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Loufas ◆TTnPTs4wAM 7スレ目本編

3 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/05/23(火) 02:05:25.57 ID:qoaYuWFb
埋めきってしまったので、次スレ立てちゃいました…

──────────────────────────────────
(ex.19)
ちょっと驚いたけど、私を頼りにしようとしてる彼というのもなんだか新鮮だ。
財布からお金を取り出して渡すと、彼は本当に申し訳なさそうに頭を下げた。

「すまない…もう二度とこんなことはないから」
「あら、お金くらいいくらでも貸してあげるわ」
「ふぇ?」
「そのかわり、浮気したらこれでチ○ポ切り落とすから、覚悟してね?」
背中のルーンチョッパーを指差して、私の今の気持ちをそのまま表した満面の笑顔で笑った。
分かってる。この人は浮気ははおろか、もう私を裏切るようなことはしないと思う。
ルーファスはなんだか青い顔をしている。冗談の通じない人ねぇ…

結局、私たちは今まで以上に一緒にいるようになった。
それからまた1年後に、「全て話させてくれ」という彼の言葉に誘われてサンドリアに向かい、ある事件に関わる事になるのだけれど、それはまた別のお話。

286 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/05/28(日) 18:05:46.92 ID:O4AniuPs
(203)
傷を癒したとはいえ結局のところ疲れていることには変わり無かったらしく、俺は夢も見ずに朝を迎えた。
横ではラディールが気持ちよさそうな寝息を立てて寝ている。時計を見るとまだ5時半だった。
彼女を起こさないように静かにベッドから降り、そのまま部屋を出る。
こんな時間なら2度寝してもよさそうな物だが…

俺は何かに引き付けられる様に応接間のドアを開け、壁際に置かれたチェストの中を見る。
そこには布に包まれた何かがあった。ほぼ無意識にその包みを解く。
出てきたのは、龍、というよりは西洋風のドラゴンを模った置物だった。
何故か、これが昨日の赤い金属の成れの果てであることは理解できた。俺はここにこれがあった事を知らなかったんだけど…

「ほぅ…これは…」
「…爺さん、気配を消して背後に近寄るのはよせ」
視界の端で扉を見ていたつもりだったが、どうもこの置物を注視しすぎていたらしい。
「ほっほ、これは失礼を… おはようございます、坊ちゃま」
「あぁ、おはよう。ところでこれ、どう見る?」
包まれていた布ごと爺さんに渡そうとすると、爺さんは手でそれを制した。
「坊ちゃまの願いに応じてこの形になったのでしょう。先ずは坊ちゃまが確かめて見るのがよろしいかと存じます」
なるほど、もっともだ。しかし、そもそも得体の知れない物を俺に預けたのは爺さんだろう、と心の中で毒突く。

287 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/05/28(日) 18:06:13.71 ID:O4AniuPs
(204)
とりあえずコンコンと叩いてみる。音が内部で響いているようだ。とすると、中は空洞という事になる。
胴体部分を良く見てみると側面に一筋の線があり、それは首の辺りで折り返し、反対側も同様の線が走っている。
線に沿うようにして頭部分と尻尾部分を逆に引っ張ってみると、ガコッという音と共に二つに割れてしまった。
外した内部を確認すると、何かを固定するための丈夫そうな紫の紐がある。
とりあえず、篭手なのは間違いないようだ。

後ろからその様子を見ていた爺さんは、何故か満足そうにうんうんと頷いている。
「とりあえず、身に付けてみてはいかがでしょう?」
「…あぁ」
短く答えて、篭手を腕に当てて紐を結ぶ。付けてみると、右手の甲の辺りには龍の頭、左手の甲には龍の尻尾が当たるようにできている。
邪魔にならない事を確認しながら、色々と手を動かしてみる。
「なかなか立派なもののようでございますなぁ」
「そうかな…」
龍の頭と尻尾。西洋占星術で言うドラゴンヘッドとドラゴンテイルは、九曜占星術で言う計都と羅喉。いずれも凶星だ。
縁起でもない形になってくれた物だが、逆に悪運が付くかも知れない。
「差し詰め、凶星の篭手ってところかな…」
そう呟いて、左手で裏拳を打つ素振りをしてみた。

次の瞬間、何か叩きつけるような音と共に、背もたれが見る影も無く粉砕されたソファが俺の目の前にあった。

288 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/05/28(日) 18:06:31.77 ID:O4AniuPs
(205)
「爺さん…」
「なんでございましょう?」
「これ、ヤバくね?」
「危険な物であることは否定できませんな」

