「.hack//G.U.」と「コードギアス 反逆のルルーシュR2」と「LAS(LMS)」と「ゴッドイーター」と「仮面ライダーディケイド」の荒唐無稽恋愛活劇SSサイト(のつもり)。

『ヒビキさん。
 鬼に姿を変えて人助けをする、その不思議な男の人と出会ってから僕、安達明日夢の中で何かが変わってきました』
                                             【安達明日夢 「仮面ライダー響鬼(2005年放送)」OPアバン・ナレーション より】



カイトさん。
勇者に姿を変えて人助けをする、その不思議な男の人と出会ってから、わたし、大黒なつめの中で何かが変わってきました。
最初に躓きはあったけど、改めて高校生活のスタートをきったわたしは、ひょんなことから
「ドットハッカーズ」の一員として戦うことになりました。カイトさんやフィアナの末裔の皆さんに一歩近づけたような日々。
そんな中、今までは限られたエリアに出現していたウイルスバグがレベルの低いダンジョンに現れたり、
同じ種類のウイルスバグが立て続けに色々なところに現れたりして、何だか異変が起き始めているようです……。


「寺島さん! なつめっ!!」
「「はっ、はいっ!」」


戦いは続く。
今日のカイトは珍しくブラックローズを連れておらず代わりにパーティには寺島良子となつめの姿が。
今は戦闘の真っ最中。それも相手は普通のモンスターではない。毎度お馴染みのモルガナの悪意の残滓、即ちウイルスバグ。
ここのところ連日、様々なエリアに連続して出現するようになり、しかもその狂暴性は去年出現した個体よりも増しているとのこと。
これには少し及び腰だった良子となつめだったが、カイトの指示に導かれるまま、両者は顔を見合わせると同時に駆けた。
撹乱戦法。
注意を良子となつめに逸らさせることで、カイトが必殺の一撃を繰り出す時間を捻出するための時間稼ぎである。
而して―――――――――――――――――――――――――









はぁぁぁ……灼熱真紅の型ッ!!!











予め蒼炎舞で己の気を十二分に高め、そのエネルギーを双剣に宿していたカイト。
蒼い炎の宿った剣は文字通り気炎を上げたかと思うと、その先端に巨大な2つの火の玉が燈る。
両脚でしっかりと地面に踏ん張りをつけ、良子となつめが気配を察知してウイルスバグの撹乱を中止、
退避するのを視認すると同時に、カイトは敵目がけて双剣を振り下ろした。
2本の刃より蒼い火球が爆ぜ、次の瞬間にはウイルスバグの躰に着弾。耳を劈く爆音が周囲に木霊する。


「カイトさん! やりましたねっ!」
「お見事です!」
「……いや。まだだ」


女性陣からの声援にチラリと視線を向けて笑顔で返すも、すぐさまカイトの表情は戦士のそれに戻る。
まだ終わってはいない。アレは単にHPを削っただけ。
ウイルスバグを完全に消滅させるには、あの技以外に手段など存在しないのだから。



「……行くよ。アウラ」



濛々と黒煙を上げながら地面に伏し、起き上がって反撃を試みようとするウイルスバグ目掛け、今度はカイト自身が駆けた。
戦闘開始の時点で3人ともに移動速度アップの呪紋“アプドゥ”をかけていたため、その移動速度は神速。
ようやく上体を起こしたウイルスバグだったが、次の瞬間飛び込んできたのは先程の蒼炎とは異なる薄緑色の光。
ドレインシール。ウイルスバグに死の宣告を告げる、清め光。
カイトは走りながら右腕の腕輪を起動、世界に害為す敵に最後の一撃を叩き込む工程を既に終わらせていた。
つまりは―――――――――――――――――――――――この光を纏わされた時点で、ウイルスバグの敗北は決していた。









デェェェタァァァ……ドレイィィィンッ!!!















****************************








「リョースにショートメールを送っておいたよ。ウイルス駆除完了って」
「ここのところ連日ですね、ウイルスバグの目撃情報……」
「クビアはもう倒したのに……また何かが起ころうとしてるんでしょうか……?」


