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Kiesel ◆nu123wJPbk 33'スレ目外伝

368 名前: ◆nu123wJPbk 投稿日: 2008/08/01(金) 02:08:49 ID:5UW1ErPq
金属が触れ合う音がする。
何のことはない、金属鎧を着た誰かが歩いているだけだ。
そう、金属鎧を着た人物が、この部屋に向かって……
書類にサインをしながらぼんやりとそこまで考え、ハルヴァー・M・ボーレルははっと顔を上げる。
こんな時間に、金属鎧を着た人物が来る、だと?
足音からすれば随分とゆっくりだ。急ぐでなく、のんびりと歩いてきている。
一体誰が、と思案する間もなく、静かに扉が開かれる。
そして現れた人物に、ハルヴァーは声にならない悲鳴を上げた。











369 名前: Kiesel ◆nu123wJPbk 投稿日: 2008/08/01(金) 02:34:06 ID:5UW1ErPq
「そりゃあ、宰相閣下も驚かれたでしょう」
ティポットから茶を注ぎ、銀髪の騎士が苦笑して彼女へ言う。
初老の婦人は心地よさそうに笑い、差し出されたカップを受け取った。
「まったく、ハルヴァーったら。デーモンか何かに遭遇したかのような顔をしていたわ」
「マダムがいらっしゃったからですよ。何せあの方は、マダムに随分としごかれたそうじゃないですか」
「私が鍛えてやったのだから、感謝されこそすれ恐れられる筋合いはないわね」
そうでしょう?ヴォーシェル。問われ、リュケイン・ヴォーシェルは苦笑するだけにとどめた。
この、見た目だけは深窓の奥に住まう優雅な貴婦人は、既に老齢と言われる年齢に足をかけていると言うのに、いまだ現役の騎士なのだ。
両手斧を振り回し逃げ惑うモンスターどもを追いかけたとか、単身で敵地に乗り込み一晩で拠点を落としたとか、そんな『優しい』言い伝えは騎士団の中でもよく知られている。
もっとも、それ以上の武勲はあまりに素晴らしすぎて、半ば都市伝説とか神話とかそういったレベルになりつつあるのだが。
ミレイユ・M・ソルニエ。邪魔にならない程度に黒髪を切り揃え、穏やかなヘイゼルの瞳に優しい表情を浮かべている。
動きやすそうな青いガンビスンをまとったこの婦人が見た目通りだと思うのは、恐らく赤子くらいだろう。少なくとも両騎士団の者にはひとりとしていない。
「先日は、アトルガン皇国へ赴かれていたそうですが」
「ええ、楽しかったわ。ビシージと言ったかしら、あの市街戦。こちらでもやってみたいわね」
「あれは、皇国軍や傭兵がいるからこそ成り立つものですよ。こちらでは手が回りきれず、あっという間に陥落しますよ」
「それもそうね。それに、無理矢理にでも奪いたいものなんてないものねぇ……まあ、国を落とすのが最大の目的か……」
穏やかな表情で、さらりと怖い話をする。しかし、この破天荒な老騎士を敬う者が少なくないのも事実だ。
もっとも、それは彼女の人徳だけではないのだが、これについて語ろうとすると何故か突然誰かが来訪すると言う。

