「.hack//G.U.」と「コードギアス 反逆のルルーシュR2」と「LAS(LMS)」と「ゴッドイーター」と「仮面ライダーディケイド」の荒唐無稽恋愛活劇SSサイト(のつもり)。

『炎の嵐よ、全てを飲み込め!』


【エルク  アークザラッド(1996年発売) より】


「ぬぅわぁ〜にが『ラーメンを知らないお嬢様ってホントに居るんだね(笑)』よっ! 非常識なだけだっちゅーの!」 


ダンジョンの中でモンスターを相手に大剣を振り回し、ばったばったと物凄い勢いで倒していく少女が1人。
カイトから寺島良子とのデート紛いの話を聞かされ(紛いどころかデートそのものだが)怒り度MAX状態のブラックローズその人である。
友達から「休日に彼氏と○○へ行った〜」などと聞かされるのは、まあいい。
だがカイトの口から良子の話を聞くのは全っ然面白くない。
とうとう途中で頭に来て一方的に話を切り上げて別れ、マク・アヌから適当に選んだダンジョンにウサ晴らしに来る始末。
八つ当たりでブラックローズに倒されるモンスター達からしてみれば迷惑そのものだろう。
が。
とにもかくにも、ブラックローズは暴れたかった。
アバれた数だけ優しさを知る、と誰かも言っていたし。


「何よ何よ何よ、何なのよアイツはぁ〜!?
『良子さん、ラーメンの食べ方もよく分かってなかったみたいでさ。
 僕にレンゲの使い方とか聞いて来た時は、周りの人も「スゲエ! 本物のお嬢様だ!」って驚いてて(笑)
 おとボクの厳島貴子さんを思い出したよ。でもそういう世間知らずな所も可愛いと思わない?』……ですってぇ?
 思うかぁっ!!!」


バクスマキシマ!
今のブラックローズ――――速水晶良の燃え上がる怒りの炎をそのまま精巧に再現したかの如く
業火を纏った大剣から放たれた斬撃が群がるモンスター達を一体、また一体と蹴散らしていく。
今日のブラックローズの機嫌は相当に悪いようだ。
弟の文和を意識不明から救う手立てを捜すために《The World》をプレイし続けてきた晶良。
高校テニスの県大会で選手の1人に選ばれた時、上級生から虐めを受けても決して立ち止まりはしなかった
強靭な精神の持ち主であるはずの彼女の心は、自身も気づかぬ程にかつてないくらい締め付けられている。
良子が嫌いなのではない。
色々とあったが……大切な友人の1人と思ってはいる。
思ってはいるが……カイトが良子のことを話すのは気に入らない。
しかも自分に黙って彼女の実家の福岡まで遊びに行った、などと。
半年以上《The World》で共に冒険を繰り広げた相棒とも呼べる自分に黙って、それはないんじゃないかと小一時間
(問い詰めたい……と思ったが、問い詰められずに逃げ出してしまったので、今ここでこうしているワケだが)。


「(いや、まぁ……別に付き合ってるワケじゃないんだし
  アタシに逐一報告する必要は全然ないのよね……アイツにだってプライベートがあるとは思うケド……)」


至極当然である。
それこそ二十四時間一緒、というのも息が詰まってしまう。
彼のコトは好き(だと思う)だが、さすがにずっと一緒に行動したりダンジョンに潜ったり……というのは、いくら好きでも飽きが来る。
彼だって自分以外の仲間、友人と一緒にパーティを組んだりイベントに参加したいだろう。
現実(リアル)の彼の行動だって自分が口を挟む問題ではない。
カイトもやっと友人のオルカが未帰還者から復活し、いつも通りの生活に戻れた。
そしてやっと、普通に《The World》をプレイできる日がやって来たのだ。
その過程で知り合った仲間とリアルで会うな、などと誰が言える?
自分とてミストラル―――黒川真由美には随分と世話になったのだし、彼1人を非難する資格は無い。
無いの、だが。


「やっぱ……何か納得いかないっ!!!」




火炎霊王爆誕の巻!




