「.hack//G.U.」と「コードギアス 反逆のルルーシュR2」と「LAS(LMS)」と「ゴッドイーター」と「仮面ライダーディケイド」の荒唐無稽恋愛活劇SSサイト(のつもり)。

「……アンタさぁ。いっつもイキナリ過ぎ」
「そう? そんなつもりないけど」
「本人に自覚がないのが! いっちばんっ!! タチ悪いのよっ!!!」


ダンッ!
振り上げれらた少女の拳がビリビリとテーブルを震わせ、木目の走る机上の、ビールジョッキを揺らす。
飲むことは出来ないし、味も匂いも存在しない代物ではあるが、震動で泡が下に垂れ落ちる分には、よく出来ている。
このゲームのグラフィッカーは良い仕事をしていると言えるだろう。


「自覚はあるつもりだよ。これでも」
「どの口がそれを言うかぁ〜っ!?」


大剣を背負った少女が喚いているので一時騒然となるが、
どうやら連れの少年との口論らしいと見受けると、男女間の諍いだろうと誰もが自己完結してしまい、酒場は再び活気を取り戻す。
酒場は出会いと別れの場所。
情報を求めてやって来る者もいれば、仲間を求めてやってくる者、ケンカ別れする者……毎日がその繰り返し。


「そういうトコロ、ガキの頃のまんまよね!」
「はは」


しかしビールが毀れることなど意にも介さず、少女は息を荒げて少年の顔に自身の鼻先を突き付け、のたまうのだ。
アンタは昔っからそうじゃないのよ、と。


「ちゅーかっ! どーして事前に、このアタシに相談しないワケ!?」
「怒ることないじゃないか」


木製の机に染みていく幾本ものビールの雫をチラリと見つめながら、
褐色の少女―――ブラックローズと向き合っていた紅い帽子の少年―――カイトは、微苦笑を浮かべた。


「海外留学なんて……。アタシ、てっきり、アンタこのまま……」
「このまま? 何?」
「うぐっ……」


ブラックローズの言葉が詰まる。
そうして、じぃっとカイトの瞳に見つめられたまま言葉を詰まらせ、次第におずおずとイスに座り直した。
バツの悪そうに視線を逸らし、カイトと目を合わせようとしない。
出会った頃から、どうにも彼の真っ直ぐな眼差しが彼女は苦手だった。


「言わなきゃ分かんないよ」
「……アンタ。
 高校出たら、アタシと同じ大学……入学するって言ってたじゃん」


淡い期待。
2014年現在、ブラックローズこと速水晶良は体育系に強い大学へと進学している。
将来的には父と同じく体育教師になりたいと思い、教職課程を履修中であった。
テニスもサークルに入って続行中で、美貌にも磨きがかかり、先輩後輩問わず告白してくる男達が後を絶たない……と言えば聞こえはいいのだが。


「……ウンザリなのよ。
 告白される度に『誰とも付き合う気ありません』って断るの」


ふてくされる動作(モーション)をして見せ、ブラックローズは辟易する。
高校時代から年上年下問わず告白されるコト多々だった晶良だが、
大学に入って2年目となる現在でも未だに晶良とお近づきになりたがる男は多い模様で、学部・学年が違うにも関わらず講義中に話しかけてる輩も居る程で。
飲み会などでは同性の友人に頼んで壁を作ってもらうことも少なくないし、
教えてもいないのにスマホに見知らぬ男からのLINEメッセージが届いていたりと、とにかくウンザリしているのだ。


「アンタが入学してくれれば……彼氏のフリ、してもらえるし?」


飽くまで自然に、それとなくブラックローズはカイトへの好意を露わにし、促す。
どーしてもって言うなら、フリじゃなくてもいいけどね、と付け加えるのを忘れずに。


「今からでも遅くないわ。海外留学なんて止めちゃいなさいよ!」


かなり遠い言い回しではあるが、つまりはこういうコトなのだ。
いい加減4年越しの片思いを終わらせて、一緒に大学生活(キャンパスライフ)を楽しもう―――――――
さすがに高校はブラックローズが神奈川、カイトが東京と無理があったが、大学ならば……
晶良は高校・大学と彼氏を作らず、健気にもカイトを待っていたのだが、


