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緑茶 ◆vUu2nK2xdY 13スレ 「過ぎたる過ち」

「おかえりなさい〜。まずご飯にするぅ?お風呂にするぅ?…そ・れ・と・も…。」
玄関の扉が開くと同時に、奥の居間から現れた女性は相手が靴も脱がないうちに、
そして未だに口紅を落としていない、濡れた唇から出た最初の台詞はそれだった。
「酒…なんだろ?」
比べると少しばかり身長の低い男が、落胆のため息を漏らしつつ、コンビニ袋から缶ビールを一本取り出し
女性の頬へ当てた。すると女性の方は、その冷たさに一瞬驚きもしたが、冷えきっているビールが満足なのか
目をキラキラさせながら、男から頬に当てられた缶ビールとサワーやカクテルの缶がギッシリと入っている
コンビニ袋を取り上げると、嬉々として居間の方へ戻っていった。居間への扉が閉まると、半ば諦めかけた声で
男は呟いた。
「姉ちゃん、あんまり飲みすぎるなよ。」
姉弟の両親は早期退職したあとに行った世界一周豪華客船の旅で立ち寄った東南アジアの国が気に入ったらしく、
半年近くは海外で暮らし、残りの半年は田舎で畑いじりをして余生を過ごしていた。残された二人の姉弟は
今まで家族で暮らしていた一戸建てから、駅周辺の繁華街より少し静まった10分ほど歩いた場所にある
都内のマンションに移り住み、姉は会社員、弟は予備校生として日々を過ごしていた。
「つまみきれちゃったから何か作ってくださぁ〜い。」
弟が鞄を机の脇に置き、パソコンの電源を入れて一息ついた時には、置いていたつまみは既に撃墜されていた。
仕方なく明日の朝食用のソーセージと調味料を取り出しフライパンで炒め始めた。
ジュージューと焼ける音が居間まで広がり、ブラックペッパーが効いた香ばしい匂いを嗅ぎつけると、
これから出される料理にワクワクしながら、姉は二本目のビールの缶を待ちきれずに開けたのだった。


『ね?だからお姉ちゃんを慰めると思って、おねがぃ〜。』
予備校が終わり講義中に来ていたメールの内容は姉からだった。彼氏にふられ今夜は飲みたい気分らしく、
帰りに酒をしこたま買って来いとの内容で、ご丁寧にも種類と本数まで書き込まれていた。
「今夜は…じゃなくて、今夜も…だろ…。」
弟には姉がふられる原因の心当たりがありすぎて、相手の彼氏に同情すらしていた。
予備校から自宅へ戻る電車の中で弟は夕日の落ちる窓の外を眺めつつ帰ったらやるべき事に頭を巡らせていた。
「(…ん〜、姉ちゃんを取敢えずあしらったら、またマート戦の証を取りに行きたいな…。
 手伝ってくれそうな人いるかなぁ…薬品も揃えておきたいし、調理スキル上げも…。
  そうか…食器洗いと洗濯物もしないとか〜。あ〜、でも明日から連休か…。)」
ゲームでやりたいことと、ほぼ任されている…と言うか…、
他にやる人がいない家事全般の事が脳裏を駆け巡っているうちに電車は自宅への最寄り駅へと着いた。
マンションまでの道中に一軒だけあるコンビニの前まで来て弟は携帯電話の受信メールの画面を開き店内へ入った。
携帯とドリンクが陳列されている冷蔵棚を見比べながら品物を籠へ入れレジへ持っていくと、
よく見る顔の店員から挨拶を受け、それに疲れた表情で苦笑いを返した。
二十歳にはなっていたが、童顔だったので、他の店で酒類を買おうとすると、年齢確認を言われることもあるが、
引っ越してきてから、ほぼ毎週末続く恒例行事を店員も察知し苦笑いでレジを通す作業に入った。
既に日は暮れ、閑静な住宅街の暗闇から秋の虫の涼しげな音色が聞こえる中マンションに帰り、
エントランスホールのロックを開け、エレベーターに乗り3階のボタンを押し、鍵のかかっていた玄関の扉を開け、
基本的に律儀正しい弟は毎日こう言い玄関を入っていった。
「ただいまー。」


