろうか、目の前どころか、左も右も、上も下も、どう考えても、
そのゲームの中に入ったとしか思えない世界に……ある朝、起きたら居たのだ。
 まぁ、その点については、ある程度吹っ切れた所もあるので取り敢えずは良いとして(本当は良くないけどな)。
 今ある問題としては目の前に広がるモグハウスの現状、いや惨状とでも言うべきだろうか。部屋に設置されている
家具やら何やらは破損していたり、またあるものは焼け焦げていたりするのだ。
 これが自分に突如目覚めたファイヤーアートに起因するものならば、仕方なく現状を受け入れたくもあるが、事は
そうでもない。あまり他人の所為にはしたくはないのだが、この冗談とも思える世界にいる某博士から送られてきた
サプライズ・プレゼントによるものなのだ。
 その話の顛末は取り敢えず一件落着とはなったが、その過程に置いて我がモグハウスが見るも無残な、この眼前の
状況になってしまったのだ。
 つまり溜め息の原因を簡単に言ってしまえばこういうことになる。
「他人が散らかした部屋を片付けるのは、どうも気が進まないよな……はあ」
 とは言え、いつまでも自分の部屋が散らかしっぱなしというのも俺の空間管理能力の有無をどこからか唱え
られそうではあるので片付けないわけにもいかないのである。
 そればかりか、俺の横で今も部屋のエントロピーを増大させようとしている子猫が、自慢の尻尾をフリフリと
させながら何かを弄っている。もちろんこれがただの子猫ならゲージにでも一旦入れて大人しくしてもらうところ
なのだが、ここは悲しいかなゲームの世界なのである。子猫とは言ったものの、実際にはネコ科ネコ目の猫では
なく、ミスラと呼ばれる種族の言ってしまえば猫人間のその子供なのだ。
 何の因果か、いつのまにか知合いになっていた子ミスラは、これまたいつのまにか一緒に住んでいるような
ことになっているのだが……いやはや、この歳で年端も行かない子供と二人暮らしとは何故こんなことになった
のか時の流れとは恐ろしいものである。
 兎に角、見事なサイン波形を描くように、片付けと散らかしが続いては歳が暮れても掃除が終らないので、どう
にかして俺の足元でモゾモゾしている子ミスラを人払いならぬ猫払いしなくてはならないのだが……どうしたものか。
「どうしたにゃ? 何か頭についてるかにゃ?」
 そりゃ、あなたの頭には猫のような耳がしっかりと二つ付いていますが、とか、そういう事ではなく。
「んーとな、そこにこの前の時に壊れたマネキンがあるだろ? それをどうにかして直せないか、とりあえず手の
院にでも聞きに行ってもらいたいんだ」
 指差した先にあるのは、飾り物兼収納家具となっているマネキン……だったものだ、これも先日の騒動で破損
し焦げたのだが、なんせ高い買い物であったので、このまま捨てるのも忍びないし、人形とは言え人の形をして
いるものを捨てるのも嫌悪感がある。しかも、マネキンにも一応性別があって、これは女性タイプのものだ。
……いや、健全な一男性としては部屋に野郎のマネキンがあるよりも、こっちの方が良いとは思ったのだが、今と
なってしまえばどっちでも良かったかなとか、そんな気分もしなくもない。
「手の院? お人形さんが居るところかにゃ?」
 ここウィンダス連邦が誇る五つの院の一つである手の院は、カーディアンと呼ばれるカカシのような魔道人形を
作っている所だ、マネキンもカカシも人形には違いないので、少しは助言的なものも貰えるだろう。
「そうそう、ちょっと行ってきてくれるか?」
「わかったにゃッ!」
 間髪入れずに子ミスラは満面の笑みを作って頷き、モグハウスからカタパルト射出のように出て行った。
 何をどう聞いてくるのか分かっているのだろうか、まぁ、こちらとしては時間をかけてくれた方が部屋の掃除も
はかどるというものだ。
「さて、いっちょ大掃除といきますかね」

