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緑茶◆vUu2nK2xdY プロローグ2

プロローグ


冴えない中年男「鍵屋」はゲームの世界ヴァナ・ディールで何を思うのか?
幾人もの来訪者を巻き込んで淡々と進む物語をお楽しみください。



◆◆◆第四話:此岸の命は無くとも開闢の――


 深い妖艶とした霧に包まれるアラパゴ諸島の玄関口であるナシュモはアルザビの街と航路を結ぶ港町であり、
以前は死病の流行により棄てられていたが、近年キキルンと呼ばれるネズミにも似た小獣人を中心に復興し
今では競売などの冒険者が利用するにあたって必要なものが揃った街として機能していた。
 とは言え、ナシュモに降り立った鍵屋の男が目にした冒険者と言えば波止場の近くに白いローブを着て立って
いたミスラの女性一人ぐらいのものである。白のローブとセットの白いキャップを手の中でクシャクシャにしている
その様は待ち人来ずといった感じでイライラしているのが遠目にも分かるほどだ。
 自分以外に乗船者がいないことを知っていた鍵屋は、少しばかりの同情を感じながら、触らぬ神に祟りなしと
言わんばかりにそそくさとその場を後にしていた。
 全ての街の片隅にはホームポイントと呼ばれる大クリスタル結晶がある。実際のゲーム上ではホームポイント
に触れることによって、志半ばに戦闘不能となり倒れ救出される見込みのない者が帰る場所となり、またデジョン
と呼ばれる帰還の魔法の収束地点として設定できるものであった。
 鍵屋の男はデジョンの魔法で帰還できるか試したことがある。一種のテレポーテーション、ワープとも言える
デジョンの魔法の移動方法は実際に使うまでは半信半疑ではあったが、いざ使ってみれば視界がグラリと闇に
包まれたかと思うと次の瞬間にはホームポイントとして設定していた場所に戻っていた。
 この技術が現代の世界で使えるように出来れば流通や交通の革新が起きると感じたが、彼にその原理が分かる
はずも無く、例え現実世界に戻ったとしても「そういう技術があった」としか説明できなかった。
 そしてもう一つのホームポイントの利用方法である戦闘不能時の帰還先というものがある。鍵屋の男にとっては
そちらの方が深刻な問題である。この世界にとって自分はどういう立場にいるのか――
451 名前: 緑茶 ◆vUu2nK2xdY [プロローグ4-2/2] 投稿日: 2008/02/10(日) 04:57:01.47 ID:pebkKoqr
 そもそも戦闘不能とは死ぬことなのか、重症を超える致死のダメージを受けた場合に蘇生魔法を体が受け
付けるのか、一度の戦闘不能で最期の可能性もある以上、それを確かめる余地などありはしなかった。
 そしてここナシュモの街にもホームポイントはあった。しかし移動手段の不便さからこのホームポイントを
使う冒険者はまず居ることがなく、彼らの視界に入ったところで何もないのと同じといっても差異はなかった。
そんな淡い光を放つクリスタルの傍らで鍵屋は懐から取り出した煙草に火を点ける。
 ――煙草の煙が辺りを支配する霧に広がる。
 時折、この世界に目覚めた時のようにいつしか煙のように自分も消えて何もなかったことになる日が来るの
だろうか? 漠然と、ただ漠然とそんな風に思うことが彼の脳裏にはあった。
 ――噴かした煙草の先が赤熱し灰となる。
 常識的に考えればこの世界は夢か幻の世界に他ならない、それでも痛みなどの五感は間違いなく働いて
いる。一つ不思議なことと言えば、この煙草がなくならないことだ。ケースに入った煙草は持ったときの感覚
から残り七、八本といったところなのだが一向にそれ以降減らないのだ。
 ――灰が地面に落ち崩れ風に流される。
 そんな些細な不思議なことだが男は特に気にしたり調べたりすることはない、不可思議なことを調べてその
先に待つ現実へ帰る方法があったとして、それを見つけようなどとも思わず、単純に好きな煙草がなくならない
ならばそれで良いじゃないかと結論を出すも、また煙草のケースを持つと同じことを考えてしまう。
 ループする思考回路に対し鍵屋は自虐的に苦笑いし、「どうでもいいじゃないか、そんなこと」と自分に言い
聞かせ、物事の始めと終わりに区切りをつける時に習慣として吸っていた煙草を吸い終えた。
「さて――そろそろ、暗礁域まで行ってきますかね」
 癖になっていた独り言でホームポイントクリスタルに一瞥すると鍵屋はナシュモを後にした。

