「.hack//G.U.」と「コードギアス 反逆のルルーシュR2」と「LAS(LMS)」と「ゴッドイーター」と「仮面ライダーディケイド」の荒唐無稽恋愛活劇SSサイト(のつもり)。

魔方陣から現れた敵がモルガナの悪意の残滓―――――――――ウイルスバグであることを視認や否や
カイトはその姿を、文字通り変えた。蒼い炎の加護を得た新形態、燃え盛る業炎の戦士・蒼炎態(バーニングフォーム)への変神(ヘンシン)。
全身を蒼い炎の闘気(オーラ)で纏い、燃える双剣を携えて《The World》を蹂躙する怨敵に敢然と立ち向かう
カイトの雄姿を見れば誰もが彼をこう呼ぶだろう。
勇者カイト、と。




三爪炎痕!!!




対になった双剣―――その三つ叉の刃に宿る蒼炎の後光(オーラ)。
三爪炎痕はカイトの使役し得る炎属性の双剣技でも最高の威力を誇るもの。
蒼炎はカイトが剣を振るう毎に激しさを増し、振り下ろされた刃はデルタを刻む。
ウイルスバグも必死にカイトへ攻撃を繰り出すものの、一撃とて掠りもしない。


「これで……終わらせるっ!」


カイトは敵の攻撃を見切り、間髪入れずに大ぶりの一撃で薙いだ。
ウイルスバグの躰は蒼き業火で燃え盛り、フィールドにその叫びが轟く。
つい半年程前まで初心者同然だった彼は今や、この《世界》の誰よりも強い。
そう思わせるに十分な、軽快なフットワーク。
コントローラー捌きが巧みだとか、反射神経が良いとかのレベルを明らかに凌駕した完璧な動作。
魅せる戦い。
蒼い炎は、さながらショーを美しく飾る布石。


「今だ、ブラックローズ!」
「わーってるわよっ!」


HMD越しに響く彼の声がブラックローズに、今が闘いの真っ最中であることを思い出させる。
カイトが前衛、ブラックローズが後衛のタッグを組み、ウイルスバグ出現の報告があったフィールドに索敵に来ていたことを
忘れていたワケではないのだが、あまりにカイトが強すぎるのと、その戦いぶりが見事なものだったので思わず見惚れていたのだ。
……決して彼の戦う姿がカッコいいとか、そう思っていたワケではない。


「さっさとキメちゃいなさいっ! 
 ライディバイダァ―――――――――――――――――!!!」


稲妻を帯びた大剣を握り締め、宙返りしながらウイルスバグの脳天に思い切り叩きつけるブラックローズ。
カイトの炎の剣の次にブラックローズの稲妻の剣と、連続して高レベルの攻撃を喰らい続けたウイルスバグは堪らない。
声にならない声を上げライディバイダーで斬り付けられた反動で大きくのけぞり、その巨体をよろめかせた。


「よっしゃっ!」


カイトとブラックローズならではの抜群のコンビネーションによる連携攻撃。
ブラックローズが攻撃を加えてウイルスバグから一定の距離を取りつつ振り向くと、既にカイトは攻撃の最終段階へ入っていた。
全てはカイトがこの一撃をウイルスバグに撃ち込むための過程(プロセス)。
ウイルスバグを駆逐するための唯一の必滅奥儀―――――――――――データドレインを。






****************************






「アンタ、最近ますます人間離れしてきたわよね」
「そうかな?」
「そーよ」


【Δサーバー 水の都マク・アヌ】。
ウイルスバグの駆除を終えたカイトとブラックローズは休憩の為、マク・アヌに戻って来ていた。
休憩がてら2人でブラブラと街中を練り歩き、戦闘中に消費した回復アイテムや補助アイテムの補充をショップで終え、
入手した不要な武器や防具を道行くプレイヤー達と「完治の水」や「帝の気魂」と言った高級アイテムとトレードするなど、
すっかりゲームにも慣れているようだった。
今やカイトとブラックローズの2人はドットハッカーズの代表格、トレードを断る者などいるはずもなく。
しかも交換レートは一般相場よりも低めで良心的ならば尚更だろう。2人にとっては在庫処理も出来て、実にありがたい。


