「.hack//G.U.」と「コードギアス 反逆のルルーシュR2」と「LAS(LMS)」と「ゴッドイーター」と「仮面ライダーディケイド」の荒唐無稽恋愛活劇SSサイト(のつもり)。

心というものは、それ自身が一つの独自の世界なのだ。


地獄を天国に変え、天国を地獄に変え得るものなのだ。


―ジョン・ミルトン著「失楽園」―



「よくないなぁ……アウラ。また屋敷の中を家探しかい?」
「そんなの、あたしの勝手でしょ……」
「また『お仕置き』が必要みたいだね? この前みたいに、さ」
「ご主人様だからって良い気にならないでよ! ……ご主人様らしいコト、何もやってくれないクセに!」


ベッドルームに放り出されたメイドの少女と、少女を見下ろす高貴な装いの少年が居た。
部屋には何本かの蝋燭立てがあるだけで薄暗く……窓から差す月明かりも今日は幾分陰りがあるように見える。
メイド服の少女はベッドに身体を横たえながらも警戒の目を緩めず、眼前の少年を凝視しているのだった。
この屋敷の主人、つまりは彼女の“ご主人様”である少年―――――――――――――――――――――カイトを。


「セグメントが見つかったら、こんな屋敷すぐに出て行ってやるんだからっ!」
「でもまだ見つからないんだよね? ……見つからない以上、キミはここに居るしかないんじゃないかな?」
「そ、それは……」
「外にはキミを狙う怖いヒトがいっぱい居るんでしょ? なら、世界で一番安全なのは僕の屋敷だけだと思うけどな」
「うぅ……」


少女の名はアウラ。カイトに雇われ、この屋敷で働くハウスメイドの少女。
彼女は継母(ままはは)に命を狙われており、八人の殺し屋に追われているところをカイトに匿ってもらっているのだ。
いくら殺し屋でもカイトの屋敷には近づけず、以来アウラは彼をご主人様とし、屋敷で奉公するメイドとなったのである。
が、そこまでならただの美談で終わっていたはずなのだが、まだ続きがある。
アウラは元居た家を逃げ出す時、セグメント(切片)という大事なモノを持って逃げていたのだが、
あろうことか彼女のご主人様、カイトは珍しいものが大好きで、アウラの持っていたセグメントを自分のコレクションにしてしまっていた。
しかも、彼女が取り返すことの出来ないように秘密の場所に隠して……。
そのためアウラはこうやって毎晩、カイトの隠したセグメントを探す為に屋敷の中を歩きまわっていたのである。


「それに……本当はもう、セグメントなんてどうでもよくなってるんじゃないの?」
「馬鹿なこと言わないで! あれは、あたしにとって本当に大切なものなの!! 探さなきゃダメなのっ!!!」
「その割にはいっつも同じ場所を探してるよね(苦笑) ……まるで僕に家探しをしているのを見つけてもらいたいみたいに、さ」
「そんなことないもん!」
「キミは僕に『ご主人様らしいことを何もやってくれない』って言うけど……いつも可愛がってあげてるじゃないか。
 美味しい食事も綺麗な服もあげて、生活を保証してあげてるのて何が不満なんだい? ね、アウラ」


じりじりとカイトが迫る。ベッドの上のアウラは全く身動きがとれないようだった。
恐怖のあまり身が竦んでしまったのか、それとも“あえて身動きをとらない”のか。
助けを呼んでも、この屋敷にはカイトとアウラしか住んでいない。外は土砂降りの雨だが、不思議と音は聞こえなかった。
この屋敷は外界とは全く違う時間を生きることの出来る場所なのだと、奉公が決まった時に主人から聞かされた気がする。
カイトは以前屋敷に住んでいたオルカという男から、この屋敷を買い取って住んでいるのだとも。


「本当は僕と一緒に居たいんでしょ?」
「ち、違う……! あたし、貴方みたいなご主人様なんて、嫌いっ!!」
「キミは口ではそう言うけど、一度も僕を拒んだこと無いじゃないか。
 最後は決まって『ご主人様、ご主人様!』って泣き叫んで……」
「カイトが言わせたいだけじゃない! あんなの、本心からじゃない!!」
「そうかな?」


