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Kiesel ◆nu123wJPbk 34番目本編

「・・・んー」
大きく伸びをする。
花とは違う香りが満ちた部屋は、・・・なんかちょっと、乾燥している気がした。
書き物机に置かれた時計を見ると、少し早い朝だった。いつもならこんな時間に起きないから、なんだか不思議な感じだ。
そして日は高くなくてもテントは高く。・・・畜生・・・!!
無の境地に意識をやり、黙って3の倍数を数えて解体した。正直に訊きたい。世の殿方は、一体どうやって抑えているんだろう。
落ち着いてから水差しの水を飲み、それから着替える。きちんとしていることに、ちゃんと着替えが用意されていた。
真紅のナシラ装束。言っておくけど、私はPMは途中放棄している。もちろんナシラなんて見たことがない。
うう・・・知らない装備はともかく、レアっぽい装備を着るってのはどきどきするなぁ〜。
一揃え着てみて、くるりと回ってみる。しゃらん、と装飾が音を立てた。トゲトゲがあったらネコ社長だなぁ。
はてさて、何をしようかな。おなかすいたけど外に出れるのかな。
そう思いながら部屋の扉を開ける。
「・・・!?」
扉を開けたその先は、外だった。
通路があるわけじゃない。庭があるわけじゃない。そこにあるのは、まだ薄暗い早朝のアルザビ・・・!?
振り返ると、そこに扉はない。砂色の壁があるだけだ。
「えっ・・・」
「よう、起きたかぁ!」
豪快な笑い声と共に、思いっきり背中を叩かれた。ちょ、い、痛い・・・
ばっしんばっしん叩く手がとまるまで耐えて、とまりそうな呼吸を維持する。
はぁっと大きく息を吐き、そうしてからようやく相手を見た。見上げるほどに大きなガルカの将軍。土蛇将ザザーグだ。
「お、おはようございます・・・」
「おう、おはようさん!相変わらずちっこいな!!」
わっしわっしと頭をなでられる。これ以上背が縮んだらどうしてくれるッ!!
「昨日のビシージじゃあがんばったみてぇだな?」
「あ、あ、う?」
「昔っからちっこいくせにがんばっちまうんだよなぁ、お前さんは!」
またばっしんばっしん叩かれる。ちょ、縦横に圧縮される・・・!!
これで痩せられたらいいなあ・・・なんて一瞬思ったけど、よく考えるとただ圧縮されるだけだから大して変わらない。質量は変わらない。
「・・・ん?」
今、『相変わらず』とか、『昔っから』とか言っていた?
私を知っている?・・・確か、ザザーグがバストゥークを離れたのは、先の大戦のすぐ後だ。それは、つまり、
「いつか、あなたに会って・・・?」
「ん?」
何か言ったか、と言うかのように私の顔を覗き込む。ガルカって、年齢が分かりにくいと思う。
ザザーグは顎をなでながら、そうさなぁ、と呟く。
「ここで立ち話も何だな。ちと向こうに行くか」
そう言って、さっさと行ってしまう。大股に歩いていく将軍を、私は慌てて追いかけた。


「まずは、一度名前を聞いておこうか」
ふとザザーグが言う。私はちょこんとザザーグの後ろに立ち、首を傾げた。
名前。あれ、私のこと知ってるんじゃないのかな。まあいっか。
「ユーリ・ランクスです」
自然と出たのは、その名前だった。
今まで名乗り、あるいは聞いてきたどの名前でもなく、その名前。
ザザーグは人民街区の一辺、ワジャーム樹林への門を見つめながら、顎をなでる。
「ユーリ・フェルシオン・ランクスか」
「はい。今は、サンドリアのソルニエに拾われ、キーゼル・ソルニエと」