「あの炎を纏った時のアンタ、絶対フツーじゃないもの。フリーザ程度なら一撃で倒せそうだし」
「うーん……界王神と同格にされてもなぁ(苦笑)」
「それだけ頼りにしてるってコトよ」


初対面の頃と比べるとカイトは確実に成長している。
少しヌケている時もあるが、常に冷静で仲間との連携を重んじるリーダーとしての才を発揮する様になった、とでも言えばいいのか。
自分より2つも年下の少年に絶対の信頼を置くのもどうかとは思うが、ネトゲーで年上だの年下だのと言っても仕方がない。
互いに気心の知れたパートナーとして上手くいっているのだし、ブラックローズ自身ももう年齢について
とやかく言うのは止めるようになっていた。それ程、彼と共に過ごすことが当たり前になっていたという証でもある。
……なつめや良子が一緒の時もあるにはあるが。


「……そう言えばさ。あれからアウラからの連絡、あったの?」
「連絡って?」
「ほら。前にアタシがダンジョンでウイルスバグに襲われた時、
 アンタ、アウラから連絡があったから駆けつけた、って言ってたじゃない」
「……あぁ、アレか。うん、今でもたまにメール来るよ」
「へぇ……あの子、意外とマメなのね」


意外どころか超意外なワケだが。
いつもフワフワと宙を漂っていて肝心な時にしか姿を見せない放浪少女が、
彼とだけは小まめに連絡を取り合っているというのは妙な感じだった。
一応はブラックローズもカイトと共にアウラ誕生の秘密を数々の創造主の部屋を巡ることで
大まかではあるが把握しているものの、どうにも言い知れぬ危機感を覚えて仕方が無い。
別にアウラが危険な存在であるとか、そういう予感めいたものではなく、何か別の危惧を感じる。
強いて言うなら女の勘、だろうか。


「最初の頃に来てたメールはどれも文字化けしててさ、解読するのに苦労したなぁ(苦笑)」
「最近来るのはフツーに読めるんだ?」
「うん。多分、再誕の影響だと思うんだ……何て言うか、人間らしくなったって言うのかな?」
「ふぅん……」


アウラのことだ、キーボードに直接文字を打ち込むことなどせず、思ったことを頭の中に浮かべれば
直接それがメールとなってカイトのメールフォームへと届くとか、そんな超能力紛いの方法で連絡をしているのだろう。
彼女がキーボードやら携帯をいじりながらカイトへメールを送っている姿など、想像が出来ない。
……しかし、何故アウラは彼だけにメールを送るのか。
カイトと一緒に事件を解決に導いたアタシにも労いのメールくらいくれたっていいんじゃない? 
……それともワザと送ってこないのかしら?
などと勘繰る辺り、ブラックローズの女の勘は今日も冴えわたっている。
その通り、アウラはブラックローズに全く興味が無いのである。
それ以前に面と向かって会話をしたことがあっただろうか? うわ、もしかしてアタシ、あの子に避けられてる?
とか思ったり思わなかったり、色々と思考を巡らせるのに忙しいようだった。


「……ちょっと聞いてもいい?」
「今日のブラックローズは質問が多いなぁ(汗) 何を聞きたいのさ」
「アンタ……あの子、アウラのコト……どう思ってんの?」
「どうと言われても……ペット?」
「 !? 」


ペット……!?
ペットと一口に言っても意味はイロイロある。
家庭で飼う「愛玩動物」を筆頭に、「お気に入りの年下の恋人」という意味や「可愛い子」などの意味が。
伊達にブラックローズも今年の春から高校三年生を名乗ってはいない。
あやふやだが、確かそういう意味も「ペット」にはあったはずだ。
カイトの言う「ペット」とはどの項目に当てはまるのだろうか。
或いは上述した全てに、とか?
つまり、総合すると―――――――――――――――――――――――――――――




『フフッ。アウラは本当に食いしん坊だなぁ……口にいっぱい付けちゃって……』
『あむっ……はぐっ……んむっ……』
『美味しい? アウラ、もっと欲しい?』
『欲し……い……。カイト……もっと美味しいの……いっぱい……ください……っ』




