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Kiesel ◆nu123wJPbk 38番目本編

 ナシュメラの言葉に、ラズファードは眉間の皺を深くした。
 あのキーゼルという、山猫の傭兵でもあるサンドリアの騎士は、彼女に一計を与えていたのだそうだ。
 曰く、「あまり心配しすぎている相手には、逆に突き放すほうが荒療治になる」と。
 だからこそキーゼルはラズファードを弾劾するようなことを言い、彼はまんまとその策にはまってしまった。
 嬉しそうに笑うナシュメラにラズファードは何も言わず、コーヒーを口に運ぶ。
 ナシュメラは冷たいアイランをちびちびと飲みながら、兄の不意をつけたことを嬉しそうに2体のオートマトンに自慢する。
 アヴゼンと次の計画を早速練り始めた妹とは別に、メネジンがふいと一枚の折り畳んだ紙をラズファードへ差し出す。無言で受け取り開くと、いささか達筆とは言い難い文字が記されていた。
 目だけで文字をなぞり、愁眉を開く。
「・・・そんなことは、他人に言われなくても分かっている」
 溜息をつき、カップの中身を干した。
「ナシュメラ、勉強の予定があるだろう。あまりふざけているな」
 何をしているのかくるくると回るアヴゼンに拍手する妹へ言うと席を立った。



