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Kiesel ◆nu123wJPbk 37番目本編

"Me":Manikin◎,Vasara,Hiruko●


 通された場所は広く、高かった。
 普段はパンクラティオンが行われ、賑わ・・・いや、一度迷い込んだ時に見た様子ではどう見ても死にコンテンツだったけどさ。
 とにかく、このコロセウムには、ほんのわずかに人の姿が散見できる程度だった。
 青魔道士を後ろに控え、白い衣装をまとい顔を薄いベールで覆った少女は、その立ち姿からはどのような表情を浮かべているかは分からない。
 ただラズファード丞相は、不甲斐ない将軍たちの醜態を、呆れたように見つめている。
 そして私は、フェンスデーゲンを鞘に収め、いかにもかったるそうにワーロックシャポーをかぶりなおした。
「丞相閣下。このような戯れに何の意味が?」
 抑揚のない声で問うと、彼は不機嫌を隠して頷く。
 けれど彼が何か言おうとする前に、少女がすっと手で制する。
「・・・丞相。面白き余興であった・・・」
 正体の知れない声。聖皇ナシュメラ2世は静かに手を戻す。
 私が戦った相手、炎蛇将を除いた五蛇将は、それぞれに疲弊し、土蛇将などは仰向けにばったりと倒れていた。
 1対5、いや4とはこちらに分が悪すぎる。けれど一騎当千の誉れ高い彼らにしては、動きが不自然で連携もうまくできていなかったように思えた。
 私の後ろに控えている『カイ』は厳かな表情のまま、どこをともなく見つめている。
 奇妙なことばかりの御前試合だ。拒否する理由もないから従ってはいるけれど。
 共有する感覚から、『向こう』で何か起きているのが感じられる。何かあったらただじゃおかないからな、と内心で舌打ちし、少女を見た。
 少女は無言で手を差し伸べ、次の瞬間、
「!」
 巨大なキマイラが、私の目の前に現れる。見上げるほどに大きなそれは、ネメアンライオン。
 彼女がこんな力を持っているはずがない。つまり、彼女はやはり
「討て」
 静かな言葉。それは私に向けられたのか、私へ向けたのか。
 思う間もなくX/Y/Zの三次元のグリッドを無意識下に刻む。将軍たちを一時的に空間から隔離。キマイラの咆哮が耳を打つ。
 所詮擬似媒介だ。どこまで保つかは分からないけど。
「『カイ』!」
 私の一言に、それまで身動きひとつしなかった彼はすぅっと手を挙げる。
 立体化させた三次元枠に力が乗り、キマイラを囲う檻を作る。生殺与奪どころか、存在することそのものの権利は私が左右する。
 力場は私が支配した。
 『なぜ来訪者の力を危険視するのか』。『なぜ来訪者の力を欲するのか』。『来訪者の力の本質とは何か』。
 来訪者は、『世界』の中の住人じゃない。あくまでも『世界』の外側の存在だ。
 やろうと思えばいくらでもチートすることができる。勿論それはすぐに対処されて、やらかした奴らはBANされる。
 だけど、『BANされる危険性と対処される状況を考慮しなければ』、何でもできる。
 多分、そう、最初はただのBOTか何かだったんだろう。それが、いつの間にか何かに変わり、何かは進化した。
 最初にできたのが何だったのか。それは分からないけれど、何度も『ループ』を繰り返すうちに、『それ』は『個』になった。
 だから『それ』は、他の『冒険者』と同じように"存在したがった"。
 そこで引き合いに出されるのは来訪者だ。来訪者は何らかの原因・・・まだ分からないけど・・・で、『世界』に引かれる。
 来訪者の条件とは、『FinalFantasy11をプレイしている/していた』『ネトゲ実況/(蟹)の自キャラスレを見た』こと。つまり何らかの形でFF11に関わりを持っていた人だ。
 そして彼らは、『ツール』の存在を知っている。魚釣り、ワープ、NM占有、合成。嘆かわしいことにMMOならどこにでもある。
 "彼ら"も"管理者"も、来訪者がそれらの知識を持っているとふんだ。一方はそれを利用するため、もう一方は利用を阻止するために動いた。
 だけど、存在を知っているからって使っているとは限らないし、そもそも理屈が分かっていなければ意味がない。現実に私たちは、理屈は知らなくても道具を使う。
 発端である業者たちも同じ目にあったんだろう。だけど役に立たず、何もできずに消されたか。
 まあ、そんなことはいい。重要なのは、見えない檻に捕らわれ動くことのかなわないキマイラと、わずかに身じろいだ聖皇のほうだ。
「いい趣味をなさっておられる、聖皇陛下。我がサンドリアにもいただきたいものだ」
 できるだけ平坦に私は言い、空いた手で空を断つ。ネメアンライオンの悲鳴にも似た咆哮が地に伏せる。
 子猫を飼い慣らすような仕草の私に、ラズファードがはっきりと、悔しそうな表情を浮かべた。
 いっそ愉快だ。でも、残念だ。
「楽しい余興をありがとう。でも、残念だ。私は嬉しくないし、それに」
「ふけいデアル!!」
 機械的な声が高らかに吼えた。
「!?」
 何事かとラズファードが周囲を見渡す。そして私の"陰"から現れた小柄なオートマトンを確かめ明確に表情を変えた。
「アヴゼン・・・!!」
「ふけいデアル!!じょうしょう、きさまダレニつかエテイルカ!!」
 仰々しく演技がかった仕草で言いながら、指を振り振り私の前へ進み出る。
 もう1体のオートマトン、メネジンは、何も言わずにアヴゼンの一歩後ろにいた。
 ラズファードは複雑に表情を変え何か言いたげに、けれど言葉にならずに唇を引き結ぶ。
 だから私は、彼の代わりに言った。
「アヴゼン、決まってるじゃないか。アトルガン皇国に住む民はみんな、ナシュメラ2世の大切な宝。
 そして我らがマウマウの友達だろ?」
「マウを呼んだ?」
 かわいらしい声と共に、赤い衣装の少女が姿を現す。
 不思議そうに、倒れている将軍たち、猫のように伏せたキマイラ、私と『カイ』、アヴゼンとメネジン、そして丞相と"聖皇"を順に見た。
「こんにちは、キーゼル。山猫の傭兵としてお会いしてから久しぶりね」
「やあマウ。駄目じゃないか、兄君が探しておられたよ」
 旧知のように言葉を交わす。アフマウはやはり不思議そうに首を傾げ、兄を見た。
「兄様?そちらの方は?」
 妹の言葉にラズファードは、傍らにいる『聖皇』を見た。ああ、あそこにいるのは紛れもなく実妹。

