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緑茶 ◆vUu2nK2xdY 13スレ 「逝くもの逝かぬもの」

スーツ姿の男が駅に向かって走る。ビジネス鞄を脇に抱え走る。時計を気にしながら走る。
日付も変わった夜の繁華街の明かりの中を走る彼はさしずめ試合終了間際のフットボールプレイヤーであった。
駅へ続く最後のコーナーを曲がった彼に与えられた現実は、
警笛と赤いランプ、下ろされる遮断機、駅へと滑り込む最終電車、だが改札口はまだ遠い…。
「だああああ、間に合わなかっ…た…。」
夜の空気を切り裂いて駆けていた足が止まり、脇に抱えていた鞄を手に持ち直し、
大きくため息をつき肩を落とす。その後姿は敗北者そのものだった。
「今日はついてないな。……んんんむ…どうするか。」
取り出した携帯電話の光が彼の顔を闇夜に映す。握っている手はまだ動かない。
「(明日から連休…だけど何も予定ないしタクシーは勿体無いか。一人で時間潰すのもアレだしな…。)」
携帯電話をアドレス帳代わりにしていた彼の指が動く、近所に住む数人の女性の名前が浮かんだが、
携帯を弄る指が止まり、通話ボタンを押したのは男の名前だった。
酒もカラオケも今日は気分ではない。ファミレスでバカトークをする時の相手は男が良いと彼は知っていた。
トゥルルルル…トゥルルルル…呼び出し音が鳴る。
トゥルルルル…トゥルルルル…この相手に電話をかけるのは久しぶりだ。
トゥルルルル…トゥルルルル…そもそも、生きてるかな?……
「よぉ、こんな遅くにどうした?」
「お、生きてた。」
終電に乗り遅れたサラリーマンに生死の心配をされた男が原付に乗って駅へ着いたのは、
その十五分後の事であった。


暫く歩くと目的のファミリーレストランについた。一階部分の駐車場に原付を置くと、店舗のある二階部分へと
階段を上がる。店から出てきたカップルとすれ違う。こっちは男二人で、向こうはカップル、一瞬頭を過ぎった
勝ち負けに関する感想は、男二人共々声に出さずとも判っていた。
店内に入ると閑散としていた…と言うか、先ほどのカップルが最後の客だったのだろう、
店内に他の客はいなかった。店員に案内された入り口に近い席からは、窓ガラス越しに暗い住宅地の中に
煌々と光るコンビニエンスストアが見て取れた。
「とりあえず、ドリンクバー2つと山盛りポテトフライね。」
スーツ姿の男が、座る前に、メニューも見る前に店員に注文を取る。
店員は慣れた口調でドリンクバーがセルフサービスという事を伝えると、店の奥へと消えていった。
店内に残ったのは上着を脱いでワイシャツ姿になった男と、それとは対照的にトレーナーにジーパンの
カジュアルスタイルの小太りした男だった。各々の好む飲み物を取りながら会話が進む。
「しかし、なんでまた、こんな夜中に呼び出したのさ?」
「いやさぁ、会社の昼休みに同じ職場の彼女に別れ話したらさ、ボコボコに殴られて、痛みが引かずに、
時間内に仕事が終らず残業…んで、ここの駅よって軽く飲んでたら、終電乗り過ごしたってわけさ。」
「自業自得じゃねーか、どんな彼女でも振った男が悪い!」
「お前がよく言うよ。彼女、容姿端麗、スタイル抜群、キレイな黒髪…なのは良いんだけどさ。 酒癖悪いわ、
文句があれば口と手が同時に出るわ。正直手に負えなかったわ。」
丁度運ばれてきたポテトフライに二人は手を伸ばす。ファミレスながら、カリっとアツアツ、塩が良く利いて
話のツマミには合格点だった。小太りの男が戻る店員を止め、追加注文をする。
「チーズたっぷりプレーンピザと若鶏のから揚げ追加でー。」