「でもさ、僕なんかが彼氏のフリしなくても、他の人に頼めばブラックローズなら引く手数多だと思うけど」
「いや、だからね……アンタだと何かと都合がいいと言うか、口裏を合わせやすいって言うか……」
「何か面倒そうだなぁ、ソレ」
「面倒って……」


結果はこんなものである。
ハッキリと想いを口にしないブラックローズにも責任はあるだろう。
が、彼女の気持ちを4年もスルーし続けるカイトにも問題はあった。
どう見てもお似合いで、伝説のプレイヤーとして名を馳せている両者が未だ“友達”止まりなのは――――――そういう経緯があるのだった。


「友達じゃダメなの? 別に彼氏のフリする必要ないと思うけど」
「あー言えば、こう言うわね……アンタも」
「面倒なものは面倒だしなぁ」


カイトも今に至るまで異性との交際はしていなかった様だが、
それは単に「女の子って面倒だなぁ」という彼独自の考えによって交際を避けていたという理由があってのこと。
決して逃げ口上ではない。


「高校に入ってから何人かの先輩や後輩に告白されたけど……全部断っちゃったし(苦笑)」
「……鬼ね」
「ブラックローズだって高校の頃、告白されても断ってたって言ってたじゃないか」
「そ、それは……好みじゃなかったってゆーか……」


2012年に高校に入学して以降、カイトに“思いのたけ”をぶつけた女生徒は年上年下問わず“思いの外”多く、
真面目な話をすれば、彼の卒業を惜しむ女生徒は少なからず存在しているのである。
運動神経抜群で人当たりがよく、リーダーシップもあって他人へのケアも怠らないし、成績も悪くはない。
何より、男女問わず惹きつけられる魅力が彼にはあった。


「じゃ、僕も好みじゃなかったってコトで。
 女の子の友達ならブラックローズ達が居るし、今更って感じもあるしさ(苦笑)」
「……アンタ、自分が贅沢者だって分かってないでしょ」


それだけに彼に告白をしても報われず、枕を涙で濡らした女生徒が多いと言うのも頷ける。
尤もカイトからすれば“迷惑な話”であり、次の日になれば告白してきた相手の顔すら忘れていたが――――――――


「僕もやりたいコトがあっちで見つけられそうな気がするんだ。
 世界中の人達と関われるような、何かをさ」
「そうは思えないけど……ハァ」


ビールジョッキを指先でカツカツ弾きつつの素っ気ないカイトの態度に、ブラックローズは肩を落とす。
彼としても譲歩する気は全くなく、高校卒業と同時に日本を去る決意は思った以上に固いらしく、


「ヘルバ姐さんと一緒とか……何か、腑に落ちないし」
「それ、バルムンクにも言われた(苦笑)」


言われてみれば荒唐無稽な話だ。
まずは海外留学。大学に通いながらサッカーがしたいとのこと……それは理解出来る。
最近は御無沙汰だが、新里FCのホームでの試合を2人で観戦しに行ったコトが数回あるし、その点についてはブラックローズも妥協の余地があった。
が、


「今になってエマ・ウィーラントについて調べるとか……驚くの通り越して呆れるわよ」
「ウチとソト、両方から調べたいんだよ。何か新しい発見があるかもだし」


専門家のヘルバが居てくれれば、心強いじゃん、と。
カイトが闇(ダック)の女王の名を冠するハッカーとリアルでも交流があるのは
ブラックローズも知っていたが、よもや自分にも黙って2人で結託(?)し、海外へ出向こうとしていたのは寝耳に水で。


「……今のアンタ、まるでハロルドだわ」
「僕がハロルド? どの辺が?」
「……優先順位の一番が、アウラなトコロよ」


アウラに関する手掛かりを求め、ヘルバと共に欧州へと旅立つ。
ブラックローズが苛立つ根源的理由はそこにあるのかもしれない。
“4年前から”、カイトの傍には常にアウラの影があった。
今もそれは変わらず、彼の右腕には女神に託された不可視の腕輪が碧色の輝きを放ち続けている。


「もう半分くらい“あっち側”なんじゃないの? アンタ……」
「……かもね」


少しシニカルに笑うと、カイトはなみなみと満たされたビールジョッキに手を伸ばした。
而してジョッキに口を付け、泡立つ麦酒をゴクゴクと飲み干す動作(モーション)をブラックローズの前でして見せる。
数回喉を鳴らし、口の周りに付いた白い泡を手で拭うと、


