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Kiesel ◆nu123wJPbk 35番目本編

私の言葉に、彼女はとんとんと肩を叩く。
「・・・何だって?」
「もう一度言うよ。ファルズンを借りたい。これはサンドリア王国のエタンダール伯爵の依頼なんだ」
伯爵家の紋章が入ったベラムを差し出すと、ナジャ・サラヒムは真贋を確かめるようにじっくりと眺め、それから眉を上げた。
「こりゃ本物じゃないか・・・なんであんたがこんなもんを持っているんだい?」
「余計な勘繰りをするほど、サラヒム・センチネルは信用が置けないのか?」
試すように言うと、ナジャはぐっと唸る。そうそう、この商売は信用が大切。
念を押して、私は彼女の前の机に袋を置いた。
「レンタル料として、黄金貨を100枚。問題なくことが済めば、加えて200枚。計300枚。悪い商談じゃないと思うけど」
じゃらりと重い音と共に置かれた硬貨の袋を一瞥し、ナジャは私を睨む。
「悪かないさ、破格の依頼だよ」
「では、何が不満?」
「・・・破格すぎるんだ。サンドリアの伯爵様が、黄金貨300枚だって?ウチの会社が悪事に使われるんじゃないだろうね」
「悪事に使うんだったら、もっと口が堅くて勇気と度胸があって一騎当千の古兵(ふるつわもの)を使うんじゃない?」
「それもそうか」
ほぼ即答。うわぁ、信用ねぇなファルズン。
ともかく、ファルズンを借りる許可はおりた。とりあえず確認はしておこう。
「伯爵からの要望は、『戦闘になっても戦わせないこと。』『何かあったら危害のないように離脱させること。』つまり、一切危険なことがないように、って言われてる。
これは彼を信頼していないからじゃない。もしも彼に危害が加えられるようなことになれば伯爵家、ひいてはサンドリアの恥だと伯爵は考えているんだ」
それに、邪魔はされたくないからね。
ナジャはなおぶつぶつと口にしていたけれど、不意に決意したように顔を上げた。
「アブクーバ!あのヘタレ勇者を連れてきな!」
「はいっ!!」
それまで不安そうにナジャを見つめていたアブクーバが、裏返った声で応える。
胡散臭い依頼なのはこちらも充分承知している。『金ははずむから何も聞かずに黙って貸せ』なんて言われたら、普通は不審に思う。
でもこのエラジア大陸であのヘタレ以上にヘタレな奴はひとりくらいしか知らないし、彼が今回役に立つ自信はない。
というか、さすがに一般人は巻き込めない。
それはさておき、支度するならやっぱりモグハウスが無難かな。
「見つかったら、居留区の私のところへ来るように伝えてほしい。色々と説明したり、理解してほしいことがあるんだ」
「分かりました」
アブクーバが応える。ナジャ社長は苛立ちを隠さず、トゲトゲで肩を叩いていた。
私は苦笑して、傭兵派遣会社を後にすることにした。