ウイルスバグ退治を終え【Ωサーバー 遺跡都市リア・ファイル】へと帰還した3人。
カイトを真ん中に据え置き、彼を挟む形で良子となつめが並んで歩いている風体だった。
通常ではエディット不可とされている赤い双剣士PC……というだけで
「アレがドットハッカーズのリーダーのカイトだ」とルートタウンを行き交うプレイヤー達の目を惹くが、今日は少し様子が違う。
双剣士の少年が2人の少女を連れて歩いていたからである。
1人は清楚な白を基調とした、金髪の重斧使いの少女。
少し前までマク・アヌを拠点に活動していたボランティア団体・紅衣の騎士団の団長だった昴を思わせる物静かで優しげな表情をしている。
もう1人は碧色の髪と蒼いコスチュームが特徴的な双剣士の少女。
切れ長の目を持ち、ヒョコヒョコと子犬の様な仕草で双剣士の少年に付き従う姿が、なかなかに可愛らしかった。
が、彼と彼女らはそんなプレイヤー達の好奇の視線をまるで気にする様子もなく、何やら真剣に話し込んでいる様で……。


「どうだろう。まだモルガナの邪気が世界から完全に消えたワケじゃないのかもね」
「はぁ。邪気……」
「戦いを終えた後、カイトさんが周囲に炎を疾らせるのも邪気を払っているから……なのですか?」
「そんな大袈裟なものじゃないって」
「でもカイトさん、とっても強くなっちゃいましたよね! 初めて会った頃はわたしとそんなにレベルも離れてなかったのに」
「結構、鍛えてるんです(苦笑)」


シュッ。
カイトは照れ臭そうに、親指を立て人差し指と中指を伸ばし、薬指と小指を折り曲げる独特のポーズを右手でしてみせる。


「ブラックローズさんの代わりが務まるかどうか不安でしたが、お役に立てて良かったです」
「ホントですねぇ……」


いつもはブラックローズ、もしくはガルデニアが彼と組んでウイルスバグ退治に向かうのが常なのだが
今日は良子となつめの2名が随伴となった。
ブラックローズはテニスの県大会に向けての練習に忙しく、ガルデニアも大学での薙刀部の練習に忙殺され
とてもではないが夕方からのウイルスバグ退治に参加できる状態ではなかった。
そのため、ピンチヒッターとして良子となつめが急遽カイトと共にウイルス駆除に向かうことになった次第である。


「感謝してるよ。けど、2人とも急に呼び出したりしてゴメンね。忙しかったんじゃないの?」
「平気ですよ! ちょうど家に帰ってすぐに連絡をいただきましたから」
「良子も問題ありません。今日は塾に行かなくてよい日でしたので」
「ならいいんだけど……」


高校1年になったばかりのなつめはともかくとして、良子は今年高校3年のはず。
彼女の厳しい父親の性格を考えれば大事な時期にネットゲームなど本来は許さないだろう。
そういうカイト自身も今年で中学3年、去年は夏から冬にかけてゲームばかりしていたので
さすがに放任主義なカイトの両親も息子の成績や進路について言及し始めた。
が、それは杞憂だったらしく、少しゲームのプレイ時間を調節することで彼は以前の成績を取り戻すことに成功した。
いや、以前以上と言ってもいい。戦いに次ぐ戦いがカイトに自信を持たせた。得意なサッカーにしても動きに磨きがかかった様にも思える。
カイト自身は「単に開き直っただけ」と述べているが、なかなかどうして、成長したのは精神(こころ)だけではなかったらしい。


「けど、やっぱりバグ達の動きがまた活発になってきたのは見過ごせないんだ。
 リョースやヘルバ達が解析を進めてるみたいだけど……何て言うか、知恵を付けてきたって言うのかなぁ」
「知恵……。確かに最近のウイルスバグは2体1組だったり、通常モンスターを配下に連れて出現したりしてますね」
「凶暴性も増してませんか? こう、グワーッって感じで襲いかかってきますし。狙いを定めて暴れてるみたいです」
「コンフェ・バグ(乱れバグ)ってトコロか……。ますます鍛えなきゃ」


と言っても、単なるレベル上げのコトをカイトは言っているのではない。
彼のレベルは既にカンストのレベル99。双剣士という職業(ジョブ)を極限まで極めている。
「ますます鍛えなきゃ」とは彼自身のプレイヤースキル。
まだカイト本人も識らない未知のパワー、可能性が彼のPCには秘められている。


「まだまだ鍛えないとね」


その最たる例が「蒼炎態(バーニングフォーム)」だ。
以前、ブラックローズがウイルスバグによって未帰還者にされそうになった際、カイトは突然、蒼い炎を自在に操る能力に目覚めた。
《The World》、そしてアウラを守りたいというカイトの決意に呼応し、彼の持つ無限のポテンシャルのうちの1つが開花したのだ。
以来、カイトはウイルスバグとの対決時は常に蒼炎態で闘うようになっていく。
今では自分の手足の様に炎を操ることも可能となっており、一部分だけ炎のシールドを張ると言った芸当も可能となった。
守りたい存在が傍に居るだけでカイトは強くなる。特定の誰か、ではなくても。等しく、彼は仲間達を大切に思っているから。