「うーん。やっぱり苦い(汗)」


麦芽にホップを加え発酵させたビールならではの苦みに、舌を痺れさせるのだった。
対して、カイトの一挙一動を見守っていたブラックローズの反応と言えば、


「無理しちゃって……未成年のクセに」


だった。


「ブラックローズも飲んでみれば分かるって」
「いや、アタシは“アンタと違って匂いとか味、分かんない”から……」
「サークルの飲み会、結構行ってるんでしょ?」
「行ってるけど……リアルで飲むビールと、こっちで飲むビールの味がイコールとは限らないでしょ。
 ……アンタが特殊なのよ」
「はは」


何時の頃からか。
ゲームにも関わらず《The World》の中でもカイトが五感を発揮する様になったのは。
モルガナ八相を斃して以降か、それよりも前だったのか。いずれにしても希有な事態であるコトには間違いが無い。


「(本人は気にしてないみたいだけど……絶対に異常じゃん!)」


2010年。
モルガナに魅入られ、ゲームに取り込まれてログアウトが適わなくなった呪紋使いの司が五感を有していた様に。
カイトもまた徐々にではあるが“この世界に取り込まれつつある”のか。
ブラックローズは、密かにソレが不安でならない。


「……“アウラに引っ張られてるんじゃないの?”」
「アウラが僕を? まさか」


それはブラックローズの考え過ぎ(苦笑)と、彼は言うけれど。
やはりブラックローズの懸念は増していく。


「(どんどん……カイトはこの世界に馴染んでいってる……)」


異界からの誘いが、彼の存在をより高次へと。
ソトより、更にウチへと導こうとしているのならば。
肉体を棄てたハロルド・ヒューイックの様に。
黄金の麦畑より旅立ち、二度と戻らなかった“影持つ者”、勇者サヤの様に。


「(何か……もう、コイツとはこれっきり会えない様な気がする……)」


いずれ彼も現実世界から姿を消してしまう日が来るのではないか。
速水晶良は、まさにそれを恐れているのだ。
カイトという少年の元型(アーキタイプ)は、現実ではなく此処(《The World》)で形作られている。
その精神の射程は世界の核心に、あまりに触れ過ぎてしまっていた。
“いつ軛を飛び越えてしまってもおかしくない位置”に、彼は立っているのだ。
そこに立てる条件は、唯一無二。


「(アウラに……)」


愛されること。
アウラ(女神)という名の世界に。
世界という多様性を認め、受け入れたカイトにこそ、その資格がある。
ハロルドが為し得なかった偉業を、異形の力を以って為し得た、腕輪を持つ救世主。
そしてアウラの愛(エロス)の方向性(ベクトル)は、常にカイトに向けられていたと、今にしてブラックローズは思う。
比喩的な意味でも、霊的な意味でも―――――――――“カイトはアウラに愛され過ぎた”。
カイトの物語はアウラに編纂され、いつの間にか4年もの歳月が経っていた。
アウラはどんな時でもカイトの物語の中心に居た。
それは同時に、カイトの物語の中心にブラックローズが居なかったコトを意味する。
伝説のプレイヤーとして両者セットで今日まで謳われながらも、現実は違っていたのだ。
未帰還者を救う行為は崇高にして、不可避の通過儀礼。
ただし“本当の意味での祝福を受けるコトが出来たのはカイトのみだった”。
故に。
女神の伴侶となる霊的資質が、彼には十二分に備わっているコトを、晶良は識っていた。


「……アタシじゃ、駄目なワケ?」


居ても経ってもいられず、ブラックローズは唐突に切り出す。


「アンタの優先順位の一番って……アタシじゃダメなの?」


4年前から、ずっと聞こうと思っていて、聞けなかったコトがある。
カイトの想いの方向性(ベクトル)は、誰に向けられているのか。
敢えて、この場で問い質したいとブラックローズは思った。
有耶無耶なまま年月だけを重ねてしまった過去の自分は弱い。
しかし、今なら臆せず、彼から答えを聞けると――――――自分の立ち位置を、ハッキリさせる為にも。