―――――――――――こうかしら。分からないわね……。
字面だけ見ると幾分ヤラしい気もするが、ここ最近のカイトを見ていると本当にアウラに首輪を付けて愉しんでいそうで、ちょっと怖い。
別に首輪を付ける必要はないし、手は自由なんだから這いつくばって生クリームを舐めさせる必要も全くないのだが
何故だがブラックローズの脳裏には、真っ黒い笑みを浮かべながら首輪をつけたアウラに餌(食事)を与えるカイトの姿が浮かんでしまっていた。
無論、彼がそんな特異で褒められない趣味を持つ人間でないことはブラックローズも百も承知。
しかし想像するだけなら自由だ。
随分と失礼な想像だがそれはそれ、これはこれの精神で乗り切りたい。
いずれにせよ、カイトの「アウラはペット」の発言がブラックローズにこういう想像をさせてしまったのは事実なのだから。


「僕さ、小さい頃にハムスター飼ってたんだよね」
「は? ハ、ハムスター?」
「たみよって名前だったんだけど、これが可愛くて(笑) 死んじゃった時はショックだったなぁ」
「つまり……ペットって……そういう意味?」
「小動物っぽいよね。アウラって(苦笑)」
「そ、そうね……」


だったらアンタ最初からそう言いなさいよ!
と喚きそうになる口を必死で抑えつつ、ブラックローズは笑顔のカイトに応対する。
肉体を棄ててまでエマとの間に子供を創ろうとしたハロルドの究極の愛も、カイトに言わせれば「ペット」の一言で済んでしまうから恐ろしい。
マク・アヌの川のせせらぎに耳を傾けながら、そう爽やかに返すカイトを見ていると余計にそう思う。
カイトも今年で中学三年、そろそろ(性的な意味で)女性に関心が……とも思っていたが、
とりあえずアウラに関しての彼の認識を見る限り、彼女は恋愛対象ではない……と判断してもいいのだろうか?
この少年はどうにも表情を顔に出すことが滅多にないため、底が知れない。そこがどうにも怪しいのだ。
今現在もブラックローズとパーティを組まない時は良子やなつめ、ミストラル、ガルデニア、レイチェルと言った女性陣と共に
ダンジョン探索に出かけたりイベントに参加していると聞く。
四六時中一緒に居たいワケではないが、そういう疎外感に人一倍敏感なブラックローズは気が気ではない。
あぁ、でもコレって別にアタシがコイツのコト好きで嫉妬してるってワケじゃなくて、
単に相棒として交友関係が健全なモノかどうか心配してるだけだからねっ!と自分に言い聞かせ、自身を肯定するのも勿論忘れない。
都合が良すぎる解釈だが、兎角自分が正しいと思えば凡てが正義なのだ。


「で、でもさ、仮にも《The World》の女神なんだし、“ペット”って表現はちょっと可哀想なんじゃ……」
「え〜。なら他にピッタリな表現が?」
「えーっと……い、妹……とか……?」
「一人っ子だよ、僕」
「アタシだって妹いないわよ! ……けどアウラって、何かそういう雰囲気ちょっとあるじゃない」
「そうかなぁ……」
「(コイツ、妹属性ないのね……良いのやら悪いのやら……。あ、この場合は良いのかしら?)」


妹と呼ぶには随分と歳が離れている気もするがアウラの行動を見る限りはそういう線を疑うのもアリだ。
仮に去年の再誕がアウラの誕生日だとすると、まだアウラは0歳ということになる。
カイトとの年齢差は14歳、離れすぎもいいところだが兄と妹という発想はなかなか的を射ているのではないだろうか。
何せカイトがアウラを妹として認識すれば彼女の恋は(恐らく)実る前に終わるはず。
アウラが彼に恋をしているという確証など無いが、何となくだ。
要はアウラがカイトをどう思っていようが、カイトがアウラを「妹」と思えばいいのだ。
……しかし。
カイトが兄でアウラが妹……組み合わせ的には釣り合いは十分に取れている気も―――――――――――――――――――




