このウィキの読者になる
更新情報がメールで届きます。
このウィキの読者になる
最近更新したページ
最新コメント
【AH協会】 by awesome things!
609 ◆dWeYTO/GKY小ネタ by check it out
609 ◆dWeYTO/GKY第9話02 by check it out
609 ◆dWeYTO/GKY第9話08 by awesome things!
775 ◆dWeYTO/GKY第1話06 by awesome things!
775 ◆dWeYTO/GKY第1話02 by check it out
609 ◆dWeYTO/GKY第6話02 by awesome things!
リンク
まとめサイト
http://ss.ga4.net/

2ちゃんねる
http://www.2ch.net/

FF11の板(蟹)
http://yy10.kakiko.com/ff11ch/

ネ実
http://live19.2ch.net/ogame/

ワイルドカード(アイコン素材)
http://www.aurora.dti.ne.jp/~keiko-t/
Wiki内検索

Loufas ◆TTnPTs4wAM 2スレ目本編

52 名前:既にその名前は使われています[sage] 投稿日:2006/04/02(日) 10:05:06.45 ID:h9MQdwKG
(1)
夜中にふと目を覚ました。
いつもの整理の行き届かない自分の部屋だ。時刻は午前4時。
テレビをつけようか3秒ほど迷った後、そのまま目を閉じた。

明るい光が差し込んできたのを感じ、再び目を開ける。
小さな小窓からやわらかい朝日が差し込んでいた。

ん・・・小窓から朝日?
俺の部屋は、窓が南向きだから朝日は入らないはずだけど・・・第一小窓じゃなかったはずだ。
よく見ると、部屋の様子がいつもと違う。俺の部屋じゃない。
寝ぼけ眼をこすりながら、周りの状況を確認する。
まず俺の部屋じゃないのは確かだ。造りが違うというレベルじゃない、何もかもが違う。
今いる寝床だって天蓋付の豪華なベッドだ。万年床の布団じゃない。
正面には壁際にびっしりと並んだタンス、熱帯魚がいる水槽に椰子の木、それに大きなサボテン。
そして部屋の隅には少し小さなベッドがあり、そこには白いぬいぐるみが横たえられていた。
「なんなんだ、こりゃ・・・」


53 名前:既にその名前は使われています[sage] 投稿日:2006/04/02(日) 10:06:00.70 ID:h9MQdwKG
(2)
とりあえず体を起こしながら注意深く部屋の中を観察しようとして、まず目に入った自分の手に驚いた。
やたら大きい。
いや、他人と比べれば大きな手だったが、それはいつも見慣れた自分の手じゃない。
よく見ようとして腕を曲げると、その感覚もいつものそれとは違っていた。

あわてて部屋の中に鏡がないか確認する。
ベッドから起き出して引き出しの中もすべて開けて確認したが、それらしいものはなかった。
どうしたものかと頭をかこうとすると、今度は何かが手に引っかかる。
      • 耳?
耳に感触を感じたが、そこに耳があるはずがない。頭とは大分離れた空間のはずだ。
もう一度その空間に手を伸ばすと、確かに耳に触れられた感覚があった。

ようやく、いつもの自分の体じゃないという確信を得た。それどころか、人間ですらないかもしれない。
だとしたら何だろうか。人間と同じ構造の体で耳が長い生き物。
数分考えて毎日見ていた生き物を思い出す。いや、生き物ではなかった、データだ。
「・・・エルヴァーン?」


54 名前:既にその名前は使われています[sage] 投稿日:2006/04/02(日) 10:06:47.26 ID:h9MQdwKG
(3)
まさか、そんな事がありえるのか・・・?
いや、よく考えてみりゃエルフという線だってあるか・・・
いつも見ている分FFに関連させたけど、耳の長い空想の人型生物なんて掃いて捨てるほどいるはずだ。
何か他の情報・・・ここが何処で、俺が何なのかを判断する情報が必要だ。

部屋の中を見回して、隅にある小さなベッドに目をやった。
白い小さなぬいぐるみな横たえてある。
白いぬいぐるみ・・・そういやFFならこんな生物がいたな。だとすれば・・・
「おい、起きろ」
「むにゅぅ・・・クポー・・・」
しゃべった・・・こりゃ決定的だ・・・
すぐさまぬいぐるみの首根っこをつかみ自分の顔の近くに持ってきた。
「起きろ白豚!んでさっさと説明しろ!ここは何処で俺は誰だ!?」
驚いたのか、ぬいぐるみは何度も瞬きをしている。
「ご主人・・・寝ぼけてるクポ?」
「寝ぼけてるのはお前だ!いいからさっさと説明しろ!」


55 名前:既にその名前は使われています[sage] 投稿日:2006/04/02(日) 10:07:29.67 ID:h9MQdwKG
(4)
ぬいぐるみ・・・モーグリは面食らったような様子でおずおずと話し始めた。
「えと、ここはサンドリアのモグハウスで、ご主人はご主人クポ」
思わず空いてる手を眉間に当てた。
「そうじゃない・・・・・・それじゃ、とりあえず俺の名前を教えてくれ」
「ご主人、どうしたクポ?」
「いいから早く!」
「は、はいクポ!ご主人の名前はルーファス(Loufas)!サンドリアの冒険者クポ!」
眉間に当てていた手をそのまま上に上げて髪を掻き揚げる。表情は多分相当硬いだろう。
まいったな・・・自キャラの名前だ・・・