思わず眉間に手を当てて悩んでしまった。
確かに普通じゃなさそうだとは思ってた。俺の不注意もあるだろうけど…いや、とりあえずこれ外そう。物騒すぎる。
そう思って紐の結び目に手をかけようとすると、さっき結んだ結び目がない。
本当にない。篭手が元々俺の体に着いていたかのように、紫の紐で完全に固定されている。
腕を引き抜こうにも、紐が肌に吸い付いてビクともしない。

「爺さん…これ、外れないんだけど…」
「外れないと言うことは、今は外すときではないのでございましょう。それは恐らく意思を持っておりますゆえ…」
「…こんな物騒なもん付けて生活しろってか」
「そのときになれば、自然と外せるようになりましょう。いつになるかは私めには分かりかねます」
爺さんは淡々と受け答えしながら、どうにもほくそ笑んでいるようにしか見えない。

なんてこった…切り札どころか呪われた装備じゃねぇか…

289 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/05/28(日) 18:06:51.36 ID:O4AniuPs
(206)
「とりあえず、のこぎりとナイフ、それに針と糸持ってきてくれ」
背もたれが粉砕されたソファをどうにかしよう、と思ったのは、これから起きてくる連中に妙な気を使わせないためだ。
爺さんから道具を受け取り、二人でソファをベンチ状の長椅子に変える作業を始める。

作業を始めてしばらくして、応接間にマルトとラディールが入ってきた。
「おはようございます。お爺様もルーファス様も、朝から精が出ますね」
「あぁ、おはよう。好きでやってるわけじゃないんだけどな…」
「好きでもないのにやってるって事は、あなたが壊したって事なのね…」
「ほっほっほ…まぁ、たまには良いでしょう」
早朝からなんだか和やかな雰囲気だ。
2人にも手伝ってもらい、30分もすると見栄えする長椅子が出来上がっていた。

俺と爺さんは慣れない中腰での力仕事ですっかり疲れ切ってしまい、向かい側のソファにどっかりと腰を下ろす。
マルトとラディールはソファの生地を全部剥がして新しい布に張り替えているようだ。そこまでするのか…
「そういえば、あの2人は?」
ラディールが縫い糸を歯で切りながら、マルトに声をかける。
「まだぐっすり眠っておられるようでしたので… それに、まだこんな時間ですから」
マルトが時計を指差す。そうですか、まだ7時ですか…

290 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/05/28(日) 18:07:16.83 ID:O4AniuPs
(207)
「ま、食事の準備ができるまでは寝かせといてやった方がいいかもな」
俺が横から口を挟むと、マルトはにっこりと笑って立ち上がった。
「かしこまりました。では、私は朝食の用意をいたしますので失礼いたします」
仕上げと後片付けはラディールが全てやってしまったようだ。

「んじゃ爺さん、ちょっと風呂行こうぜ。汗でも流さないとやってられないだろ」
「ほぉ、名案ですなぁ、ではご一緒に…」
爺さんはただでさえ丸めていた腰をさらに丸めて、腰をさすりながら立ち上がった。
「ルーファス、それは?」
俺も立ち上がろうとすると、ラディールが俺の方を指差しながら声をかけてきた。
指刺してる先は、やっぱり篭手だ。
「あぁ〜…これは、まぁなんというか…」
「昨日お見せいたしました、あの赤い金属塊でございますよ」
「へぇ… 本当に篭手になったんだ…」
ラディールは興味津々と言ったように篭手を眺めた後、ちょっとかっこいいじゃない、なんて暢気な事を言う。
俺は一つため息を付いて笑顔を見せた後、爺さんに目配せをして風呂場に向かった。

応接間のドアを開けて風呂場に向かう途中、寝ぼけているのか挙動不審な様子のフルキフェルを見つけた。
朝風呂に誘ってみたが、何故か顔を真っ赤にして拒否されてしまった。確かになんか変だよなぁ…

291 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/05/28(日) 18:07:36.05 ID:O4AniuPs
(208)
篭手が外れない事に関しては目をつぶる事にしよう。元々錆びたような色だし、もうこのまま入ればいい。
脱衣所で拳法着を脱ぎ捨て、そのままドアを開け放って風呂に飛び込んだ。
少し熱めのお湯が朝の冷えた空気には心地良い。風呂ってのは本当にいいなぁ…
鳥の声に耳を傾けていると、爺さんがやや遅れてやってきて湯船に浸かった。
「なぁ、爺さん。ちょっと聞いておきたいんだけど、いいかな」
「えぇ、なんなりと」