『カイト、兄さん』
『うん? どうしたのアウラ』
『手を繋いでも……いいですか?』
『アウラは幾つになっても甘えっ子だなぁ(苦笑)』
『だって……兄さんとずっと一緒に……居たいから……』




―――――――――――――――しない。
何コレ、すごい馬鹿っぽい。
うででんのアニメ版の方がまだマシだったわ、アレもアレで大いに問題作だけど。
大体『甘えっ子だなぁ(苦笑)』って何よ『(苦笑)』って……などと自分の想像にダメ押しするブラックローズ。
いかんせんブラックローズには男の兄弟しか居ないため、どうしてもコレと言った妹像を確立出来ないのが原因か。
それ以前に兄に恋する妹というのは倫理的にどうなのか。
何ゆえに自分はそんな想像をしてしまったのか。
疲れているのかもしれない……明日のテニス部の活動は休んだ方が良さそうね。
アタシには考える時間が必要なのよ、と飽くまで自分を肯定するのも忘れず。
自分で言い出した話題で自爆しては堪らない。


「あー……やっぱアウラは妹って感じじゃないかも」
「ブラックローズが言い出したんじゃないか……」
「だって! あぁもう、つまりね、アウラに必要なのは特徴なのよ!! 
 これこそがアウラだって言いきれる、と・く・ちょ・う!!!」
「白くて、フワフワしてて、無口……じゃダメなの?」
「アンタが『ペット』とか言い出すから話がややこしくなったんでしょ! ホントはもっと別のコト思ってんじゃないの!?」
「別って?」
「何かあるでしょ何か! 
 メイド属性とかメガネ属性とかツンデレとかヤンデレとか、アタシもよく理解(わか)んないけど、とにかく何か!!」
「そう言われてもなぁ」


アタシは一体何を口走ってるんだろうか、と思いはするものの、ブラックローズの追及は止まらない。
刑事ドラマで言えば容疑者がゲロする(白状する)まで絶対に帰さない、と言った姿勢か。
普段からトボけている節のあるカイトへの質問(もはや尋問に変わりつつあるが)が、こうも大変なものとは。
以前、カイトが寺島良子に誘われて彼女の地元の九州まで旅行に行ったと聞かされた時はもっとスムーズに聞き出せたはずなのだが、
今回は本命と思わしきアウラが絡んでいるせいか、なかなかカイトも本心を見せない。
いや、彼としては見せているつもりなのだろうが、ブラックローズの猜疑心は現在逆撫で状態のため、何を言っても無駄だろう。
これで「女の子って面倒だなァ」というカイトお馴染みのボヤキが呟かれでもしたら大事(おおごと)である。
まあ、それは置いておいて。
ブラックローズはモニターの前で頭を抱えながら、改めて思う。
思わず羅列してしまったが、そもそもメイド属性やらメガネ属性やらツンデレやらヤンデレとは何か。
いかにも男性向けの(2011年の今となっては古い表現だが)「萌え」と呼ばれるヤツだろうか。


「(うわ、何ソレ……)」


アタシ、そういう趣味全ッ然ないのに何で知ってんの?と、いささか混乱気味だ。
たまに女性の中にもそういう属性(でいいのだろうか)を好む者も居るらしいが、そういうのは基本的に男性向けの要素のはず。
自分で言っておいてなんだが、世の中にそういう「萌え」を体現したアニマ的な女性は本当に必要なのだろうか?
何の知識も無い女子高生のブラックローズ―――――――――――――――――速水晶良ではソレが限界らしい。
なら、やはりここはカイト本人に想像させるのが一番てっとり早そうだ。
自分で想像して自爆せずに済むし……コレが、彼女の結論だった。


「……分かったわ。じゃあ1つずつ検証するわよ」
「検証って……(滝汗)」
「アンタの思い浮かべる『メイド属性のアウラ』を教えなさい」
「メイドって……でっかい御屋敷とかで住込みで働いてる給仕のお姉さんのコト?」
「そう。その、おねーさんよ」
「……いきなり言われても分かんないよ」
「何のために神様が人間に想像力を授けたと思ってんの!? 分かんないなら想像しなさいよ、想像っ!!」
「想像かぁ……うーん」