「ご主人・・・苦しいクポ・・・」
「あ、あぁ、すまない」
モーグリからゆっくり手を離すと、そのままふわふわと浮かんで部屋の中心で止まった。


56 名前:既にその名前は使われています[sage] 投稿日:2006/04/02(日) 10:08:38.35 ID:h9MQdwKG
(5)
「ご主人、いったいどうしてしまったクポ?」
よく考えてみりゃ、この白豚は今の段階で唯一の情報源だ。手荒に扱ったのは拙かったな・・・
「すまない、ちょっと混乱してね・・・」
「どうしてそんなに取り乱しているクポ?」
この生き物はどの程度信用が置けるのだろう?
いや、そんなことを知っても仕方がない。
信用が置けないとしても、やはり話してみなければ始まらない。
「なぁ、ちょっと話を聞いてくれないか?」
「そんな事いわなくても話してくれれば聞くクポよ?」
「今から俺が話すことは本当のことだ。これがどういう状況か俺には判断できないから、君に判断してほしい」

ひとまず、この数十分で俺の側から見た今の状況を話してみた。
「・・・ご主人、大丈夫クポ?」
信じてないな・・・だけど、案外こいつは普通の思考を持ってるらしいってことはわかった。
普通信じないよなぁ・・・


57 名前:既にその名前は使われています[sage] 投稿日:2006/04/02(日) 10:09:39.06 ID:h9MQdwKG
(6)
「確かに、そういう噂はあるクポよ」
「!? 噂でも何でもいい!関係のありそうなことを知ってるなら話してくれ!」

モーグリの話はおおよそ以下のような内容だった。
近頃、突然おかしくなるご主人がいるのだそうだ。
人格が変わったように態度が急変し、別の世界から来ただのと妄言を吐く。
しかし、それと同時期にこの世界の構成物ではない何かが最近発見されたり
開発されたりしている。
どうやらこの世界はほかの世界につながり始めた、という噂だった。

「たとえば、これがそうクポよ」
週間魔法パラダイスという雑誌をモーグリが持ってきた
文字が読める時点で軽い驚きだが、それはもういい。それよりも興味をそそる記事を見つけた。
『バストゥークで新発明!その名も自転車!!』
「ただの噂と思ってたクポ・・・」


58 名前:既にその名前は使われています[sage] 投稿日:2006/04/02(日) 10:10:59.15 ID:h9MQdwKG
(6)
「なぁ、この自転車って呼び方は前からあったのかい?」
「モグはこの雑誌で初めて見たクポよ」
「へぇ・・」
同じ構造のものを発明したとしても、同じ名前なんてのは出来過ぎだ。
だとすりゃ、俺と同じ境遇の奴がいて情報提供をしてる可能性もあるな・・・

この雑誌は基本的にはゴシップ紙らしく、それほど信憑性が高いとは言えないそうだ。
だが、気になることには変わりはない。
「他に、こんな記事が載ってる雑誌はあるのかな?」
「これだけクポよ、でも色々と世界中で変わったものが発見されてるらしいクポ」
色々と、ねぇ・・・
「モグ達は噂程度の話しか聞いてないクポ。偉い人ならもっと詳しいことを知ってるかもしれないクポ」
「偉い人って・・・例えば?」
「ハルヴァー宰相とかトリオン王子とかクポよ」

65 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/02(日) 12:20:18.97 ID:h9MQdwKG
(8)
王子はともかく、宰相にはすぐに会える。
「…よし、出かけてくる。」
「それじゃ着替えと食事を準備するので少し待つクポ!」

モーグリは俺の荒らしたタンスを手際よく片付けながら、着替えを渡してきた。
連邦軍師制式コートと拡大眼鏡、ワーグバグナウに羅刹筒袴…ヴァナでの普段着だ。
「戦闘用の装備も持っていくクポ?」
「あぁ、一応頼む。場合によってはひと暴れして逃げてくることもあるかもしれないからね」
「…穏やかじゃないクポね」
事情を話せば協力してくれるとも限らない。
それどころか貴重な情報源として拘束される可能性もある。

暴れる、というところで気がついた。WSやアビリティは使えるのか…?