「エルリッドが『フェイト』にさらわれたって話をしただろ。『フェイト』にさらわれた人間ってのはどうなるんだ?」
「大体の場合は記憶を操作して元の生活に戻されるはずですな。坊ちゃまの場合はその限りではございませんでしょうが、お嬢様は『来訪者』でない以上、殺される事はないかと」
「そっか…」
「ただ…気になることがございます」
それまでどこかのんびりしていた爺さんが、急に神妙な顔になって俺の目を見る。
「今までのお話を聞く限り、かの組織の在りようも随分と様変わりしたように思われます。仮に、連れ帰った人間の事を報告しなかったとしたら…」
「連れて行った奴のやりたい放題って事か」
黙って頷く爺さんの眼光が鋭いものに変わる。きっと、俺も爺さんのような目をしてるんだろう。
「何があっても、お嬢様はお救いしなければなりません」
「分かってる」

292 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/05/28(日) 18:08:14.80 ID:O4AniuPs
(209)
湯船に浸かったまま、合わせていた視線を2人同時に空に向ける。
「私めが表に立つことも厭いません。できる事を全てする、という意味で言えばそれが最も近道かもしれませぬ故」
「せっかく死んだ事にして行方をくらませたのに、か…」
「人並みに死ぬ、ということは思いの他難しいようでございますな。殊更、私めにとりましては」
「60年も放っておいたんだ。今更それを咎めようなんていうんなら、それよりも見つけられなかった失態の方を責めてやりゃぁいい」
「ほっほっほ、それは確かにそうでございますな。まぁいずれにいたしましても…」

爺さんが立ち上がり、脱衣所のほうへ向く。俺は視線で追いつつも続きの言葉を想像していた。
「…いなくなられると困るんだけどな」
「マルトめには、私の知る限りのこと全てを伝えております。ご不自由は、決して」
「状況次第だろうよ、決め付けるにはまだ早い」
「若さというのは、それ自体が可能性でございます。私めは少々年を取りすぎました」
「なら俺の可能性に賭けてみろよ」
爺さんはゆっくりと振り返って俺の顔を見た。さっきとは違ってやわらかい笑顔だ。
「そうでございますな。では、坊ちゃまに全てを委ねるといたしましょう」
そう言って、爺さんは脱衣所に消えて行った。

大きな口を叩いた事を若干後悔しつつ、脱衣所に気配がなくなったのを確認して俺も湯船から上がった。

448 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [] 投稿日:2006/05/31(水) 20:09:25.35 ID:qDaCKQra
(210)
身支度をして脱衣所から出ると、ラディールがこちらに歩いてきている姿が見えた。
「食事の準備できたってー」
少し大きめの声を出して俺に声をかける。わかった、と言う代わりに手を上げて答えると、彼女は食堂の方へ消えていった。
朝から大工仕事をしたせいでさっきから腹が鳴りっ放しだ。

食堂に入ると既にラディールが席についていた。俺は昨日と同じ様に一番上座の席に付く。
「それ、外したら?」
「外れないんだよ…」
篭手を撫でながら俺は苦笑いをする。しかし、さっきのはなんだったんだろう。
左の篭手についてる龍の尻尾を模した飾りが急に生き物のように動き出して、ソファの背もたれを打った。
ソファは倒れる素振りも無く背もたれだけを木っ端微塵にしたってのは、考えようによっては恐ろしいことだ。
それだけの勢いと質量を備えた一撃だったことになる。軽く素振りしただけなのに。

「そんなに気に入ったの?子供じゃないんだから…」
ラディールは何か誤解をしているらしい。俺はため息を付いて視線を逸らした。
そういえば気になっていたが、この食卓に並んだうつ伏せの茶碗と箸はなんだろう?
程なくしてヒロ、それとフルキフェルが食堂に入ってくると、それを見計らって爺さんとマルトが配膳を始めた。
「今朝はルーファス様の大事なお客人がご一緒に召し上がるとの事ですので、恥ずかしながらこの老骨めも包丁を執らせて頂きました」
そう言って爺さんは丁寧にお辞儀をした。