投稿日: 2008/02/10(日) 04:57:01.47



◆◆◆第五話:隠すは白壁の微瑕なればこそ――


 アラパゴ暗礁域はその名の通りナシュモのそれよりも深い霧に覆われている。さらには近海であった洋上戦で
大破した船や難破船が多く流れ着き、海岸線は入り組み、数多くの洞窟が口を開けている。それらがある場所では
繋がり、ある場所では寸断され迷路のような複雑さを作っていた。そんな天然の要塞を自らの拠点としているのが
メデューサを筆頭にしたラミア達キメラ生命体であり、数々の呪術による不死のモンスター達を従え、その勢力を
拡大せんとしていた。
 暗く湿った洞窟の中にまで哨戒の不死生物やキメラが配置されている。その中を一人の男が影も形もなく歩いて
いた。姿かたちは見えずともそれは鍵屋の男であった。
 洞窟の入り口に設置されていた錠付き扉は出かける前に懐に準備していたカギで難なく解除し洞窟内部に入る
ことが出来た。男は侵入後サイレントオイルと言われる一種のマジックアイテムを体に降り掛ける。体の表面を極薄に
包んだオイルは、靴底が地面を叩く音や衣擦れの音などを周囲に伝えることなくその液体が吸収してしまう。つまり
船上で出会ったような聴覚を頼りに侵入者を察知するモンスターにとっては居ないものと錯覚させることが出来るのだ。
そしてオイルの上からプリズムパウダーと呼ばれる虹色の粉を振り掛ける。粉は体の周囲を霧状に包み外部から
不可視の状態、つまり使用者を透明人間とさせるものであった。つまり、聴覚とは逆に視覚での警戒を行うモンスター
に対し有効な知覚遮断アイテムになる。
(気付かれないとは分かっていても。危険で不気味な怪物達の横をすり抜けていくのは何とも肝が冷える……)
 ひたひたと骸骨やミイラのモンスターが徘徊する中、鍵屋の男は目を閉じて集中する。彼が何をしているのかと
言えばゲーム中では広域スキャンと呼ばれる広範囲探知能力であった。もちろん現実世界に居た頃の彼にそんな
能力などありはせず、この世界に来てからいつの間にか使えていた能力である。
 人間の目が異なる色を判別できるように、舌が異なる味を判別できるように、異なる音を耳が判別できるように、
自分を中心とした広い範囲に存在するモンスターや人間を察知判別できる。この感覚を他人に説明するのは、
人間が歩くことや物を持つことのように当たり前に無意識的に出来ることを他人に説明する難しさに通じるものが
あった。それほど当たり前のように使えていたのだ。
(――この周辺にいる捕虜は一人……か。先ほどのビシージで拉致された人数は三名……ふむ、やはりこの周辺
以外にある牢獄も回る必要があるか……)
 捕虜の気配がある部屋の前にある扉まで来ると鍵屋の男は周囲を警戒する。プリズムパウダーの不可視状態は
周囲との接触により穴が出来ると解けてしまう。その為、扉を開ける際に付近に視覚での探知を行うモンスターが
いないか確認する必要があった。
 モンスターが扉の方向を見てない隙に男は静かに扉をあけると、するりと部屋の中に入る。
 暗い洞窟内部に明らかに部屋として作られた広い空間には錆びた鉄や腐りかけの木材で作られた牢屋が並んで
いた。老朽化しているように見える牢獄も呪術的な処置によって内側からの物理的な力や魔術による脱出を阻害
している。
 そして、その牢獄の中に一人の捕虜の影が見えた。
「だ、ダメ……。アイツら想像しただけで足が……。こんなんじゃ、ボク……」
 ミスラ特有の華奢ではあるがしなやかな体付き、それを雅に飾られた甲冑で纏うその姿は五蛇将が一人ミリ・アリ
アポー(Mihli Aliapoh)であった。しかし、アルザビの戦場では一騎当千の活躍を見せる彼女がそこでは怯えて竦み
あがっている。恐怖の理由が何であれ鍵屋の男は彼女をそこから救う為に来たのだ。