66 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/02(日) 12:21:23.71 ID:h9MQdwKG
(9)
モーグリの用意してくれた朝食は、クァールサンドとサンドリアティーだった。
「なんだか大変そうだから、力のつくメニューにしたクポ!」
だそうだ。なんにしろ有難い。

モグハウスを出ようとするとモーグリが声をかけてきた。
「ご主人…」
「ん?」
「あんまり危ないことしちゃダメクポよ?」
何も言わず、背中越しに手をひらひらと振って答えて扉から外に出た。

モグハウスのある居住区は、なんだか石造りの長屋といった印象だ。
冒険者が行きかっていることもあり、何か活気が感じられる。
町の中は画面で見るよりはるかに広く、ゆっくり歩いているとすぐに日が暮れそうだった。
居住区から北サンドリアに出た俺は、直接ドラギーユ城には向かわず、
急ぎ足で西ロンフォールを目指していた。

67 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/02(日) 12:22:42.00 ID:h9MQdwKG
(10)
魔法の使い方は俺にはわからないが、殴ることは出来る。
ジョブがモンクだったのが幸いだった。

アビリティは画面で見ていたエフェクトを頭でイメージすると発動する。
戦闘というよりは一方的にウサギやミミズを殴りながら、そこまでは確認できた。
WSは双竜脚と乱撃を試した。動きを真似するだけだ。
1発目で手ごたえがなくなっていたが、これも問題はなかった。
次は夢想阿修羅拳。
体に力がみなぎるのを確認して、勢いよく拳を突き出す。

「っ…てぇ!」
8回拳を出すというのは、思ったよりも体に負担がかかることがわかった。
腕がちぎれるかと思うような激痛が肩口に走ったが、まぁやってやれないこともない。
「案外どうにかなるもんだな…」
肩口をさすりながら、俺はその場で踵を返して一路ドラギーユ城へ向かうことにした。

68 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/02(日) 12:23:57.53 ID:h9MQdwKG
(11)
ロンフォールの森の中をゆっくり歩きながら、ふと現実のことを思い出した。
いなくなれば不都合なことだらけだ。帰れるものならすぐにでも帰りたい。
だが、知らない世界に来て心細いと思うことと同時に、
仕事や人間関係から開放されたという開放感もある。

しばらくここにいてもいいと、少しだけ思った。

だが、さっきの阿修羅夢想拳を撃ったときの痛み、ありゃ本物だった。
要するに、きっと殴られれば痛いし、酷ければ死ぬんだろう。
これだけは肝に銘じる必要がある。

これから行くドラギーユ城だって、軍隊が配備されている場所だ。
怪しい行動をすれば命はないだろう。
事情を話せば、それだけで拘束される可能性だってある。
なら、情報を得られるかもしれないメリットと自由を奪われるかもしれないリスクを勘定しなければならない。
というより、今の状況を知るのに最も手っ取り早い方法というだけでリスクをかぶるくらいなら、
他の方法を考えるべきなのか…


69 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/02(日) 12:25:11.88 ID:h9MQdwKG
(12)
考えてる内に、すでにドラギーユ城の前についてしまった。
肚の決まらないまま目的地についてしまったせいか、心臓の音が自分で聞こえるくらい高鳴っている。
極度の緊張状態だ。

準備はあるといえばあるし、ないといえばない。
心構えと、自分の状況を整理して話すだけだ。
なら、もう考えても仕方がない。ようやく肚が決まった。

ドラギーユ城前の門番は、俺の顔を一瞥したのみで止める様子はない。
そのまま扉をくぐり、瀟洒な絨毯が敷かれたエントランスにたどり着いた。
そしてその正面には目的の人物が立っていた。

ハルヴァー宰相

ある意味、俺の今後はこの人物のさじ加減次第ということになってしまった。

77 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/02(日) 17:41:01.68 ID:h9MQdwKG
(13)
「なるほど、事情は大体わかった」
驚くほどあっさりと受け入れた宰相の顔を、目を丸くして凝視してしまった。
「なんだ、意外か?」
「…えぇ、普通では考えられないことですから」
「貴様のような境遇の人間が数人いることは、すでにこちらでも把握している」
さらに目を丸くした。モーグリの話していた噂はどうやら本当だったらしい。

「詳しい話をしたい。こちらの部屋に来てくれ」
促されるままに小部屋に入り、いすに座った。
宰相は俺にここで待つように指示すると、さらに奥の倉庫のような部屋に入っていった。
程なくして戻ってきた宰相の手には、小さな鉄片が握られていた。

「これがなんだかわかるか?」
「刀の欠片のように見えます」
「おそらくそうだ。しかし、この成分は今までに確認されなかった均質な金属で出来ている」
均質な金属…?
「すみません、金属に関してはあまり明るくないもので…」
「おそらく、貴様が元いた世界のものではないかと考えている」

78 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/02(日) 17:42:50.78 ID:h9MQdwKG
(14)
鉄片をよく観察した。刀の欠片に見えたが、よく見ると刃が付いていない模造刀だ。
「わが国では、この鉄片の成分を解析して新しい鎧の開発に成功している」
そうですか、と相槌を返したが、現実世界のものが兵器利用されたという話はあまり気持ちのいいものではなかった。
「知っていることがあれば教えてほしい。これが何なのか」
模造刀といえば、今はアルミやジェラルミンが主流だったはず。
確かにどちらも軽くて丈夫な素材だ。
ぱっと見た感じではわからないが、これもそのどちらかだろう。
間違っても刀匠が打ったものではないと思われる。
「わかりません。先ほどもお話しましたが、私は金属に関しては明るくないものですから」
「本当に何もわからないのだな」
「えぇ」
「わかった、この話はここまでにしよう。ところで…」
ため息とともに鉄片を懐にしまいこんだ宰相の眼光が、さらに厳しいものになった。