ドサッ。ついにカイトの両手がアウラの両肩を捉えた。
そのまま彼の重みと引力により、アウラはベッドに組み伏せられてしまう。
メイド服がシワになるのも構わず抵抗を続けるアウラだったが、観念したのかやっと大人しくなった。
蝋燭の灯りでアウラの銀色の髪が照らされ、薄暗い中でも仄かに赤く輝いて見えた。
メイド服を纏った少女は悲鳴をあげても誰も助けに来てくれないコトを経験で識っている。
故に、こうなってしまった以上は抵抗をしても無駄なことを悟っていたのだ。同時に、このご主人様からは逃れられないコトも。


「アウラ……素直になりなよ」
「イヤ、こんなの……やだぁっ!」
「その気になれば僕をひっ叩いて部屋から出て行くことだって出来たでしょ。でもキミはそうしなかった……」
「!」
「アウラも僕と仲良くなりたいんだよね? 僕に可愛がってもらいたい……違う?」
「ちっ、違……」
「違わないよね?」


さもそれこそが当然なのだと言わんばかりに言いきったかと思うと、カイトはアウラの顔との距離を詰める。
覗き込むように彼女の整った顔を見つめ、そして唇を奪った。
当初は目を見開いて困惑気味だったアウラも数秒が経過すると、カイトに合わせて顔の角度を変えたり、首に手を回したりと
彼とのキスが初めてではないコトを伺わせる動作を見せ、ご主人様の期待に応えるのだった。


「んっ……ちゅっ……はむっ……」
「っ……んぐっ……んにゅ……!」
「(必死になっちゃって……可愛いなぁ)」


時折、唇と唇が擦れる音や、歯のぶつかり合う音、舌と舌が絡み合う淫靡な音が部屋の中に響く。
カイトが優しくヘッドレスごと頭を撫でてやるとアウラはくすぐったさそうに身体をよじった。
まだ年端もいかぬ少女ながら彼女は美しく、ご主人様から与えられたメイド服も当然の如く可愛らしかったが
こうやってベッドの上で見せる別の顔も、カイトがアウラを手放したくないと思う要因の1つだろう。
目尻に涙を溜めながらも、つい数十秒前まで敵意剥き出しだったアウラは子猫のようにすっかり従順なメイドとなっていた。
まだ発展途上の胸を触られようが、スカート越しに太ももを掴まれようが、全く抵抗を見せる気配が無い。
それどころか、もっともっとと言いたげに唇と身体を押しつけて、ご主人様を挑発しているようにも見える。
これもカイトの“調教”が為せる業なのか。


「んくっ……ふふ。さっきまであんなに嫌がってたのにね……アウラ?」
「……この御屋敷からは出してもらえないんでしょ、どうせ」
「まぁ、そうだね」
「だったら……癪だけど、外に出て殺されるより、貴方に可愛がってもらった方がマシ。
 べ、別に貴方のコト好きだとか、そんなんじゃないんだからねっ!? カイトみたいなサイテーのご主人様、前代未聞よ!!」
「アウラに褒められる日が来るなんてなぁ(笑)」


彼女がこのテの戯言を言うのはカイトも分かっていて、軽くスルーして受け流してしまう。
夜のお仕置きタイムはこれからは本番なのだ。今のキスは前戯にもなっていない。


「じゃあ今夜も可愛がってあげようかな。
 前の晩みたいにアウラが僕のが欲しいって泣き喚いた時のように……たっぷりと(苦笑)」
「〜〜〜っ!」
「アウラは僕が大好きだもんね?」
「……ご主人様としても人間としてもサイテーだけどね」


布地の上から触るよりも直に触れたいと思ったのか、カイトは行動を開始する。
アウラの首に巻かれたタイをシュルリと外し、次は纏ったメイド服の胸元のボタンを一つずつ外し始めた。
彼女のサイズにあったメイド服を用意したつもりだったが、
やや胸のサイズが大きいため、ボタンを外すとすぐに彼女の白い肌が露わになってしまう。
当然ながら下着の類は一切身に着けさせていない。これもカイト流の“調教”の一環である。
蝋燭の明かりで浮かび上がる、胸元を露出したアウラ。まるで人形の様に完璧な肢体を持っているのが目に見えて理解(わか)る。
残念ながら女性の象徴とされる双つの膨らみは掌で包めばスッポリと納まってしまうサイズに留まっていたが、それでもカイトは全く構わなかった。
別に彼がそういう女性が好みだからではない。彼はアウラという少女そのものを愛しているからに他ならない。
精神論的なものになるかもしれないが、他人から見れば歪んだ愛情表現に見えても、彼は彼なりにアウラを大切にし、可愛がっていた。
アウラも彼の優しさを識(し)っている。
だからこそ、彼をこうやって毎晩のように求めていた。
素直になれず、わざと彼を怒らせるようなマネをして部屋に来る理由まで作って……だ。