449 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/05/31(水) 20:09:42.70 ID:qDaCKQra
(211)
和食、ね… 

これがここに並ぶ意味ってのをヒロとフルキフェルは気が付くだろうか。
爺さんが元『フェイト』とは言え、現実世界の生活や食事にまで細やかに知ってるというのは明らかにおかしい。
俺が知る限りで『来訪者』が頻繁に来るようになったのはこの半年間のはずだ。爺さんが『フェイト』にいたというのは60年前だという。
だとすれば60年以上前に『来訪者』が存在したか、もしくは今でも『フェイト』の情報を握っている、もしくは裏で通じているという事になる。

60年以上前に存在した事になるのならば、それを献体として爺さんは相当の情報を引き出したのだろう。
しかし、もしそうなら昨日の段階でもう少し突っ込んだ話が出てもいいはずだ。爺さんは「存じております」とだけ言った。つまり直接は知らないという事になる。
そもそも、爺さんの言った「異世界」というのは範囲が広すぎる。それが現実とも限らないだろう、と今初めて思い当たった。

なら、爺さんは今の『フェイト』と何らかのコネクションを持っている事になるのではないだろうか。
この和食を出すことで、それを気取られてもおかしくはない。それをあえてやるって事は…
「皆様のご郷里の味に、少しでも近づけようとはしてみたのですが、はてさてどうにも…」
白々しい謙遜をしながら、爺さんは苦笑している。
どうも爺さんの意図としては、一刻も早く情報交換をして動き出す気でいるらしい。爺さんの情報も全て曝け出して ───

朝からヘヴィだな、おい…

450 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/05/31(水) 20:10:06.98 ID:qDaCKQra
(212)
雑談が続いて、いつの間にかお互いの身の上話がてらの情報交換になっていた。

ヒロはどうも、ナナコって女の為に赤い鎧を倒そうとしたらしい。若いねぇ…
彼は魔法に関しても理論を理解し、体内で退路を巡らせることで発現できるようになっているそうだ。
俺よりも随分長い間こっちにいることも話を聞いて初めて知った。
エルジンの時計は失くしたそうだ。あれは『来訪者』の遺品だったらしい。
だとすれば、彼は何故時計を投げつけたのだろう。本能的なものか、あるいは隠しているのか。
ただ、概ね協力的な彼の態度を見ると疑うのも馬鹿馬鹿しい。

「そういや、煙草持って帰ってきてたな。返すよ」
俺は懐からKOOLを取り出してヒロに渡そうとすると、彼は片手をヒラヒラとさせて拒否した。
「俺は煙草吸わないから、やるよ」
そうか、と言ってKOOLを再び懐に放り込む。ラディールがなんだか不機嫌なオーラを出しているが、矛先は俺じゃないみたいだ。よかった…

俺はこれまでの起こった事のみを簡潔に伝えた。ドラギーユ城でみた資料の話についてはあえて伏せておいた。
帰れなかった者の情報なんて彼らに聞かせても仕方がない。少なくとも帰る気でいる人間にとっては水を差す事になる。

451 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/05/31(水) 20:10:35.29 ID:qDaCKQra
(213)
食事もひと段落着いてお茶を飲み始めたところで、爺さんが急に切り出した。
「それで、皆様はこれからどうなさるおつもりなのでございましょう?」
どうするも何も、元の世界に帰る方法を一緒に探すということだけ告げて、彼らにはお帰り願うしかない。
身内ならともかく、エルリッドを助けようなんて話は彼らにする必要はない。

「エルリッド様を助け出すおつもりでしたら、今こそまさに好機ではございますが…」
「マティエール」
俺は即座に大きな声で彼の名前を呼んだ。
「おお、これは申し訳ございません。歴戦の勇者、しかも来訪者の方を二人も屋敷にお招きするという事は、てっきりご協力を仰ぐものとばかり…。大変失礼を致しました」
くっそ…風呂で俺に委ねるなんて言っておきながら、結局この2人は巻き込むつもりだったのか…
「エルリッドさん?」
フルキフェルが食いついてしまった。ただならぬ気配を出してしまった俺にも責任があるのだが…
協力者が増えることは吝かではない。だが、彼らの目的には沿わない。つまり利害が一致しない。
いくらこんな状況でも、手を付けて理のあることとないことくらい彼らにも判断できるだろう。
手伝わせようなんてすれば無用の反発を招く。『来訪者』同士、そういうのは一番避けたい所だ。

少し黙っていると爺さんが早くしろ、と言うような視線を投げかけてくる。
確かに俺にとっては有利な状況になる可能性はあるが、使用人としてこの傍若無人ぶりはどうなのだろう?