「で、お前の方は最近なにやってたん?一説によるとゲームのしすぎで電子の海で溺れ死んだとか。」
「死ぬかッ!ちゃんと生きとるわッ!あーあーあー、そういえば、今日…いや昨日か、ここらへんで、
 交通事故があって予備校生だかの女の子が亡くなったらしいよ?」
「ふむぅ、そういうの聞くと、車を運転する側としては、畏まる思いだなぁ。」
「なんて言うかアレだよね、うら若き乙女は悦びを知らぬまま…。」
そこまで言って、ワイシャツ男がポテトを口に運んでいた手を止め、呆れた口調で挟む、
「だからお前はモテないんだよ…。」
先ほど頼んだピザとから揚げが運ばれて来る。未だに皿の上で焼ける音を立てる品を見て感嘆の声を上げて言う。
「いやいや、単に出会いがないだけさ。……ピザ、お前も食う?」
ナイフとフォークを取り出し、すっかり戦闘態勢が整った男に手助けはいらなかった。
「から揚げだけでいいや。…あと、理由はそれだけじゃない…と思うけど…。」
その言葉はすでにピザと格闘中の相手には気づかない、見ている方が腹一杯になる食べっぷりだ。
しかし、快調に進んでいた手が止まる。何かを思い出したかのように顔を上げる。
傍らに置いてあるメロンソーダで口の中のものを喉に流し込んだ。
「そうだ!電子の海で溺れ死ぬ!思い出した!どこから話そうか?最近起きてる連続失踪事件知ってるか?」
「ああ、知ってるな。最初は単なる家出で済まされてたみたいだが、全国各地に多発してて、あまりの唐突さ、
残された荷物なんかを見る限り、一部では、また某国に拉致されてるんじゃないかって話もあるぐらいだ。」
「おお、さすが社会人、よくわかっていらっしゃる。向こうの国からミサイルぽちっとな〜とやられたら一大事
だから、マスコミや政府は、その結論は達さないようにしてるらしいけどな。」
ピザ男は強調するかのように、次の戦いへ向けて呼び鈴を押した。


「少し話しは飛ぶぞ?お前ネットゲームでMMORPGって知ってるか?ネットの中で闘ったり、暮らしたりする
ゲーム。で、そのネトゲの一つで、俺もちょっと前までやってた、FF11ってのがあるんだが。」
確認したいこと、伝えたいことが多いのか、ぎこちない質問になっている。
「あぁ、どういうのかは知ってるし、ファイナルファンタジーだろ?それも知ってる。」
「ここからが恐ろしい噂話なんだが…あ、手打ちヒレカツ膳で。」
店員がメニューを聞きに来ると、すぐさま次の対戦相手の名を呼んだ。
「…俺はお前が恐ろしいわ。」
「噂話によるとな、失踪者は全員そのプレイヤーで、ゲームの中に閉じ込められたって話だ。」
しばらくの間、二人の沈黙が店の中を支配する。
「それはひょっとしてギャグでいっているのか?常識的にいってありえないだろ、そんな話。」
「いやいやいや、それがな、ゲームの中でありえないアイテム、マウンテンバイクやトイレットペーパー、
食卓塩なんかを見たって奴がいて、失踪者と一緒に消えたものと合致するって噂だぜ?」
「ショクタクエンて、この食卓塩?」
テーブルの上に置いてある、白い調味料の入った小瓶に指を差す。
相手は、ほぼ同時に運ばれてきたヒレカツ膳に目をやりながら首を縦に振っていた。
「そんなもんどうするんだよ?てーか、噂話を通り越して、荒唐無稽の都市伝説だな。」
「まぁ、俺も含めてネットジャンキーが騒ぎ立ててる噂話にしかすぎないけどな。」
ヒレカツとの戦闘音だけが店内に響く中、ファミレス入り口の扉が開く、女性が一人入店してきたようだ。
飲みすぎの大学生だろうか、疲労感のある顔が見て取れる。座りたい場所があるらしい、窓側の席を指差すが、
その腕には力がなかった。


ヒレカツ男の手が止まった。入店してきた女性が席へ向かう後姿をまじまじと見ている。
「あの子、ミスラのコスプレしたら似合いそうだ…。お前ネコ好きだったよな?」
「じいちゃんの家にいる黒猫のクロは、世界一可愛いネコだと言えるな。
今のアパート、ペット禁止なんだ。一人暮らしじゃ世話も出来ないしな。」
その事を忘れていたネコ好きの男は思い出した現実に肩を落とす。聞いていないのにヒレカツ男が説明する。
「ミスラってのは、ネコ耳に尻尾がついた、女キャラでな…。あ、すみませんフレッシュフルーツパフェ追加で。」
女性を案内した店員に、ヒレカツ男は終盤戦の相手を指名した。
ネコ好き男の頭の中は既に祖父の家だった。幼い頃遊んだ家の中でクロが小生意気な顔でこちらを見ている。
だが、それが何とも言えず可愛らしい。お気に入りの場所はミドルタワーのパソコンの上だった。
「あ、最近連絡取ってなかったけど。うちのじいちゃんもゲーマーだったな。さっきの噂知ってたりして…。」
呆れて視線を窓の外に移す。コンビニには、同じ社名のトラックが搬入作業をしていた。夜の帳の幕が引くのも
そろそろだろうか。視線を戻せば、ヒレカツ男はパフェ男と変貌を遂げていた。
「あぁ、ネトゲ失踪事件の話の続き…というか、今ネットで盛り上がってる話題があってさ、失踪するときに、
 現実の物を3つまでゲーム内に持ち込めるらしいんだわ。そしたらお前、何もっていく?」
「酒と煙草とコンドームかな。」
胸のポケットにある煙草の箱に手を伸ばすが、指先でトントンと軽く叩くと、火がなかったことに気付く、
ライターをどこかに忘れたか落としてきたらしい、代わりに3杯目のコーヒーで口を潤した。
「カッコイイこと言うねぇ。俺なら弾数無限の地対空四連装ロケットランチャー"スティンガー"だな。」
にわか武器知識を披露すると、パフェ男は真似するかのように、六杯目のメロンソーダを喉に流し込んだ。
「………ってか、それ用意できないだろ?」