「大丈夫ですよ。そんなに怖がらないでくださいな。僕は貴方を助けるためにここまで来たんですから……すぐ出して
あげます」
 目を瞑り帽子の下の耳を押さえ縮こまっているミスラに彼の言葉は届かなかったのか、依然として甲冑が
小刻みに震えている。そんな状況から早く脱してあげようと鍵屋は用意したピッキングツールを懐から取り出す
と牢屋の鍵穴との格闘を始めたのだった。
 怯えるミスラの将軍と脱現実世界をしてしまった冴えない中年の男の二人だけがいる部屋に開錠を試みる
カチャカチャと鳴る金属音がただひたすら続く。
 そして開錠の際の心地よい打鍵音を聞かぬまま小一時間が過ぎた時だった――。
 モンスターの迎えにしては長居しすぎる気配に違和感を覚えたのか、チラリと彼女が男の方を振り向いた。
 その動きに反応して男の方も彼女の方を向く、何気なく動かした視線はピッタリ目と目があった状態になって
しまった。
 (気まずい……)助けにきたとは言え相手は若く幼さの残る女性である。ミスラという種族差はあれど自分の
歳よりも一回りも二回りも下に見える相手と間近に見つめ合って、彼はどうしたら良いかと動揺すらしていた。
 一方、そんな事とはつゆ知らずミリは目の前にいる男をじっと見つめていた。頭の上に浮かんだクエスチョン
マークを解消するべく彼女の口から漏れた台詞は、
「オジサンは何しているの? 傭兵?」
 と、至って単純なものだった。しかしこの質問は傭兵と名乗らなくなった男にとっては答え難い。
「え……ああ、何しているかと聞かれれば君を助けているところ、ですかね。傭兵かと言えば違わなくはない
のですが――まぁ、しがない鍵屋ってところです」
「ふぅん……しがない?」
「鍵屋です。鍵を開ける仕事をしているんです。ほら、こんな風に――」
 軽い金属音だが確かにそれは開錠を示す音が薄暗い室内に響いた。それを聞いた鍵屋は内心ホッとした。
 このまま彼女からの視線が続けば開錠作業どころではなくなってしまう。そして面と向かって鍵を開けるなどと
言っておいて、更に時間をかけようものなら面子の丸つぶれも良いところであったからだ。
(こっちの世界に来ても未だに見栄を気にしてしまうのは、我ながら情けないな……)
 だが見栄に関しては目の前の女性の方が一枚上手であった。
「な、なにさ。ボク、ちょうど独りで脱出するところだったんだから」
 手のひらを返したかのように強気な発言は先ほどの折れた腰からではなく、狭い牢屋の中でこれでもかと言う
ほど仁王立ちした姿で放たれたものだった。ミリは彼が半時間も前から鍵と格闘していたことに気付かず扉を背に
耳を塞いでいたので、この鍵屋と名乗る男が今来たのかと勘違いし、この台詞が出たのだった。
 その見栄の空回りに鍵屋も肩の力が抜けたのか軽い表情で受け答える。
「そうですね。貴女にここは相応しくありません」
 彼女は思考を巡らせるかのようにしばらく目を閉じた後、再び開いた。その瞳は紛れもなく護るべきものを持つ
水蛇将ミリ・アリアポーのものであった。
「フンッ……傭兵風情がこれくらいで良い気にならないでよねッ!」
 呪術の檻から放たれた彼女はアルザビへと帰ることの出来る魔法が印された呪符を手にし、その力を解放して
いた。輝く粒子と煌く波のアストラル体が帰るべき場所へ誘うように彼女の周囲の空間を閉ざしていく。
 距離感を失ってしまいそうな空気が渦を巻く静かな轟音の中で、ミリは付け足すように口を開く。
「……でも〜ッ」
 それに続く台詞は音の壁に遮られ姿は虚空に消えたが、彼女の唇が紡ぐ動きと表情が彼にその意を伝えていた。
「ありがとう――か、現実世界じゃあまり言われなかったかもしれないな」
 アラパゴ暗礁域にある暗く冷たい部屋に静寂が再び戻ると鍵屋の男はその場を後にした。