「ね〜、私もヤりたい〜。ねぇっテば〜。」
一人で飲むのに飽きたのか、絡み相手が欲しかったのか、姉が弟の部屋へ声を裏返しながら突入してきたのは、
帰りの電車の中で頭を巡らせ、予定していたマート戦の証取りや、薬品の事前準備、調理スキル上げが終わり、
モグハウスに戻りアイテム整理が終ったところだった。
「ねぇってば〜。」
と、言うと。姉はパソコンデスクに向かって座っている弟の首の後ろから手を回し、細い腕を絡ませた。
長いストレートの黒髪が無造作に頬にあたり、弟の顔を押し出すかのようにパソコンの画面を覗き込む、しかし、
酔っ払っているせいか視点が合わないのか目を細めながら画面に顔を近づけ、弟に後ろからもたれかかった。
すると、姉の豊満な胸の膨らみが弟の背中にあたり、何かに気づいたかのように弟は姉の服装に目をやった。
「(やっぱり…。)」
先ほどまでTシャツに、ゆったりとしたズボンを穿いていた姉だったが、今現在弟にもたれかかっているのは、
ブラジャーとパンツだけを残した、弟曰く「酔っ払い姉ちゃん最終形態」の姉であった。
椅子に座りながらも背中にかかる姉の体重が次第に重くなっていくのに弟は気づき、
パソコンの画面を細めて睨み付けていた目は既にまぶたが閉じていた。
「もう今日のゲームは終わりだから。」
起きているのか寝ているのか分からない姉に向かい言うと、首の周りに絡み付いている姉の腕を支え、
姉を背負いながら立ち、椅子のすぐ後ろにある弟のベッドへ静かに横たわらせた。足がまだ床についているが、
流石にそこまで面倒みきれないと、掛け布団を少し乱暴にかけ、クローゼットの中から毛布を一枚取り出し、
弟は居間のソファーで横になった。
「弟から見ても、スタイルは良くて美人なのに、あの性格と酒癖の悪さが問題だよな…。」


「あーつーいー、もう全部脱ぐぅ〜。」
重厚な和製の鎧を着けて動くには、その長いストレートの黒髪は邪魔なのか、後ろで一つに結びポニーテールに
していた。着るのが初めてなのか、青漆を使い鍛冶職人の師範が作り上げた八幡装備一式を乱暴に脱ぎ捨てた。
「ちょっとー、着替えてるんだから覗かないでよねー。」
昨晩は下着姿でもたれかかっていたのに、着替えの瞬間を見られるのは恥ずかしいらしく、少しにやけた顔で、
少し上を向き話しかけていた。そこは背中には小さなコウモリのような羽根が生え、肩には鞄をかけ、
頭の上には黄色いボンボンをユラユラさせている…そう紛れもなく、モーグリのいる、ここモグハウスだった。
「なんで!?どうして!?なぜなんだー!!」
パソコンの画面を覗いて、普段は沈着冷静で家事一切をそつなくこなす弟は画面の中にいる姉に向かい叫んでいた。
「そうだ!昨日の夜の食器洗いをしなきゃ!…あぁ、今日は天気も良いし洗濯物も…。」
現実へと現実逃避をしに部屋を出た弟に、いつもは物静かなのに今日ははしゃいでいるのが嬉しいらしく、
姉の方は知ってか知らずか、にこやかな顔で/waveモーションのように手をふり、弟を見送った。
ヒュームトップにショーツ、水着姿が気楽で動きやすい、しかしアクセントが足りないと姉はあたりを見回した。
すると先ほど八幡鎧と一緒に脱ぎ捨てた両手刀:江雪左文字が目に入った。北海道のファミレスのウェイトレスは
帯刀していると、大学時代の例え話の面白い友人が言っていたことを思い出し、手に取り腰にさげた。
ぬいぐるみのようなモーグリに、「でかけてくるね。」と言うと、外へ続く扉を開けていた。
一方、弟の方は食器洗いと洗濯物は干し終わったが、昨晩出したソーセージの変わりがないかと冷蔵庫の開け、
無心に朝食のメニューを考えていた。