"Me":Manikin◎,Vasara,Hiruko●


「ッ!!」
 不意打ちに身を翻す。殺意と敵意の固まりは、ひどく重い音と共に叩きつけられた。
 ナシラ装束のナジャ・サラヒムは、恐ろしいことに引きつった笑みを浮かべている。
 アブクーバはさっさと逃げ出し、柱の影からこちらを窺っていた。手と口の仕草で『早く殴られて謝れ』と訴えているのがまたむかつく。
「お早いお帰りだねぇ、キーゼル・・・いや、伯爵とお呼びしましょうかね?」
 叩きつけたトゲトゲをそのままに、ナジャ社長が震える声で言う。もちろん、怒りに震えて。
 何がバレたのか、心当たりがありすぎて分からない。ただ分かるのは、ナジャ社長はとにかく怒っている。
「キーゼルッ!!あんた一体何をやらかしたんだい!?あんたの噂があっちこっちで流れてるよ!!」
「た、たとえば?」
「あんたが聖皇陛下のお命を救った褒美に五蛇将に抜擢されるとか、逆に聖皇陛下のお命を狙ったとかさ!」
 ないないwwwwww
 軽く笑い飛ばそうとしたけど、ここは敢えて真面目に受け取る。
 その話がコロセウムでの一件を指すなら、一体誰がことの顛末を吹聴して回ったのか。
 ミリかルガジーンが口を滑らせた可能性はあるけど、それでも聖皇の命云々については言わないはずだ。
 であるなら、不滅隊の誰か?あの場所にいた不滅隊って誰だろう。そもそも不滅隊はそんなに口が軽いんだろうか。
 考え、ふと視線に気付く。いつの間にか、最前までなかった青魔道士の姿があった。
 男女一対の青魔道士は、一方は呆れを、もう一方は苦笑をメガスケフィエに隠したその顔に浮かべている。
 不滅隊?どうしてここに。
 私の一瞬の隙を突いた一撃をひらりと避けてみせると、男のほうが嬉しそうに笑う。
 まったく・・。
「ナジャ・サラヒム、控えよ」
 女が言う。その声にようやく来客を知ったナジャが、慌ててトゲトゲをおろして姿勢を正す。
 男は封筒を手に、彼女・・・アミナフへ頷いてみせた。アミナフはわずかに息を吐き、
「ナジャ。聖皇ナシュメラ様より、お言葉を賜っている」
 そう言って、何やら書き付けた書類と共に、サラヒム・センチネル及び私への感謝を伝えた。
 それはよく意味を知ればあのコロセウムでの一件についてなのだけど、知らない人には日頃傭兵としての働きについてに聞こえただろう。
 そして白銀貨200枚という破格の褒美に、ナジャ社長は絶句した。
 アミナフの言葉を聞いていたリシュフィーが、ふと私へ視線を向ける。
「それから、キーゼル。これを」
 封筒を私に手渡す。双蛇の印で封がされたそれは、・・・間違いない。
 表書きも裏書きもないそれを眺めていると、リシュフィーがご丁寧にもペーパーナイフを差し出してくれて、私は封筒を開けてみた。
 丁寧だけど少女らしい文字で記された文面は私への揺るがない信頼に満ち、彼女の未熟さを表している。そう、だからこそ私たちは彼女を守りたくなってしまう。
 人民街区にて待ち合わせる旨を記してあるが、多分怖い兄上に叱られて、しばらく出てこられないだろうな。
「ありがとう、リシュフィー。・・・我がソルニエの、聖皇への忠誠を伝えて」
「伝えなくても、きっと分かっているよ」
「そうだね」
 何せビシージに入り浸ってるしね。マウのために。
「それでは、」
 失礼する、とアミナフが言いかけたその時、扉が開いて何かが滑り込んできた。
 そう・・・確かに滑り込んできた。その時人生初めて、私はスライディング土下座というものをリアルに目の当たりにした。
「すみませんっ!!」
 悲鳴にも似た謝罪と共にスライディング土下座で現れた『それ』は、金髪のエルヴァーンだった。
 いきなりのことに、リシュフィーがそっと私に耳打ちする。
「・・・彼は?」
「あー・・・」
 そういやすっかり忘れてたわ。ファルズン。
 クウの話によれば、あのあと、・・・あれ?あのあとって任せたっきりどうなったんだっけ?
 どっかに棄てられてたんじゃなければいいけど。んで、泣きながら帰って来たんじゃなければいいけど。うん。
「いやいや、かれはねぇ、うん。サラヒム・センチネルのエースです。うん」
 ちょっとばかり感情がこもっていなかったり、棒読みだったりなんかしてませんよ?
 そんなスライディング土下座が似合うファルズンは、私たちのことなどもう眼中にないナジャ社長にトゲトゲで、言葉にできない目に遭わされていた。
「あんた、今までどこをほっつき歩いてたんだい!?キーゼルはさっさと帰って来てるじゃないか!!」
「すっ、すみまs」
「ほんっとにどうしようもないグズだねぇ!!役立たずなら役立たずらしくわきまえな!!」
「ごっ、ごめんn」
「くぁwせdrftgyふじこlp;@!!」
 ああ・・・よい子とよい大人には見せられない光景が・・・
 まあでもほら、こんな言葉もある。
 『我々の業界では、それはご褒美です。』
 但し、ファルズンにそれがあてはまるかは分からないけど。
 タイミングよく現れてナジャ社長の気を逸らしてくれたファルズンの犠牲に一応の感謝をしつつ、私と不滅隊のふたりはこっそりと部屋を出る。
 アブクーバが何か言っていた気もするけど気にしない。
 追われる前に急いで皇宮白門まで走り、まだナジャの追っ手がないことを確認すると、
「・・・あはははははっ!」
 誰からともなく笑い出す。私とリシュフィーはもちろん、普段傭兵に笑顔を見せないアミナフさえも。
 あの不滅隊が大笑いしているのだから、道行く人々は何事かとこちらへ視線を向けてくる。けれど私たちは気にもせず、気が済むまでひとしきり笑った。
 そうしてから、アミナフはいつもの表情になり、
「それでは、私たちはこれで」
 短く言って、リシュフィーを伴いどこかへ去っていく。
 私も、軽く身を翻して白門を後にした。


 砂色の国。
 私が未練を遺すほどの記憶が刻まれて。
 それはプレイヤーとしての私なんだろうか。
 それとも、冒険者としての私?
 彼らと肩を並べて戦った私。



「ねえ、リシュフィー?」
「なに?」
「・・・あなた、ここしばらく、違和感を感じなかったかしら」
「違和感?そう言えば、丞相はどうしてあんなことを・・・?」
「分からないの。私、言伝を言い付けられるまで何をしていたのか」
「分からないって、自分のことなのに?」
「五蛇将もそうだと聞いたわ。もちろん、丞相も」
「でも、・・・そんなご様子は」
「そう、『国内』にいなかった人だけが何ともないのよ」
「じゃあ、・・・?でも、彼は」
「分からない?」