『アウラ。コレなーんだ?』
『あたしの……セグメント……』
『返してほしい? ……だったら、やることはもう分かってるよね?』
『うっうっ……こんな人がご主人様なんて……ゲンメツ、サイテー……』
『そういうコトを言っちゃう反抗的なメイドには……ふふっ。お仕置きが必要だなぁ(笑)』
『許して……何でも、何でもするから! あっ、やぁっ……そこ、だめぇっ……カイ、トぉ……』
『ご主人様、でしょ? ほら、アウラ……言ってごらん』
『ご主じ……んっ……様……ぁ……。
 あんっ……はぁ、はぁ……やぁんっ、あぁっ、ダメっ、らめぇっ、ぁああああんっ……!?』




「……こんな感じかな」
「分かんないとか言ってたクセに何でそんな具体的なのよ!?」
「想像しろって言ったの、ブラックローズじゃないか……」
「実際に想像したのはアンタでしょーに! しかもちょっとエロ入ってるし!!」


何とも低レベルな責任転嫁である。
どうやらご主人様のカイトから大切なモノ(セグメント)をネタに、御奉仕を無理やり要求されたメイドのアウラ……といったシチュらしい。
確かにメイド服に身を包んだアウラも見てみたい気もするが、今はそれどころではない。
あーだこーだとシチュに文句をつけて来るブラックローズを諌めるのが難しいコトはカイトも経験上、心得ている。
しかしカイトもこれ以上余計なコトを言うと彼女がまた前回のように拗ねて単独行動を起こしかねないのを
危惧してか、言及はしなかった。
話を切り上げ、一秒でも早く解放されたかったのである。
正直、この会話をアウラが聞いていない(視ていない)という保証は何処にもないのだ。


「ねぇ。次の『メガネ属性』って……アウラにメガネかけさせて、何が楽しいの?」
「そりゃ……ち、知的に見える、とか」
「充分に知的じゃないの? 女神だし……あ、もしかしてメガミにメガネってシャレ?」
「いいから! アウラにメガネかけさせりゃいいのよ!!」
「メガネ……メガネか……うーん」




『あ……』
『どうしたの?』
『メガネの再構成を忘れた……』
『無い方が良いと思うよ。僕、メガネ属性無いし』
『メガネ属性って何……?』




「まさかアウラが宇宙人だったなんて……(汗)」
「ちょっ、角川的にソレってアリなの!?」


詰まる所カイトにメガネ属性など本当に無いらしい。
加えて、アウラにメガネをかけてほしいという願望もこれっぽちも。
さすがにコレばかりはブラックローズの誤算と言うか杞憂だったようだ。
しかし長門のポジションにアウラを持ってくる辺り、カイトもそれなりのスキモノなのかもしれない。
長門とアウラの共通点など髪の色くらいしかないだろうに(しかもよくよく考えると、その髪の色すら違う)。


「次の……ツンデレ? コレは何? ツンドラの親戚か何か?」
「ちょっと待ってなさい、スマホのネット辞書で今調べてるから……あ、あった。
 えっと……『普段はツンとしているが、好意を寄せる異性と2人きりの時はデレデレすること』……だって」
「略してツンデレ……か」
「一番オーソドックスなのが今のっぽいわね。
 他には……『最初は素っ気無いが、親しくなると徐々に態度を軟化させ、相手に対して普段以上に好意的になること』……かしら」 
「ツンってつまりは“澄ましてる”ってことでしょ? それは何処となくアウラっぽいけど……デレって無理ない?」
「現にアウラはアンタにしかメール送らないでしょーが! ソレだって充分デレよ、デレっ!!」
「そーかなぁ」




『モルガナを倒して未帰還者を救う? そう……適当に頑張れば?』
『セグメントを集めてほしいとは頼んだけど、クビアから守ってほしいとは言ってません。あなた、何がしたいの?』
『あれほどクビアとは戦わないでって言ったのに……あまり心配させないで』
『カイト、もう無理をしないで。あなたに何かあったら、あたし……』
『カイトッ、カイトと一緒がいいっ! あたしは母さんよりもカイトがいいんですっ!!』