452 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/05/31(水) 20:11:19.40 ID:qDaCKQra
(214)
「……エルリッドは、クリルラ様につけてもらった護衛で、俺の妹だ」
渋々言った後、俺は爺さんを睨みつける。
爺さんは俺のためだけではなく、エルリッドのためにも最善の手を尽くすという考えなのかも知れない。
確かにいち早い奪還が急務だが、それとこれとは話は別だ。本当に、相変らず手段を選ばないやり方をしてくれる。
「爺さん。どうして今が好機なんだ?」
あぁ、空気の読めない子がもう1人いたよ… ヒロ、頼むよ…

爺さんの言うところによると、『フェイト』は新素材で開発された装備の解析に手間取っているらしい。
ヒロとフルキフェルは特に疑問を持っていないようだが、これは明らかに内部情報だ。
だが、その新装備も『フェイト』にとってはそれほどの脅威ではないだろう、と爺さんは言う。
「彼らの装備は、この世の法則の外にあるもの…いや、物質ですらないからでございます」
彼ら、とは『フェイト』だろう。

『フェイト』の装備はプログラムで構築されているそうだ。俺にはむしろ馴染み深い。
プログラムを「この世の法則の外にある」という言い方をすると言うことは、そもそもプログラムで構築されている俺の知っているヴァナディールとは別の世界と言う事になる。

ようやく確信が得られた。ここはゲームの中って訳じゃないらしい。

453 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/05/31(水) 20:11:50.55 ID:qDaCKQra
(215)
「鉄より硬いと設定すれば、鉄斧でぶん殴っても傷一つ付かない鎧が出来上がるという訳か。無敵になるわけだ」
『フェイト』の強さは、つまるところそこに集約されると言うことだろう。
「そこまで顕著な効果を持つのは、プライマルアーツだけでございます。 実際坊ちゃまがピアシュ…でしたか、彼の者の鎧を打った時には、
既知の素材で作った武装を用いたにも関わらず、多少なりとも傷をつける事が出来たとの事でございましたね」
既知の素材どころか素手だったけどな…

「彼らの使う装備はプライマルアーツを模して作られました。再現度はなかなかのものですが、所詮模造品。この世界の法則から完全に逸脱するほどの性能を備えてはおりませぬ」
確かに、殴ればへこむし斧でたたっ切れる。それは知っている。しかし、と爺さんはその先をつなげた。

「そのプログラムで解析もしくは設定できない物に関しましては、どのようにこの世界に作用するか見当も付かないのでございます」
「というと?」
俺が先を促す。この両手にある篭手がどのようなものなのか、それはどうしても確認しておかなければならない。
「そうですな、最悪で大陸の形が変化するほどの大崩壊、とでも申し上げればお分かりいただけますでしょうか」
「…もういい、聞きたくない」
なんてものを俺に預けやがったんだ、このジジイ…

454 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/05/31(水) 20:12:31.33 ID:qDaCKQra
(216)
つまり『フェイト』は、その新素材について解析・設定を行うのに手一杯だろう、というのが爺さんの結論らしい。
そうすると、エルリッドがさらわれたのは俺と一緒にいたから、という理由だけではないのだろう。
「そうか、それであの時計が当たった時、鎧が溶けるみたいにして消えたのか…」
ヒロがボソッと呟く。確信もないのに時計投げたのか… あれ、結構高いんだぞ?

ようやくあの顛末の事情が飲み込めてきた。時計を投げつけ、鎧自体が消失あるいは崩壊したと言うことなのだろう。
だが、落ちた先にはそれほどの崩壊は無かった。つまり、プログラムで構築されたもの以外にはそれほどの脅威はないらしい。
爺さんは時計をなくした事を少し大げさに嘆いていた。まぁ、確かに『フェイト』への切り札になるし、最悪交渉材料にもなる。
「一時間針が進むのに一日かかるポンコツがねえ」
少し呆れたような口調でヒロが言う。

「それって、リアル時間なんじゃないですか?」
急にフルキフェルが声を上げた。時間軸の違いがパラドックスになって法則を捻じ曲げる、って事か… そんな事あるのかねぇ?

