「.hack//G.U.」と「コードギアス 反逆のルルーシュR2」と「LAS(LMS)」と「ゴッドイーター」と「仮面ライダーディケイド」の荒唐無稽恋愛活劇SSサイト(のつもり)。

『人が人を殺してはならない』
                                                                【仮面ライダーアギト 第18話「新しいボス」(2001年5月27日放送) より】


「ちょ、ちょっと……アレ、ヤバくない!?」
「カッ、カッ、カッ、カイトさんがぁ!」
「急いで助けに行かなければ……!」


事の次第を隠れて見守っていた三人娘の声色が震える。
今まで無敗を誇ってきた腕輪を持つ少年が、敗れて地に伏した事実を直視したことによる反動だ。
コントローラーを持つ手まで震え、嫌な汗が滲み始める。


「ブ、ブラックローズさん……っ!」
「ブラックローズさん……」
「……行くわよ、2人とも!」


居ても立ってもいられず。
恥も外聞も捨て去り、絶対絶命の危機を迎えたカイトを救わんと飛び出して行く三人だった。










.hack 番外編 

                               新たなる変身










「エオスっ!」
「ブラックローズさん……!?」


カイトをエオスを庇うように迫り来るサ%ッカ*の前に並び立つ三人の少女。
ブラックローズ、なつめ、良子……俗にドットハッカーズと呼ばれる、昨年起きたネットワーク障害事件を解決に導いたというメンバー達。


「アンタとカイトを尾けてたらコレよ……カイトの容体は!? 大丈夫なの!?」
「それが……」


いつもの調子なら真っ先にブラックローズ達の尾行を咎めるであろうエオスだが、今はその覇気すら無い。
これには、さすがのブラックローズも焦りを隠せなかった。


「な、何よ……相当ヤバいんじゃないでしょうね!?」
「毒にやられたみたいで……カイト、全然返事してくれないの……」
「そ、そんなぁ……!」
「カイトさん……」


なつめと良子からも悲痛な声が漏れる。
今までどんな強大な敵と戦っても勝利してきたカイトだけに、ショックは大きい。
それにカイトのPCは普通のPCとは造りが違う。腕輪の影響で痛みすら感じるはず。このまま放っておけば……。


「……寺島さん、ありったけの回復アイテム使ってカイトを治療してみて!」
「は、はいっ!」
「なつめちゃんは私と一緒にアイツの……ウイルスバグの相手よ。
 ……少しでもいいから、カイトが回復する可能性に賭けるっきゃない!」
「わ、分かりましたっ!」


ここで役割分担は決まった。
レベルの低い良子ではウイルスバグの相手は無理だと、ブラックローズは判断したのだ。
あえて後方、カイトの治療に専念させることで、彼の再起に賭けた。
一方で、比較的レベルの高い自分となつめは良子のバックアップとしてカイト回復の時間稼ぎ役を担当。
こうすることで……僅かながら、勝利の糸口を掴むしか選択肢は残されていなかった。


「(っ……ヘルバが居てくれたら……!)」


闇(ダック)の女王の名を冠する凄腕ハッカーなら、的確な治療法を識っているかもしれない。
だが彼女は此処には居ない。現実は非常だ。
だからこそ自分達で何とかするしかなかった。いつもカイトに助けられていた自分達が、今度は彼を助ける番だと。


「……やれるだけ、やってやるわよっ!」







*******************







「新たな力……?」


椅子に腰を落ち着けた白髪の男が、囁いた。


「彼の遺伝コードに……手を加えます」


白いドレスの少女は呼応するように頷くと、白く細い指先を虚空へと伸ばす。
何度か蒼い瞳をパチパチと瞬かせ何事か呟き、視えない“何か”を描いていく。
彼女の思い描く“彼”の設計図だろうか。


「かつて、この地球(ほし)を支配していたフォモールの神々。
 フォモールを打ち破った勇敢なるダーナ神族。
 そしてダーナ神族を地の底へと追いやったミレー族……ヒトの祖先達。
 彼は……ミレーの血を引きながら、ダーナの血も濃いように思います。英雄の血です」


薄紅色の唇を動かし、少女は語る。
神話の終わりと人類の元型(アーキタイプ)たるヒトの黎明期を。
遠い遠い時間の彼方に忘れ去られた起源、人類の始祖と呼ばれる民の伝承を。
少女は――――――――――――――アウラは語る。