「……こんな感じ?」
「デレと言っちゃデレてるけど……広義のツンデレとは違うような……。
 むしろ『クールデレ』と言うか『素直クール』? ア、アンタ、そういう感じにデレる子が好きなんだ?」
「だってアウラがツンツンしててデレデレする姿なんて、想像するの無理だし(汗)」
「まぁ……確かにあの子が『か、勘違いしないでよね!』とか
 『別に貴方の為なんかじゃないんだからっ!』とか言ってる姿はアタシも想像できないわ……。
 何処ぞのゲーム会社の代表取締に気に入られて、続編から性格変わって急にデレたりするくらい、ありえないし」
「ブラックローズが言うと、やけに説得力があるなぁ(苦笑)」


つまりはキャラ的に合う人間とそうでない人間が居るというコトである。
アウラの場合は人間ではなく究極AIだが、この際ソレはどうでもいい。
なるほど、カイトの言う通りかもしれない。
普段から言葉少ななアウラはツンデレよりもクールデレや素直クールの部類の可能性もある。
ツンデレを検索ついでに類義語も表示された携帯を見つつ、表示された説明文を目で追いながら意味を理解したブラックローズはそう思った。
他者からの印象、特徴がそう見えるだけであって実際のアウラは全く違うという可能性も否定できないが……。


「あー、やっと最後だ。
 コレ終わったらログアウトしていい? そろそろ夕飯の時間なんだ」
「じゃ最後の……ヤ、ヤンデレ? ほら、さっさと想像しなさいよ。ヤンデレのアウラを」
「……意味は?」
「あ、そっか。まだ説明してなかったわね……『病的に異性を愛する異常恋愛依存症者のこと』……だって」
「ごめん、ワケ分かんない。モルガナみたいな女の子って解釈でいい?」
「何て言うか……
 『何かの事情で精神的に病んでいって、好きな相手や恋敵に物理的・精神的な暴行を加えたり愛情表現をする子』……みたいな?」
「アウラがモルガナの娘だからって、同じくヤンデレになるとは限らないと思うけどなぁ……。うーん、なら……」




『じゃあ……あたし、負けません。ブラックローズさんから、きっと奪ってみせますから』
『あたしは……カイトの彼女ですから』
『どうしたんですか、ブラックローズさん? 
 あたしに遠慮せず続ければいいじゃないですか。これまでもあたしに隠れて、こういうことしてたんですから』
『そういうのを寝取りって言うんじゃないんですか、ブラックローズさん』
『カイトを紹介してくれたのはブラックローズさんですよ。
 紹介しておいて今更ずっとカイトのことが好きだなんて、通りません』
『あたし、二人は幸せになれないと思います。
 二人を幸せになんかしませんから。だって、あたしはずっとカイトを好きでいますから……永遠に』




「怖いなぁ(苦笑)」
「オィ! コラァ!! 何でアタシが悪役ってか、アンタの彼女役なのよっ……!?」
「んー。寺島さんか、なつめの方が良かった?」
「そ、そういう意味じゃないけどさ……。
 第一、何かアウラって言うより寺島さんっぽい喋り方な気が……どっかのお嬢様?」
「なんか、随分前に流行ったゲームのヒロインのセリフだった気がする(汗)」


などと苦笑しつつ、カイトは安堵する。やっと解放されるからだ。
そもそもブラックローズは何を主旨にこんな話を始めたのだろうか。
覚えている限りでは「アウラをどう思っているのか?」という問い掛けのはずだった。
なのにメイド属性だのメガネ属性だのツンデレだのヤンデレだの、聞き慣れない言葉を連呼され
挙句「想像しろ!」と無理難題をふっかけられる始末。
ハッキリ言って、そういうのはアウラに対する冒涜と言うか何と言うか……あまり好ましい行為ではないと、カイトは思った。
アウラがどんな性格だろうとアウラはアウラであり、この世界に必要な存在なのだ。
勝手な憶測で定義づけるのは彼女が不憫だし、失礼に当たる。究極AIだろうが何だろうが、カイトのアウラへの想いは揺るがない。
その想い、というのが「ペット(小動物っぽくて可愛い)」という充分失礼なものだ、ということに本人が気づいていないことについては
やや問題があるようだが、この際それは問うまい。