「私たちは、『彼』を殺すために仕向けられたのよ」



"Me":Manikin◎,Vasara,Hiruko●


 人民街区を、砂色の風が渡る。
 シャポーを押さえて目を細めると、長躯がこちらに向かってくるのを捉えた。
「急な呼び出しで申し訳ない」
「ううん、私も用があったから」
 丁寧な敬礼にサンドリア式のそれで返し、踵を返した彼の後を追う。
 前回の皇都防衛戦から、およそ1日。そろそろ他の蛮族共が攻め入ろうとする頃だろうか。
 ワジャームへ抜ける門のそばに、大柄なガルカと小柄なヒュームが立つ。土蛇将ザザーグと風蛇将ナジュリスだ。
 ナジュリスはアトルガン式の、ザザーグはバストゥーク式の礼をし、私もサンドリアの礼で返す。
「水蛇将と炎蛇将は?」
「城壁の外へ調べに行ってるぜ。すぐに戻ってくるだろ」
 天蛇将ルガジーンへ言い、ザザーグは私を見た。
「久しぶりの世界はどうだ?ユーリ」
 その言葉に、シャポーを直して首を振る。
「変わらない。何も」
 世界は、同じループを繰り返している。繰り返し続く世界。終わることのない。
 ザザーグは私の言葉に頷き、何か言おうと口を開く。しかし、幾分か小柄な姿が見えて閉ざした。
「見つけてきたよー」
 大きく手を振り、水蛇将ミリ・アリアポーが言った。その隣で炎蛇将ガダラルが苦い顔をしている。間違いなく、見つけたのだろう。
「いくつ見つけた?」
「えっと、5つだよ。言われたとおりの場所にあったんだ」
 言いながら地図を開く。それは皇都アルザビのもので、付けられた印はちょうど5。それも、ある一定の間隔で付けられていた。
 正五角形。また、内接して五芒星を描き、相克と相生を表す図形だ。
 五蛇将になぞらえたわけではないだろうけれど、彼らは複雑な表情を浮かべていた。
「相克と相生、か」
 私と同じことを思ったのか、ぽつりとガダラルが言う。
 本来彼は、ちょっと粗暴ではあるけど理知に長けている。それに、魔法についても知識と経験がある。
 だから、この形の持つ魔術的意味に思い当たったのだろう。
「五は、東方に縁ある数字だね。五行、五方、五獣・・・でもこれは、東方によるものじゃない」
「でも、東方で用いられるものなのでしょう?」
「つまりこれは、正五角形と見るよりも星形と見るべきなのだろうな」
 そして、その星形には、『星』という以上の意味はない。
 陰陽思想のあるリアルならともかく、ヴァナ・ディールでは8属性が存在する。五行だけでは完全とは言えない。だからヴァナ・ディールの存在なら、まずは8をイメージするはずだ。
 勿論、トゥー・リアの五獣という例はあるけれど。
 "凶鳥"の記憶をなぞり、思い当たる。彼に特に目をかけている相手。名前は分からないけれど、確か"星"と呼んでいた。
「・・・見つけたものって?」
「あ、うん。これだよ」
 ミリが取り出したのは、5つの小さな金属片だった。何か鋭利なもので傷つけられている。
 ルガジーンがまずそれを受け取り、しばらく眺めてから私に渡す。
 ええと。・・・こうかな。いや、こうか?
 くるくると向きを変えて、ようやくそれが、文字であることに気付く。
「『まっている』・・・?」
 "凶鳥"ならともかく、私を?いや、もしかしたら彼がここに来ると予想していたのかも知れない。
 と、それまで沈黙していたガダラルが、ふいと金属片に触れた。
「ッ!」
 ばちりと紫雷が散る。
 それと共に、蒼白の光が金属片からこぼれ、いくつかの文字を形取った。
 私には読めない文字をガダラルは読み取り、わずかに眉をひそめた。ミリもまた、同じように複雑な表情を浮かべる。
「どうし」
 た、と言いかけたその直前、鎌と棍が私を狙い振られた。
 炎蛇将の鎌を天蛇将が剣で受け、水蛇将の棍を土蛇将が拳で受ける。
