「.hack//G.U.」と「コードギアス 反逆のルルーシュR2」と「LAS(LMS)」と「ゴッドイーター」と「仮面ライダーディケイド」の荒唐無稽恋愛活劇SSサイト(のつもり)。

「行ってらっしゃいませ。お嬢様」
「はい。行って参ります」


定時通り、学校の200m手前での下車。
長年世話になっているドライバーに会釈し終えると彼女は歩き出した。
辺りを見回すと自分と同じように車で学校の手前まで送られてきた同輩らの姿が見える。
皆、楽しそうに談笑しながら朝の通学路を歩いてゆく。
尤も、そこは最馬女子大付属高校の生徒達。
談笑している姿にすら品があって美しく見えてしまうから不思議だ。
さすが幼稚園、小学校、中学校、そして高校と時間をかけて淑女教育を施されてきただけのことはある。
まるでこの学校およびその周囲だけが別世界、少女達だけの聖なる領域であるかのような
そんな錯覚さえ一般人は覚えるだろう。


「ごきげんよう。良子」
「ごきげんよう。良子さん」
「ごきげんよう。皆さん」


案の定、彼女も150m手前辺りに差し掛かった来た時、親しい級友らに呼びかけられた。
そのまま彼女らと共に校門をくぐり、校舎まで続く「お庭」を抜け、下駄箱に到着。
そして級友らに導かれ彼女のクラス、2年8組までエスコート。


「良子は自分の教室に着く前に迷子になるから」


と、いつもこうやって級友らに手を引かれて自分の教室まで
連れて行ってもらえるのは、とてもありがたいと思う反面、恥ずかしくもある。
彼女――――――――寺島良子の方向音痴は筋金入りだ。
いくら何でも「自分の教室が覚えられない人間なんているのか?」と誰もが不思議に思うだろうが、ここに実際居るから仕方ない。
ちなみに「南国少年パプワくん」等で有名な人気漫画家柴田亜美女史も自身の著内で
「中学卒業まで自分の教室を覚えられなかった」と発言、「だからアンタは七番魔光炉もクリアできねェんだよ……」と
ファイナルファンタジー斬慮拡任離悒織譽廛譽い鬟優燭縫侫.瀋未離ザワ担当からダメ押しされたことがある。
閑話休題。
とにもかくにも、今日も良子の一日が始まる。




















****************




















「ではここの訳文を……寺島さん、お願いできるかしら?」
「はい。―――『そして、ジョナサンは言った。『僕は本当の紳士を目指しているからだ!』――――
「素晴らしい、その通りです。主人公ジョナサン・ジョースターの熱意がよく表現されていますね。
 では次の訳を――――――――――――――


英語の時間は楽でいい。
あの先生は一度当てた生徒を授業内に再度当てる、ということをしないのだ。
ちゃんと前日までに予習・復習をし、辞書で英単語を調べ、ノートに訳文を書いておけば
例え当てられても十分に対処可能。
それ以前の問題として、この学校に予習・復習をしないような生徒は皆無だろう。
全員が全員、差異はあれど良家のお嬢様達なのだから。
英語は良子の得意科目でもある。
とは言え、良子も始終お堅く授業を受けているのか……と言ったら、実はそうでもない。


「(カイトさんは今、どうしてらっしゃるのかしら……?)」


これだ。
ここのところ、暇さえあれば唯一の異性の友人と呼べる少年を想う日が続く。
今まではちゃんと授業を集中して受けていたはずなのに、去年の12月に彼と出会って以来
こうやって授業中、物思いに耽る回数がどんどん増えていくのが理解(わか)るのだ。
無論、《The World》をプレイする前提条件として、学業との両立がある。
両親……特に父との約束なのだし、良子自身も勉強を疎かにするつもりは毛頭ない。
事実、年明けの実力テストでも上位であった。
カイトにいつパーティに呼ばれてもいいよう、帰宅したらすぐにその日の授業内容の復習、
次の日の授業の予習、与えられた課題をこなし、できるだけ多くの時間を彼のために割けるよう良子なりに考えてある。
塾にも行っていない。良子の父が、娘が異性と接触する機会を作らないよう配慮したためだ。
以前、良子の高校で文化祭が催された時は例外である。
普段はまるで秘密の花園のように一般の人間から思われている最馬女子大付属高校であるが
文化祭の時だけは一般および他校の人間も足を踏み入れることが許される為、多くの人間が物珍しさに足を運ぶ。
だが中には文化祭を機にお嬢様達と親しくなりたい……と言う輩もいるワケで。
案の定、良子も文化祭当日、他校の男子生徒からナンパをされている。
だが楽しくお喋りをしていたはずの彼は、全身黒ずくめの男達によって連れ去られてしまった。
一体、何が起きたのか。
最初は良子にはとんと了見がつかなかったが、後で父のお茶目ないたずらだったと判明し
笑ったものである(その後、良子をナンパした少年の行方は分からずじまいではあるが……)。


「(何だか、ドキドキします……)」


体育の球技中でもないのに、何故だか心臓の鼓動が速い。
彼のことを考える時は大抵この症状が現れる。
それに何だか頬も熱い。病気なのだろうか?
今度、主治医の先生に相談した方がいいかもしれない。
父には……話さない方が良いだろう。父はお茶目な人だから。
きっと娘が病気になったなどと分かったら会社の会議を休んで看病するか、名医を呼んで治療させようとするだろう。
それはいけない。
良子の父が会社をサボりでもしたら、福岡県の経済はその日のうちに破綻してしまう。
娘として、父にそんなことはさせたくない。
しかしながら、目に入れても痛くない程に娘を溺愛する父に
不用意にカイトのことを―――――ネットゲームで知り合った初めての異性の友人のことを話してしまったのは、
良子自身は全く気づいていないが、完全なミスだった。
元々、