「僕はまだちょっと用があるけど、2人はどうするの?」
「お夕飯の時間が近付いておりますので……良子はお暇させていただこうかと思います」
「そっか。なつめは?」
「えっ? わ、わたしは特に用事とかはないんですけど……」
「じゃあ今日はこれで解散しよっか。今日は2人ともお疲れ様、ありがとうね」


そう言うと、カイトは再びカオスゲートの方へと踵を返した。
またフィールドに赴きモンスター相手に修行をするのだろうか。
カオスゲートへと去っていく彼の背中が、今は山よりも大きく見える気がする。
実際本当に頼りになるし、優しく誠実で、リーダーシップを遺憾なく発揮する彼の雄姿を彼女達はいつも見てきた。
そんなカイトの後ろ姿を見て良子となつめはほぼ同時に小さな溜息を吐くのだった。


「……良子さんはどう思いますか」
「えっ?」
「カイトさんって……やっぱりブラックローズさんかアウラさんが好きなんでしょうか……?」


なつめと良子にとっては気が気でない問題。
カイトの女性関係である。


「えぇっと……どうなのでしょう。ただ……」
「た、ただ?」
「カイトさんがどなたを選ばれても良子は構いません。そのぅ……妾でも良子は満足ですし……」 
「妾って……あ、愛人ですかっ!?」


普段大人しい割に随分と過激な発言が良子の口から飛び出たことに、なつめも動揺を隠せない。
それ以前に今時の高校生の口から「妾」などという言葉が聞けたことにもビックリだった。
良子の場合、通っている学校自体が超お嬢様校なので既に「今時の高校生」とは少々ズレているかもしれないが。


「あの、良子は何か変なことを言ってしまいましたか?」
「い、いえっ、全然ヘンじゃないですよ!」


本当はすごく変だと言いたかったが、なつめはあえてソレを口にはしなかった。
良子も良子なりに考え、一歩引いた立場とは言え「愛人」という立場でもいいからカイトの傍に居たいと思っている。
それを否定するのは良子の尊厳を否定することにも繋がりかねない。
カタチは違うがそれも立派な愛の形の1つのはず。
少なくとも、メールで告白して以来返事を貰えていないなつめからして見れば、良子の考え方はむしろ羨ましくもある。


「あ、お夕飯の支度が整った様です。使用人の方が待っていますので、本日はこれにて……ごきげんよう」
「ご、ごきげんよう……」


良子はなつめにペコリと一礼すると、光に包まれてログアウトする。
生粋のお嬢様であることは彼女と交流を始めた頃からなつめも知っていたが、やはり本物は違う。
なつめの実家の大黒家も地元ではそこそこの旧家で、なつめも所謂「お嬢様」なのだが良子の実家は彼(か)の寺島家。
同じ福岡県内にありながら、そのレベルは天と地ほどの差があると言える。
更に寺島家は「ローゼン麻生」と呼ばれた第92代内閣総理大臣の麻生太郎の実家・麻生家とも繋がりがあるとかないとか。
同じお嬢様でも全く別種の生き物なのだと、良子の美しい所作を見て改めてなつめは痛感するのだった。


「お嬢様……かぁ」


やはりカイトも良子のような清楚で淑やかな女性が好みなのだろうか。
そう思うとブラックローズは該当条件から外れるものの、代わりにアウラが当てはまってしまう。
よりによって究極AIが相手では、なつめの勝ちはもう無くなってしまうだろう。
実際、ハロルド・ヒューイックがエマ・ウィーラントとの間に創ろうとしただけあり、アウラは西洋人形の様な完璧な美しさを持つ少女だ。
良子以上かもしれない。ズ〜ンと一気に肩が重くなっていくようで、なつめは堪らず不安になる。


「よ、弱気はダメっ! 変わるって決めたんだし!!」


自分を奮い立たせるが如く、なつめはコントローラーを握る手に力を込めた。
彼の助言で跳び箱を飛んだ時のように、変わろうと思えば自分は変われるはずなのだと。
そう思うと、なつめは自然とカオスゲートの方へと走っていた。


「私にもきっと、何か出来るコトがあるはずだもん……」


どうせならたまには自分からカイトを追いかけてみるのも悪くない。何か手伝えることがあるかもしれない、と。
確か、以前カイトと一緒に「修行」に行ったエリアワードのログがまだ残っていたはずだ。
彼が今日も修行を行うかどうかは分からないが、このΩサーバーのエリアに生息するモンスターは通常のものでも
ケタ違いの強さを持つものばかり。カイトが肩慣らしに赴いても不思議ではない。