 一触即発の殺意は、しかし次の瞬間に霧散した。
「あ、あれ?ボク・・・」
 ミリがうろたえ、ガダラルは無言で拳を腿に打ちつける。最後の罠にかかったことを悟って。
 息を呑んで立ち尽くしていたナジュリスが、わずかに震える声で呟く。
「・・・ここまでしてまで命を狙われるなんて・・・」
 私を案じた言葉じゃなくて、一方的な不審だった。
 冗談じゃない。私は誰かに指示するのも苦手だけど、誰かの言いなりになるのは死ぬほど嫌いなんだ。
「相変わらずお前さんは敵を作ってんだな」
 ミリに得物を収めさせたザザーグが私に笑う。
「相変わらず?」
「おうよ。こいつぁな、20年前のクリスタル戦争の頃からずーっと、知らず知らずに敵を作って回ってんだ。てめえの事情も言わねえで、てめえの判断で動き回るからな」
 問うたルガジーンに言いながらわしわしと私の頭をなでくりまわす。 背 が 縮 む !
 けれどザザーグはまったく意に介さず、
「やたら強いくせにどこの国にも所属しねえで、どこの国からもスパイの嫌疑をかけられてな。おかげでどっかの国で落ち着くこともできなかったほどだ。おまけにバストゥークのヒュームどもからは、ガルカを煽動して反乱を起こさせようとしているとまで疑われちまった」
「お役人と話してる暇があったら、話が分かる相手のほうがましだっただけだよ」
 それは、20年前の"私"の記憶。グロウベルグ、ブンカール浦、カルゴナルゴ砦を走り回っていた頃の。
 当時はまだアトルガン皇国とアルタナ四国の民間レベルでの直接的な交流は行われず、ましてあの戦乱のさなかに"私"が皇国へ渡ったことはないだろうに、何故か記憶の欠片はここで見つけた。
 あの当時と関わりがあるのはザザーグくらいだけど、それが何か関係するんだろうか。
 いや。
 20年前"私"が残したのは、次のループで訪れる"私"へのものだ。だから、必ずしも20年前にこだわる必要はない。
 どれだけ"私"に関係があるかだけが問題なんだ。
「ザザーグ。確か、あの時"私"は話したよな。『世界』の異物の話を」
「お?おう、何だったか・・・外の世界がどうとか言っていたな、そういや」
「そう。世界に内包された『世界』。私たちにとって劇の中の世界は仮想でしかないが、劇の中の人物たちにとって、それは紛れもない『現実』だ」
「おう、そいつだ。ヴォーシェルのやつがやたら気に入ってな、よくよく考え込んでいたぜ」
 お前さんは気にもしなかったがな、と笑う。
 ルガジーンは眉間にしわを寄せて言葉の意味を考えていたが、不意にガダラルが言った。
「この世界も、架空の世界だと言うつもりか?それなら、俺たちの自由意志はどうなる?」
「分からない。あくまでも仮定だから。だけど、仮にそうだとしても、じゃあ劇中の世界が彼らにとっても架空になりえるか?いいや、ならない。
 たとえこの世界が真実架空の世界であったとしても、この世界の存在にとっては『現実』なんだ。造られた意志でも、造られた世界の中では、間違いなく真実なんだよ」
 だって、私にとってこの『世界』は、ゲームの中の世界。
 彼らはNPCで、決められた台詞をただ繰り返すだけの存在。いや、時には共に戦うこともあるけれど。
 決められたタイミングで繰り返し起こる皇都防衛戦。
 それは、ファイナルファンタジーXIというゲームが終わっても、このヴァナ・ディールのエラジア大陸では、終わることなく続いている。
 そして彼らは、終わることのない戦いを繰り返し続ける。
 消える。終わる。なくなる。それらはすべて、『物語を終わらせるプレイヤー』の視点だ。
 ゲームが終わっても、このヴァナ・ディールは存在し続ける。ただ、『プレイヤー』は介入することができないだけで。