魔方陣から次々と出現するモンスターの群れをブラックローズの掲げた巻物から
出現した火の精霊王ウルカヌスが燃やし尽くしていく。
炎の中に佇むブラックローズとウルカヌス――――その姿、まさに天壌を翔る者たち
物理攻撃に特化した重剣士(ヘビーブレイド)の彼女にとって呪札や巻物、タロット類は欠かせぬアイテムである。
初心者の頃は回復薬や何やらの種類が多すぎてとても把握できず、
いつも戦闘中にメニューを開いてはどれを使用すれば効果的なのか迷っていた頃が懐かしい。
今ではブラックローズも高レベルプレイヤーの一人。
それも最近噂のドットハッカーズの一員である。
もう初心者の頃のようなビクついた姿もなく、カイトと共に未帰還者を……カズを救ったという誇りで満ち溢れている。
……そうだ。
いつも自分の隣には彼が居た。
なのに、どうして今、彼は自分の隣に居ないのだろう?


「……知るもんですか。あんな超鈍感!」


……どう考えても悪いのは自分なのだが。
彼が話している途中、さも不機嫌だとばかりに取り繕ってその場から逃げた。
なのに自分のやったことを棚上げ、彼に全責任を押し付けて八つ当たり。
最低すぎる。
相手はまだ14歳、2つも年下の少年だと分かっているのに。
不思議と彼とはもう何年も共に時間を過ごしたかのような錯覚さえ覚える。
その彼を、途中からパーティに参加した世間知らずのお嬢様に取られ……そうになっているのが非常に悔しいのである。
親友に別の友人・親友が居ても別に何とも思わない、同性だから。
でも彼は異性。
……否応無しにも良子とカイトの距離が縮まっていくのが、晶良は許せなかった。
彼と過ごした時間は自分の方が圧倒的に多いのに、何の優越感も感じない。
あるのは焦燥感だけ。
……いつも自分の傍に在るからと言って、大切なモノがいつまでも在り続けるワケじゃない。
自分は後手に回ったために良子を僻んでいるに過ぎないのだ。
むしろ、カイトと距離を縮めるために積極的に行動に移した良子を見習うべきではないのか?
思えば【Ω 激怒する 合わせ鏡の 聖女】でのダブルブッキングと時だって、彼女は一歩も譲らなかったではないか。
世間知らずなお嬢様ではある。
だがカイトとの距離という面においては(それが恋愛にしろ友情にしろ)……自分の一歩上を行っている彼女。
晶良はそれが悔しかった。


―――――――ッ!?」


アイテム神像の部屋まであと少し、というところで晶良のコントローラーを握る手の動きが止まる。
事前に妖精のオーブを使用して神像の部屋やそこに行き着くまでに幾つの魔方陣が存在しているかを確認、
それなりに計算してアイテムを使用しながらモンスターらに八つ当たりとも言うべき戦いを挑んでいたブラックローズ。
が、1つ……見落としていたことがあった。
《The World》は確かに平和を取り戻した。
カイトが最後の八相コルベニク、クビアを倒し、アウラを再誕させ完全体としたことでゲームはハロルドの思い描いていた姿を取り戻したのだ。
そこまでは、いい。
そこまではいいのだが……まだ、この世界にはモルガナの残滓、悪意が残っていたことをブラックローズは失念していた。
モルガナの置き土産――――――――――ウイルスバグ!


『■■■■■――――――――――――――――――――――!!!!!』
「ウイルスバグ!? まだ生き残ってる奴がいたの……!?」


身体の各所をウイルスに汚染され、狂ったように巨体を揺らしながら吼えるバグモンスター。
そう言えば以前、ネットスラムでミミルらとパーティを催した時も
カイトはウイルスバグ退治に時間を割いていたために来るのが遅れていた。
よもやこんな時に遭遇してしまうとは。今日はとことんイヤな日である。


「……出くわしちゃった以上戦うしかないわね!
 カイト、アタシがアイツのHP削るから、アンタはデータドレインに備えて――――――――――――――


返事があるはずもなく。
彼は自分がマク・アヌに置いてきてしまったではないか。
ウイルスバグと戦う時、彼はいつも自分の隣に居た。
だから今、彼が居ないと判っているにも関わらず無意識にブラックローズはカイトの名前を呼んでしまった。
……居るはずもない人間に、何を期待すればいい?
何も。自分には彼を頼る資格など無い。心無い言葉で彼の前から去った自分には。