370 名前: ◆nu123wJPbk 投稿日: 2008/08/01(金) 02:48:02 ID:5UW1ErPq
ケインもまた己のカップに茶を注ぎ、マダムの前に席を取る。
「さて、そんな与太話をしに参られたのではないのでしょう?」
ジンジャークッキーとパイを並べた皿を置きなおしながらの言葉に、ソルニエはそうねぇ、とカップに口をつけながら応える。
「来訪者、と言う話を聞いたわ。異世界から来た者たちだと言うけれど、どこまで信じればよいのかしら?」
「まったくの冗談です、と言っても信じやしないでしょう」
唇を引き結び答えた。その瞳はわずかにさまよい、だがその躊躇は一瞬で消える。
来訪者と言う存在。何から説明できるか。どこまで説明できるか。どこまでなら影響を与えずにおけるか。
カップへシュガーとミルクを入れる間にそれの計算を終え、マダムを見つめた。
「正直なところ、来訪者と言う存在について、我々もよく分かっていません。ただ分かるのは、『彼らは突然来訪する』」
「望まれぬ客人、と言うところなのね。それは彼らの意志に従ったものかしら」
「いいえ。望んで来訪するものは稀でしょう。或いは、排他的選択においてはそうだと言えるのでしょうか」
「排他的選択?」
「来訪する原因となりうるものがあるのです。それに接触することで、彼らは来訪することになります」
「では、それに接触した者たちが来訪者となるわけね。彼らは異世界の姿そのままで来訪しているの?」
「いえ、それは……」
答えが濁る。そうだとも言えるし、そうではないとも言える。だが、これに答えることは……しかしこの婦人に、嘘をつくことが得策だろうか?
いいや、ある意味では彼女もまた当事者になりうる。何故なら彼女の養子がそうなのだから。
「……彼らはこの世界に適応した姿となります。彼らは異世界ではヒュームとほぼ変わらない姿ですが、ある者はエルヴァーンに、ある者はミスラに……勿論、ヒュームの姿のままであることもあります。
また彼らは、異世界では魔法も使えず合成もできませんが、こちらへ来る際に何らかの変容を起こし、一般的な魔法やアビリティを使用することも可能となるようです」

371 名前: ◆nu123wJPbk 投稿日: 2008/08/01(金) 03:03:50 ID:5UW1ErPq
若い騎士の言葉に、マダムはカップの中を見つめながら呟くように言う。
「では、彼らにとってこちらに来ることは、ある意味ではとても幸運なことなのね」
「……幸運、ですか?」
「だってそうでしょう?あちらで不可能なことが、こちらでは可能なのだから。魔法を使えないと言うことは、きっとそれが必要ではないからでしょうね。
魔法を使って戦うことも、合成をして武具を作る必要もない……きっと、彼らが住まうのは戦いのない穏やかな世界なのだわ」
果たしてそうだろうか。戦いはない。そう、確かに彼らの住む国にはなかった。だが、だからと穏やかだと言えるだろうか。
戦わなければ平和だと言えるのだろうか。歪な狂気に苛まれているのではないだろうか。
「分かりません。しかし、彼らにとっては大切な世界なのでしょう。彼らは決して、この世界に留まることをよしとはしていませんから」
「そう……残念だわ。その異世界についての話を、聞けるものなら聞いてみたいものだけど」
「ええ、残念ながら彼らは時間の経過とともに、異世界の記憶を失っていくようです」
「それならば、彼らがその世界に戻ろうとするのは、大切なものを失わないようにするためなのかもしれないわね」
微笑み、カップに口を付ける。空になったカップをソーサーに置くと、ケインが茶を注いだ。
「失う……そう、彼らは多くのものを失います。最悪には己すら……そして失ったものを思い出せず苦悩するのです」
「人は大切なものを失って、初めてその大きさを知ると言うけれど。彼らはそれを知ることもなく失ってしまうのね」
「取り戻せるなら取り戻したいと、誰もが思うはずですよ。だけど肝心の探し物が何か分からなければ、探すあてもありません」
ケインもまたカップに口を付ける。甘い。そう言えばオレ、紅茶に砂糖なんか入れたっけ。
目の前のカップとは違う、白地に小鳥が描かれたカップのイメージが脳裏に浮かんで消えた。
今までいくつのものを失っただろう。数えることもなくなった。日記帳も、いつからか書かなくなった。
今では時折読み返し、もう読めなくなりつつある文字と思い出せない単語をなぞるばかり。

372 名前: ◆nu123wJPbk 投稿日: 2008/08/01(金) 03:16:12 ID:5UW1ErPq
「そうね。本当の名前も、姿も、記憶も失っていくのだものね。それはきっと、想像も付かないような想いなのでしょうね」
穏やかな言葉にケインは微笑み、しかし次の瞬間に表情を失った。