「【Ω 鍛えし 戦鬼の 夢の跡】……カイトさん、いつもこのエリアで戦ってた気がする……」


カイトがよく行くエリアのワードログはまだ残っていた。
幸い回復アイテム類も大抵のものは所持しているので、なつめでも何とか1人でカイトを探しに行くことが出来るはず。
最悪の場合はアプドゥをかけてひたすら逃げ回るしかないが……いや、それではダメだ。
逃げるのはナシで行かなくては意味がない。カイトが強くなった様に、自分もまた強くならねば……と。



「よぉし……行きますよっ!!」











***************************














「カイトさん……いるかな」




【Ωサーバー 鍛えし 戦鬼の 夢の跡】。
今のなつめのレベルでは敵わない高レベルなモンスターばかりが生息する危険地帯。エリアレベル99の魔境。
以前、カイトに連れられて訪れた時もおっかなびっくりだったのを覚えている。
それでも彼は怖気づくこともなく、勇猛にモンスター達と戦っていた。
なつめは後方から援護や回復を担当というサポーターの立場だったが、それでも共にカイトと戦えることが彼女は嬉しかったのだ。


「うぅ〜。さすがにソロだと怖いなぁ……」


嬉しかったが……さすがに1人で訪れるには、少々危険なエリアだったかもしれない。
空には暗雲が立ち込め、周囲は暗く、否応無しにも不安になってくる。
妖精のオーブで予めフィールド上に配置された魔方陣を確認し、極力モンスターを出現させないように移動することが肝心だ。
―――――――――――――――――――――――――――――



























ドォン!!!






























「!? なっ、なっ、何の音ですかぁっ?」


耳を劈く衝撃波(ソニックブーム)と、それに続く地響きがなつめの躰をグラグラと揺らす。
かなり近くで大きな爆発があったらしい。爆心地から響き渡る震動、そして彼方に昇る蒼い火柱。
紛れもなく、あれはカイトの蒼炎。やはり彼はこのエリアに来ていたのだ。
まるで互いに互いを引き合わせる引力が存在しているかの様な……そんな妙な錯覚まで覚えてしまう。
引力即ち愛(ラブ)!


「まさか……カイトさんの炎? やっぱり、カイトさんはこのエリアに居たんですねっ!」


レベル99のモンスターが多数徘徊する魔境に居ることも忘れ、なつめは駆け足で爆心地まで走る。
魔方陣も少ないし、アプドゥを使用すれば途中でモンスターに遭遇しても何とかなる。
今はただ、カイトの元へ急がねば。それだけだった。会いたい。何か手伝えることがあるのなら、手伝ってあげたい。
ついでに返事を聞かせてもらえれば最高だ。未だ、なつめはカイトから告白メールの返事をもらえていない。故に。
だから走る。走って走って、跳んで跳んで。そして、見た。






















「アレは……」






















爆発音の聞こえたと思しき場所の近くまで駆けつけると、周囲は蒼白い炎に包まれ、燃え盛っていた。
その炎の中に、黒い影が幾つか見える。
まず巨大な影が3つ。恐らく大型モンスターと思われるが、何やら様子がおかしい。
あきらかにプログラム仕様外の奇怪な動きを見せ、連携し、炎に臆することなく縦横無尽に疾駆する。
そして小さな影が1つ。少年のシルエットをしたソレは、蒼い炎の中でもハッキリと視認することができた。
言わずもがな、ドットハッカーズのリーダー。双剣士の少年カイトに相違ない。
だが、せっかくカイトを見つけることが出来たと言うのに、なつめは声を発することが出来なかった。
この状況下、何と声をかければいいのか理解(わか)らなかったのだ。
それ程までに3体のモンスターと戦うカイトの姿は、鬼気迫るモノがあったのである。



























爆裂真紅の型ッ!! はぁっ!!!


























接近してきたモンスターの攻撃を紙一重でかわしたかと思うと、次の瞬間にはカイトのカウンターが決まっていた。
ドンドンドコドンッ!
まるで敵の躰を太鼓に見立てる様にして、炎の宿った双剣を撥の様に目にも止まらぬ速度で連続して叩きつけているのだ。
攻撃を終えると次の敵、また次の敵と曲芸の軽業師の様な身のこなしで敵の巨大な体躯を逆手にとっての移動。
やがて3体に均一してダメージを与えたのを確認すると、カイトはいよいよ最終奥義を発動させる。
彼の右腕に浮かび上がった腕輪が妖しく光り、世界に害を為す邪まな者どもを斃せと轟き、叫んでいるのだ。
斬魔、破邪、外道断つべし。光差す世界に汝ら暗黒、住まう場所無し!


