「・・・キーゼル。そうか、お前さんもその名前をか・・・」
その名前を口にした時、ザザーグは懐かしそうに目を細めた。
やっぱり、ザザーグは何か知っている。当然なんだろうか。ザザーグもまた、バストゥークにいたのだから。
「ご存知なんですか?」
「ああ。ユーリも、ソルニエもな。ユーリ・・・あいつはヒュームのくせにヒューム嫌いで、よく俺たちとつるんでいたっけな」
もともと、バストゥークのヒュームとガルカは仲が悪い。ヒュームにしてみればガルカは奴隷同然で、ガルカにしてみればヒュームは圧制者だ。
もちろん、全員がそう思っているとは思わないけど、少なくとも穏健派は多くはないだろう。
「ユーリはちっこくってな。女みたいな名前を嫌って、自分からキーゼルって名前を名乗っていた。周りもそう呼んだ」
「"Kiesel"は、"小石"という意味・・・」
「そういうところはヒューム流なんだよな。小石(kiesel)みたいにチビだからキーゼル。まったく、大したもんだぜ」
ふっと寂しそうな色を含んで笑う。
「魔法はからっきしだが、剣術には優れていた。特に好んだのは片手剣で、かと言って盾を持つわけでもない。
防具も大していいもんを持ちゃしなかったし、あいつはちっとばっかし変わった奴だったよ」
過去形なのは、もう彼が過去の存在だからだ。
ザザーグが懐かしんでいるのはキーゼルじゃない。ユーリ、キーゼルの父親のことだ。
だって、あの大戦に参加していたなら、キーゼルであるはずがないもの。
「昨日はびっくらこいたぜ。まさかあいつそっくりに育ったとはなぁ!」
豪快に笑う。話に入れないタイハールが少し苛立ったような、拗ねたような表情を隠さない。
そりゃあヒュム男F4なんていくらでも、とか無粋な応えをしかけ、やめておく。思い出は美しくしておいたほうがいいし。
「私も、父と将軍にそんな縁があるなんて知りませんでした」
「なぁに、バストゥークじゃあ俺の話なんざ出やしねぇだろ。昔っからそうだ、あの国は。気にしちゃいないがな」
確かに、ザザーグがバストゥークの出だったなんて知らなかった。でも考えてみれば、ガルカはクゾッツのほうの民族なんだよな。
や、でもサンドリアやウィンダス出身のガルカもいるのかも。そう言えばシオンはバストゥーク出身なんだろうか。
「どうだ、この国は。お前さん好みの国だろう?」
にやりと笑う。私好み?そうかもしれない。
「栄え、富み・・・しかし内外に乱を抱く国。夜陰に潜む毒蛇を知らず飼う国・・・」
「ヒトの暗部を孕んだ国だ。お前さんは、ちっとばっかし歪んだ奴だからな」
「・・・乱世が好みというわけではありません」
別に、もっと混乱させたいとか、滅ぼしたいとか、そんなことは考えていない。
私は、戦いが好きなだけだ。戦うこと。命の駆け引き。命なんて、水の一滴よりも軽い。
殺し、殺される。一瞬で立場が入れ替わるあの恍惚たる地。私は殺す。私を殺せ。狂気の地。
命など何の意味があるか。生きる重みなどどこにもない。あるのはただ、『武器』としての自分。
武器を持つ重さ。刃となる自分。ただ対極の存在のみが存在理由。
「ユーリ」
「はい」
「くだらねぇこと考えんじゃねぇぞ」
ザザーグが言う。
くだらない?戦うことがくだらないと言うのか。私の存在理由を否定するのか。
私はただ、死を
「・・・ん」
思考を払う。
死を、どうする。待て。私?私は、誰だ?
私は・・・?
そう、私はキーゼル。・・・キーゼル?誰が?
偽名あるいは通称であるところのキーゼル?それともソルニエが愛したキーゼル?
私は誰なんだ?