「貴様は元の世界で何をしていた?」
覚悟はしていたが、俺から出せる情報を全部引き出そうという魂胆だ。
鋭い視線が突き刺さるが、ここで気圧されるわけにも行かない。
軍需利用が可能な情報をもっていると判断された段階で、自由はなくなると思ったほうがいい。
嘘、しかも相手を信用させないまでも辻褄の付く嘘をつかなければならない。

79 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/02(日) 17:44:25.07 ID:h9MQdwKG
(15)
しばらくの沈黙の後、俺は話し始めた。
「パンを焼く仕事をしていました」

「ほう、パンを焼く仕事か。貴様はパン職人だったわけだな」
「そうです、大きな窯を使って毎日パンを焼いていました」
我ながらどうしようもないくらい出任せな嘘だ。もう少し何かなかったものか…
宰相の眼光は相変わらずだが、若干あきれているかのようにも見える。
ここでシラを切り通せば俺の勝ちだ。

「パンと言うとサンドリア小麦粉のようなものが元の世界にもあるということなのだな」
「はい、小麦の種類も約1000種類以上ありますから、そこからブレンドしたものを使用します」
俺は知っている限りの小麦粉の知識を思い出す。
「胚芽が付いたまま挽いた小麦粉は栄養分が豊富ですし、麦の風味も強いので、私は好んで使用していました」
深く聞かれる前に、相手が求めていないであろう知識を提示しておく。
そうすることで、こちらが警戒していないと錯覚させるとともに、他の事への質問をぼかしておきたかった。

80 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/02(日) 17:45:39.14 ID:h9MQdwKG
(16)
宰相は俺に警戒心を抱かせることは避けようとするはずだ。
何か情報が引き出せる相手かもしれない相手だから。
俺の持っている情報が宰相にとって未知数だから。
つまり、ある程度話を聞いた段階で今日の話は終わるだろうと踏んでいた。
長く引き止めれば俺が不審に思う、と考えるのが普通だからだ。
そして、必ず次の機会のアポイントメントを取ろうとする。
その間は、もしかすると俺に監視が付くことも考えられる。

そんなことを考えながらも、麦について熱く語る俺と宰相。
「そもそも麦というのは、俺の世界では4千年以上前から栽培されていてですね…」
「わが軍の輜重線を維持するにあたり、コンシュタット高地で製造される小麦粉は重要で…」
元々俺も、そしておそらく宰相も、麦の知識なんてたかが知れているのだろう。
麦の話をしつつ、なんだかよくわからない方向に話は伸びつつある。

宰相としては、話の中のアラを見つけて、そこから切り込んでいきたいという所だろう。
それがわかっているから、こちらも付け入る隙のないように話す。
しゃべり続けて興奮しているはずなのに、額から冷たい汗ばかりが流れる。
そのやり取りは、まだまだ長く続きそうだった。

131 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/03(月) 01:06:53.13 ID:aXtAJySt
(17)
麦のやり取りが始まってから3時間ほど経っただろうか。俺はまだドラギーユ城にいた。

「災難だったわね、事情は大体わかりました」
ゴトッと音を立てて、目の前にバタリア茶が置かれた。
「宰相は新しい素材の鎧に続いて、何か情報がほしかったのだと思うわ。
鉄片ひとつであれだけの実績を上げたのだもの」
目の前にいる隻眼の女将軍は、ゆったりとした手つきでバタリア茶を飲み始めた。

俺と宰相の熱く無益なやり取りを納めたのは、このクリルラだった。
「宰相、国王様がお呼びです」
「む、もうそんな時間か…」
宰相は元々忙しい中だったようで、俺に後日また訪ねてくるように言うと部屋を後にした。

クリルラはひとまず事情を聞かせて欲しいと俺を神殿騎士団の詰め所に招いた。
正直、同じ話を最初からしただけだったが、この将軍は宰相とは違う見解を持っているようだった。
「あなたの世界の技術は、今の4国で成り立っている均衡状態を揺るがしかねないのよ」
「そうでしょうか」
「そうよ。現に新技術で作られた鎧はバストゥーク製の銃弾ですら貫通しないものになった」

132 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/03(月) 01:08:09.21 ID:aXtAJySt
(18)
「宰相が躍起になるのも理解できるの」

眼鏡を曇らせながらバタリア茶を飲む俺を見てクスリと笑った後、さらに続けた。
「バストゥークもウィンダスもそれぞれ新しい兵器を開発したと聞いているわ」
「それなら、均衡に問題はないのでは?」
「それは今後次第かしら」
三者三様の兵器の性能をお互いに理解した段階からパワーバランスを伺うことになる、ということだろうか。

「ひとまず、ここ1〜2ヶ月でどうということはないわ。半年も経つとどうなるかわからないけれど…」
どうやら、新兵器の件は思ったよりも深刻に受け止められているようだ。

「ところで、あなたはこの先どうするつもり?」
「元の世界に戻る方法を探します」
即答した。考える余地もない。
「そう、それならその方法を探して各地を回るということになるのかしら」
「必要があればそうします」
ただ、今のところは手がかりはおろかどうやってこの先食いつなぐかを考えなければならない、と続けた。
ギルが無いわけではないが、それでも何かの糧が必要だろう。