「ブラックローズってば変な質問ばっかするんだから。僕もう落ちるから、じゃーね」
「あっ、まだ話は終わって……行っちゃった。あのバカ……」


上手いこと話を切り上げたカイトはブラックローズの追い打ちから逃れる様にログアウト。
1人マク・アクの橋の袂に取り残されたブラックローズは、ちょっとした虚しさを覚える。
さり気なくカイトがアウラをどう思っているかを問いただそうとしたはずが、全く関係ないネタに走ってしまったことを
今になってジワリジワリと後悔し始めたからだ。
どうして自分は彼女に嫉妬などするのだろう? 相手は究極AIという何やら御大層な存在らしいが、所詮はネット世界の住人。
現実の世界には存在出来ないし、現実のカイト(のプレイヤー)に触れることすら出来ないはずだ。
これは早々にオフ会の準備を進めた方がいいかもしれない。
幸いなことに、良子やなつめと言った最有力候補(何の最有力候補なのかは敢えて語らないが)は九州に住んでいる。
自分も神奈川在住だが、東京までは電車に乗りさえすれば遠くない距離に住んでいるのはまさに好機。
オフ会で一気に親密になるのも一つの手ではある。
リアルで気軽に会える、というのもアドバンテージとしては悪くないからだ。


「(あ、飽くまで友達として……なんだからね! どうこう言っても、やっぱアイツは2歳も年下なんだし……)」


などと考えていて、ハッと気づく。
これじゃ、まるでアタシがさっきの「ツンデレ」とか言うのみたいじゃない……と。
冗談ではないッ。
確かに彼の前ではツンツンしているかもしれないが、デレたコトなど一度もないはず。
今後デレる機会があれば、カイトが望むならばデレてやっていい気もするが……。


「(アッ、アタシはツンデレなんかじゃな〜い!)」


耐え切れず、結局カイトに数十秒遅れるカタチで、
ブラックローズもログアウトするのだった――――――――――――――――――――――――










****************************










「(何でアタシがアイツのコトで、こんな思いしなきゃなんないワケ……?)」


風呂上がり。
まだ乾ききっていない髪をタオルで拭きながら晶良は自室に戻って来た。
春とは言えまだまだ関東の夜は冷え込むため、暖房はかかせない……が。
さすがに風呂上がりにすぐの暖房はキツく、寝巻きのボタンを上から幾つか外すと、目に着いたノートを団扇代わりにパタパタと仰ぎ始めた。
以前カイトに「速く泳げるのは抵抗が少ないから?」とメールで聞かれたことがあるが……
確かに「抵抗が少ない=出る所が出ていない」おかげで随分とスムーズに風が寝巻きの中を通り抜けていく。
しかし「でもカイトがアウラと両想いなら、胸の小さい子でもOKってことよね?」と飽くまで自己肯定は忘れない。
晶良のポジティブさはなつめ辺りが見習うべきだろう。
何やってんだろ、アタシ……と小さな溜息をつきながらPCを再起動させると、


「えっ……?」


晶良はメールフォームに新着メールが届いていることに気づく。
しかも、差出人は、


「ちょっ……アウラっ!?」


どうやら晶良の入浴中にアウラからメールが届いていたらしい。
それも初めての、だ。


「(アッ、アタシに何の用なのよ……!?)」


用向きは一体何か? 
開けてはいけないパンドラの箱を目の前に置かれたかのような、そんな錯覚すら覚える。
それでも晶良は好奇心に勝てなかった。
もしかしたら、やや遅れてアウラから感謝と労いの言葉を綴ったメールが届いたのかもしれない。
果たして――――――――――――――――――











【件名:ブラックローズへ】


カイトは渡さない。

この泥棒猫。












――――――「上等よコラァ!!!」という晶良の絶叫と、
隣室のカズからの「うるさいよ姉ちゃん!」という抗議の声が、夜も深けた速水家に木霊する。
この日より、ブラックローズとアウラの真の戦いが始まる。アウラの娘ゼフィ誕生より3年前の出来事であった。                               【BAD END】

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