 ほどなくして、最低限は人の住める部屋から、ある程度人の住める部屋へと変貌を遂げたモグハウスとなった
のだが、ある一角だけは未だにカオスを保っている。
 そこは子ミスラ専用コーナーとも言うべき場所で、本人にとっては実に有益で実用的なものが揃っているのだ
ろうが、他人からしてみればガラクタと表現してしまうようなものばかりが見て取れる。
 そういや以前もホリー原木の枝をどこぞから拾ってきていたな。生モノでもこの塊の中にあったら後々大変な
ことになるのは明らかあるし、ここも少し片付ける必要があるか。
 子供とはいえ、一女性たる子ミスラの私物を漁るのは多少ながら悪いとは思うが、本来管理すべきモーグリの
居ないこのモグハウスを任されているのは俺に他ならないのだから致し方あるまい。
 叩けば出るのが埃なら、このカオスコーナーから出てくるのは、今まで見たことのあるような各種衣装に、
翌日の晴れを願うために窓辺に吊るすテルテル坊主、それに一冊の本だった。
 本と言っても子供が読むような絵本の類ではなく、それよりももっと分厚い重厚な作りで表紙には……なん
て書いてあるのだろうか、恐らく子ミスラの手書きの字で文字が……、
「日記……かな?」
 読めない字をミミズが這い蹲ったような文字というが、ここまで見事に這い蹲っているものは生まれて初めて
見たような気がする。
 しかし、他人の日記ほど興味をそそられ、且つ盗み読むことへの罪悪感を湧きたてるものはないだろう。そも
そも表紙の文字からして、内容を解読出来るのかどうかも疑わしいが、とりあえずパラパラと本をめくってみた。
 なるほど子ミスラらしい自由な発想で書かれた絵日記だという事が分かる。
 日記というものは、ある月日や日時においての内容を記すものだが、驚くべきことに、この常識から逸脱した
形式で日記は書かれていた。少し読み進めていってみよう。

 まっくらでみえない月 あらしの日
 あさからよるまで、ずーっと雨がふって、かぜがゴウゴウにゃ。こんな日のつぎの日はお魚ぎるどに色んな
ものが流れてくるって誰かがいってたにゃ。
 明日は、みんながびっくりするようなのがながれてくると思うにゃ。そのほうがワクワクドキドキにゃ!

 きれいなみか月 きもちのいい日
 あらしのつぎの日はくうきがしんせんってきいたことがあるにゃ。ピチピチのお魚さんみたいってことにゃ。
 思ったとおり、お魚さんぎるどにみんながビックリするのがながれてきたから見にいったにゃ!
 にゃんと、そこにはふしぎなミスラさんがながれてきてたのにゃ。どこがふしぎだったのかはわすれたにゃ!

 うむ、何と言うか子ミスラ年相応の平仮名ばかりの文章は読みにくいな。
そもそもゲームの中のヴァナ・ディールと呼ばれるこの世界の文字が、日本語として読めることが些か不思議
ではあるのだが、そこらへんは専門分野でも何でもないので、どうしても気になるなら脳の言語野を研究してい
る大学教授にでも聞いてくれ。
 確かに漁師ギルドで売買されている魚の鮮度は良いが、こうまで子ミスラの魚好きが文章から見て取れるとは
驚きである。それにしても、この月日の書き方はどうにかならないのだろうか、もしかして子ミスラはカレンダーや
数字が読めないんじゃないだろうな、今度機会があったら確認してみるか。

 あかくてまんまる月 まぶしいあさ日
 きのうあたらしくきたミスラさんにあいにいったにゃ! おうちにいくとちゅう、ブーマたいちょーにあったにゃ、なん
だかたのしそうだったにゃ! いいてんきの日はみんなたのしいにゃ!
 あたらしいミスラさんは二つのしっぽがあったにゃ、おとなになったらはえてくるかもしれないにゃ、今からたのしみ
だにゃ〜。

 木でみえない月 きょうもいい日
 きょうもミスラさんのいるウチにいってきたにゃ。
 リボンをむすびなおしてくれたし、にんぎょうさんもくれたにゃ!いいひとにちがいないにゃ!
 ミスラさんのなまえは、にゃ…にゃ…にゃんだったかにゃ、よん、ごー、せぶん? あしたもういっかいきくにゃ!