133 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/03(月) 01:09:45.48 ID:aXtAJySt
(19)
「この世界についてある程度知る必要があるでしょう?しばらく軍で見習いでもしてみない?」 
意外な申し出だった。給金も出すと言う。
クリルラの真意は測りかねるが、こちらの世界になれるという意味では願ってもないことだ。
訝しげな表情をしていると、クリルラがさらに続けた。
「正直に言えば、このまま帰してしまってあなたがどこかに行ったりしてしまうと、私たちが追わなければならなくなるの」
そういえば、宰相から後日顔を出すように言われていた。口頭であったが、あれはいわゆる出頭命令なのだ。

「…わかりました。ただし、手がかりを探す活動については認めていただけますか?」
「構いません。ただ申し訳ないけれども、私の部下を監視として常にあなたに帯同させます」
話が違うじゃないか、という目でクリルラを睨み付ける。
「監視というのは名目よ。あなた、この国のことやこの世界のことを何も知らないんでしょう?案内をさせるだけよ」
どっちが名目だかわかりゃしないが、そう言われてしまうと返す言葉もない。
「…わかりました。でも、俺は自分のモグハウスから城に通わせてもらいますよ?どうせ近いですし」
「その方が都合がいいわ。男性の兵舎に私の部下を一人で送り込むわけにも行かないもの」
あぁ、なるほどね。…………ん?

134 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/03(月) 01:12:32.03 ID:aXtAJySt
(20)
「あの、もしかして部下の方って…女性?」
いや、そうじゃない。気にするところはまだある。
「兵舎に送り込むわけには行かないって、もしかして1日中監視がつくということですか?」
「両方とも正解よ。今連れてくるからちょっと待っててくれるかしら」
とんでもない展開になってきた…
また眼鏡を曇らせながらバタリア茶に口をつける。

程なくしてクリルラに連れられてきたのは、うなじの辺りで銀髪を切りそろえ、
前髪を上でまとめたエルヴァーンの女性だった。
「紹介するわ、ルーファス。この娘はエルリッド」
「始めまして、よろしくお願いしますね」
「あ、いや、そんな…こちらこそよろしくお願いします」
「エルリッド、ルーファスにこの国のことを色々教えてあげて頂戴」
「はい、かしこまりました」
笑顔で返事をするエルリッド。
細かい指示を出しているクリルラと、それに一々うなずいているエルリッドを見て俺は心の中で同じ言葉を何度か繰り返していた。

これなんてエロゲ?

164 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/04(火) 01:00:06.77 ID:7mbK4IJU
(21)
ドラギーユ城を出るころには、すっかり日が暮れていた。
俺のモグハウスに泊り込むことになったエルリッドは隣を歩いている。
並んでみると、俺よりも少し低いだけでエルヴァーンとしてもかなり大柄な方だろう。
いや、大柄に見える原因は別にあるのかもしれない。

「なぁ、エルリッド」
「何ですか?」
笑顔だ、文句の付けようのないくらい笑顔。
「その、なんというか…重くないか?ソレ」
彼女の肩に乗っている、ブロンズベッドを指してそう言った。
彼女は右肩にブロンズベッドを担ぎ、左の小脇に小さなテーブルとかばんを持っている。

「大丈夫ですよ〜、毎日鍛えてますから」
「いや、なんというか視覚的にさ…重くなくてもかさ張るでしょ?持つよ?」
「あは♪ルーファスさん優しいんですねぇ」
違う、多分そういう問題じゃないんだよ…
どこの世界に人んちに止まるからってベッド持ってくる奴がいるんだよ…

165 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/04(火) 01:01:12.45 ID:7mbK4IJU
(22)
「それよりも、さっきハルヴァー様から美味しそうなロランベリーワインを頂いてきたので、一緒に飲みましょう!」
「宰相様が?」
「えぇ、用意しているときにいらして、これを持って行けって」
胡散臭すぎる。却下だ。

「あぁ、俺は今日は疲れてるからエルリッドが飲んじゃいなよ」
「えぇ〜!駄目ですよ!一人でお酒を飲む女なんて寂しすぎます!」
なんか苦手だ、この娘…
「一応少しは付き合うし、モグもいるからさ」
「それじゃ一杯目は付き合ってくださいね♪」
「あぁ、わかった。おつまみは買っていかなくていいのかな?」
「それも持ってきてますよ、干し肉とサンドリアグレープです」
なんで飲む気満々なんだろう、この娘は…

そうこうしている間にモグハウスの入り口に着いていた。

166 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/04(火) 01:01:58.39 ID:7mbK4IJU
(23)
「ただいまー」
「ごしゅじーーーーーーん!」
扉を開けると同時にモーグリが飛びついてきた。

「朝から出て行ったきりこんな時間まで戻らないから、モグとっても心配したクポよぉ〜!」
そういや、西ロンフォールに向かって出て行ったのは日も昇りきった頃で、
城に着いたのが日も傾き始めた頃だった。今はすっかり暗くなっている。
「心配かけたな、とりあえず大丈夫だよ」
笑ってみようとしたが、苦笑いになったような気がする。