「・・・それにしても、一体なんだって言うんだろうねぇ」
不機嫌を隠そうともしないナジャ・サラヒムの言葉に、アブクーバは肩をすくめる。
こういった時は、自分から先に言わないに限る。ヒステリックにトゲトゲが・・・もとい、叱責が飛ぶに決まっているからだ。
とは言うものの、ナジャの苛立ちは肩を叩く度に増していくようで、不穏な空気をぴりぴりと感じていた。
だからというわけではないが、サラヒム・センチネルの扉が開けられ妙な緊張が破られたことを、アブクーバは内心で喜んだ。
「サラヒム・センチネルのナジャ・サラヒムとはそなたか?」
金属鎧に身を包んだ長躯のエルヴァーンが、高らかな足音と共に入ってくる。
女性ながらナジャよりも頭ふたつは背が高いそのエルヴァーンに、苛立っていた彼女はぷっちんとキレた。
「だったら何だって言うんだい!?あたしはねぇ、訳の分からないことばっかりで頭にキてんだよ!!」
「それはそなたの理由だ。私には私の理由がある」
あくまで冷静に応えたエルヴァーンは、ついと小さな袋を取り出してナジャの前の机に置く。
「傭兵稼業というものは、『ぎぶあんどていく』と聞く。情報がほしい。ある人物を捜している」
指先だけで器用に袋を開け中身を見せた。アトルガン黄金貨が数十枚入っている。
それもまた、やはり破格の依頼だった。
「サンドリア・・・中の国から来た、金髪で青い瞳の小柄な青年だ。知らねば子供と見るやも知れん。恐らくは供を連れずにいる。服装は分からない。片手剣を持ち歩いているだろうと思われる」
すらすらと言い、それきりナジャの反応を待つかのように黙る。
ナジャとしては、目の前の金貨のことも忘れ、とにかく怒りが爆発しないようにするのが精一杯だった。
「たったそれだけの情報かい?残念だけど、あんたが捜しているようなエルヴァーンは見たことないねぇ。キキルンどものほうが知っているかもしれないよ」
「エルヴァーン?私はエルヴァーンなど捜していない」
さらりと言い返した。
「我が仕えしエタンダール伯を捜している。金髪で青い瞳の、少女のように小柄なヒュームだ。これはそなたらに渡すゆえ、情報が入り次第伝えてほしい。
あの方は他のヒュームよりも小柄ゆえ、すぐに分かると思っていたが、このアトルガン皇国は人が多すぎる。
伯爵の名はキーゼル・M・ソルニエ。或いは偽名としてキーゼル・ランクスを名乗っているかも知れないが」
その言葉に、今度こそアブクーバは息を呑んだ。
彼が管理しているその名簿。人事査定かと思い開いていたページ。

Kiesel Saulnier
(Velscion Rhancs)
C.E.863.6.7-

「ソルニエ・・・キーゼル?」
「ソルニエ家は由緒正しいエルヴァーンの血筋。しかし寛大なるミレイユ様が、身寄りなきキーゼル様をお護りになられている。
我らもまた、或いは身寄りなく、或いは道すら知らぬ身だった。なればこそ我らはソルニエに仕え、忠誠を誓う」
かつりと硬い音を立てて足を揃え、エルヴァーンはナジャを真っ直ぐに見据える。
ヘイゼルの瞳は決して揺らぐことなく。
「そなたらは違うのか?そなたらの信ずるもののために、そなたらは足を進めてはおらぬのか。我らは我らの信ずるもののために、心身を捧げてきた。
そなたらは聖皇とやらに忠誠を誓うと聞いている。それは誰かに押し付けられたものなのか?自らの信念もなく?」
静寂。
否、それを破って、硬い靴音が立つ。
「サンドリアの騎士は、己が信念に倒れることを至上とする。故に我らは信念が揺らぐことを懼れる。
ナジャ・サラヒム・ゾワン。そなたは、そなたの信ずるもののために心身を捧げることを至上とはせんのか」
腰にはいた剣に手をかけ、背を向けた。
硬い足音は重い金擦れと衣擦れを伴い、去っていく。





殴打する音が、鈍く響いた。







姿見で全身を映す。上質な素材で仕立てられたエラントウプランドは、私の体に合わせ動きやすく作られている。
これを仕立てた、もとい合成をしたカイは、使わなかった素材を丁寧に畳んで片付けていた。
いつも思うのだけど、どうしてサイズがぴったりなんだろう。どうやって測っているんだろうか。
目測でここまでぴったりになんて無理だろうし・・・やめよう。なんだか怖い想像をしてしまった。
「カイ、ありがとう」
「ううん、どういたしまして」
私の言葉ににっこり笑う。歳よりもいくらか幼い笑みだ。その笑みは、いつかどこかで見た気がする。誰だっけ?
それは確か、
「シオン。ぼく、ちょっと寄ってから帰るね」
「ああ、うん。遅くなる前に帰ってくるように」
私が言うと、カイは子供じゃないんだから、とすねて見せた。男なのに卑怯だ。
着替えようかと思ったけれど、せっかく仕立ててくれたのだから、せめてもう少し着ていよう。新調した服に着馴れるのは大切なことだ。
私はもう一度カイに礼を言い、裁縫ギルドから立ち去った。