「あなたも、あの子も、そんな得体の知れない恐怖に蝕まれていったのね」

静かな言葉だった。責めるでもない、慰めるでもない、ただ事実を淡々と口にした声だった。
何故、知っている?いや、何故気付いた?このことは宰相と、ごく数人しか知らないはずだ。
動揺を抑えきれないままでいると、ソルニエは今度こそ優しい笑みを浮かべて口を開く。
「気付かないと思って?私の、あの小さなキーゼルのことを」
「……いえ、その」
「勿論、あなたたちのことも知っているわ。ヴォーシェルの双子……ケイン。あなたは大人しくて、率先して何かをするような子じゃなかったわ。
いつの頃か、あなたたちが少しずつ変わっていることに気付いたの。どうしてあんなに快活で元気な子になったのかしら、って、不思議だったのよ。
……カインはとても迂闊な子だわ。それが可愛らしいのだけど」
成人して久しい男を『可愛い』などと平気で口にできる豪胆さのほうに驚きつつも、ケインはカップに口を付けてから言う。
きっとカインの奴が、何か口を滑らしたに違いない。あいつは前から、いや、"彼女"が来てからそうだった。
「ええ……私たちもそうです。……それでは、来訪者の正体について、おおよその見当は付いていらっしゃるのですね」
「そうね、間違いでなければ。もし間違いがあれば、訂正してもらえると嬉しいわ」
そう前置きし、マダムはゆっくりと言う。

373 名前: ◆nu123wJPbk 投稿日: 2008/08/01(金) 03:36:28 ID:5UW1ErPq
「来訪者と言うのは、恐らくこの世界と平行した世界から来た存在。その世界には、この世界とよく似た世界を基にした何かがあるのね。
彼らはそれに何らかの形で触れ、知識を深め、或いは己の移し身として演じてきた。だからこの世界に来ても、さほど認識に齟齬を起こしていないのだわ。
そして彼らの姿は、その世界……仮に擬似世界と呼びましょうか……での彼らの姿になるということかしらね。もし彼ら自身がまったく知らないものになってしまったのなら、パニックになってしまうもの。
彼らにとっての擬似世界は、この世界そのものであり、彼らの演じていた人物は、この世界に存在する人物でもある。つまり彼らは、この世界の人物になってしまう。
けれど同じ存在は同時に存在することができないから、どちらかが『消える』しかない……彼らにとって、この世界に来ることは、存在するための戦いでもあるのかしら」
そこまでを言い、ソルニエはケインを見つめる。ケインはそっと首を振る。
まったく、どうしてそんなことを理解できるのだろう、この人は。或いはこの人だからこそなのかもしれない。
ケインの反応に確信したマダムは言葉を続けた。
「ケイン。あなたはこの世界の"ケイン"に勝ったのね。逆にカインは負けてしまった。……あの子はどうなのかしら。キーゼルは……」
「……分かりません。我々も彼に接触しました。しかし……来訪者の気配もなく、彼自身とも思えないのです」
「では、あの子はキーゼルではないのかもしれないのね」
「ええ……マダムの前で言うのはとても心苦しいのですが」
溜息をつくように言い、それから気付く。
いつ、どこでキーゼルの話を知ったんだ?オレたちは彼女に、キーゼルの情報を伝えてはいないぞ?
恐る恐るマダムの顔を見ると、ソルニエは心地よさそうに微笑んだ。
「あらあら。ケイン、私があの子のそばに誰も付けないと思って?間者のひとりやふたり、知られずに付けることは簡単なのよ?」
「…………さようですか」
やっぱ聞かなきゃよかった。
しかし、彼女の間者か……恐らくはソルニエに関係する奴らだろうが、アレン家辺りだろうか。あそこも裏で色々とやっているらしいが。
リュシアンが聞いたらショックだろうなぁ……などとそこまで考え、ようやく現実逃避気味な思考をとめた。