「おじゃましまーす」
エルリッドが大荷物を持って入ってくる。
「ご、ご主人、この方は…?」
ブロンズベッドとテーブルをもったエルリッドをみたモーグリが固まっている。
そりゃそうだ、俺でもきっとそうなる。
「しばらくの間、俺の監視兼案内役でここに住み込むことになったエルリッドだ」
「モーグリさん、よろしくね♪」

167 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/04(火) 01:02:20.61 ID:7mbK4IJU
(24)
モーグリはしばし固まった後、部屋の隅へ移動して俺に手招きをした。
「何か問題あるかい?」
「いや、ご主人。これは重大な問題クポ」
なんだろう、ここは独り者専用とか決まりごとでもあるんだろうか。
「二人が、その…○○○とかし始めたら、モグはどk」

ドカッ

「どうしたんですか?二人で内緒話なんかして」
「なんでもないよ。今タンス片付けてベッド置けるスペース作るから待ってて」
何事もなかったようにタンスを寄せ始める。
しまってあったタルタル屏風も出して、どうにか共生するのに差し支えない空間にした。

テーブルの上には宰相様からもらってきたというロランベリーワインがすでに乗せられていた。
「コップありますかー?」
「あぁ、多分…」
気を失っていたモーグリを起こし、コップを3つ出させた。

183 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/04(火) 11:45:46.39 ID:7mbK4IJU
(25)
コップを置き終わったところで、突然エルリッドが声を上げた。
「あ、いけない!コルク空ける道具がないです!」
「モグ、なんかそういう道具あるかい?」
「クポ〜…さすがに用意してないクポ」
仕方がないので俺とモーグリは席を立ってタンスや道具箱をあさり始める。
ふと、視線の端でエルリッドが俺の座っていた席に置いてあるグラスに何かしているのが見えた。
いつの間にか浮ついていた気持ちが一気に冷めて行くのがわかった。
…なるほど、そういうことか。

「あ〜、ごめんなさい!かばんの中に入ってました」
それを合図に、俺とモーグリが席に戻ろうとする。
(…ご主人、今の見ていたクポ?)
(あぁ、見てた。だが何をしたかわからない以上なんとも言えないな…)
やや考えて、
(モグ、ワインを注いだら俺が注意を引くから、エルリッドと俺のグラスを取り替えろ)
(わかったクポ!)
このモーグリ、目聡いし案外信用できるんだなぁ…
ご主人冥利に尽きるってもんだ。

184 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/04(火) 11:46:25.99 ID:7mbK4IJU
(26)
席に戻ると同時に、エルリッドはそれぞれのグラスになみなみとワインを注いだ。
「それじゃぁ飲みましょう!かんp」
「ちょいまち、おつまみってこれだけ?」
エルリッドのかばんを開けようと席を立つ。
予想通り、エルリッドは急いで席を立って俺の歩みを阻止しにかかった。

「ダメです!女の子のかばんを覗くなんて絶対にダメですよ!」
女の子って、お前いくつだよ…
「あぁ、そう。で、おつまみはアレだけ?」
「そうです、アレだけです」
「そう、それならいいや」

席に戻りモーグリとアイコンタクトを交わす。どうやらうまくやってくれたらしい。

「それじゃ改めてかんぱーい!!」
「かんぱーい」
「かんぱいクポー」
さて、いったい何をしたんだか…

185 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/04(火) 11:47:09.73 ID:7mbK4IJU
(27)
飲み始めて15分ほどすると、明らかにエルリッドの様子がおかしくなってきた。
目が妙にトロンとして、声もなんだか上ずっている。
やはり何かしていたらしい。

「るーふぁすぅさぁん、もしかしてぇきがついてぇましぃた?」
「あぁ、俺もモーグリも見てたよ。とりあえず何をしたのか聞こうか」
「ハェルヴァーさぁまにぃいわれてぇ、おくぅすりをぉぐらすにいぃれろぉってぇ…」
「んでその後はどうしろって?」
「いぃろいろぉとききだぁしてぇこぉいってぇ…」
とんだ食わせ物だ、あの宰相。

「これを指示したのはハルヴァーなんだな?」
「ふぁぁい、そうでぇぅぅすぅ…」
「クリルラはこのことを知っているのか?」
「しらなぁいぃとぉ、おもいぃますぅ…」
「ご主人、これは…」
「自白剤だろ、多分。こういうクスリは俺の世界にもあったよ。盛られたのは初めてだけどね」

186 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/04(火) 11:47:45.88 ID:7mbK4IJU
(28)
「こんなの、持ってるだけで逮捕されるクポよ…」
「相手は一国の宰相なんだ、スパイに自白させるときとかに使うこともあるんだろう」
冷静を装ったが、気がついてなけりゃ俺がこうなっていたと思うとぞっとした。
「俺がこうなっても、きっとよっぽど酒に弱いんだろうって思うだろ?」
「確かに、そうクポ…」