「アウラ。ご主人様って言ってみて」
「イヤ……」
「これでも?」
「あっ、あぁ……! ん、くぅ……やぁぁんっ……!?」


アウラの小さな胸を覆うカイトの手がクニクニと卑猥に動いたかと思うと、少女の口から甘い嬌声が毀れた。
硬さと軟らかさが程良い弾力を生み出し、カイトの掌にこの上ない感触を伝わらせるアウラの双丘。
時には薄桃色の先端部をピンと引っ張ったりコリコリと摘まんでみると、アウラの甘い吐息は更に増してゆく。
無論、“アウラはこうされると理解(わか)っていて、彼をご主人様と呼ぶのを拒んだ”のだが。


「アウラは本当に反抗的なんだから。
 そんな生意気なメイドには……この前あげたばかりだけど、また“お給料”をあげなきゃね」
「お給料……」


ゴクリとアウラが喉を鳴らす。
これから何が起こるのか、彼に何をされるのか、彼に何を与えられるのか……想像してしまい、思わず喉を鳴らしてしまっていた。


「ほしい? アウラ、お給料がほしい?」
「ほし、い……」
「じゃあ、お願いしなきゃ。『ご主人様、お給料ください』って」
「カイトぉ……ご、ご主人様……お給料……アウラに、ください……」
「ん〜。元気が無いなぁ」
「ひゃんっ!?」


イマイチ覇気の無いアウラに、不意打ちを与えるカイト。
指で摘まんでいた胸の双つの先端をぽよんと離したかと思うとアウラが手で胸を覆い隠す暇も与えず、先端に喰らいついたのだ。
わざとアウラに聞こえるようにチュウチュウと音を立てて一方を吸い、もう一方は再び自身の掌に収めて弄ぶ……これではアウラも堪らない。
先端部はカイトが吸い上げるごとに、指で弄るごとに硬度を増してゆく一方である。
やがて一定時間の吸い上げが終わったかと思うと、次はもう一方の先端部がターゲットに切り替わるだけだった。
唾液に塗れて少しばかり軟らかくなった片方の先端部も、再び指で弄られることで元の硬度を取り戻してしまう始末。
アウラの嬌声が耳元でガンガンに響くのも気にすることなく、カイトは彼女を愛し続ける。
彼女が“お願い”を彼にするまで、ずっとこの責め苦は続くのだろう。尤も、アウラ自身がコレを望んでいるのなら話は別だが。


「ちゅっ……んちゅっ……アウラ、お風呂入ったばかりでしょ。何だか甘い味がするよ……匂いも」
「はぁっ、はぁ……やだぁ……やあぁぁあぁ……!」
「早く言っちゃった方が……ちゅぱ……んちゅ……いいと思うけどなぁ(苦笑)」
「ご主じ……ん……様……」
「うんうん」


トロンと瞳を潤ませながら、ようやくアウラはその言葉を口にした。
何もかもがカイトの思惑通りに進んで行っている。



「お給料……くださいっ。
 あたしにくださいっ! ご主人様のお給料、あたし、好きぃ!! 好きなのぉ!!!」
「好きなのは“お給料”だけかな?」
「ご主人様もぉ、カイトも大好きぃ!! 
 あたしのコト可愛がってくれる、カイトがぁ……ご主人様が、大好きですっ!! だ、だから……!」
「あはは。よく言えたね、アウラ」



チュ〜ッとひと際大きく胸を吸い上げ、そのままカイトはアウラと唇を重ねる。
彼の口内から唾液と共に、先程彼が吸い上げたアウラの胸の残滓まで流し込まれてゆき、やがてアウラは喉をコクンと鳴らしソレを全て飲み干した。
同時に、こうやって唇を重ねている間にもカイトはアウラの纏ったメイド服を少しずつ脱がせてゆく。
ただ、全て脱がしてしまうと情緒が無い。
カイトなりの拘(こだわ)りなのか、全部脱がさずに飽くまで半裸が好みらしい。
スススッ、と長いスカートは膝まで捲くられ、アウラの白く細い脚が露わになっていく。
ストッキングも簡単に脱がされてしまっていた。
荒い息使いのままベッドに横たわるアウラを、彼女に跨って愉悦の笑みを浮かべるカイト。
お仕置きはこれからがクライマックスなのか。