374 名前: ◆nu123wJPbk 投稿日: 2008/08/01(金) 03:51:33 ID:5UW1ErPq
「とっても楽しいことよ。本人に自覚させず、その役目を果たさせるのは」
にっこり微笑んでなおも続けるマダムに、ケインは耳をふさぎたい気分だった。
何故だか自分も、彼女の駒のひとつでしかないような気がしてきた。ひとつ咳払いをして、気を取り直す。
「……ええと、マダム。そこまで言う以上は、キーゼルについての情報をお求めですか?」
「そうね。いえ、情報は要らないわ。キーゼルにあって確かめてみましょう」
「確かめる……とは?」
「あの子がもし本物なら、私の引っ掛けに引っかかるとも思えないのだけど。そうでないなら引っかかるわね。
……ふふ、楽しみだわ。エティにも手伝ってもらおうかしら」
「ま、マダム?あんまり悪いことをやらせると、リュシアンが本気で泡吹いて倒れますよ?」
「あらあら、軟弱ねぇ。昔はあの子に女装させてパーティに放り込むくらいはしたのに」
「翌日どころか当日その場で、大量の見合いの申し込みがあったとか……」
「あの頃のエティったら髪も長くて、女の子みたいだったものねぇ。何て言うのかしら、萌え〜だったかしら?素敵だったわ」
なんか変な言葉覚えてるし。つーかどこで覚えてくるんですかマダム。
血を吐きそうな思いでツッコミを押さえ、色々な感情のために震える手でカップに茶を注いだ。
「とにかく……我々も彼らの動向には注目しています。ですので、あまり無茶なことはなさらぬようにお願いします」
「あまり深入りしすぎると、赤鎧、とか言うのに狙われるらしいわね。一度手合わせしてみたいものだけど」
「……マダムがこの世界の人間をやめられるのであれば、勝てると思います……」
いや、多分このままでも勝てそうな気もしなくもない……
にこにこ微笑むその姿があまりにも恐ろしくて、ついにケインは視線を逸らした。

375 名前: ◆nu123wJPbk 投稿日: 2008/08/01(金) 04:07:33 ID:5UW1ErPq
ソルニエもそれ以上追求することはせず、カップに口を付けてから言った。
「話では、ウィンダスにいるそうね。……あちらにも、あなたたちのように来訪者についての情報を扱う存在がいるのかしら」
「ええ……レアとノアと言う、双子のミスラが管理しています。ポワティエのティアロが彼女たちをサポートしていますから、こちらから伝えておきましょう」
「力尽くでやらなくても済むのは助かるわ。ウィンダスと喧嘩はしたくないもの」
微笑み、カップを干す。そして静かに立ち上がった。
「ケイン、お茶と情報をありがとう。あなたたちのことは口外しないわ。勿論、ハルヴァーにもね」
「宰相閣下は、いくらかご存知のはずですが……」
「あの子はきちんと理解していないのよ。あのカタブツのデコッパチはね」
くすりと微笑むその表情に、ケインは目眩がする思いだった。それを無理矢理押さえ込んで笑みを浮かべる。
「ウィンダスまで送らせましょう。それができずとも、せめてチョコボの手配を」
「あら、知らないの?最近はテレポで移動するのが流行りなのよ」
「……なるほど」
苦笑して、老婦人が部屋を出て行くのを見送る。すぐに金髪の女性騎士が彼女のそばに寄り、何事か話していた。
ミレイユ・M・ソルニエ。高雅にして豪胆な伯爵。この婦人の破天荒さを知りなお彼女についていく者が少なくないと言うのは、……ちょっと自信がない。
しかし彼女は確かに信頼に値する存在で、共に茶や酒を酌み交わすことは彼女にとって最大の敬意であると言う。
あいつ、こんな人物に育てられてよく屈折しなかったよな、と思いながら、ケインは彼女が使用したカップのソーサーを取り上げた。
「……さて、これは何に使えるものかねぇ」
ソーサーの下の紙切れを取り上げ、ぽつりと呟く。
2008年11月21日(金) 17:59:13 Modified by feathery_snow




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