「.hack//G.U.」と「コードギアス 反逆のルルーシュR2」と「LAS(LMS)」と「ゴッドイーター」と「仮面ライダーディケイド」の荒唐無稽恋愛活劇SSサイト(のつもり)。

この作品は2008年10月27〜30日の間にweb拍手で募集した【読者からのSSネタ】の中から、ゆかいな子守歌氏の
カイトがアウラに取り憑かれながらカイトに好意を持つ女性キャラとのエリア散策とかどうでしょ?』というアイディアを元に、独自のアレンジを加えSS化したものです。


「メンバーアドレス……?」


気がつけば、もう2011年。春のポカポカ陽気が心地よくなってきた。
カイトの中学での学年も2年生からいよいよ3年生へ……そんな頃のこと。


「メンバーアドレス、交換してほしいんです」


例によって例の如く。
カイトはいつものようにブラブラとルートタウン――――――マク・アヌを歩いていた。
これと言って予定は無い。自由だった。
適当にタウンを歩いていれば誰かしらに出会えるし、もしトレードなどを持ち掛けられても応じる準備は出来ている。
伊達に半年以上も、このゲームをプレイしてはいない。


「あたしと、お友達になってほしいの」


だから今現在置かれている状況に対しても冷静だった。
いつもやってきたことだ。自身と相手にとって有益なトレードであれば簡単に成立するし、時にはレートを大目に見ることだってある。
勇者は寛大なのだ。と言うよりも、このカイトという少年は物欲が乏しいのである。
レアや高レベルな武器防具は殆ど手に入れてしまっているし、レベル自体も90以上。
最近は初心者ヘルプの真似事もしており、なかなかの好評を得ていた。
BBSのカキコ通り、ドットハッカーズのリーダーは「困っている者を見捨てない人情の人」を地で行っているのだ。彼の意志に関わらず。
なので、もし「メンバーアドレスを交換してほしい」と申し出る者がいれば誰であろうと喜んで交換する。初めて会った相手だろうが、お構いなしに……だ。


「君、このゲーム始めたばかりなの?」
「うん。さっき初めてログインした」
「最初の頃って心細いよね。僕でよければ、いいよ」


小さな呪文使い(ウェイブマスター)の少女の手をカイトは取った。
アルビノを思わせる、全く日に焼けていない細くて綺麗な手だ。内心カイトもあまりに綺麗で感心する程に。
馴染みの無い者には分からないかもしれないが、こうすることで互いのメンバーアドレスを交換することが出来る。


「(綺麗な手、してるんだなぁ)」


慣れているカイトは普通に接していられるが少女の方はそうでもなさそうだ。カイトに手を握られ、明らかに照れを見せていた。
動作(モーション)が普通のPCと比較しても、より豊かに感じられたのは気のせいだろうか?
まあ、カイトが知らないだけで《The World》が細かな調整、バージョンアップを行っているだけかもしれない。
何しろ、このゲームには不思議な自律性があるのだから。


「ふぅん。エオス、って名前なんだ」
「……おかしい?」
「ううん。可愛い名前だと思うよ」
「ありがとう。あなたの名前もカッコいい……カイト」
「コレ本名なんだけどなぁ(汗)」


実はカイト自身、寺島良子とそう大差ないネーミングセンスの持ち主だ。
オルカ(ヤスヒコ)から《The World》で一緒に遊ばないか、と誘われた時も、ゲーム世界の分身たるPCの名前で適当なモノが浮かばなかった為の措置だった。
現実(リアル)でもゲームも表裏の無い彼ならではの、至ってフツーな勇者誕生の曰くである。


「BBSに書いてた。ドットハッカーズのリーダーのカイトという人は、初心者に優しいって……」
「あ。じゃあ君、僕のコト最初から知ってたのか」
「最初に友達になるなら……あなたがいいって思ったから」
「何だか照れるなぁ(苦笑)」
「……あなたに会えて良かった」


呪文使いの少女エオスは―――――――そう言うと、はにかんでみせた。
新雪の様に真っ白な髪から覗く頬は相変わらず紅潮したままで、見惚れてしまいそうな表情(モーション)を見せてくれる。
単にマク・アヌの夕日に照らされているだけかもしれないが……黄昏の古都に佇む小さな少女は、妖精のような可憐さを併せ持っているようだった。
白地のドレスの上に羽織った薄紫色のケープもよく似合っており、普段は女の子に無関心なカイトも思わず目を惹かれた。
小柄なPCエディットからして、カイトより3〜4歳程年下の少女として設定されているのだろう。現実(リアル)でもその辺りの年齢なのかはともかくとして。