 「せぶん、ってウルトラマンかよ!」
 と、日記に突っ込んではみたものの……その勢いも空を切るばかりだ。
そう言えば、さっきのカオスコーナーにあったテルテル坊主はこの時に貰ったものだろうか。俺も昔は学校
遠足の前日なんかに吊るしたものだ。今思うとなかなか呪術的要素を持ったエキセントリックさを感じる風習
ではあるな。
 それにしても海難事故とは大変なミスラもいたものだ。まあ、いきなりゲームの世界の住人になってしまった
俺ほどじゃないか……はぁ、帰りたいぜ。

 こわい月 こわい日
 いたずらしてたり、おそくまでおきてる子どもにはオニがやってくるにゃ!はやくねるにゃ!
 こわくてねむれないにゃ・・・どうしようにゃ。

 ひさしぶりの月 たすかった日
 オニがきたにゃ! でもたすかったにゃ、やっぱりたよりになるにゃ。さすがだにゃ。
 このかつやくを、あのミスラさんにもおしえてあげるのにゃ。でも、もうオニさんはこなくていいにゃ。

 子ミスラは、やんちゃでイタズラっ子のわりには、いかなる日もマメに日記を書いているものだと感心してし
まう。俺があれぐらいの歳の頃の日記なんて三日坊主ならぬ一日坊主だったほどだ。
 ……まてよ、内容は兎も角、これだけ書き続けているのなら俺と出会った日の事や、それ以前の事も書き
記されているのではないだろうか?
 そうだ、俺はこの日記の途中から読み始めたのだから最初から読めば、俺の知らないヴァナ・ディールのこと、
ひいては現実世界へ戻る手掛かりが何か書いてあるのかも知れない。
 この先に書いてあることへの不安と期待を胸に抱き、時間を遡るようにページを戻してゆく。
 その瞬間、扉がけたたましく開かれる音に脊髄反射の如く、その意味を察知し体全体を扉の方に向けると同時
に、日記を背の影に隠す。
「たっだいまッにゃぁぁぁぁッッ!」
「おおぉぉぉぉぉ……お、お、お、おかえり……」
 危なかった、扉を背にしていなければ日記を読んでいるところを見られていたかもしれない。一旦、他に気を
取らせてから、さりげなく日記をそこらへんに置かなければ……。
「で、どうだった? 直せそうなこと言ってたか?」
「……はにゃ?」
 子ミスラは何のことかと頭の上にハテナマークでも浮かんでいそうな顔をして、恐らく思考を巡らしているの
だろう、腕を組んだり、体をクネクネさせたりして何やら考え込んでいる。
 かなり寄り道をしたのだろう、長く考え込む仕草が何とも言えず可愛らしいが、これは日記を手放すチャンス
でもある。
 俺は子ミスラコーナーの傍らに置いてあるマネキンの所まで行き、死角になるよう日記をこっそりと置き、
何事もなかったかのように会話を続ける。
「このマネキンのこと、聞きに行ったんじゃなかったのか?」
 すると子ミスラの頭の上には、エクスクラメイションマークが光ったようで、
「あるデート以上の破産はププリンの裏のチョッキンさんじゃないと無理だって言っていたにゃ!……にゃ?」
 光ったは良いが豆電球サイズだったようだ、つまり意訳すると、
「ある程度以上の破損はブブリムのマウラにある彫金師のところじゃないと無理……か」
 確かに、このマネキンの関節部分などの構造は職人の気質を感じるし仕方も無いか。
「でもインチョーさんが、『とりあえず一度持ってくるといいわ』って言ってたにゃ」
 なるほど。部屋の片付けも大体終ったし、今度持っていってみるか、この前のサプライズプレゼントをくれた
博士と違って信頼できる人でもあるし、やっかい事にもならないだろう。
「そうか、今日は聞きにいってくれてありがとうな」
 軽く子ミスラの頭を撫でてやると、嬉恥ずかしそうな表情を浮かべて、
「どういたしましてにゃッ!」
と一言、そして改めて彼女は笑顔の上に満足気な表情を作ってこちらを見つめ返していた。
 見るもの全てに温かい感情を起こさせるその笑顔は、程なくして俺に自責の念を作らせた。
 こんな無邪気な笑顔を作る子供の日記を盗み読んでしてまで帰る為の方法を探るなんて節度を弁えない事を
せず、他の方法を自分自身の力と行動で見つけなければ。
 その決意は、先日のいざこざで中断していた現実へ戻る方法を探す再開を誓うものでもあった。
「さあ、再開といこうじゃないかッ! ヴァナ・ディール!」



投稿日: 2007/06/01(金) 02:22:36
2007年06月06日(水) 22:24:06 Modified by ID:ZQCwcnVLDQ




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