なら装備を回収すれば良いのではないか、というヒロの疑問も爺さんはあっさりと否定する。
『フェイト』は、実はそれほど大きな組織ではないらしい。100名程度、と言った。装備の回収は事実上不可能だそうだ。
現状の数字まで言ったら、現状の『フェイト』と何処かでつながっているってのはモロバレじゃねぇか…
いい加減2人にも気付かれそうなものだが、ヒロは思った事をスパスパと質問していくし、フルキフェルは聞き手に回っている。
気が付いているのかいないのか、もしくは瑣末なことと踏んでるのか。どうなんだろう…

455 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/05/31(水) 20:12:59.31 ID:qDaCKQra
(217)
「どうして今が好機かは分かったよ。だがここからは別の問題だ。まさかズヴァールくんだりまで関係ない奴らを…」
「エルリッド様は、ズヴァールにはおられないでしょうな」
爺さんは俺の言葉を遮る様に言った。
「どういう事だ?」
ヒロが続いて相槌を打つ。こいつらグルか…?

ズヴァール城は本拠ではあっても、拠点としての機能は持たないらしい。
「彼らは、自分たちの活動の便宜の為、表の顔というものを用意してございます」
あんな連中が何食わぬ顔で街を歩いてるって事か、面倒だな…
「お分かりになりませんかな? 人が大勢集まる場所に本拠を置き、冒険者ならば誰もが知っている組織にございますが。
世界中を繋ぐネットワークを持ち、貿易で作り上げた強大な発言力ゆえ、かのジュノ大公国ですらそれを掌握出来ない組織……」

「……天晶堂」
フルキフェルが口を開いた。俺の思いつく限りでは最悪の答えだったが、爺さんは満足そうに頷く。
世界中が敵に回ったようなものだ、とヒロが言った。
俺にとっては世界中が相手でも為すべき事に変わりはない。だが、彼らは別なのだ。

サンドリアのブルーゲル商会は天晶堂とは一線を画しているそうで、そこにいる可能性はきわめて低いらしい。
と言うより、おそらく既にいないと言う情報を得て話しているのだろう。

456 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/05/31(水) 20:13:27.28 ID:qDaCKQra
(218)
「恐らく陸路。バストゥーク経由か、或いは直接ジュノに……」
「天晶堂だろうとブルゲール商会だろうと、相手に取って不足はないさ。でもな、そんな事に関係ない奴らを巻き込めるか」
いい加減、話を逸らされるのにも飽きた。俺が語気を強めて全員に言う。

「関係なくはないですよ…」
フルキフェルが弱々しい反論をするが、俺はそれを無視した。
「たまたま居合わせただけさ。ここに呼んだのも情報交換がしたかったからだ。第一、危険ばっかりで何のメリットもない事を手伝わせられるか」
「あんたがおれを助けた時、あんたは危険がないと判断したからあの赤鎧と戦ったのか。矢面に立ったのかよ」
ヒロが強烈に噛み付いてきた。ありゃそういう問題じゃない。死にそうな奴がいて見捨てる方がどうかしてるんだ。
「あんたが人を手助けする時、メリットがあるからやるのかよ。ないならやらないのかよ」
それも違う。俺にだって、赤い鎧を捕まえて情報を聞き出そうという打算くらいはあった。助ける事になったのは結果論だ。
俺は、そんなに清廉な人間じゃない。

「ヒロさん、言い過ぎです」
フルキフェルがたしなめる様にヒロの裾を引く。
「でも、ルーファスさんも、そんな哀しい事を言わないで下さい。みんなルーファスさんの力になりたいんです」

くっそ、とんだお人好し共だ。俺がしたことなんて大した事じゃないだろう…

457 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/05/31(水) 20:13:50.19 ID:qDaCKQra
(219)
いつの間にか力いっぱい握っていた拳に、ふと何かが覆うような感触を覚える。
ラディールの手が重ねられていた。
彼女にはこんな台詞はもう言えない。『ルーファス』が冒険者として立ち直ったのも、『俺』が今日まで生き残れたのも彼女がいたおかげだ。
けど、この2人には…

もしかしたら同じ事なのかもしれない。
俺は彼女の為に、と思って彼女を傷つけた。
それは俺の勝手な自己満足のためだった。

今はどうだろう。
2人の申し出を断ることで、彼らに利はあるだろうか。
危ない橋を渡らせないという意味では確かに意味はある。
だが、それはこの2人のためと本当に言えるのだろうか。
それは俺の決めることじゃない。