私は、
「・・・は、」
声がこぼれた。
なんだこれ。これは私の意識じゃない。
カフェオレ色の視界に文字が浮かんで消え、そして浮かんで消える。
私は、・・・私だ。誰でもない。でも・・・私って何だろう。
「違う」
高くもなく、低くもない声が、聞こえた。
はっと顔を上げると、対の先、ワジャーム樹林へ抜ける門の2階、炎蛇将が守る場所。
今は不在の将軍の代わりに、深紅のクロークを着た誰かが立っていた。
種族は分からないけど、背丈は高くない。体格は、ゆったりしたクロークではっきりしないけど普通か。
あの人が?それにしては、ここまで声が届くと思えない。tell?違う、そんな感じじゃなかった。
はっきりと、耳元で聞こえたような気がした。
「そういやぁ、じきに朝メシの時間だな」
ふとザザーグが言う。本当に、不意に。
私が見上げると、ザザーグは私を見下ろし、軽くぽんぽんと頭を撫でた。
その手のひらの感覚に私は頭に手をやった。そこにぬくもりがあるわけじゃない。でも、何故かふわりとした暖かさを感じた。
「あなたはいつもそうだ」
その言葉にザザーグは笑った。そうだ。いつもそうだ。迷う時は道を示し、悩む時は背を叩く。
ただ。何かを誤魔化すような、或いははぐらかすような唐突さだった。
「俺ぁ来る前にメシ食ってっから、お前も早く行ってこいや。ちゃっちゃと行かねぇと食いっぱぐれるぞ」
「う、うに、あい」
わしわしと頭をなでくりまわされる。
かつりと硬質な音がして、私のそばにふたりのエルヴァーンが立つ。ダルマティカとアミール装束を着たふたり。
「ザザーグ将軍。マダム・ソルニエからの伝言です」
ダルマティカのほう、リクが口を開く。ザザーグは応えない。
「『ガキじゃあるまいし寝ぼけんじゃないよ』、と」
平淡な声が言うにはいささか物騒な言葉だった。
マダム・ソルニエ。その名を持つのは、その名で呼ばれるのは、ミレイユ・ソルニエだ。
曖昧に笑うばかりで、ザザーグは何も言わない。何も言わない?知己の相手の言葉に?ザザーグが?
ザザーグは早く行け、と手を振り、私を急き立てる。
クウが私の肩に手を置き、そっとエスコートするように私の向きを変えさせる。その後にリクがついた。
ふたりとも、エルヴァーンなのにあまり背が高くなかった。私と比べて10センチかそこらしか違わない。
だから彼のささやきは、はっきりと聞こえた。
「この場所は、歪んでる」
「ゆがんで・・・」
「おかしいもの」
うん。ここはおかしい。何かがおかしい。
「侵食されてる」
「だが、気付かない」
リクがぽつりと言う。



クウとリクの案内で食堂へ通された私は、そこでナジュリスを見つけた。
あら、とこぼしたナジュリスは、料理が載ったトレイを手にしている。他に人の姿はない。
「おはよう、ございます」
「はい、おはようございます。ゆっくり休めたかしら」
おっとりと微笑む彼女に、私はこっくりうなずいて応えた。
正直、ビシージの最中で記憶が途切れている。気がついたらあの部屋にいて、なんだか訳が分からない話をしてまた寝たんだっけ。
私が本物だってさ。なにが本物だって、私は私でしかない。
ただ、その"私"を見失ったら、私は私でなくなる。
それだけは確かだ。
リクが椅子を引き、私はテーブルに就く。うやうやしくもクウが食事の載ったトレイを私の前に置いた。
ナジュリスはスープを口に運びながら、私をゆっくりと眺める。
「今でも信じられないわ。あなたが、あんなに活躍したなんて」
「え・・・」
活躍?何が?まさか、ビシージでのことだろうか。
ナジュリスはにこにこと笑みを崩さず、静かに食事をする。居心地の悪い思いをしながら、私も食事を始めた。
なんだか、味が分からない。まずくはないと思うんだけど・・・むー。
食器が触れ合い、あるいはテーブルに触れる音が食堂に響く。やけに自分の咀嚼や嚥下が大きく聞こえた。
「そう言えば」
不意にナジュリスが口を開く。
「天蛇将が、あなたを随分と気に入っていたわ。ミリ・・・あ、水蛇将もね」
穏やかな言葉は、奇妙な困惑しか誘わない。なぜ、彼らはそんなにも私を評価するのだろう。
罠だ。意識せずにそれを理解する。だけど、五蛇将自身の罠なのか、それとも別の誰かの罠なのか。
