「.hack//G.U.」と「コードギアス 反逆のルルーシュR2」と「LAS(LMS)」と「ゴッドイーター」と「仮面ライダーディケイド」の荒唐無稽恋愛活劇SSサイト(のつもり)。

『ラ・メーン……フランス料理か?』

【神代剣  仮面ライダーカブト 第23話「謎+謎=X」(2006年7月9日放送) より】


「どうかされました?」
「えっ」
「カイトさん、何だか先程からソワソワしているように見えたので……」


無理も無い。
ショ・ミーン……ではなく庶民のカイトにとって、寺島家はあまりにも次元が違い過ぎた。
この屋敷は福岡県の総面積のうちの何%を占めるんだろう、などと考えたり考えなかったり。
とにかくデカい屋敷だ。
映画のロケ用に建造された武家屋敷と言われても全く違和感が、無い。
良子の両親がどうやってこんな屋敷を建てる程の財力を築いたかは定かではないが、これだけは言える。
彼女と知り合わなければ、まずカイトには一生縁の無い場所。
それに尽きる。
屋敷の中の何もかもが珍しく、思わずキョロキョロしてしまうのは仕方のないことと言えよう。


「こちらがお庭になってるんですよ」
「(やっと庭に出たよ……庭ァ!?)」


寺島家の敷居を跨いで数十分、ようやく庭に出た。
玄関から入って廊下やら色んな部屋を見てきたが、ある意味一番見たくない場所に来てしまったのかもしれない。
庭の中に池は……あった。
見つけたくなかったけれど、見つけてしまった。
事前に何も知らなければ、


「あの池には錦鯉とか飼ってるの?」


などと、何の躊躇もなく他愛のないことを聞けただろう。
が、今は……上手く言葉が出てこない。
喉の奥につっかえているような……そんな感覚すら覚える。


「……あの池」
「池がどうかしましたか?」
「えと……良子さんのお父さんが“柔らかいご飯を炊いた料理番の人を一晩縛り付けてた池”って……あれ?」
「あぁ、はい。そうですよ。覚えてらしたんですか?」
「うん……ま、まぁ、ね」


良子曰く、彼女の父は神経質とのこと。
この寺島家では炊飯器を使用せず、釜で米を炊いているらしいのだが
ある日たまたまご飯を柔らかく炊いてしまった料理番に対して
硬めの米が好みな良子の父は激怒、



「米の気持ちになって反省しろ!」



とその料理番を池に一晩中縛り付けていたらしい。
……怖いってレベルじゃない。日本は法治国家ではなかったのか?
それともこの寺島家には法律などと言うものは存在せず、ある種の無法地帯と化してしまっているのか。
状況が状況でなければ詳しく、なおかつ冷静に対処したいところではあるが
下手なコトを言って(屋敷内に居るであろう)良子の父を怒らせるとこちらの身が危ない。
まだ自分は14歳だ。
玄界灘に沈められるのだけはゴメンである。
生きて東京に帰ることだけを最優先に考えよう……五体満足で帰って来れれば良いのだが。


「庭では父がよく素振りをやっているんですよ」
「素振りって……木刀、とか?」
「いいえ。真剣です」
「!?」


……焦るな。
真剣、ということは日本刀……日本のスピリッツ、目覚めていく。
金持ちならば刀剣の類くらいは持っていても不思議ではない(はず)。
きっと良子の父は「侍戦隊シンケンジャー」のファンに違いない。
そうだ。きっとそうだ。
テレビに影響されて日本刀を購入、休日など暇な時に庭で素振りや試し斬りをしているのだろう。
或いはコレクションとか観賞用とか。
……そう思いたい。


「特に、ここ数日は念入りにやってたんですよ。
 わざわざ有名な刀工の方から新しい刀を買って、物凄い形相で素振りをしていましたし……誰か斬ってみたい人でもいるかのようでした。
 父って本当にお茶目な人ですので……うふふ」 
「あはは(それ十中八九、僕なんだろうなァ……)」


何だかもう、今すぐ東京に帰りたくなった。
今まで曖昧なイメージしかなかった良子の父だが、この寺島の屋敷を見てハッキリした。
空港に迎えに来た黒ずくめの男達(恐らく良子もしくは良子の家族のSP)もそうだが
明らかに……フツーのお金持ちの家、ではない。
何か……言葉で上手く表現できないのだがヤバイ仕事で成功した人なんじゃないだろうか
とか不安になるようなイメージがどんどん固まっていく。
良子の手前、出来るだけ平静を装っていたカイトも内心、心臓ドキバクものである。
……遅かれ早かれこうなる運命だったのだろうか。
クビアを倒して何日か経った後、
良子から彼女の父が自分に会いたがっている……と聞かされた時からイヤな予感がしていたのだ。
自分のことを父親に話したら、顔を真っ赤にして