今の俺にできることは、結局のところ一つしかないという事にようやく気が付かされた。
横目でラディールに少しだけ、笑って見せた。上手く笑えてるだろうか。

458 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/05/31(水) 20:14:12.12 ID:qDaCKQra
(220)
「元の世界に帰るのがお前らの目的だろう?帰る方法を見つけることは、天晶堂に喧嘩売りながらこなせるほど簡単なことじゃないはずだ」
できるだけ静かに、俺は全員に向かって話すように言った。
「だがもし、それでも俺を手伝ってくれる気があるのなら…」
握っていた手を開き、テーブルの上に両手を置く。そのままテーブルに付けるように頭を垂れた。
「…頼む。妹を、エルリッドを取り返したい。在るべきものを、在るべき場所に戻したい」

「素直にそう言えばいいんだよ」
「最初からそのつもりでしたから、どうか頭を上げてください」
2人の返事は明るい声だった。

返事が聞こえた後も、俺はテーブルから頭を上げられずにいた。
泣いているわけじゃない。これでよかったのか、と自問を繰り返していた。
彼らは死ぬかもしれない。勿論俺も、ラディールも。爺さんは既にその覚悟を決めているようだ。
俺の一言が彼らに死のきっかけを与えてしまったかもしれない。
そうならないためにも、俺はこの先の判断を一つたりとも誤ることはできない。

ようやく顔を上げると、微笑んでいるような表情のヒロとフルキフェルとマルト、それと冷や冷やした、というような顔の爺さんが目に映った。
視線をずらすと、相変らず俺の手を握って満面の笑顔になっているラディールがいた。とりあえず、最初の判断は誤らずに済んだのだろうか。

459 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/05/31(水) 20:15:09.29 ID:qDaCKQra
(221)
「それじゃ早速頼みたいことがあるんだが… マルト、城まで言付けを頼む」
「あ、私この後お城に行きますから、ついでに言ってきますよ」
フルキフェルが明るい声で口を挟んだ。
「誰に、何と伝えれば良いですか?」
「宰相に、ルーファスはセルビナには行っていない、ってのと、ファーロス・S・シュヴィヤールが戻った、と伝えてくれ」
多分、これだけで宰相は理解するだろう。今から考えてみると最初から宰相は気が付いていたのかもしれない。あとは宰相の出方を待とう。

「俺は?」
ヒロが、俺にも何かさせろ、というような目で俺を見ている。
「あー、ヒロは…」
とりあえず火急の用事はないし、しかし何も頼まないと言うのもちょっとこの状況だと気が引ける。
「…俺と一緒に風呂掃除、かな」
「えー!?なんだよそれ!」
「人が増えて使用人2人じゃ回らないんだよ。客扱いはもうこれっきりだ」
不満そうに声を上げるヒロとは対照的に、食堂は明るい笑顔に包まれていた。
「では、私めは再びかの組織に探りを入れてくるといたしましょう」
そう言い残して爺さんは食堂を後にする。とりあえず居場所の情報くらい確実なものが欲しいところだ。
「じゃ、私はマルトと洗物でもしようかしら」
ラディールも席を立つ。俺は不満顔のヒロを促して風呂場へ向かった。

612 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/06/02(金) 19:54:06.95 ID:j8H/1zjb
(222)
ひとまず風呂のお湯を抜いて、湯船の底を柄の長いブラシでゴシゴシと擦ってみる。さすがに毎日掃除していたようで、あまり汚れらしい汚れもない。
ヒロは本当に不承不承と言った感じで掃除をしている。ブラシの使い方を見ても、こんな事はしたこともないのだろう。
「腰が入ってねぇなぁ、そんなんじゃ汚れは落ちねぇよ」
「うるせぇ!」
どうもご立腹のようだ。やれやれ、と大げさにポーズを取ってみるとキッと睨みつけてきた。
そもそもそんなに汚れてもいないので問題はないのだが…

「そういや、その手に付けてるのなんだ?おもちゃか?」
「おもちゃで遊ぶような歳じゃない」
掃除もひと段落して水を流しながら、ヒロが俺の手を取って篭手をしげしげと眺め始めた。
「…さっき話に上がってたプライマルアーツって奴だ」
「へー… これがねぇ…」
顔を近づけて眺めるヒロは、なんだか人形を眺める女の子のようだ。オスラってのはミスラとほとんど見分けが付かないな…