「じゃあ、お給料をあげようかな……」
「あ……は、はいっ……」


カイトが自身の衣服に手を掛け、
ボタンを外し始めると共に―――――――――――――――――彼女も目覚めの刻を迎えた。










「ハァッ、ハァッ! ゆ、夢……!?
 なんつー夢見てんのよ私は……フロイト先生もビックリだわ……」


彼女、速水晶良の穏やかな日曜の朝は悪夢から始まった――――――――――――――――――――――――






**********************






「あ、ブラックローズ! やっほー」
「おはようございます。ブラックローズさん」
「あぁ……うん。おっす……」
「どしたの? 日曜の朝だってのに暗いなぁ(汗)」


今日は少し趣旨を変え、マク・アヌではなくカルミナ・ガデリカで落ち合うことになっていた2人。
言わずもがな、カイトとブラックローズの2人である。ただし、今日はもう1人ゲストが居た。
カイトの傍らに佇みブラックローズの到着を待っていた重斧使の少女……寺島良子である。
出来れば良子よりも早く待ち合わせ場所に駆けつけて
カイトとダベろうと思っていたブラックローズこと速水晶良だったが、完全に出鼻をくじかれてしまったらしい。
それもこれも、今朝見たあの夢が原因なワケだが。
せっかく部活の練習の無い休日を選んで予定を開けていたのに、とんだ災難だ……モニターの前の晶良は大きな溜息をつく。


「ね、ブラックローズは見た? 今朝の『仮面ライダーオーズ』」
「あぁ……そう言えば幸太が見てたわね。ごめん、アタシよく見てなかったかも」
「今朝のお話はタジャドルコンボが大活躍したんですよ。それにとっても泣けるお話でした……」
「ふーん……」


どうやら、2人とも今朝の8時から放送されていた「仮面ライダーオーズ」なる番組の話で盛り上がっていたらしい。
カイトが興味を持つものなら何でも新鮮に思えてしまう天然培養お嬢様の良子も、彼の勧めで見始めたところハマってしまっていたのだ。
かく言う晶良の11歳年下の弟、幸太も今年からは小学1年生だというのにテレビに齧りつく様に見ていた。
しかし残念ながら晶良はメダルを集めるライダーどころではななかったのである。
例の夢のせいで食事も思う様に喉を通らず、
挙句の果てには夢の内容を思い出してしまい、危うく食事中に悶絶死寸前まで陥ったのだ。
他人のエッチを夢に見るなんて自分はどうかしてしまったんだろうか。
どよ〜んとしたオーラを漂わせながらも約束を齟齬にすることも出来ず、
已む無くブラックローズは今朝の夢の出演者の一人、カイトの元を訪れたのである。


「じゃ、今日はどうしよっか」
「あの、カイトさん。
 出来れば良子はレベル上げをしてみたいのですが……いつまでも低いレベルですと、カイトさんにご迷惑がかかりますし……」
「構わないよ。ブラックローズもそれでいい?」
「えっ? えっと、何? 何なのなん!?」
「……だから、今日は寺島さんのレベル上げを重点的にして遊ぶってコトでいい?」
「う、うん。アタシもそれで構わないわよ」


心ここに在らず。全く聞こえてなかった。
カイトを見ると、否応無しに今朝の夢を思い出してしまう。
ちょっとばかり身なりの良い格好をした貴族のような彼と、メイド服を着たアウラのベッドの上の戯れを――――――――――――――――


「あの、ちょっと」
「うん? どしたの」
「ダンジョン行く前にさ、準備しとかない? 
 拾った武器とか防具、トレードで回復とか補助アイテムに変えたいし」


ややぎこちなかったが、ブラックローズは何とかカイトと向き合って会話をすることに成功する。
……この優しげな少年が、晶良の夢の中でアウラのご主人様とは、とても信じられない。
コレはやはり、アレだろうか。
ブラックローズがカイトに「アンタ、アウラをどう思ってるの?」と聞き、彼が自身の持つ様々なアウラ像を語ってみせた、例のあの件である。
確か、あの会話の中で「アンタの思い浮かべる『メイド属性のアウラ』を教えなさい」とブラックローズはカイトに言った。
そして彼は彼の思い描くメイドなアウラを彼女に話して聞かせた。
つまり、あのカイトとアウラが淫らな行為に耽っていた夢の原因はカイトにあるワケだ。
しかし彼を責め様にもどう責めればいいのか、ブラックローズには皆目見当がつかない。
よもや「アンタが変な話したせいでアタシまで変な夢見ちゃったじゃない!」などと言えるはずもなく。