「とにかく連れて来い」



と言ったらしい。
「ご招待しなさい」ではなく「とにかく連れて来い」である。
どう見ても命令形、それもこちらの意思は完全無視。
横暴を体現した暴君以外の何者でもない。
分からない。
どうしてそんな暴君から、こんな素直で可愛い娘が生まれたのか……良子は母親似なのかもしれない。
だから余計に可愛がられたのかも。
良子の話を聞く限り、彼女の父の娘の溺愛ぶりはちょっとフツーじゃない。
彼女からすれば「お茶目」の一言で済むのだろうが、カイトからすればどう見ても「フツーってレベルじゃない」。
最馬女子大付属高校の文化祭で良子をお茶に誘ってしまったがために
黒ずくめの男達に連れ去られ、その後消息不明となった男のように自分も消息不明になってしまうのだろうか。
もし消息不明になったらどうなる? 
「TVのチカラ」あたりで「地球の裏側を見る男」ことジョー・マクモニーグルや
予言者ジュセリーノが行方を捜索してくれるだろうか? 
……絶対無理に決まっている。
なら断れば良かったのか? ……それは良子が可哀想だ。
良子は単に、自分に修学旅行のお土産を渡したい(という名目で)がためにわざわざ福岡までの航空券を手配して招いたのだ。
クビアを倒してから暇だったせいもあり、少し浮かれていた自分に責任もあると言えばあるのだが……
ゲームならともかく、現実世界の自分は何処にでもいるような中学2年生。
対して相手は福岡県の企業をを牛耳る(?)大物。
最初から相手になっちゃいない。


「あの、さ」
「はい?」


しかし、だ。
ここまで来た以上、覚悟を決めるしかない。


「良子さんのお父さん……今日は……」
「……それが、とても残念なのですが」
「残念……って言うと……?」
「父もカイトさんが来るのを本当に楽しみにしていたんです。
 カイトさんが福岡に来る日程に合わせて、お仕事も全てキャンセルして万全の構えでお待ちしていたのですが……
 つい先日、最後の仕事先で食中毒になってしまいまして……入院してしまったんです……」


……勝った。
神は自分を見捨ててはいなかったのだ。
後にカイトは語る。
笑いを堪えるのが、こんなに大変とは思わなかったよ……良子さんのお父さん……と。


「母も父の看病のために病院に寝泊りしているんです。
 お医者様のお話だと回復には後4〜5日はかかるようで……」
「そうなんだ」
「ですので、カイトさんが福岡に居られる間は私が案内役を務めさせていただきます。
 すぐに迷子になってしまいますので、無事にご案内出来るかどうか不安なのですが……」
「そんなことないよ。よろしくね」
「……はい!」


……ほんの少し、ほんの少しだけだが。
良子の父が娘を溺愛していた理由が分かった気がする。
ゲームの時同様、人を疑うことを知らず、純粋無垢でちょっと天然な良子を見ていたら
誰もがこう思うはず。
……守ってあげたくなる。
お姉ちゃん風を吹かせるブラックローズとは明らかに対極の存在と言えるだろう。
そんな良子の初めての男の友人が、自分。
何だかくすぐったいような誇らしいような不思議な気持ちになってしまう。
良子は結構そそっかしいと言うか危なっかしいところがあるので
(自分よりも強いモンスターに真正面から戦いを挑んだり……)、余計にそう意識してしまうのかもしれない。
だが今はあえてこの状況を楽しもう、良子の父不在の報を聞いたせいもあってか
カイトにはもはやネガティブな思考は一切ない。
だが顔には決して出さないものの安堵感でいっぱいでもあった。


「修学旅行のおみやげについては、東京に発たれる時にお渡ししますね」
「じゃあ……明日、とりあえずどうすればいいの?」
「カイトさんが望まれるのならば何処へでもお連れしますよ」
「そっか。ならせっかく福岡に来たんだし……ラーメン食べたいな、豚骨ラーメン」
「トゥーンコツ・ラ・メーン……? 
 それは……フランス料理でしょうか?」
「!?」


良子は、ラーメンを知らなかった――――――――。                                                            【 TO BE CONTINUED... 】

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