夜明け前のグッタリとした空気が店内を包む中、パフェ男の戦闘は終った。七杯目のメロンソーダを取りにいく。
一緒に持ってきたストローの包装紙を蛇腹状に小さくし、その上にストローで器用に一滴を垂らす。すると、
包装紙は死に掛けた虫のようにモソモソと動き出す。垂らした水滴が全体に行渡ると、息絶え動かなくなった。
「もう五時かぁ、始発もそろそろ動いてるかな…。」
窓外の空は暗き色を地平線の辺りから白色で侵食し、雲はその向こうにある太陽の光を受け、オレンジ色の
朝焼けを映して、一見すると朝か夕方か分からないが、行き交う人と車の量が、現在時刻を物語っていた。
女性がレジに行き、店を出る。コーヒーを飲んで一息ついたのだろうか、先ほど見かけた時よりも、その
顔には確たる意思のある眼があった。扉が閉まると、一息の間が経った後に二人は顔を合わせる。
「そろそろ俺らも出ますか。」
言われてパフェ男は数回書き直された伝票を手に取り、金額を確認する。
しかし、財布には相当する所持金がないことに気付き、バツが悪そうに、伝票を目の前の男に渡した。
「あぁ、良いって呼び出したのはこっちだし、今日はおごってやるよ。」
その言葉にパフェ男は感謝した。一方、手に取った伝票に合計金額を見て、ため息をつき、見飽きた外の景色に
目を移した。交通量の少ない道をトラックが走っている。コンビニの方から何か食べながら歩いている男がいる。
トラックの速度が増す。男の位置からでは角を曲がった先の道を走るトラックは見えない。
「まずい、危ない!」
だが、窓越しの彼に声が届くはずもない。両者が衝突する瞬間、見かねて目をそらした。車の甲高いブレーキ音
が聞こえ直後、衝突音が聞こえた。異常な音を察知し満腹男も窓外に目をやる。そこにはタイヤのブレーキ
痕と電柱に突っ込み運転席部分がひしゃげているトラックがあった。
「おい!ちょっと…早く行こう!」


会計を素早く済まし、階段を駆け降りる。そこには、現場を見たのか、音を聞いて駆けつけたのか、
偶然居合わせたカメラマン風の男がフラッシュを焚いていた。トラックから運転手が出てくる、
特に怪我はないようだ。軽く折れ曲がった電柱と、ひしゃげたトラックをみて落ち込んでいた。
「いや、そうじゃないだろ。轢かれた人はッ!?」
電柱とトラックの間を覗く。いない。付近を見回す。いない。車体の下を覗く。いない。
トラックの向こう側に回る。いない。どこにもいない。
500mlの牛乳パックとレジ袋が落ちている。誰かが居たのは間違いない。満腹男を見て言う。
「おい、今誰か人が轢かれてたよな?」
「いや、見てないよ。何か見間違えたんじゃないか?」
地面に落ちた牛乳パックとトラックをファインダーに入れる為、地面に寝そべってシャッターを押している
カメラマンに声をかけようとしたが、近所に交番があるのだろうか、駆けつけた警察官に遮られ、
声をかけるタイミングを逃した。主人を失った牛乳が、代わりに白い血だまりを広げていた。
「もしかして、これが噂の失踪事件?……いや、まさかな…。」
夜の終わりを告げる朝日が差してくる。秋口の心地よい風が流れていく。男二人は、ただ現場を見て立っていた。
「ゲームの中に現実の物を持っていくって話さ。俺はまだ残した仕事があるし、新しい彼女も探さないとだから、
当分ゲームの中に行くのは遠慮しとくわ。」
「そうだな、こっちもクリアしてないゲームあるし、これから発売されるゲームもやりたいしな。」
二人は、それぞれの使命と決意を確認した。いつか再び会う約束をし、各々の道へと歩みを進めた。


投稿日: 2006/10/14(土) 12:55:21.34
2006年10月27日(金) 17:29:14 Modified by ID:ZQCwcnVLDQ




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