小柄なミスラの背を見送り、そっと溜息をつく。
「何か用ですか?」
呟くような、しかしはっきりした言葉。
重い衣擦れの音とともに、深紅のバーミリオクロークを着た人物が、織機の陰から姿を見せた。
カイはその姿に一瞬驚いたように目を見開き、しかし眉を寄せる。
「誰ですか?あなたは・・・"彼女"でも、シオンでもない」
「そりゃあそうさ。俺はどちらでもない」
高くもなく低くもない声が言う。けれどその声は確かに聞き覚えがあり、そう、それは、
「まあ、確かに"彼女"・・・キーゼルとは言えるか。ただ、俺は記憶の残滓だけど」
すっとフードを払ったその顔は、確かにキーゼルのものだった。
髪を手櫛でなでつけ、どこからか取り出したガラコサージュを飾る。
「まったく。やっぱり、こっちじゃないとあまり維持できないな」
「・・・こっち?」
「"彼女"は今、エラジア・・・アトルガン皇国にいるよ。記憶の残滓に引っ張られたんじゃないかな。よくビシージに参加してたし」
言いながら襟元に手を差し入れ、首に下げた薄いプレートを取り出す。
薄緑のそれは見たことのないものだったが、よく似たものをカイも持っていた。
慌ててシアーチュニックの襟からそれを引っ張り出す。薄青と薄赤のプレートは、それぞれシグネットとサンクションのものだ。
「俺は20年前、水晶大戦の時代に"彼女"が残した記憶。生きてもいないし実在もしていないけど、システムの中に埋め込まれた"彼女"自身でもある。言うなれば、『戻れなかった"彼女"』かな」
「戻れなかった?」
再びどこからか、白銀色の美しい羽根を取り出す。
「クォン、ミンダルシアの各地に、禁断の口と呼ばれる遺物が現れている。これを経由した先に、あの水晶大戦の時代があるんだ」
「水晶大戦・・・!?」
それは、誰もが忘れたい、あるいは過去のものとしたい記憶のはずだった。
当時生まれたばかりだったカイも、幼い頃から大戦についての話は禁忌と教えられてきた。しかし・・・
「誰でも行けるわけじゃない。・・・俺も、あまり話したい話じゃない。それよりも」
面倒そうに溜息をつき、前髪をかきあげ額に手をやる。
「"彼女"がこっちに戻ったら、マダム・ソルニエからケータイを返してもらうように。SDにメッセ入れてるから」
「けー・・・え?」
「復唱。『ケータイを返してもらうように』」
「け、けーたいをかえしてもらうように」
「よろしい」
頷いたその姿は、確かに"彼女"によく似ているのに、しかしその気配や仕草はまったく違う。見た目はまだ幼さを残す少年なのに、長い時を経た老木のようですらある。
彼はは溜息混じりに何事かを呟き、それを払うようにコサージュに触れて懐かしむようにカイを見た。
「エティ。・・・ああ、カイ。俺のペンダントは持っているよな?」
「ペンダント?」
ふいとあげた手のその指先に、細い銀鎖のチェーンを通した銀柱のペンダントがあった。
小さな飾り石の存在に気付くと、カイは再び慌てて襟元に手を差し入れ引っ張り出す。
まったく同じペンダント。