「彼には心の虚がありません。
 従って今の彼では、より高次の力を得ることは不可能……。
 境界を越えても尚、彼の心は澄み切った青空のように純粋だから」
「ならば……どうする?」
「彼に影を落とします。
 碑文の勇者―――――――――――'サヤの影を」


スッ……。
まるであたかも、そこに彼が居るようにアウラは愛おしげに虚空をひと撫でする。
視えない縫い針を持ち、視えない糸で、居ないはずの彼に影を縫い合わせるように。
永遠の少年ピーター・パンの影を縫い合わせた少女、ウェンディのように。


「是は凡て私の我儘」


最愛の少年を深く想う一方で、アウラの胸中は複雑だった。
“これでまた”彼は、自分達と同質の存在に近づくだろう。
それは即ち彼がヒトではなくなるコトを意味する……近い将来、その兆候が現実の彼にも現れるはず。
アウラは哀しかった。


「今は世界そのものが私……もう彼と私は別次元に生きる存在となった。
 でも……それでも……」


カイト(彼)の物語を終わらせるワケにはいかない。
修正が必要になった。碑文にも描かれぬ物語の続きに、自らの加筆を加える時が来た。
自分のとって都合が良く、而して傍目から見れば、全ては《The World》という世界の自律性が齎した奇跡のような、ありふれた物語のような続きを。
ヒトを越える力、超然にして霊的な資質(センス)を彼に与えねばならない。
彼は元型(カミ)の境界へと足を一歩踏み出した状態にある。その足を、彼の意志を無視して二歩三歩と無理に歩ませる。
アウラがしようとしている行為は、そういうコトなのだ。


「私は……彼と共に在りたい」


アウラの唇から覘く小さな歯が、視えない糸を噛み切った。
縫合を終えたのか。虚空を凪いでいた女神の指先は、ゆっくりと下がっていく。


「欲しいのかね。彼が」


創造主(父)の問いかけにアウラは答えない。
答えずとも、既に答えは出ている。
入滅し、少女のカタチを棄てねばならないアウラ(Aura)。その時は近い。
本来ならば我執など、究極AIたる彼女の心に存在してはならない。
されど彼女の心にもまた喪失感が存在していた。
今、消え行かんとする少年カイトを想う心が、全能の女神に恐怖を植え付けている。
故にアウラは、菩提樹の下で苦行にも似た、生と死の苦痛に苛む少年に乳粥を勧めるのだ。
かつて彼が自分を殺したこととは真逆に、今度は自分が彼を救おうと言う。
女神が勇者を救済(ぐさい)するということ。それが自身をも救う理(みち)へと繋がる、と。
少女は業を背負う。カミだけに許された、究極の我儘だった。
あの少年が―――――――――――――――――――――――――――――欲しい。


「唯だ、識だけに」


父は娘の答えを待たず、そう呟いて締め括った。
完全な存在へと娘が昇華出来るなら、其れも已む無し。
うわ言のような意味不明の言葉を幾つも羅列させていた、逆さ椅子の男。
知性の冒険者、ハロルド・ヒューイックの神作りの物語に、こうして新たなページが加わった。
勇者と女神の“後日談”。そして、新たな英雄の“誕生”の物語が。
だが、それは女神によって描き為されたものであって、同時に勇者によって描き為されたものでもある。
無限に存在する次元の中で、彼女は彼を信頼し、愛した。
その証の物語を綴るには時間が必要だった。
超高次元も因果も宿業も超越した、2人の絆は《The World》(此処)に在って、アウラもまた常にカイトと共に在る。
彼女にとって、彼こそが『黄昏の鍵(キー・オブ・ザ・トワイライト)』。
想いの数だけ、その鍵は存在する。
ここにも、そこにも。ほら、あそこにも。
粗野な肉体に縛られることなく、輝ける存在となった彼女には視えた。
自らの想いが、光輝となって彼の下へと飛んでいくのが。
自己犠牲を悟ったアウラと、己の保身の為に娘を殺そうとした地母神モルガナの決定的な違い。
“誰かを想い、愛するということ”。
モルガナもまたアウラを憎む程に愛していたかもしれないが、所詮は穢れに満ちた汚泥のような感情に過ぎない。
足りなかったのは“純粋さ”。
シンプルであって、シンプルであるが故に、その境地に至るのは難しい。
母をも越えたアウラにとって、カイトを強く想うことなど、まるで呼吸をするように当たり前のことで。
自身の想いが悟りの理から外れた我執であっても、それは一点の穢れも無い理性の泉だと主張すれば、言った者勝ちであるように。
遍在を守護する女神は、そうして意中の少年の心と自らの心を重ね、
願った―――――――――――――――――目覚めろ、その魂、と。