「あらぁ、選り取り見取りじゃないの〜♪」
アトルガン白門は連休初日の午前中ではあったが、各種募集シャウトが飛び交い、ある人はモグハウス前に屯し、
またある人は頻繁にモグハウスと白門を行き来していた。両手刀を提げた水着姿の女性が挨拶をしても、
その行き交う人の中から挨拶を返す人はいなかった。どこからか流れてくる音楽や街並みが、行ったことは無かったが
近東の街並みのようだったので、言葉が通じないのかもと思い、街を散策することにし、歩き始めた。
ある程度歩くと、コーヒーの匂いにつられ、茶屋シャラトトという所に着いた。お腹は空いていなかったので、
入り口から覗き込むように店内を見回した。正面のカウンターではコーヒーやチャイ、シュトラッチを売っていた。
左手の方には、ネコ耳に尻尾をつけた女性が飲み物を片手に、入り口の方をしきりに見ていた。誰かと待ち合わせ
をしているのだろうか、そわそわと落ち着かない様子だ。右手の方には、金色の鎧を着て、あまり街中では見かけ
なかった髪形に体躯の良い男性が座っていた。少し声をかけようと思ったが、その男と話している黒い鳥人間…
いや、カラス人間だろうか…が、あまりにも怪しかったので、躊躇していた。そうしていると、足元から幼稚園児
ほどの身長の人がテクテクと歩いてきた。どうやらネコ耳の待ち人らしい、二人はまず何を注文するか話していた。
「まずい…これはまずい…。」
弟が家事を一通り終らせ、遅い朝食を食べ終わり、問題に気づいた。『朝起きたら"姉が"自キャラになっていた』
事だった。口より先に手が出る、という話は良く聞くが、口と手が同時に出る、しかも、
それが女性というのはそう居ないだろう…そんな光景が、時既に遅く画面の中では繰り広げられていた。
「ちょっと!人が挨拶してるのに、なんでみんな返事しないのよ!?」
画面の中にいる姉は両手刀:江雪左文字の切っ先を、見知らぬプレイヤーの喉に向け、脅迫じみた行動をしていた。
その/sayの台詞と、どの/emにもない特殊な行動に、街行く人は足を止めていた。周囲の沈黙と緊張を破ったのは
アトルガンに流れる、死者の軍団がアルザビを襲撃開始するアナウンスであった。


「あぁん、くすぐったいぃ。」「そっちじゃなくて、こっちがいいのぉ。」「変なところ触らないでぇ。」
先ほどの一触即発の現場から、パソコンに繋がれたコントローラーを使い強制的に自キャラを…姉を退散させた。
ぎこちない動きで引き摺られるように小走りし、意思とは関係なく動く体がくすぐったいのか、勘違いされそうな
/sayを撒き散らしながらアルザビへの門をビシージに駆け付ける人に混じりくぐっていった。
視界が開けた時には、アルザビは既に戦闘状態へと入っていた。メローやラミアが駆け、クトゥブルや
ドラウガーが手傷を負ったものを中心に襲い掛かっていた。
「姉ちゃん、何もしなくて良いから、目立たないようにね。」
と画面に向かって話しかけるも、遅かった…というより、聞く気がなかった姉は既に負傷者に振り下ろされる
ドラウガーのもつ逆刃の剣を、白骨の右手ごと掴み止めていた。そのまま左足を軸に、右足で足払いを仕掛ける、
体勢を崩したドラウガーに向け今度は軸足を右足に変え、ジャンプ回し蹴りを繰り出した。手首から先と、
持っていた剣を残し、ドラウガー本体は壁に叩きつけられていた。
異変を感知したのか周囲のラミアやクトゥブルが集まってきていた。ドラウガーの白骨の右手を捨て、逆刃の剣を
構えると、掛け声と共に周囲の敵を薙ぐように一閃させた。すると衝撃波が生まれ、アルザビの石畳が隆起し、
集まってきた敵に相応のダメージを負わせた。
先ほど壁に叩きつけられたドラウガーが右手を失くしつつも再度動き始めた。しかし、その全身が壁から離れる
よりも早く、己が持っていた逆刃の剣が大きく縦回転しながら飛んで来てサレコウベを貫き壁に釘付けにされた。
「双竜脚に、サークルブレード…片手剣でミストラルアクスってどんなジョブだよ…。」
姉の動きを唖然として見ていた弟が呟く。ラミアのベリーダンスが発動し周囲の人間が一斉に襲い掛かっていた。
姉は口元に笑みを浮かべながら腰に差していた刀を抜いた。しかし、両者が衝突する前にビシージ終了の
アナウンスが入り、ラミアは帰還の魔法を唱え。姉に向かい武器を構えていた人間は魅了が解除されていた。