「あ、あなたの・・・!?」
「そこらの雑貨屋で買った安物だよ。姉貴と揃いで買った」
そう言って髪をかきあげ露わになった耳に、小さなピアスがあった。花をかたどった銀色のピアスだ。
「そのペンダント。御守りになっただろ。・・・ああ、そうか。お前は"彼女"から隔離された存在か。じゃあ自分のことも知らないな」
言いながら中空に手を差し伸べ、見えない鍵盤を弾くように指を動かす。
しばらく何事かやっているのを訝しげに見ていたカイは、不意に痛みを感じた。
その痛みは左目の奥、そして左手を鈍く刺激する。
「あ・・・?」
「ん、悪い。あいつの感覚を痛みとして知覚しているか。・・・何やってんだ?あいつ」
目を細めて再度指を動かす。指先から淡い波紋が広がると、痛みはすっと収まった。
痛んだ目を右手で押さえるカイを見やり、左か、と呟く。
「青い目か。異物だな。こんなにはっきり影響が出ていて、感じるのが痛みか・・・まだ大丈夫だな」
「だ、大丈夫って・・・」
「何も感じなければ、ほぼシステムと一体化している。痛みを感じるなら、明確に分断されている。アカ分けてたからかな」
ぬこは同調していないみたいだな、と気だるげに呟く。
"彼女"と違う。姿ばかりは同じだが、その動作のひとつひとつは緩慢で、気だるそうに見えた。
けれどあの青い瞳は同じで、
「・・・同じ?」
"彼女"と?違う。似ているのは
「キーゼル・・・」
もうひとりの少年の名を口にした。
彼は同じ名を反芻し、面倒そうに前髪を乱暴にかきあげた。
「ありゃ俺と似たようなもんだよ。"キーゼル"の記憶と経験を記録したダミー。本物のキーゼルじゃない」
「ッ・・・」
『本物のキーゼルじゃない。』
その言葉は、深く胸に突き刺さった。
ミレイユ・ソルニエから彼の死を聞かされた時もショックだった。だが、この痛みは違う。どこか深いところ、存在を根底から揺るがすような・・・
「・・・うそだ」
抑揚のない声がこぼれる。
「俺が・・・俺は、・・・え?私・・・ぼくは」
「ああ、お前そっちと共鳴してんのか。あいつの存在、結構深くまで浸食してんだな」
ぱんっ。軽く手のひらを叩くと、カイの胸の痛みはすうっと引く。
一瞬。その瞳が青から変わった気がした。深く、深く、黒にも似た茶に。
「可哀想なのはどっちなんだろうな。偽物を本物と信じ込むことと、偽物だと知らないこと」
「・・・偽物だって、あの子は本物だ。存在する限り」
低く落とした声の反論。しかし彼はわずかに視線を動かし、カイを見る。
小柄で、カイの胸ほどまでもないのに、なぜか威圧を感じた。何かとてつもなく大きな・・・
「あの壊れかけを?・・・はっ、放っておいてもあいつは勝手に壊れるさ。記憶が知識や空想と混ざり、人格がぼろぼろ崩れ、最後には別物だ。
真にあいつを救いたいなら、お前か"凶鳥"のどちらかが食っちまうしかない。"彼女"は駄目だ。あれは最初から"キーゼル"を食っている」
食っている。つまりそれは、最初から、そう、"彼女"が来た時には既にキーゼルは