「(僕より年下……かな?)」 


今までカイトの周りには居なかったタイプの少女、それがエオスだった。
何せブラックローズも、寺島良子も、なつめも、ガルデニアも、ミストラルも、レイチェルも、ヘルバも……親しい女性は全てカイトから見て年上。
そういう意味で(恐らく年下であると思われる)エオスという少女は、カイトにとって新鮮に見えた。


「エオスはこれからどうしたい? レベル上げ、手伝うよ」
「一緒に行ってくれるの?」
「もちろん」
「……連れてって、ください」


赤い双剣士の少年に手を引かれ、白い呪文使いの少女が後に続く。
カイトに手を握られたエオスがますます恍惚とした表情になってゆくのを、彼は気づかない。
古都を流れる運河のせせらぎを背に、2人は混沌の扉を目指し、歩き出すのだった。










.hack 番外編 

                               新たなる変身










《2週間後……》


「カイトっ!」
「おっとっと……その声は、エオスかな?」
「こんばんは、カイト!」
「うん。こんばんは」


《The World》にログイン、【Ωサーバー 遺跡都市リア・ファイル】のカオスゲート前に降り立って
瞬きもせぬうちに、カイトの胸元に飛び込んでくる少女が居た。エオスだ。
最初の出会いから2週間が経過していた。
出会った当初は初心者丸出しだった彼女も、カイトの付きっきりのレクチャーにより見違えるようにレベルが上がっているようで


「最近よく会うね」
「そう? そんなに会ってる?」
「会ってる会ってる(笑)」


こんなボイスチャットを交わせる程になっていた。同時に、当初は成りを潜めていた快活さも遺憾なく発揮するようになって。
今もカイトの胸に子猫のように擦り寄って、頬で彼の体温を感じているように。天真爛漫なエオスをカイトも憎からず思っているのは明らか。
仲が良いのは結構なコトだ。けれど腑に落ちない点が一つある。
どうしてかは分からないが、エオスはカイトがログインすると、不思議といつでも出会うことが出来た。
マク・アヌでもカルミナ・ガデリカでもフォート・アウフでもリア・ファイルでも……何故かエオスは居た。
それも昼夜問わず。仮に小学生なら、もう布団に潜っていなければ親から怒られそうな、こんな時間でも、だ。


「えへへ。カイトが来るの、ずっと待ってたの」
「ずっと? こんな時間に遊んでて、お母さんとかに怒られない?」
「大丈夫だよ。お母さんは怒りっぽいけど、お父さんは優しいから」
「そうなんだ」


喋り方からして年下だというコトは、この2週間でもカイトも確信が持てていた。
しかし彼女が現実(リアル)で何をやっている子なのか……ということは依然として謎のまま。
相手が話さないならカイトも聞かない。話さないということは何かしらの事情があるということ。
無理に聞く必要も無い、とカイトは思った。誰にでも人に話したくないコトが1つや2つあるだろうし……そういうスタンスで行こうと。


「ちょっと。アンタ、いい加減カイトから離れなさいよ!」
「な〜んだ……ブラックローズさんも一緒だったんだ……」
「……居ちゃ悪いワケ?」
「誰も悪いとか、言ってないじゃないの。……ブラックローズさん、何だか小姑っぽい」
「だっ、誰が小姑ですってぇ〜っ!?」
「まあまあ(苦笑)」


リア・ファイルを訪れる前に、別のルートタウンで落ち合っていたブラックローズ。
カイトと共にΩサーバーにやって来ると案の定、今最も注意せねばならない相手と出くわしてしまった。
言わずもがな、エオスである。


「とにかく、離れなさいよっ!」
「べーっだ!」
「エ、エオス……」


これ以上ブラックローズを怒らせると後が怖いのは、カイトも経験で熟知している。
状況を分かっていないのか、エオスはカイトの脇腹辺りから顔を覗かせ、ブラックローズに対して明らかな威嚇のモーションを取っている。
ここのところ妙にカイトとベタベタしたがる新参者の呪文使いに、半年以上も彼のパートナーを自負していた少女の怒りは爆発寸前だ。
自分よりも(多分)年下、きっと小学生、私は高校2年生、大人の対応を……と、自分に言い聞かせていたブラックローズ。
これが良子やなつめなら、まだ違った対応が出来たのかもしれないが……。