**********************









「あーもうっ! しっつっこいっ!!!」


ブラックローズの苛立った声は、すぐさま鉄と鉄のぶつかり合う轟音によって掻き消されてしまう。
褐色の少女の持つ大剣と、ウイルスに侵された大サソリのチャンバラ劇は、事情を知らぬ者が遠目から見ていたら
さぞかし白熱した闘いぶりであったであろう。


「剣士の血! 騎士の血! 
 ……あっ、あれっ!? あわわっ、今のが最後です〜っ!!!」


ブラックローズと共に邪悪な地母神の置土産と闘っていたはずの双剣士の少女、
なつめは既にHPもSPも“マズいコト”になっているため少しばかり後退し、
回復アイテムやステータスアップのアイテムでブラックローズのサポートに廻っていた。
そのサポートも、とうとう限界を迎えたらしい。


「(カイトさえ……カイトさえ無事だったら、こんなヤツ……!!!)」


サ%ッカ*の放つハサミやシッポの攻撃をかろうじて大剣で受け止め、反動で押し返すブラックローズ。
攻撃に重点を置いた偏ったパラメーターのおかげか、何とか攻防一体で耐えしのいでいる。
やはり、いつもカイトと八相を始めとしたモルガナの悪意の化身達と熾烈な争いを繰り広げていただけあり、
この半年以上でブラックローズは、このゲームの戦闘方法を熟知している。
されど熟知はしているが、斃す術までは持っていない。
それが歯痒くて。


「……寺島さんっ、カイトは!?」
「ダ、ダメです……どのアイテムを使っても一向に意識が……!」


良子の涙声に、思わずブラックローズ――――――――――――晶良の脳裏に厭な予感が走る。
あの大聖堂で弟を未帰還者にされた時のような……
言いようも無い恐怖感が、胸を締め付けて、身体を強張らせて。


「カイト! アンタ何やってんのよ!? さっさと起きなさいよっ!!!」


エオスと良子に介抱されながらもカイトは固く目を閉じたまま動かない。
先程まではまだ息があったはずなのに、もう呼吸もしていないようだった。
少しずつだが、彼の躰が粒子になって崩れて行くのが視えた。
崩れた粒子が灰となり世界に溶け、染みていく。


「(あの子の躰が……崩れて……!)」


このまま、どうなるのか。
想像はどんどん考えたくない結末へと晶良を誘う。
――――――――――――



『か……い……と……』
「!?」



幸か不幸か。ブラックローズの思考を中断するかの如く。
ウイルスに侵された大サソリが何の前触れもなく、口を開いた。


「なッ……!?」


ブラックローズらの視線が、ほぼ同時にサ%ッカ*へと集まる。
異形の生物が何処に有るかも分からない口で、確かに自分達へ語りかけたのだ。


『かいと……かいと……かいと……』


ゴキッ、ゴキッ。
サ%ッカ*の鋼鉄の躰が、撓る。
グラフィックがブレ、ウイルスに浸食された部位が音を立てて蠢く。
異形が更に異質な存在(モノ)へと変わっていく様を――――――――――少女達は茫然自失としたまま、見ていた。


「あわ、あわわ……!」
「な、何なの……コイツはっ……!?」
「これ、は……」


三者三様の反応だったが、概ね驚愕と恐怖に満ちたものには相違ない。
唯一、エオスだけがカイトに寄り添いながら敵を射殺さんばかりにキッと瞳を見開いていたのを除けば。


『さやノ影ヲ持ツ者……かいと……』


やがてサソリの頭部から背部にかけ、装甲が破れた。
破れた胎内から這いずり出たのは、長い髪を生やし巨大な眼球を持つ、女の上半身を模した“何か”。
ドス黒い瘴気を撒き散らし、周囲を腐らせながら、その女は生まれ出でた。
旻(そら)を仰がんとグルグルと蠢く眼球が、少女らを捉え、嘲笑う。
この、五臓六腑を握り潰すかのような薄気味の悪い気配をブラックローズは識っている。


「まさか……」


冥府の底から響くようなおぞましい声を聞き、乾いた喉からブラックローズが仇敵の名を絞り出すのに時間はかからなかった。


「モ、モルガナ……っ!?」


女のカタチをした異形は羅刹の笑みを持って、少女の呟きに応えた。


目覚めろ、その魂!                                                                                 【 TO BE CONTINUED... 】

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