 では、『こいつ』は?

 今この瞬間まで信じていたものが瓦解した戦慄。
 『聖皇』然とした『それ』はぴくりとも動かない。いや、ベールの奥で薄く笑う気配がした。
「・・・つまり、ナシュメラははじめからここにいなかったのか?」
 呆然とした独白に、白銀の輝きが応えた。
 一飛びに跳んだ将軍が、その得物を『それ』に向けて振るう。『それ』はおよそ少女らしからぬ動きで白刃をかわし、笑った。
「は、は、は!とんだお転婆娘だな!"海鳥"に聞いたのに忘れていたよ!」
 哄笑を裂いて白刃が踊り、『それ』は軽業のこなしであしらう。やれやれ、彼は随分怒っているらしい。
「炎蛇将、丞相に怪我させないでよー!?」
「うるせぇ!!」
 曲がりなりにも一応尊敬と羨望の的であるはずの五蛇将に名を連ね、少なくとも武人たるべき資質を備えているはずの言葉とは到底思えない。
 さすがツンバカ将軍。いや、ヤンキー+バカでヤンバカか?
「さすが、アトルガンNPC脳筋筆頭・・・」
 ブレイズスパイクを唱えてもいないのに、燃え上がる闘志的な炎に彼が包まれるのを幻視した。
 と。私の服をつんつんと引っ張る。
「マウのアヴゼンとメネジンを預かってくれてありがとう。キーゼル、あの人を助けてあげて?」
 アフマウが困ったように言う。
 困った。いつから私は、身も心も男になったんだろう。そんな顔をされたら、誰だってNOと言えないと言うかむしろ言った奴はぶっ飛ばすくらいの勢いだ。
 擬似媒介へ指示を出し、私も炎蛇将の加勢に飛ぶ。『カイ』は丞相を護るために詠唱を始めた。
 ラズファードは、心ここにあらずと妹を見つめていた。アヴゼンとメネジンが彼女を護る騎士のように控えている。
 そう、彼は騙されていて、だけどその違和感に気付けなかった。
 だからこそ、私は許せなかった。
 差し出した手に剣を掴み、『それ』を討たんと狙いを付ける。炎蛇将はよいように遊ばれているようだった。
「らせつwじゃ無理かな!」
 後転でアイボリシックルの一撃を避けた『それ』の嗤いに、私はその軌跡をなぞるように動いてシックルを足場に跳んだ。
 驚愕とも怒りとも取れる悲鳴を背に詠唱。限界を超えたファストキャストに支えられた魔法は即時に発動した。
 捕縛に適した魔法。すなわちバインドは絶対的な効果を顕し、同時にX/Y/Zの空間軸にも作用する。弱体魔法のエキスパートってレベルじゃないな。こんな力は、チートすぎる。
 見えない檻が幾重にも重なり、逃げ場を作ることを許さない。
 『聖皇』の姿が一瞬ノイズに変わり、しかし再び同じ姿を取る。変われないのだ。
 ひぅ、と風鳴りが耳を打つ。真紅が視界を遮り、刃閃の煌めきに私は目を細めた。
 炎蛇将ガダラルの一閃は、純白の少女の姿を断った。
「・・・チッ」
 舌打ち。少女の姿は幻となって消え、後には奇妙な配色のオートマトンが残る。
 最前『聖皇』を演じた操り人形は、むしろ幻影から解き放たれたようにけたけたと笑う。
「まさか、落ちやすい将軍を意図的に捕虜にして逃しているとは。ましてやナシュメラすら」
「何だと!?」
「はいはい」
 炎蛇将の激昂を抑え、私は拘束をより強める。荷結びがほどけないように紐を締めるのと同じ感覚で、ゆっくりと硬く、固く。