「口は達者でも、こっちの方は弱いのね〜。」
ビシージの後、モグハウスに退散させた姉に『侍の証』を発見されてしまい、そのあらましを説明した挙句、
自分が戦いたいから、そこまで案内せよとの話の流れになってしまった。既に場面は、宣託の間であり、
侍の限界クエスト「星の輝きを手に」で使用するバトルフィールドであった。
「お爺ちゃんだからって手加減しないわよ。」
とマートに向かって台詞を放つ。腰に差していた両手刀:江雪左文字を正眼に構えた。一方マートは
「ほれほれ、かかってこぬのか?」などと言っているのだろうか、ファイティングポーズを取り、
軽くステップを踏んでいた。水着についているアクセサリーやポニーテールの揺れが止まり、一瞬の間が
出来る、弟はその光景を見つめゴクリと唾を飲んだ。
階段の上部から飛び掛るように詰め寄ると刀を振り下ろす、マートは徒手空拳で軌道を逸らし、あしらった。
間髪をいれずに、ビシージの時にも見せた足技が繰り出される。不意を撃たれたのかマートはその攻撃に怯んだ。
長年の戦歴マートは己に渇を入れ『明鏡止水』を発動させ、『乱撃』を繰り出す、その内の数発が姉の四肢に
直撃した。続いて飛んでくる『夢想阿修羅拳』を前に、両目を見開き、その全てを巧みな体術で避けきった。
しかし、依然攻撃は続く、二発目の『夢想阿修羅拳』が…その時、二人の激戦を見ていた弟は驚愕した。
今は姉だが、自分のキャラの受け流しスキルアップのログが8連続で流れたからだ。
「全部受け流したってことかよ…ありえないだろ…そもそも何でこんなに強いんだ…?」
『明鏡止水』が終ったマートに、姉がお返しと言わんばかりの体術と剣術を放つ、一通りの技が終った頃には
5つ目にして最後の試練となるクエストは終了していた。


「ゴクッゴクッ…もぉ、こんなにいっぱい…飲みきれないかも…。」
汗ばんだ体に、喉を通った液体が駆け巡るように体に染み渡る。唇の縁から飲みきれなかった液体が
垂れていくのを手で拭い目の前にあるモノに潤った目で歓喜の表情を浮かべた。
「でも…これおいしぃ〜。」
調理スキル上げで作ったヤグードドリンクをとっておいた甲斐があった、昨晩の状況をもう一度行い姉を完全に
酔わせれば、もしくは…と思ったのだ。所謂、出会いがしらに頭をぶつけて心が入れ替わる…雷に打たれて
心が入れ替わる…その後、同じ行動で二人は元に戻る…つまりは、また酔っ払えば画面から出てくるはずだ。
果たしてヤグードドリンクで酔うのかという疑問はあったが、画面の中にいる姉の様子を見る限り十分の
アルコールがあるのだろう、弟も姉を煽るのに自分も画面の前で飲み始める。
「お!良い飲みっぷりねー!私も負けないわよー!」
その日、マンションの一室では、画面越しに一晩中の酒盛りが続いたのだった。


「えへへ〜、おはよぉ〜。」
弟が目覚めた時、目の前には自分の右腕を腕枕にして、裸で同じ布団に入り笑顔でこちらを見つめている姉がいた。
姉だけではなかった、自分も裸になっていることに気づいた。寝起きの頭が混乱してきたが、
姉が画面の中ではなく、今は目の前にいることに安堵もしていた。
「あ…え…うん、おはよう。」
弟が目覚めの挨拶を言うと、姉は微笑んで、頬に軽くキスをして弟の体を乗り越えるようにしてベッドから出た。
「また今度やろうね。」
と姉が言うと、二日酔いだろうか、頭痛のする頭を無言で軽く横に振り、弟は肩を落としたのだった。


投稿日: 2006/10/09(月) 17:49:10.65
2006年10月27日(金) 17:25:17 Modified by ID:ZQCwcnVLDQ




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