「……いいわよ。
 アイツ抜きでも、アタシ1人で戦えるってコト……証明してやるんだから!
 ほら、何やってんのよ!? かかって来なさい!!!」
『■■■■■■――――――――――――――――――――――!!!!!!』


全くの虚勢。
ウイルスバグに打ち勝つにはカイトの持つ腕輪の力、データドレインが必要不可欠。
彼以外のPCがバグモンスターに攻撃しても、ただ無限に存在するHPを無意味に削るだけだと判っているのに。
それでもこうするより他、ブラックローズには手が残されていなかった。
だってそうだろう?
彼が来るはずない。
行き先も告げずに彼の前から去り、ランダムで選んだワードでここまで来たのだ。
ログの閲覧でもしない限り、天文学的な無数の組み合わせを持つエリアワードから3つの単語を選んで
ここまで来るなど……不可能。
彼のヘルプは無い。
ならば己が力で切り抜ける他、道はなし。
カイトと共に数多くの強敵と渡り合ったことで、ブラックローズにも土壇場における精神的なタフさが身に付いてきたようだ。
……或いはテニスの県大会出場を巡る、先輩達との確執が彼女を強くしたのかもしれない。





――――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――

――――――――――――





「んもぅっ、しつっこいわねぇッ!! 馬鹿カイトなんか、アテに出来ないのにぃッ!!!」


戦闘が開始されてから何分が経過しただろうか。
ここまで作業的なプレイはブラックローズも初めてだった。
ウイルスバグはその巨体に似合わずなかなかに素早く
レベル90に到達寸前のブラックローズを思いのほか苦戦させる。
素振りの一撃でも豪腕と呼べる程に威力が高く、かなりのダメージを喰らってしまう。
その度に快癒の水で回復、すぐに安全地帯まで移動して呪札・巻物で反撃、あるいはスキルを使って攻撃、
SPが尽きたら匠の気魂で回復……延々とこれを繰り返すだけの単純作業。
なのに、一向にウイルスバグは倒れる気配がない。
当たり前だ。
奴を倒せるのはカイトのデータドレインだけ。
なのに自分は何をやっているんだろう。
つまらない意地を張って、ムキになり、絶対に勝てない相手に無謀な戦いを挑んでいる。
コイツに負けたら、今度は自分が――――――――――――


『■■■―――――――――――――――――――――――――――――!!!』
「しまっ……きゃあああああああああああああ!!!!!」


未帰還者になってしまうのだろうか。
そう思った矢先、ウイルスバグの渾身の一撃がブラックローズのPCにヒット。
ついにはHPが一桁台にまでグーンと押し下がっていく。
鳴り響く死の警告音。画面が赤く点滅し、プレイヤーの晶良へと危機を知らせる。
呼吸が荒い。
弟の文和を意識不明にさせたこのゲームの恐ろしさは晶良自身がよく理解していたはずなのに。
……死の恐怖。
無論、意識をゲームに取り込まれるだけなので厳密には死ではない。
が。
「生きている」のと「死んでいない」は同意義であるはずもなく。
生きる屍と化していたかつての弟の惨状が晶良の脳裏に走馬灯のように次々と浮かび、消える。


「か、回復! …………って、アイテムが、もうないっ!?」


激戦のうちに回復のための全ての水を使い果たしていた。
万事休す。
敵はもう目の前まで迫ってきている。
相手に慈悲の心などあるはずもない。
躊躇なく、獲物を追い詰めた野獣の如くブラックローズのPCを拳で叩きのめすだろう。
それが彼らの理性なき本能。
ひたすらにプレイヤーと戦うことのみを運命付けられた者達。
腕輪の力なくしては対抗出来ない存在。