 人形のために操り主は現れるだろうか。からくり士はオートマトンに愛着を持つものだと聞くけど。
 果たして主は現れず、人形は糸が切れたようにくずおれた。
 否。
 明かりを落としたコロセウムの薄闇に小さな影が滲み、視認できないストリングがちらりと見えた。この距離では、術式を組むには遅すぎる。
「!」
 とっさに出した手に痛みが走った。
 あ、痛い。と思い、その痛みが確実に擦り傷程度のものじゃないと気付いて慌てて考えを振り払う。
 だってこの痛み方は確実に手を貫つ
「キーゼル!」
 誰が呼ぶ声かは分からないけれど、私は痛くないほうの手・・・幸いそれは、利き手の左手だった・・・を振って見せた。
 グローブの中に感じる、汗とは違うぬるりとしたものをどうにかしたい。けれど今そんなことをしている余裕は当然ない。
 代わりにストリングに魔力を乗せる。エン系の応用だ。
 青白い光がストリングを走り、ある一点へ向かって消えた。早口の詠唱がわずかに空気を振るわす。
「皇国に仇為す暴徒め・・・!」
 低い唸り声に私は、まるで屑のように落ちてきた『それ』を確かめる必要を失った。
 瞬間的に高温で燃えた『それ』は、炭化した皮膚の間だから生々しい肉色を見せている。違う。これも媒介だ。奴らはこんな死に方をしない筈だ。
 けれど周囲には、能力者の気配は感じられなかった。
 振り返ると、回復した五蛇将たちが各々に反応を見せていた。
 天蛇将はアフマウの視界を遮り、土蛇将は拳を握り締め周囲を見回し、風蛇将は目を閉じて気配を窺い、水蛇将が彼らの負った傷を治癒魔法で癒やす。
 馬鹿共が、と舌打ちし、炎蛇将は構えていた得物をおろした。
「今更目が覚めたか」
 それでもどこか案じるような色を含んだ独白をこぼし、自らが仕留めた『それ』を忌々しげに見やる。
 爪先で軽く蹴り、ぴくりともしないことを確かめると、私へ言う。
「貴様の"犬"とやらが言っていたのはこれか?」
「ん?」
「世界の因果を乱す、この世ならざるモノだ」
 はぁ、まあそんな感じではあるけども。何しろ、理をねじ曲げるくらいはやらかせる。
 私はうーん、と唸りながら、しゃんと装束の飾りを鳴らして『それ』に近付く。力の残滓はない。逃がしただろうか。
「少なくとも、こいつは聖皇を騙り丞相たちを操ろうとしていた」
「貴様らが招いたのか?」
「・・・うん。そういうことに、なる」
「何故だ」
「私は、家に帰りたい。でも帰れない。だから、帰り道を探してる」
 それを聞いて、ガダラルははっきりと顔をしかめた。
「いつも俺のそばをうろちょろしているから罰が当たったんだろう」
「だったら他に、もっといつもいる人がいるじゃんか」
 ビシージ楽しいです。
 瞬きの間にシャジュブルに着替え、きゅっとワーロックシャポーを直す。
 多分結界は崩れた。だけど、まだ分からない。あとで調べるか。
「とにかく、今は丞相とマウを護らないと。まだ完全に終わったとは限らないし。それに、五蛇将全員が離れるなんて問題だよ」
「・・・ああ。蛮族共がこの好機に攻め込んでこなかっただけでもよしとしてやろう」
 本当に。
 いや、もしかしたら、蛮族軍は気付いていなかったのかも知れない。まあ、真相は分からないけど。