さて、せっかくだから色々と聞き出すことにしよう。
「エルリッド、クリルラが俺にこんな露骨に監視をつけた理由は何だ?」
「るぅーふぁすさんがぁ、じぶぅんでしぃんでしまぁわなぁいぃ、よぉうにぃってぇ…」
「どういうことだ?なんで俺が自殺なんかしなきゃならない?」
「るーふぁすぅさぁんとぉ、おなじぃようなぁひぃとはぁ、そうぃいうことぉをするぅこぉとがあるぅって…」

そうならそうと言えばいいのに…
「ご主人、これは噂で聞いたことがあるクポ」
妙に冷静にモーグリが口を開いた。
「そうなのか、まぁ気持ちはわからない訳じゃないが…」

187 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/04(火) 11:48:48.08 ID:7mbK4IJU
(29)
クリルラがこの娘を俺につけた理由がわかった気がした。
この件にクリルラが絡んでいないなら、引き続き彼女は信頼できるということになる。
あとはあの宰相の件だ。

「ハルヴァーは俺の何を聞き出せって言ってたんだ?」
「るぅーふぁすぅさぁんのぉ、もぉといたぁせぇかいぃのぉことぉをきぃてぇこぉいってぇ、いわれぇまぁしたぁ」
「どういうことクポ?」
「あぁ、今日あの宰相と3時間ばかりやりあってね。俺がひたすらしらばっくれてたから業を煮やしたんだろ」
ということは、嘘だってばれてるって事か。あの熱い麦トーク3時間を返せ。

「それぃに、わたぁしもぉきょぉみがあったぁんですぅよぉ」
「おいおい…」
「でぇもぉ、わたぁしぃがきいてぇもこたえてぇぁはくれなぁいかぁなぁって…」
「だからって人に薬盛るなよ…」

188 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/04(火) 11:49:33.33 ID:7mbK4IJU
(30)
その後色々と聞いてみたが、しばらくすると口から涎をたらしたまま虚ろな眼差しで上を向いてしまった。
「モグ、なんかヤバそうだ。蒸留水をダースで買ってきてくれ」
「わかったクポ!」
モグに財布を丸ごと渡すと、すぐに出て行った。
阿吽の呼吸だ。あのモグとはうまくやっていけそうな気がする。

さて、エルリッドは表情からしてもうかなり薬が回っているようだ。
とりあえず錆びたバケツを引っ張り出してきてエルリッドの口をそこに向ける。
「エルリッド、わかるかどうか知らんが今から胃の内容物を吐かせる。少し我慢しろ」
そして答えは待たずに喉の奥に指を突っ込む。
ビクンッと大きく反応したかと思うと、少し内容物が出てきた。
もう一度、今度はもう少し深く喉の奥に指を突っ込んだ。
今度は洪水のように一気に出てきた。

胃液くさい指をみて、酔っ払いの介抱なんざリアルで十分だと心底ウンザリした。

205 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/04(火) 22:02:51.23 ID:7mbK4IJU
(31)
居住区には共同の炊事場のような場所があった。
さっき錆びたバケツで受けた内容物を捨てつつ、井戸から水を掬って手を清める。

モグが帰ってきて蒸留水をいくつか飲ませた後、エルリッドは静かな寝息を立てて眠ってしまった。
「いい気なもんだよなぁ…」
独り言も言いたくなる。薬を俺に盛ろうとした挙句自分で飲んで、
吐くだけ吐いたらいきなり寝やがった。
なんだか憎めないとは思っていたが、間が抜けすぎて怒る気にもならない。

エルリッドの話したことを信用するなら、この一件はハルヴァーの差し金らしい。
思ったよりも随分と強引な手を使ってきたものだ。
後日出頭する人間に対して、ここまでして情報を得る意味は何だろう?

エルリッドは本当にハルヴァーの言われた通りにしただけのようだ。
あんなにあからさまに薬を盛るくらいだ。こういった心得はほぼないに等しいのだろう。
やはり、クリルラとハルヴァーの思惑はそれぞれ別のところにある、と考えるのが自然だ。

206 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/04(火) 22:03:42.24 ID:7mbK4IJU
(32)
宰相は焦っているのかもしれない。だが、その理由はわからない。
しかし、こういった方法を選択したということは、俺に危害を加えるつもりはないのかもしれない。
どうにも思考がこんがらがってきた。
ひとまず胃液の臭いが取れたことを確認して炊事場を後にした。

モグハウスに戻ると、驚いたことにエルリッドは目を覚まして後片付けをしている。
「あ、ルーファスさん…」
申し訳なさそうな上目遣いで俺を見る。正直結構カワイイ…
さて、どうしたものか。さすがに突き放してしまうのもなんだかかわいそうな気もしてきた。

「さっきのことは覚えてる?」
「はい…」
「んじゃ、まず言うことはないのかな?」
「はい…ごめんなさい…」
小学生かお前は。

207 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/04(火) 22:04:34.39 ID:7mbK4IJU
(33)
「まぁ、とりあえず話を聞かせてくれ」
とりあえず、テーブルを挟んでエルリッドの正面に座った。
モーグリは相変わらず後片付けを続けている。
多分、あの様子でもこっちに聞き耳は立ててくれているだろう。

「ハルヴァーに渡された薬ってのは、なんだったんだ?」
「…これです」
ラベルも何もない、小さな小瓶を差し出してきた。
「で、これを俺に盛れといわれたんだな」
黙ってうなずく。
「なんで受けた?」
「…ハルヴァー様の命令です。断れるわけないです…」
「さっき、自分も興味があったから乗ったって言ってたけどな」
エルリッドは俺の顔を凝視してびっくりしたような顔をした。
意外だった。さっき『覚えている』といったのに対して、この反応は矛盾するのではないか。
「ごめんなさい、なんだか最後の方は何も覚えてないんです…」
「なるほどね」
ひとまず納得しておいた。

208 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/04(火) 22:05:19.26 ID:7mbK4IJU
(34)
バンッ!