「……馬鹿だな。アタシ」


弟を助けるために《The World》をプレイし、やっとのことで未帰還者達を救えたと思ったら
今度は自分が未帰還者? それも散々くだらない意地を張った結末がコレである。
最悪だ。笑い話にもならない。
恐怖よりも自嘲。
自分の行動が自分の首を絞めることとなったこの結果にブラックローズは小さく哂った。
そして自責と彼(か)の少年への謝罪。
つまんないコトで怒ってゴメン。
ホントはアタシ、アンタのコト好きだよ。
でもね、アンタが他の子と仲良くしてるの見たり聞いたりするのイヤだったから。
だからイヤなコト言ってアンタの前から逃げたの。
ゴメンね。ゴメンナサイ。カイト、ゴメン……。
奇跡は何度も起こらないから奇跡。
万が一にも、腕輪を持つあの少年がこの場に駆けつけて、それこそ颯爽とカッコよく自分を助けてくれたら……
なんて、都合のイイ話があるはずもなく。
ほら、今にもウイルスバグの拳が―――――――――――――――




蒼炎舞―――




幻聴?
刹那、彼の声が聞こえた気がする。
自分と共に世界を駆け巡った、あの赤い双剣士の少年の声が。





百花繚乱!!!





轟音!
ダンジョン中に響くが如く、何かが爆ぜたかのような爆音が晶良の鼓膜を刺激する。
バグはいつまで経っても自分に拳を振り上げる気配はない。
何故だ? 晶良は頬を伝う涙を拭いながら今一度HMDの位置を調整、虚空を仰ぎ見た。
一瞬のうちに周囲が蒼く染まり、陽炎のように揺らめいている。
疾る火炎旋風。今まさに自分にトドメを加えようとしていたウイルスバグは、その振り下ろそうとしていた拳を燃やされ、
苦痛の叫びをあげ炎の中でのたうち回っているではないか。
……何かが変だ。
だって……この炎の色は、蒼い!


「な、なによ……? この蒼い炎……?」


ウイルスバグ、そして部屋全体を蒼く燃え上がらせる奇怪な炎。
誰がこんなことを?


「晶良――――大丈夫っ?」
「えっ……」


炎の中から現れる赤い双剣士PC。
彼女がよく知る、よく見知ったその顔。
見紛うことなき彼―――――カイト。


「ボロボロじゃないか(滝汗)」


目をパチクリさせて何事か彼女が言うよりも早く、彼の手は完治の水を差し出す。
彼の顔に怒りはない。
自分を心配して、大急ぎでここまで駆けつけた……そういう顔。
そんな顔をされたら黙って受け取る他ない。
ここで彼を拒否したら、もう自分は救いようのないイヤな女だろう。
だから、受け取った。


「ア……アリガト」


普段ならば飲み干すところだが、頭から水をかぶって荒っぽく回復。
そうでもしないと耐えられない。
彼が助けに来てくれた心臓の高鳴りを押さえるには、これくらいの照れ隠しでないと
到底押さえられない……なのに、まだドキドキしている自分は、何?


「カイト……アタシ……!」
「少し休んでて。アイツは、僕1人で闘(や)るから」


部屋中に燃え盛っていた蒼炎が渦を巻き、更に激しく燃え上がってゆく。
まさかとは思うが……この炎は彼の仕業?
でも呪紋使い(ウェイブマスター)でもない彼がこんな奇跡を起こせるはずはない。
どう見ても炎属性の最上級魔法か火の精霊王ウルカヌス級の炎、それも蒼白い炎。
今まで彼がこんなスキルを使用したことは、一度も無かった。
でも現に彼は、あれだけの業火の中に居ても何も感じてないようだった。
逆にウイルスバグは更に熱く燃える炎に身を焦がし、声に成らない悲鳴を挙げ続けている。
部屋全体に満ちていく蒼炎。


「……晶良をいじめたな」


炎の嵐が吹き荒れる中、彼はブラックローズを未帰還者になる寸前まで痛めつけた相手に刃を向けた。
異端者には異端を持って対処すべし。
未だ《The World》から姿を消すことのないモルガナの残滓、ウイルスバグ。
世界の礎として《The World》を支え続ける彼女のためにも――――――アレは倒すべき敵なのだと。


――――お前は許さないぞ」


一際蒼く、炎が猛った。                                                                               【 TO BE CONTINUED... 】

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