 どさり。

 何かが落ちた音がした。
 振り返ると男が倒れていて、・・・ああ、忘れてた。
 カイやミガイフォングと同じフェイスだったから擬似媒介にしていたファルズンが、力尽きていた。
 一応それなりに実力はあるはずなんだけど度胸が追いつかないこのヘタレ勇者は、ナジャ社長から派遣され、私とふたりっきりになった直後に即ヘタレた。
 一体社長やアブクーバから何を吹き込まれたのか、ファルズンは出会い頭からこの世の終わりのスイッチを入れに来たようなものすごく悲愴な表情で、役立たずだからクビにされるんだいや死んで役に立てと言うんだと泣き出し、見かねたクウが昏睡薬を混入させたお茶で眠らせた。
 人選間違えたかもね。と呟いたのは聞かなかったことにする。
 まあ結局のところファルズンは何もする必要はなく、勿論死ぬ必要もなかった。巻き添えを食らっていたかも知れないけど。
「キーゼル。彼は私が」
 薄闇から音もなく現れたクウが、手早くファルズンを抱え、やはり音もなく姿を消す。うぅん、後で社長に怒られなきゃいいけど。
 既に気配の残らない場所から視線を外し、力なく膝を突いているラズファード丞相を見た。こちらにはリクが付いている。
 足早にアフマウが彼へ近寄り、何事か話しかけても、彼は何の反応も示さない。ショックの反動だろうか。
 仕方ない。
「よっと」
「きゃっ」
 できるだけ足音を忍んで、アフマウを後ろから、本当に触れるか触れないかくらいの距離を取って抱きしめる。名前も知らない、嗅いだことのない香の匂いがした。
「ねぇ、マウ。ラズファード丞相は、あろうことかきみを見間違えたよ。なんてひどい人だろう」
「・・・!」
 ぴくりと反応した。
 私はそれに気付かないふりで、わざとらしく大げさに続ける。
「きっと、丞相はきみのことを見ていないんだ。彼の心にあるのは、聖皇ナシュメラ2世その人だけ」
「何を・・・」
「もしかしたら、彼には何もないのかも。あの戦いで傷を負ってから、彼は何もかもを捨てたのかも」
「・・・違っ、」
「ねぇ、マウ?だって彼は、きみの声が聞こえない」
「・・・聞くな、ナシュメラ!!」
 断片的な言葉がつながった。
 炎のような感情をその瞳に映し、ラズファードは私を真っ直ぐに見据える。
「妹として接することも許されない立場なんだ!それを・・・それが・・・貴様に何が分かる!!」
 うほ、いいシスコン・・・じゃなくて。
「それならなぜ誤認した?仮にも、あなたの妹を。あなたは結局、皇国のことしか考えていない。あなたの妹、ナシュメラでなく。あなたはナシュメラを、人身御供に据えるつもりか?」
「違う。選ばれた以上は、ナシュメラを・・・」
 言いかけ、それから一瞬の間をおいてぽかんとする。
 そりゃそうだろう。糾弾者である私と彼の妹が、くすくす笑っているのだから。
「・・・な、貴様・・・ナシュメラ?」
 名を口にしたその時に、私たちは耐えられなくて同時に声をあげて笑う。
 私が出した手のひらにぱちりと軽く己の手を当て、ナシュメラは嬉しそうに言った。
「やったわ、キーゼル!見た?兄様のあのお顔!」
「・・・まったく。なんて素敵ないたずらなんだろう」
 応えて、エスコートするように手を差し出してラズファードのほうへ向ける。
「アフマウ。・・・ナシュメラ。きみから話してあげて。私よりも、ずっとよく分かる」
「ええ、キーゼル。後であなたからもお願いします。少し落ち着いたら、呼びに行かせるわ」
「うん。分かった」
 絶句するラズファードの手を取り、ナシュメラは早足に出て行く。
 いつの間にか、コロセウムには私と、そして、ザザーグしかいなかった。
「ユーリ」
 名を呼んだ。
「・・・そうか。お前さん、ユーリか・・・『帰って』きたのか」
 溜息をつくように言って、ザザーグもまた、コロセウムを出て行った。
 グロウベルグの雨が懐かしい。
 なぜかその時、思った。
2011年08月24日(水) 03:30:36 Modified by feathery_snow




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