「晶良はいつも一番だったじゃないか」


カイトの応対は素っ気なさ過ぎる程に、短いもので。


「……そうは思えないんだけど」


ブラックローズの不安を、益々掻き立てるのだった。


「いつも一緒に遊んでたでしょ」
「そりゃ、そうかもしれないけどさ……」
「晶良が神奈川からこっちに来た時、僕が何度も駅まで迎えに行ったし」
「う……」
「花火大会とか、サッカーの試合とか、映画とか……イロイロ見に行ったよね、この4年の間に」
「そ、そうだけど……」
「神奈川で晶良のテニスの県大会があった時は、毎回応援に行ったし」
「そ、そうかもしれないけどっ!」
「フツーはネットで知り合った子と、ここまでやらないと思うけどなぁ」
「うぐっ……!」


全く以ってその通りなので晶良も頭が痛かった。
よくまあ4年もの間、長続きしたものである。
異性からの告白をことごとく断ってきた晶良からしてみれば、異常とも言える交遊期間っだった。
大学に入ってから改めて自分の“身持ちの固さ”に気づいたので尚更だろう。
男性経験が二十歳を過ぎても皆無な辺り、真性なのかもしれない。


「でっ、でもっ、アタシとしては……
 もっとこう、違う付き合い方、希望ってゆーか……」


一緒に出かけたり、食事をするだけが異性間の交遊ではない。
少なくとも法律が許す限りでは、もう両者ともに結婚に適した年齢に達している。
無論この場合、晶良が示唆しているのは結婚などではなく、その前段階についての交際に関して、だが。


「?」
「だ、だから……分かるでしょ。私、もう二十歳なのよ。大人の女なワケ」
「飲酒も喫煙もOKだね(苦笑)」
「ア、アンタ……わざとやってんじゃないでしょーね!?」


成人式にも出席し、成人女性として認められた晶良だが、何故か釈然としない。
彼氏が居ないせいだ、と周囲の友人は言うが、果たしてそうなのか。
そんな単純な理由で割り切れる問題とは思えなかった。
強いて言えば、どんな異性にも魅力を感じられないコトが問題なのかもしれない。
自分に好意を寄せる異性を見ると、どうしてもカイトと比較してしまう。
何とも選り好みの落差が激しいと言うか……端的に言えば、どの異性も晶良の御眼鏡に適わない以前の問題で。
間近でカイトと過ごした4年間を思うと、今更異性と交際に至っても、何の面白みも感じないであろうことが明白で。


「(いくら何でも……鈍感ってレベルじゃないでしょーがっ!)」


かと言って、いつまで経ってもカイトは晶良の想いをスルーし続けて。
何気に知らず知らずのうち、恋の深みにハマり過ぎていた晶良であった。
もがいてももがいても、決して届くことのない手を伸ばし続けていて――――――――


「僕は……晶良と会えて、良かったと思ってるよ」
「え……」
「ヤスヒコがスケィスにやられて、これからどうしようって迷ってた時……マク・アヌで君と出会えた。
 きっと、そういう運命だったんじゃないかな。
 僕達は――――――出会うべくして出会った。
 例え、あの日に出会わなくても……晶良とは、何処かで必ず出会っていた……そんな気がする」


行きつく所は、同じだったから、と。


「カイト、アタシ……!」
「僕、もう行くよ。待たせちゃってる人がいるから」


立ち上がったカイトの背中は遠く。
ブラックローズの伸ばした手は、何も掴めず。
空振りに終わる。
呼び止めるだけ無駄だと悟ると同時に、ブラックローズは重く息を吐いた。


「アンタ……自分勝手過ぎ! 
 アタシの気持ち……アタシがこの4年間、アンタに対して抱えてた気持ち、本気で考えたコトないでしょ!
 アンタ……いつも、いつも、いつも、いつもっ!! ……いっつも、アウラのコトばっかり!!」


強がりを投げかけるのが精いっぱいで。


「でも待っててくれるんでしょ、晶良は」
「う……」
「晶良が強がりを言った後は……いつもそうだったし(苦笑)」


その強がりすら見透かされていて。


「……3年だけ、2017 年まで待ったげるわよ。
 それ以上待たせたら……ホントに……ホントに嫌いになるかんねっ!?
 見つかるかどーか分かんないけどっ、アンタよりイイ男見つけて、自慢してやるんだからっ!」
「はは。ありがとう……晶良」
「……ばか」


晶良は、つくづく。
自分が目の前の少年に参っているのだと、自覚させられてしまった。


【 TO BE CONTINUED... 】

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