「.hack//G.U.」と「コードギアス 反逆のルルーシュR2」と「LAS(LMS)」と「ゴッドイーター」と「仮面ライダーディケイド」の荒唐無稽恋愛活劇SSサイト(のつもり)。

恋には四つの種類がある。


情熱の恋、趣味の恋、肉体の恋、虚栄の恋。


―スタンダール―



「……どういうコトなの」



PCモニターを見つめる佐伯令子の眼差しは、驚愕に満ちていた。


端正を絵に描いたが如き若き美貌、知性の持ち主の瞳が、動揺に揺らぐ。


それはまるで、不意に喉元にナイフを突き付けられたような圧迫感と共に―――――――――――。




「国民総背番号、該当無し……!?」




ありえないコトだ。


日本という国に居住している以上、誰もが番号を割り振りされている現代社会―――――2017年において。


該当無し、というのはあまりに異質であった。


住所不定の浮浪者ならばいざ知らず、“彼女のような”進学校に通う高校生が


国民総背番号の登録から外されているなど、あってはならない。


この東京都は東北の津軽地区に次ぐ、「情報処理特区」のメッカだ。


試験的ではあるが、数年前から徐々にインプラントチップを体内に埋め込む都民は増えているし、


来るべき新たなネット時代に備え、生徒らにインプラントチップを推奨する公立校も多い。


無論、令子の想い人である“彼”の通う都内の進学校も、体内ICチップ推奨校である。


チップの内蔵の是非は生徒の意志に一任されており、


当然のコトながらインプラントを行っていない生徒も居るだろうし、彼女がそのケースに当てはまる可能性が無いワケではない。


が、令子がデータを閲覧した限りでは、


彼女――――花京院典子には、そもそも“彼女自身が日本国内に存在している”という該当データすら見当たらなかった。


“彼”のクラスメイトならば16歳〜17歳のはず。


年齢を詐称しているコトも考慮し、念の為に過去20年分のデータを洗ってもみたが、結果は同じであった。




「(……誰かが意図的に、彼女に関する記録を削除したとでも言うの?)」




だが、一体何の為に?


一介の女子高生に過ぎない少女の記録を削除するコトで、誰が、どんな利益を得る?


人間は理由も無しに行動を起こさない。




「(或いは……花京院典子なんて人間は……最初から存在していない……?)」




まだ残暑が厳しいというのに、令子の背筋に薄ら寒いものが走った。


実際に人1人の生きた記録を消すというのは、簡単ではない。


過去の病歴や通院歴、学歴などはどうしても残ってしまう。


今年の夏に色眼鏡の魔術師が起こした再誕――――ネットワークの初期化であっても、それは不可能な事象なのだ。


現に、彼(か)の男も巧みに行方をくらましたのも束の間、CC社の追跡調査によって居所を突き止められたのだ。


生きていた証というモノは、例え本人が死亡した後であっても、何かしらのカタチで必ず残る。


それが残らないというコトは、不自然を通り越して、あまりに奇異だった。




「(……存在していないのに、確かに存在している。……矛盾が過ぎるわ)」




堂々巡り。


困惑の色を隠せず、令子は宛がわれた専用の仕事部屋の中で、頭を抱えた。


同時にスンと鼻を鳴らし、常人の何十倍も肥大した嗅覚で以って、自身がじわりと汗をかいていたコトに気づく。



「(この、言いようのない不安は……何?)」




最初は興味本位。


挑発的な態度をとった恋敵(こいがたき)について調べようと冷静な令子らしくもなく、


いけないコトだと分かりつつも、彼女の情報を得る為、ハッキングを行った顛末がコレだった。


セキュリティは厳重であったがリスクは承知の上、好奇心には勝てなかった、というトコロだろう。




「(まるで……義兄さんを失った時……あの時と同じ……感覚……!)」




結果。


普段、真面目な彼女の、不真面目な冒険の成果は。


在籍中の高校にも、国民データバンクにも、該当する人間の記録は存在せず。


……というもの。


しかし、彼女―――花京院典子は、現実に実在するのだ。


得体は知れないけれど、確かに。




「(……目的が亮なら、見過ごすコトは出来ない……絶対に!)」




CC社以外にもネットワークにおけるイニシアチブを握ろうと画策する企業や団体は、多数存在する。


モルガナ因子を独占するコトで、かつてRA計画によって女神の復活を目論んだ者が居たように。


八枚の碑文、凡てを喰らった第一相――――“死の恐怖”スケィスを従える、彼(か)の少年が狙われているとしたら。


そうして。


あの少女もまた、そんな亮を手籠にする為に、彼に近づいたのだとしたら。


確証はないが――――言ってみれば、令子の女としての勘が、


あの花京院典子という少女の背後に蠢く、彼女以上に得体の知れない“ナニか”の存在を、予感させた。




「……いいわ。貴女の尻尾、私が掴んでみせる」




不安にかられたのも僅かな時間であった。


令子は傍らに置いていたHMDに手を伸ばした。


これ以上は、より深い深淵に潜り、調査を行う必要がある。


下法以上の下法でなければ、恐らく。




「まさか……こんな私的な理由で、ココを訪ねるコトになるなんてね」




令子のもう1つの貌(カオ)――――


拳術士のパイは、ピンク色のツインテールを微風に靡かせつつ、


ネットスラム“タルタルガ”のカオスゲート前に降り立つと、静かに歩みを進めた。




「あの子は――――――――亮(ハセヲ)は、私が守る」




揺ぎ無い、確固たる決意を、その胸の奥処(おくが)に秘めて。



【また見て ハック!!】 

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