ヒロが右手の龍の頭に手をかけたところで、急に右の篭手が振動を始めた。
「おぉい!驚かすなよ!」
驚いて尻餅をついたヒロが怒鳴り声を上げる。俺は篭手から視線を動かさずに首だけを横に振った。
「違う、俺がやったわけじゃない」

613 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/06/02(金) 19:54:39.73 ID:j8H/1zjb
(223)
昨日のような微弱な振動ではない。強烈に俺の腕ごと震えている。
「なんなんだよ、これ…」
「知るかよ、俺にだってよく分からないんだ」
ヒロがもう一度龍の頭に手をかけようとする。なんでコイツはこうも考えなしなのだろう…
俺は右手を引っ込めようとするのと同時に左手でヒロの手を払おうとしたが、それよりも早くヒロが篭手に触れ、そこに俺の左手も重なった。

その瞬間、奇妙な映像が頭の中に広がった。
タルタルの少女が数人と、ヒュムの男とエルヴァーンの女…
鍾乳洞を潜り抜けた先の陶器でできた部屋のような場所で、床には奇妙な魔方陣のような模様が見える。
そして何よりその背後に見える、空間そのものがひずんだ様な空気のゆがみ。

「…おい!」
ヒロに声をかけられて、俺はハッと視線を上げた。
「今の何だよ!魔方陣みたいなの!」
「お前も今の、見えたのか…?」
勢い良くヒロが頷く。そうか、といって俺が考え出そうとすると、彼はデッキブラシを放り出して外に向かって走り出した。
「おい!場所もわからないのに動いてもしょうがないだろ!」
「ばっか!ありゃオルデール鍾乳洞だ!行くぞ!」

615 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/06/02(金) 19:55:15.00 ID:j8H/1zjb
(224)
階段を駆け上って部屋に駆け込み、最小限の身支度だけをしてまた部屋を飛び出す。
丁度ヒロも赤魔道士のAFで身を包んだ姿で客間から出てきたところだった。
「何が起こってるかもわからねぇのに、駆けつける意味なんざあるのかねぇ…」
「何も起こって無きゃあんなもん見えるわけないだろ!」
ごもっとも。俺はヒロの後ろから彼を追うように階段を駆け下りた。

「ちょっと出かけてくる!」
誰かに聞こえればいい。そんな感じで大声で叫び、既に玄関から飛び出して言ったヒロの後を追いかける。
追いかけながら、カバンの中からパンサーマスクを取り出し頭に付ける。これでもう誰が誰だかわからないだろう。
一応、俺はお尋ね者だしな…
通りに出て、視界にギリギリ捉えられる位置にヒロの姿を見つける。南サンドリアの方に向かうつもりらしい。
だとすれば目指す先はまず南サンドリアのチョコボ厩舎だ。
俺は彼の走る方向とは別の方向に走り、南サンドリアへの最短経路を全力で走った。

丁度居住区の出口あたりでヒロに追いついた。だが、彼は俺に目もくれずに走り抜ける。
若さってのは勢いだね、と暢気に考えながら引き離されないように俺も走る。
だが、あの奇妙な光景は何だったのだろう。
強烈にイメージに残っているのは、そこにいた人物と言うよりは背後に見えた空間のゆがみだった。
その映像を見せたこの篭手は相変らず振動を続けている。確かにただ事ではなさそうだが…

616 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/06/02(金) 19:55:46.26 ID:j8H/1zjb
(225)
チョコボ厩舎に飛び込むと、ヒロが財布を取り出してモタモタとしていた。
俺はカバンから財布を取り出し、硬貨を一つ厩務員に渡す。
「2人分だ、釣りは取っておいてくれ」
チョコボの手綱に手をかけながら声をかける。困ります、という声が聞こえるがそれを無視してロンフォールの森へ飛び出した。
今度は俺が先に立って一路ラテーヌ高原を目指す。

ロンフォールの森を走っている途中、妙な事に気が付いた。
オークの姿を全く見かけない。
普段なら、この辺はオークが我が物顔で闊歩しているはずなのだが…
見かけるのはゴブリンと害のないモンスターだけ。
篭手が振動したことと何か関係があるのだろうか。
振り返ってみると、ヒロも周りを見回しているようだ。彼も異変に気が付いているらしい。

どうも、何かが起こっているのは間違いなさそうだ。
2006年06月11日(日) 09:43:05 Modified by akamanbow




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