彼ら自身は理解も意識もしていない。少なくとも、彼らは不条理を容諾しない。
とすれば。
「炎蛇将は、まだ戻られていませんか?」
「ええ・・・いつも救出に行ってくれる傭兵が、まだ出立していないみたいなの」
他人任せじゃなくて皇国軍とか派遣しろよ。つい心の中でツッコミを入れてしまった。
それはともかく、抜け道は見つけた。問題は、この罠をどうやってやり過ごすか、ということだけど・・・
もうひとりの抜け道。彼女を押さえておきたい。"犬"を使うか。
「それじゃ、先に失礼するわね」
食事を終えたナジュリスが席を立つ。私は微笑みをもって応え、そして彼女が去ってから言った。
「兎を拾っておいて」
「Oui, ma chevalier.」
くすりと笑う気配と共に、その言葉が応えた。


人民街区、競売所。
ちょこんと私の手のひらに包みが乗せられる。
手頃な大きさのおにぎり。
「いっつぁじゃぱにーずそうるふーど」
「お米の国の人だから〜♪」
つい口にした言葉にクウが歌う。嫌なところがシンクロするもんだ。
しかしパンよりお米。いぇす、じゃぱにーずそうるふーど。これでお漬け物か何かあればなぁ・・・塩揉みくらいしか作り方わかんないや。
包みを持って、人民街区の一箇所、ワジャーム樹林へと向かう門を見下ろす場所に立つ。今は不在の炎蛇将が守る場所。シャヤダルが不機嫌そうに私を一瞥して視線を逸らす。
私の姿を見つけたルガジーンが、対の先から軽く手を掲げて挨拶をした。
ここは、私たちが皇国軍と共に戦い、護り続けている場所。ビシージ。蛮族軍を迎え撃つ市街地戦は、終わることがない。
たとえミッションが終わっても。終わらせるには、『世界』が終わらないと。
『世界』。つまり、ヴァナ・ディール。ではなくて、FF11のサービスそのものだ。サービスが終わっても、多分ヴァナ・ディールは続く。
「・・・終わらない世界、か」
「そう言えば、さ」
私の呟きに応えたわけではないだろうけれど、ふとクウが言う。
「『禁断の口』って知ってる?」
「何それ」
「ミンダルシアとクォンの両大陸に現れた謎物体なんだけどね。クリスタル戦争時代、つまり20年前につながってるんだ」
「へぇ・・・」
「学生っぽい格好とか、踊り子さんっぽい格好とか見かけない?」
言われて示された先に、小さなタルタルが数人で群れていた。
ナイトやシーフとかのAFを着ている人もいれば、紫色の魔法使いっぽい服?を着ている人もいる。
その中に、落ち着いたブラウンを基調とするブレザーを着たひとりがいた。
「ああ、シュルツ流軍学の」
「そう。制服がアーティファクトとして学生、つまり冒険者たちに与えられている」
「潰えた歴史が新たに、か」
「違うよ」
くすりと笑う。
「学者たちが迫害される原因を、彼ら自身が作り出しているとしたら?」
「・・・?」
「学者たちが、そんなにも戦う力があっただろうか」
それは、グリモアの力をもって、・・・違う。彼が言いたいのはそんなことじゃない。
シュルツ流軍学は、実践/実戦を踏まえた戦術。いくら三国間の関係が良好ではなく、獣人の脅威が侮れないとしても、そんなに経験できるものか。
「現代の冒険者たちが過去との行き来を繰り返すことで、歴史に干渉したと?」
「仮定だけどね」
くすくす笑う言葉に、私はその真意を読みとろうとした。行き来すること。それは、
この『世界』は繰り返しだ。同じことを繰り返している。変化しているように見えても、同じ道をなぞるだけ。
「ループ・・・」
「この世界は、繰り返しだもの」
笑う。
まったく、鬱陶しい。たったそれだけのことを気付かせるために、彼女は私に彼らをつけたのか。それに気づかなかった私も鬱陶しい。
「タブナジアでループを崩した?」
「分からない。だからマダムはあなたを確かめた」
「は・・・未練がましい人だ」
「もうひとつ」
私の肩に手を置き、クウが言う。
「あなたが自分を見失わないように。・・・あなたは誰?あなたは、"キーゼル"じゃないでしょう?」
「分からないよ。"キーゼル"にしようとしているのに、"キーゼル"になるな、なんて」
腰にはいた剣に手をかける。黒い刃の、細身の剣。鞄の中には青い刃の短剣。