 であるなら、この世界もまた、『現実』に存在する。存在し続ける存在を否定する要因はない。
「物語の中で、世界は破滅した、存在しなくなった、そう明言されているわけでなければ、確かにそこに、『世界』は存在し続ける。
 そして、たとえ『世界の外』が存在しなくなっても、何ら『世界』に影響はない。『世界』に影響するのは、『世界の外』からの干渉だけだ。『世界の外』の存在そのものは直接影響しうるものじゃない」
「ううむ・・・」
 私の言葉にルガジーンが呻いた。理解できなかったらしい。
 けれど彼は彼なりに解釈して、ひとつの結論に辿り着く。
「つまり・・・きみは、その・・・『世界の外』の存在に、狙われているのか?そしてそれらは、この世界に干渉しようとしている」
「そう。私をどうしたいのかは分からないけど、少なくとも優しくは扱ってくれないだろうね」
「親子揃って災難だな」
 ザザーグが言った。
 親子?それは、・・・ええと。誰と誰のことだろう。マダム・ソルニエ?それとも?
 と、それまで不思議そうな表情で話を聞いていたナジュリスが首を傾げた。
「あなた方は、古くからのご友人同士なのですね。でも、シオン・・・いえ、キーゼルさんは、それほどのお歳には見えないわ」
「ヒュームってのは、歳を取らないように見えるもんさ」
 からからとザザーグが笑い、けれどその表情は複雑だった。
 "私"が、他人と一緒にいなかった理由。それに、あまり一箇所に留まらなかった理由。それは、『変化しない』ことに他ならない。
 来訪者はこの世界の存在でありながら世界の外の存在であり、それでいてシステムの中から外れられない。保有する能力はともかく。
 ヴァナ・ディールで何年経とうとも、キャラが歳を取り成長することはない。この世界の存在により怪我を負っても直接死に至らず、一時的な戦闘不能に陥るだけだ。
 ザザーグは、恐らくその事実を、なぜそうなのかは分からなくても知っている。
 あ、いや、もしかしてしゃべっちゃったのかな。マダム・ソルニエもあの当時からの戦友だし、何となれば脅迫まがいの何かをされてもおかしくない。
 それに、
「・・・・・・?」
 それに、なに?
 今、誰かの名前がよぎった。
「とにかく・・・これが最後の結界。恐らく、蛮族どもには影響はなかったはずだ。これは皇都の中にいた人にだけ影響を与えたはず」
「つまり・・・俺か」
 ガダラルが唸る。
 彼はあの皇都防衛戦で捕虜となり、一時的に皇都アルザビを離れていた。
 そして、もうひとりも。
「彼女とガダラルは要だった。本当ならもうひとり、できればナジュリスあたりも取っておきたかったんだけど、あまり将軍を減らしすぎると肝心な封魔堂が危ない。
 防衛戦終了直後に解放したんじゃこっちも危ないしね。でもまさか、彼女が人民街区に忍び込んでいたなんて」
 その言葉に、誰もが複雑な表情を浮かべた。誰だって、国のトップが激戦地にのこのこ顔を出すと思うはずがない。
 それをやるのがこの国のトップなわけだけど。
「なんだかシャクだなぁ。結局、ボクたちはリヨウサレタってことでしょ?」
ぷぅっと頬を膨らませ、ミリが言った。
 利用された。まさしくそうだ。勝手な理由で、彼らは利用された。
 そんなことを言ったら私もだけど・・・
 結局のところ、この世界は現実でもあり仮想現実でもあり、その線引きは限りなく難しい。
「大丈夫。問題はない」
 言って、私は腰をなでた。
「すぐに忘れる。私のことも、世界のことも」
2011年08月24日(水) 03:44:39 Modified by feathery_snow




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