「て、寺島さん!」
「はい? どうかされましたか」
「その、一緒にトレードしに行かない? 寺島さんのPC可愛いし、一緒に居ればレートとかマケてくれそうだしさ」
「え、えーっと……カイトさん……」
「2人で行っておいでよ。僕は道具屋で要らないアイテム、監禁しとくから」
「かっ監禁っ!?」
「あ、打ち間違えた(苦笑) 換金しとくから」


なんて間違いしてんのよアンタはぁ〜ッ!? 
と思わず叫びそうになるブラックローズだったが良子の手前、何とか堪えた。
それでなくとも今は日曜の朝なのでルートタウンを行きかうプレイヤーは多い。
恥をかくのはブラックローズとてゴメンなのである。


「ほら、行くわよっ!」
「ブ、ブラックローズさん!? カ、カイトさんっ、カオスゲートでお待ちしていますから!」
「うん。僕もなるべく早く行くよ」


良子は半ば強引にブラックローズに連れ去られ、ルートタウンの彼方へと消えていってしまった。
残されたカイトはフゥと小さく一息つくと、先程の言葉通りに道具屋へとPCを走らせる。
それにしても今日のブラックローズはいつもと違って、ちょっとテンションが低いなぁ……そんなコトを考えながら。
普段は「女の子って面倒だなァ」主義のカイトも、今日ばかりはブラックローズの態度が気になるようだった。









「これだけ離れれば大丈夫かしら……」
「あの、ブラックローズさん? どうかされたんですか」
「……寺島さんってさ。お嬢様よね?」
「えっ」
「おっきな御屋敷に住んでてて、高級車で学校の送り迎えとかしてもらってるお嬢様よねっ!?」


良子の手を引いてズンズン進んでいたブラックローズは人気の少ない街の奥までやって来ると、ようやく手を放すのだった。
そして良子に面と向かって、妙なことを言い出す。
これには良子も面喰らってしまっていた。
お嬢様……確か、最初にカイトとメールをしていた頃、彼も良子の身の上を知って、そう言いながら驚いていた気がする。
無論、彼は人を身分で判断するような男性(ヒト)でないコトは良子も理解(わか)っている。
でなければ彼ともっと一緒に遊びたい、彼とずっと一緒に居たいなどと、一日中考えてはいないだろう。
しかし、今になって何故? 
どうしてブラックローズはそんなコトを言い出したのか?


「えぇっと……お嬢様、というものの定義がよく理解(わか)らないのですが……」
「でも御屋敷には執事とかメイドさん、居るでしょ!?」
「し、執事とメイドさん、ですか? いえ、良子のおうちには……」
「居ないの!?」
「お、お手伝いさんなら何人か居ますが……。ブ、ブラックローズさん? お顔が近いです……」
「……お手伝いさん、か」


へぇ、そうなんだ……。
とでも言いたげに呟き、やっとブラックローズは良子を視線から外した。
一体なにがどうしたと言うのか。そもそも自分を誘ったのはトレードのサポートでは?
あーでもない、こーでもないと唸るブラックローズを見つつ、良子は頭上に幾つもの「?」マークを浮かべるのだった。


「寺島さん。ご主人様、ってどう思う?」
「ご、ご主人様?」
「あーつまりはね、旦那様ってコトよ。
 寺島さんの家のお手伝いさんだって、寺島さんのお父さんのコトを『旦那様』って呼んでるんじゃないの?」
「あぁ、そういうコトですか。そうですね、確かに皆さん、父を『旦那様』と呼ばれていますが……」
「じゃあさ。もしよ? もしカイトが、寺島さんのご主人様になったらどうする?」
「カッ、カイトさんが、ご主人様……ですか?」


やや良子は俯き加減になる。「それはどっちですか?」と言いたそうな表情(カオ)だ。
つまりは良子が「奉公人」としてカイトをご主人様と呼ぶのか……
それとも伴侶として「ご主人様」と呼ぶのか、ということを意味している。
出来れば後者でありたいが、前者でもそれはそれで良いのでは……と思う辺りが良子らしいのだが。