「カイトはあたしの味方だもん」
「んなっ!? ……だ、だったら、私の味方だってカイトよ! でしょカイト!?」
「……(汗)」
「てんてんてん(汗)、じゃないっちゅーのっ! 
 てゆーかっ、アンタもアンタよ! いつまでも抱きつかれてんじゃないっての!!」
「……こういうワケだから。ね、エオス」


ブラックローズの迫力に押されながら、カイトはエオスに促した。
カオスゲートの前で痴話喧嘩(になるのだろうか?)をしてプレイヤー達の注目を集めるのも、あまりよろしくない。


「……ちょっとフザけただけなのになー」


しかし、やっとエオスもカイトが迷惑しているコトに気づいたらしく、その身を引くのだった。
ブウッと膨れっ面の動作(モーション)も忘れず……恨みざらましと言ったところか。
端整なエオスの顔が珍しく不快の色を漂わせている。


「(カイト! どーしてあんな子、仲間に誘っちゃったのよ!?)」
「(初心者だったし、放っておけないと思ってさ。……それに最近はレベルも上がって来て、結構頼りになってるし)」
「(そりゃ真由美さ……ミストラルが子育てで忙しくて、呪文使いが不足してるのは知ってるわよ……でもさ、ワイズマンでもよくない?)」
「(ワイズマン、最近サッカーの練習に忙しいみたいなんだよね。僕も練習に打ち込みたいって彼の気持ち、分かんないワケじゃないし)」
「(あぁ……。だからアイツ、最近ログインしてなかったんだ……って、そーじゃないでしょーが!)」


ワイズマンがエオスと一度も遭遇出来ず、
後日PCモニターの前で泣きじゃくったのは、また別の話である―――――――――――――――


「ブラックローズさんって、まるでカイトのカノジョ気取りなんだから」
「はっ……はぁっ!?」
「あたし知ってるもん。ブラックローズさん、もうずーっと前からカイトと一緒に遊んでるのよね」
「だ、だから何だってのよ? アンタに関係ないじゃないの!」
「でも2人って付き合ってるワケじゃ、ないんでしょ?」
「そうだよ。ね、ブラックローズ」
「そ、それは、そう……だけど……(コ、コイツもコイツでハッキリ即答で言ってくれちゃってェ〜ッ!)」


先刻まで押し気味だったブラックローズが、ここに来て一転、劣勢となった。
褐色の肌の重剣士の少女の表情が俄かに曇ってゆく。
白い肌の呪文使いの少女の唐突な一言が、少なからずブラックローズに動揺を齎したのは間違いない。
テニスの県大会でも流したことの無い、厭な汗がコントローラーを持つ手にジワリと浮かぶのを、晶良は感じていた。
ドクンドクンと、鼓動がやけに早いのも気がかりだ。コレは、俗に言う「核心を突いた」というヤツでは、ないだろうか?


「じゃあ、あたしがカイトと付き合っても問題ないよね」
「なっ、なんですとっ!?」
「ブラックローズ……それミミルの決め台詞だよ(汗)」
「んなコトはどーでもいいのよっ!!
 ……エオス、アンタ何様っ!? さっきから言ってるコト、マジ分かんないんだけどっ!!」
「簡単よ。あたし、カイトが好きなの。
 分かる? 愛してるの。あたしの運命の人なの」


ゴトン。
端末の向こうで、いよいよ晶良は床にコントローラーを落とした。
肩をワナワナと震わせ、奥歯を強く噛み締めながら、眼前のモニターに映る呪文使いの少女を睨んでいる。
カイトの方は「えーっと……」」と言った動作(モーション)で、どう応えればいいのか分からないと言った様子だ。
無理もない。面と向かって(年下とは言え)異性から「好きだ」と言われたのだ。
メールでブラックローズとなつめから「好きかも(好きです)」と言われた時より、その精神的動揺は大きいと見える。
ただし、飽くまでそれは「女の子って面倒だなぁ」という予感から来るものではあったが。
だが事態は更に悪化の一途を辿っていく――――――――――――――――――――――


「この“泥棒猫”……」
「!? アッ、アンタ……まっ、まさか……!?」


白い呪文使いの少女に白いドレスの少女の姿が重なる。
少なくともブラックローズには、そう見えた。脳裏に浮かぶのは女神から受け取った挑戦状紛いのメールの文面。
ニコリ。
エオスの笑顔はブラックローズへの宣戦布告の合図。
嵐が来る。春の嵐が。


目覚めろ、その魂!                                                                                【 TO BE CONTINUED... 】

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