ドレィィィィンッ、アァァ――――ク!!!


























カイトの腕から放たれた閃光はモンスター達の脳天を貫き、やがて自壊へと導いていく。
彼が戦っていたのは只のモンスターではなかった。ウイルスバグ、世界に仇為す者達。
つい今しがた戦ったばかりだと言うのに、またカイトは仇敵と戦っている。
リョースやヘルバからのウイルスバグ出現の報告を受け、このエリアに赴いたのではない。
むしろ……もしかすると。ウイルスバグがカイトに惹かれてこのエリアにやってきたのではないか。
ウイルスバグは腕輪に惹かれる。腕輪はウイルスバグを呼ぶ。
カイトはそれを識っていて、あえて単騎で彼らと戦っているのではないだろうか。
地獄の戦鬼も恐れる戦騎、地獄の劫火よりも熱い魂……それでいて純粋な心を保ち続けることのできる精神力。
並の14歳ではない。そもそもカイトという少年は何者なのか。みな識っているようで、彼に関してはあまりに謎が多すぎる。
だが、なつめにとってはそんなコトはどうでもよいコトなのかもしれない。
戦う彼の姿は勇ましくて。美しくて、同時に、醜くて。獣を思わせる咆哮にも似た、絞り出す様な叫び。
ウイルスバグを消滅させたら、また次の魔方陣をあえて発動させ、出現した新手のウイルスバグと戦う。
彼はそれを延々と繰り返していた。何時間も、何時間も。
囚われている、この世界に。いや、魅入られたのか。アウラという異形の少女に。世界の為に戦う、とはそういうことなのだから。







「カイトさん……」






なつめはただ、彼だけを見ていた――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





































【その後……】










「たぁっ! えいっ!!」
ゲッ!? グゲゲゲッ!?


晴れ渡る青空の下、少女の声が響く。
見れば、そこそこレベルが高めのモンスターと少女は交戦していた。と言うより守っていると表現すべきだろうか。
少女の後ろには呪紋使いとおぼしき少女が蹲っている。
彼女が自身の眼前ので繰り広げられる戦いを震えながら見つめていれば、そう表現せざるを得ない。


「行きますよぉっ! 夢幻繰武っ!!!」
グエーッ!!


少女の構えた双剣から見舞われた斬撃は見事、モンスターに命中。四肢を残すことなく撃退することに成功する。
残りの数匹も螺旋(スパイラル)を描く刃(エッジ)の餌食となり斃されていった。
レベルの差もあったのだろうが、何よりも双剣士の少女のプレイヤースキルが高かったことが勝利に直結したと言えるだろう。
纏めて倒す方が、より後方に控えた呪紋使いの少女に及ぶ危険も少ないだろうと判断してのことである。
そして戦闘を終えると双剣士の少女はにこやかに、呪紋使いの少女に手を差し伸べるのだった。


「もう安心ですよっ! 大丈夫でしたか?」
「た、助かりました! 私、もうアイテムもSPも底を尽きかけてて……」
「呪紋使いの人がソロって結構キツいですからね〜。レベルの低いうちは気魂とか巻物、多めに持ってた方がいいですよ」


双剣士の少女はアイテム欄を開いたかと思うと、呪紋使いの少女に幾つかの気魂をプレゼントした。
突然の贈り物に呪紋使いの少女は戸惑うが、飽くまで双剣士の少女はにこやかな笑顔を崩さない。


「もうタウンに戻るところでしたし、取っておいてください」
「えっ……い、いいんですか?」
「どうぞどうぞ(笑)」
「あ、ありがとうございます! あの、とっても強いんですね!! 私、見ててちょっと感動しました!!!」
「えへへっ。鍛えてますからっ!」


シュッ。
親指を立て人差し指と中指を伸ばし、薬指と小指を折り曲げる、カイトと同じあのポーズを残して。
双剣士の少女はそう小さく笑いながら、去って行くのだった――――――――――――――――――――――――――







































「……というコトがあったんですよ。カイトさんみたいに強くなりたくて、なつめは鍛えに鍛えましたっ!」
「(その成れの果てがエッジマニアってか……。良かったんだか悪かったんだか)」
「ハセヲさん? 聞いてます? カイトさんの話はまだまだいっぱいあるんですよっ」
「まだあんのかよ……」


それが、君の響き。

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