「そ、ご主人様。寺島さんはアイツのメイドで、ご主人様のカイトに仕えてんの」
「良子が……カイトさんのメイド……」
「怒らないでね……? 
 メイドの良子さんはすごいドジで、ご主人様の言い付けでお使いに出されたのに、道に迷って結局何も買わずに帰って来ちゃうワケ」
「りょ、良子はメイドになっても方向音痴なのですね……」
「そうそう、そうなの。
 ……でね。言い付けを守れなかった良子さんはご主人様のカイトに罰として“お仕置き”されるのよ」
「お仕置き……? 晩御飯抜きとか、お尻ぺんぺんとか、倉庫の中で反省……などでしょうか?」
「そんな甘っちょろいもんなワケないでしょ!
 いい? つ、つまりね……ゴニョゴニョ……して……ベッドで……ゴニョゴニョ……されちゃったりするのよ……」
「えぇっ……!?」


何が「えぇっ」なのか。
とりあえず超天然お嬢様の良子でも、思わず端末の前でコントローラーを落とし、
赤く染まる頬を抑え動揺してしまう内容なのは間違いないようだが。
つまり要約すると、ブラックローズは今朝見たカイトとアウラの卑猥な戯れの夢を、アウラから良子に出演をシフトして話してみせたのである。


「カ、カイトさんは……そんなコトしませんっ!」
「いや、だから例え話だって!」
「ですが……」
「まぁアタシが言いたいのはさ。“そういうコト”しちゃうご主人様でも……好きでいられるかな、って」
「良子は……カイトさんを信じていますし……。
 ……それに、カイトさんがご主人様なら……そういうコトをされても……むしろ……ポッ」
「(……聞く相手を間違えたかしら。なつめちゃんの方が良かったかも)」


が、なつめに聞けば「なっ、なっ、なつめがカイトさんのメイドですかっ!?」と良子以上の反応を見せるのは明らか。
どう考えても良子より話をオーバーに捉えるに決まっている。
やはり人選的には良子で正解かもしれない。正解かもしれないのだが……。
どうにも彼女もズレているだけに、彼女の示した反応も怪しいものがある。
どうしてそこで頬を染めるモーションをするかなぁ……と思わざるを得ない。


「あの……ブラックローズさん? 
 どうしてそんな話を? その、カイトさんがご主人様だなんて……」
「……何て言うか、そういう夢を見たのよ。
 相手はあえて言わないけど、その……カイトがご主人様やってた夢ってゆーかさ……」
「はぁ」
「それが物凄いリアルでさ……だからさっき、アイツと顔合わせづらかったってゆーか……ナ、ナイショだからね!?」
「わ、分かっています。良子は口が固いほうですので」


……大丈夫だろうか?


「もしかすると、それはブラックローズさんの願望なのでは?」
「は、はぁっ?」
「以前、夢に詳しいお友達から伺った話なのですが……稀に、抱いている願望を夢として見ることがあるのだとか」
「つ、つまり……アタシがカイトのメイドになって、カイトをご主人様って呼びたいって思ってるってコトッ!?」
「い、いえ、飽くまで一例として……」
「アッ、アタシがカイトのメイドォ!? ……これが私の御主人様ってコト!? 
 あ、ありえない……絶対ありえないでしょ……そりゃ中の人的にはアリでしょーけど!」


確かにブラックローズはカイトが好きかもしれない。
ただ、“かもしれない”の段階であり、まだ本人にもそれが親愛の情なのか愛情なのか判断がつかないでいたのがマズかったらしい。
自分のカイトへの想いが実は、彼女本人の奥底に眠っていた……マゾ的な願望から来るものだったとしたら?
今までの自分を全否定することになってしまう。
つまりそれはカイトをご主人様として慕い、
彼に仕えるメイド(というかもう奴隷みたいなものだが)として、お仕置きしてほしいという切なる願い。
……冗談では無いッ!!!




「ぬぅわにぃが、ご主人様よぉ―――――!!!」


















一方。


「遅いなぁ、ブラックローズと寺島さん(汗) やっぱり女の子って面倒だよなぁ」


渦中のカイトは、待ちぼうけを喰っていた。                                                                               【 BAD END 】

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