さっきの小瓶を拳と一緒に机の上に叩きつける。エルリッドの体かビクッと竦むのがわかった。
「で、これはいったい何なんだ?」
わざと威圧的に聞いてみた。案外押せば色々出てきそうな雰囲気だ。
「質問になんでも答えてくれるようになる薬だってハルヴァー様が…」
「そうか」
それがヤバイ事だって、この娘は理解してないのだろうか。
なんだか今にも泣き出しそうな顔だ。案外見た目より幼いのかもしれない。

「…ちなみにさ、エルリッドって年いくつ?」
「えっ…」
「ご主人、そんな単刀直入な…」
いつの間にかモグもテーブルに着いていた。
「じゅ、16です…」
「「えっ…………?」」

俺とモーグリは同時にエルリッドに目を向けた。

209 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/04(火) 22:06:14.36 ID:7mbK4IJU
(35)
クリルラは何を考えてこんな小娘を俺の監視につけたんだろう…
俺は少し黙って考えることにした。
どうやらクリルラの言っていたことに、ほとんど嘘は含まれてなかったらしい。
監視が名目というのは100%真実ではないが、それが目的というわけではなさそうだ。
どちらかというと、俺の身を案じてくれてるというようにも思える。
だが、クリルラの意図とは別のところで宰相が俺に薬を盛ろうとし、エルリッドはそれに失敗した。
それはどういう事を意味しているかといえば…

突然エルリッドが、赤ん坊がぐずるような感じで泣き始めた。
いきなりのことで口を開いたまま唖然とする俺とモーグリ。
「ど、どうしよう…私…ハルヴァー様に怒られるし、クリルラ様が知ったら私…騎士団にいられなくなっちゃう…」
そう、そういうことだ。いろんな意味でこの娘は周囲の期待を全て裏切った事になるのだ。

16の小娘にされたことといって笑って流すには、ちょっと重過ぎる。
俺はこの娘をどこまで信用してよいのか正直わからない。
だけど、この状況的には…
「とりあえず、明日一緒にクリルラに会おう。俺が上手く説明するよ」
こう言わなきゃいけないよなぁ…自分のお人好しぶりに本気で自己嫌悪しそうだ。

210 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/04(火) 22:07:02.97 ID:7mbK4IJU
(36)
「ありがとうございます…ルーファスさん」
さっきまでと違う、潤んだような目で俺を見るエルリッド。
これはこれでなんかヤバイ気がする。

突然、席を立って俺の手を付かむエルリッド。
するとすごい力で手を引かれるままに、ベッドまで連れてこられてしまった。
ベッドに横並びに座る体制になってしまった。
助けを求めようとモーグリを探すが、そそくさとタンスのある方へ向かってしまった。おイィ!!?

「ルーファスさん、ごめんなさい。でも、あの、私…」
マズイ、このパターンはなんだかとてもマズイ。
「ちょwwwまてwwwまずいってwwwwww」
なんだか笑ってしまったが、抵抗しないわけにも行かない。
距離をとろうとするが、肩に手を回されて体重を預けられた。ものすごい力だ。逃げられない…
とうとうベッドに押し倒されてしまった。
「ルーファスさん…私…」
だめだ、この娘完全に自分の世界に入ってる…

211 名前:Loufas ◆TTnPTs4wAM [sage] 投稿日:2006/04/04(火) 22:07:59.13 ID:7mbK4IJU
(37)
「ご主人!」
短い声とともにモーグリが何か投げてよこした。
薄茶色い液体の入った小瓶。これは画面で見覚えがある。
迷わず栓をあけて口に含んだ後、力を振り絞って上半身を起こす。

「わ!」
俺の顔がエルリッドの顔の数センチ前に来た。迷ってる暇もない。
手で顎を少し引かせて口を開き、そこに口移してさっきの液体を流し込んだ。
「ん〜〜〜!!!」
嫌がっているが、飲み込むまで口を離すわけには行かない。首筋に回した手で頭をしっかりと引き付ける。
やがて、エルリッドの喉がゴクリと音を立てたのを確認した。口を離すと唾液が糸を引いている。エロイな…
「なに、これ…ルーファスさぁん…」
ばたっと俺の上に倒れこんだエルリッドは、もう規則的な寝息を立てていた。

ベッドに仰向けに倒れこんで、深くため息をついた。
「助かった…」
「間一髪クポ…」
2006年06月26日(月) 16:31:56 Modified by akamanbow




スマートフォン版で見る

×

この広告は60日間更新がないwikiに表示されております。