私は赤なのに、後衛らしい装備を持ち歩いていない気がする。なんだか本当に赤なのか自信がなくなってきた。魔法も使ってないし。
大体、赤のAFが着れたからって赤だって言えないよね。グラ差し替えなんてのもあるんだし。
じゃあやっぱり、私は赤じゃないのかな。キーゼルは戦士だったし、やっぱり戦士なのかも。
赤と戦士。どちらも基本ジョブだ。最初から選べる。そして、『近接戦闘ができる』。
『近接戦闘ができる』のは、赤でもできる。
じゃあ、なんだ?やっぱり、

「キーゼルは、赤なのか?」

私の呟きに、クウは頷いた。
「魔法は、ただ学ぶだけじゃ上達しない。そして"彼女"はサポートではなくアタッカーとして動かなければならなかった。
学ぶ機会はあったかも知れない。でも、うまく使えないものに頼るほど"彼女"は自分を信用していなかったんだろうね」
「自分自身だって信用ならないんだからね」
「ああ、なるほどね」
魔法なんかに頼らなかった。頼れなかった。自分の意志で使えないんだもの。
だからみんな、"キーゼル"は戦士だと思った。"彼女"も訂正しなかった。どうせ赤魔道士として振る舞えないし、それなら戦士のほうが楽だもの。
もちろん、戦士にだって戦士としての振る舞い方がある。"彼女"はそれをどうにかしてみせた。あるいは、そんなことにかまっていられないほどの戦況だった。
戻ることをあきらめた"彼女"は、自ら戦場に立つことを選んだ。面倒くさがりで、できることなら部外者でありたがる"彼女"。
つまりそれは、戻ることをあきらめた私。
「そっくりに決まってるじゃん、本人なんだから」
「あはは」
げんなりと口にした私の肩を、クウはぽんぽんと軽く叩いた。まったく。
それにしても・・・私はやっぱり、他の来訪者とは違うみたいだ。うーん。参った。
まあとにかく、戻れなくならないように気を付けないとなぁ。
気付いてはいけないことに気付かないようにして、私は溜息をついた。
と。近付く足音にそちらを見ると、エラント装束の男性がこちらに歩いてくるのが見えた。
茶髪の、肩まで届く髪のヒューム。見覚えがある。五蛇将親衛隊のひとりだ。確かジョブは・・・何だっけ?よく見かけるんだけどなぁ。
彼は定位置に私がいるのを見て、わずかに眉をあげた。
「ガダラルはまだ戻っていない?」
私が頷いて応え、クウが「フレが救出に行ってる」と告げる。
親衛隊の人は何やらぶつぶつ呟き、小さな何かを取り出す。真紅のそれはリンクパールだ。
短い間にやりとりをし、再びパールを戻す。
「じゃあ、私たちはまた後で来るから。ソロ?」
「いや、パーティ。場所も分かっているから大丈夫」
「分かった。ありがとう」
それだけのやりとりのあと、ゆっくりとした足取りで去っていく。多分、モグハウスへ行くんだろう。
その姿が見えなくなり、砂混じりの風が吹き抜けていって、ようやく口を開く。
「嘘だろ」
「当然♪」
やれやれ・・・
とにかく、確かめることは確かめた。後は・・・そうだなぁ。デコイがほしいかな。
だったらいいのがいるな。あの勇者が。
「キーゼル?」
「ん?」
「楽しそうな顔をしてる」
クウの言葉に、私は頷いた。ふふ。なんだか楽しい。
パズルが完成していくのを眺めるような。模型を組み立てていくのを眺めるような。或いは、旋盤で金属が加工されていくのを眺めるような。
いや、旋盤でってのは普通の人には分かりづらいな・・・
これまでの遅れを取り返さないと。キーゼル・ランクスは前にいなければ。常に先陣を切って戦わないと。
ユーリの名を捨てたキーゼルは。
あの戦場でそうしてきた。
「Welcome to my party♪」
即興の音律を口ずさむ。楽しくなってきた。
でも、パーティはもう終わり。片付けの支度を始めないと。
「人形も片付けないとね。やれやれ、やらなきゃいけないことがたくさんだ」
「『扉』も開けに行かないとでしょ」
「『扉』・・・か」
それも探さないとね。
場所の見当は大体ついてるけど・・・さてさて。
一度死んだだけの価値はあったかな。
2009年12月02日(水) 02:30:41 Modified by feathery_snow




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