投稿日: 2008/02/12(火) 09:36:29.46



◆◆◆第六話:路すら無き異邦より来たれば――


 アラパゴ暗礁域の東に位置するアズーフ島から足を踏み入れた鍵屋とは別の場所、西に位置するドゥブッカ島
から暗礁域に足を踏み入れた一人の傭兵がいた。その傭兵は女性で若く小柄ではあるが、瞳には幼さを感じさせ
ない強固な意思の輝きが見て取れた。
 強い足取りで湿った岩場を進む彼女の足がピタリと止まる。遠い視線の先には古鏡と呼ばれる物とそれを護衛
するラミア達が居た。さらにラミア達と今から戦闘を開始せんとする冒険者達が見て取れた。
 古鏡を壊せばビシージにおける獣人達の呪術的防御が下がるなどと言われているが、見返りの少ないその報酬
から捕虜救出と並んで冒険者や傭兵からは嫌煙されている仕事でもあった。
「珍しいな。古鏡割りをしている人達がいる」
 彼女が口にした誰に伝えるでもないその小声は眼下の冒険者達に伝わるでもなく、また彼女に同行者の人影が
あるわけでもなく、霧に包まれた暗礁域に消えるだけのはずだった、が――
「ほお、そりゃ珍しい。いっちょお前さんも助太刀にいくかい? その銃でババンとさ。ヘヘヘ」
 戯ればんだ笑いと共に彼女の耳に台詞が届いた。声は彼女の耳元に付けられている真珠のアクセサリーから
聞こえたものだ。それはヴァナ・ディールで多人数相互通信用に使われる魔道具リンクシェルから作り出される
リンクパールと呼ばれるものであった。
 彼女がもつリンクパールは普通のリンクパールとはある一点だけが違っていた。それは彼女以外に同じリンク
シェルから作りだされたリンクパールを持つものが居ないのだ。つまり、相手の居ない電話機、相手の居ない無線機
と会話しているのに相違ない。
「まさか。依頼内容と古鏡は関係ないしね。さっさと終らせて昼食にでもしたいよ」
 彼女がその喋るリンクパールと出会ったのは偶然であり、最初こそは扱いに多少頭を悩ませもしたが、今では
軽くあしらうまでに至っている。一方、パールにとっては他者との会話、それが彼の世界の全てである。彼には手も
足も目も鼻もなく自分で移動することすら出来ないが、"それは今気にする問題じゃないな"といった感じで自分の
声が届く者との会話を楽しめていればそれで十分であった。
「まー、んなこったろーと思ったぜ」
 靴底が地を噛む音を鳴らし、彼女は眼下の彼らとは別の目的の為に再び歩みを始めようとする。しかし、一歩
目を出す前に踏みとどまり、再度古鏡を囲む冒険者達の方へ目をやった。
「それにしても、なんだろう――彼ら……何かひっかかる。同じ人間が並んでいるような……」
 彼女は眼下に並ぶ彼らの違和感が気にはなったが、それはこのヴァナ・ディールの世界の人間に対して時折
感じる印象であり、そんな彼らが今日の自分の仕事と交差することはないと、頭からその違和感を取り払った。
「そりゃーさ、この世界だってゲームなんだから設定できるフェイスタイプってのが限られてるんだ。いくつか種類は
あってもたまには似たような顔になるってこったよ。お前さんもディスプレイの前でこのゲームやってた頃にあった
だろ? レベル上げパーティ組んだら全員同じ顔だったなんて事がさ――って、さすがにそりゃーねーってか。ヘヘ
ヘッ」
 リンクパールが喋るその台詞は彼女の耳には届いていない。彼女は自分に関係のないと判断した人々のことなど
最早興味の欠片もない。元より他人に興味がなく一人で世界を旅する彼女からしてみれば、顔が同じだろうと異な
ろうと何ら差のあることではなかった。
 頭に乗せた海賊のような帽子を被りなおし再び歩き始める。腰にはヘキサガンと呼ばれる六つの銃口を持つ武器が
提げられている。そんな彼女もまた鍵屋と同じく現実世界からヴァナ・ディールの世界へと辿り着いた、来訪者と言わ
れる者の一人であった。

投稿日: 2008/02/15(金) 11:12:06.72

>>続きを読む第七話 
2008年03月04日(火) 17:49:43 Modified by hexagun




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