死んでいた。

「・・・分からない。じゃあ、あの子は何のために?」
「役割としては、"彼女"を守るために。或いは"キーゼル"にするために。本物のキーゼルは、いずれ"彼女"となるために生まれ、そして死んだ。
これは重大な誤差だ。"彼女"は"キーゼル"を、支度が整ってから食らわなければならなかった。・・・ああ、誤解しないでくれ。俺だって見通せた訳じゃない」
ひらひらと手を振る。
本当に、彼は"彼女"なのだろうか。違和感はある。だが少しふてくされたような、或いは拗ねたような表情は、確かに"彼女"の面影がある。
「俺は実体のない存在だよ。好き勝手にうろつけないし、ついこの間までは意識もなかった。"彼女"か『欠片』があるそばには行けるけど、それだって自由じゃない。
目覚めたのは、"彼女"がここに来たから。"彼女"自身、"彼女"の『欠片』・・・シオン、そしてカイ。存在に反応して目覚めるように"彼女"が仕掛けたんだよ」
役割が終われば消える。笑うように言った。
彼の『役割』。
「それにしても参ったな。タブナジアで死んだんだっけ?俺はあそこに行けないからな・・・誰かに見に行ってもらわないと。
ああ、その前に消えるか。伝言を遺さないとな。面倒なのは苦手なんだけど」
言いかけ、ふいと視線をあげた。その先にいるカイは、そっと彼の頭に手をやっている。
悲しげな表情を隠そうとしない相手に、わずかに浮かんだ動揺を押し込めなかった。
「・・・何?」
「どうして、」
低く落ちた声が言う。
「役割とか、そんなの・・・気にしなくていいのに。あの子も、あなたも、偽物だって?だからって、どうしてそうやって、自分をそんなふうに、モノ扱いできるの?」
「俺は"彼女"じゃないし、俺のオリジナルで"キーゼル・ランクス"である"彼女"は死んだ。この時代に生まれて生きたキーゼルは、"彼女"になる。
俺やあいつが意志も感情もあるように見えたって、それは所詮紛い物だ。本物にはなれない。俺たちは、"彼女"を『帰す』ために、"彼女"自身が作ったんだ」
「じゃあ、こうして触れているあなたは誰?こうやって、ぼくと話しているあなたは、」
「だからそれは、俺は姿形があるけど実際に生きてるわけじゃないって言ってるだろ?」
「生きてなくたって存在しているじゃないか!!」
激昂。不意にきつく抱き締める。
突然のことに抗議をしようとし、彼はカイが泣いていることに気付いた。
「本物とか偽物とか、そんなのどうでもいい。どうして、今目の前にいる人を否定しなきゃいけないの?」
「・・・・・・」
無言。
代わりに、
「ッ!」
腹部に一発。
不意打ちを受けたカイはくずおれる。は、と呼吸を吐くカイを見下ろし、もう一撃爪先で蹴りを入れた。
「・・・あっきれた。どうでもよくないから言ってるんだろ?理想論語ってんじゃねぇよ。
世の中に必要な人間はいるし、不要な人間もいる。本物じゃなきゃいけないから本物と偽物を区別してるんだろうが。
俺がお前になってやろうか?本質は同じだぜ。お前で補完もできるしな。役に立たないモノは要らない」
感情のない言葉が冷たく抉る。
ああ。気付いた。
彼もまた、"彼女"のために犠牲となることを厭わない。それは"彼女"から与えられた役目ではなく、
「・・・見ていられないから」
小さな、呟きにも似た言葉。
彼は、戻れなかった"彼女"自身だ。だからこそ、"彼女"を戻すために必死なのだ。
戻れなかった"彼女"は戦いの中に身を置き、あの水晶大戦に身を投じた。
"キーゼル・ランクス"として知られるようになり、いくつかの戦いを勝利に導き、或いは敗走したのだろう。
そして、後に"キーゼル・ソルニエ"と呼ばれるための子を為して、死んだ。
死ぬと分かっている相手を救えないのは、歯痒い。ましてや、助けられないと分かっているならなおのことだ。
だから彼は、必死なのだ。
"彼女"によって作られたと言った。それはつまり、"彼女"が生きていた時のこと。
"彼女"自身か"彼女"の『欠片』に反応すると言った。それはつまり、"彼女"の動向を関知できるということ。
消えゆく命をただ見守るしかないのは、とても辛い。少しでも抗えるなら救いはある。けれど彼は何もできず、その死を見届けたのだろう。
やはり、彼は"彼女"自身なのだ。
"彼女"のために
「『終わらせない』」
2009年12月02日(水) 02:58:31 Modified by feathery_snow




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