「良子は絶対に嫁に出さん!」


と豪語していた超過保護な父であっただけに、その怒りは尋常ではなかった。
良子は顔を真っ赤にした父を見て「照れているのかしら?」と別段問題に思わなかったが
父からしてみれば何処の馬の骨とも知れぬ輩(それも娘の話を聞けば、3歳も年下の14歳の男)に
あろうことか大事に育てた娘の良子が惹かれている……その事実だけでも十分だった。
本来、最馬女子大付属高校の生徒の進路は2つ在る。
1つはそのまま大学に進級すること。
放っておいても幼稚園から大学までの進路は保証されているだけに、普通は皆大学へ進級する。
もう1つの進路は―――――――結婚である。殿方の許に嫁ぐ3年生も実は少なくない。
幼少時に婚約を決めていた許婚との結婚だそうだが、良子には許婚など居ないので
高校卒業後は大学に進級するだろう。
第一、良子を嫁に出すつもりなどない彼女の父が婚約者の類など許すはずがない。
少なくとも良子の幼少時、そういう話も結構あったのだが全て断っている。
福岡県内ならびに九州全域に支配権を伸ばす寺島家と親族になれれば……と思って
近づいた者が殆どだったため、良子を政略結婚の道具にさせてなるものかと――――――そういう具合に。
が、そんな良子の父にも盲点だったのがネットゲーム《The World》の存在だった。
彼とてCC社の存在は知っている。
東京に本社を置き、世界中にシェアを持つ大企業の1つだ。
だが残念なことに2000万人がプレイするネットゲーム……と言うのがイマイチ、ピンと来なかった。
彼からしてみれば、パソコンゲームもファミコンも同じ「ピコピコ」。
娘の良子が、


「ネットゲームをしてみたいのですが……」


と進言した時も「学業と両立させるなら」というのを条件にパソコンの購入を許したという経緯がある
(驚くべきことに、寺島家には2010年12月になるまでパソコンが一台も無かった)。
それが甘かった。
気がつけば良子はゲームで知り合った年下の少年に夢中になってしまっている。
食事中に良子から、


「昨日はカイトさんと○○というイベントに参加した」


とか


「カイトさんから高価な○○というアイテムを頂いて、とっても嬉しかった」


とか


「とても強いモンスターに遭遇したけれど、カイトさんが私を守って戦ってくれた」


などと聞かされると妻と娘の手前、極力怒りを抑えて食事を続けるものの
内心は今にもHBの鉛筆をベキッ!とへし折るが如く箸を折ってしまいたくなる衝動に駆られる良子の父。
普通ならば「家族の前でネットゲームの話とかするか?」と思う人間も居るだろうが、そこは天然の良子。
彼女にとってはネットゲームでさえも生活と社交場の延長であり、なおかつカイトは唯一の異性の友人。
今まで友人と呼べる殿方の居なかった良子にとっては、家族に報告したくなるのも当然と言えよう。
それがカイトに史上最大級の危機を招く結果になることも知らずに、だ。
しかもゲームのプレイ条件が「学業との両立」。
今のところ良子の成績は落ちている気配はないため、今更ゲームを解約させることも出来ない。
あまりの歯がゆさに、最近は「カイト」と聞いただけでも良子の父の胃はキリキリ痛くなる始末である。
無論、良子は全く気づいていないのだが。







キーンコーンカーンコーン





「では今日はここまでにしておきましょう。皆さん、ごきげんよう」






授業の終わりを告げるチャイムと共に、英語教師は教科書を携えて教室を去ってゆく。
昼休み、昼食タイムの訪れは否応なしにも最馬の生徒達に安堵感と開放感を齎す貴重な時間。
家から弁当を持ってきた者、学食でランチを楽しむ者、今日は何処で食べようかと相談しあう者。
皆それぞれに思い思いの場所に向かって教室を出て行く。
当の良子は――――――――――――――


「良子さん。お昼はお庭で食べましょうよ」
「(カイトさん……)」
「良子?」
「(あぁ……まだ家に帰りつくまで5時間以上も……)」
「またですね……やりますか?」
「やろうか。じゃ……せーの」
「「良子(さん)!!」」
「……はい?」


授業が終了したことにも気づかず、級友らの声でやっと正気を取り戻すという……。





















**************





















「ごきげんよう。良子さん」
「ごきげんよう。良子」
「お2人ともごきげんよう。お気をつけて」


いよいよ良子の待ちに待った放課後、つまりは帰宅時間がやってきた。
今日は《The World》で月例の限定イベントがある日。
既にメールでカイトと待ち合わせを約束しているため、早く家に帰ってログインしたいという気持ちばかりが先走る。
本来ならば福岡県内でも屈指の影響力を持つ寺島家のご令嬢ともなれば、
放課後はお茶会に呼ばれたり詩の朗読会に呼ばれたりと引っ張りだこのはずなのだが(或いは生徒会の類)、
良子は全て丁寧に断りを入れ帰宅するようにしているのだ。
一般人からすればまるで明治か大正時代の華族のご令嬢らの嗜みか親睦会のように
思えて仕方がないのだろうが、何せ幼稚園から教育されている最馬のご令嬢達は筋金入りのお嬢様。
一般人に非現実的な話でもあっても、間違いなく彼女らにとっては放課後のお茶会やら詩の朗読会やらと言った
金持ち同士の暇潰しのようなイベントこそが現実なのだ。
フランス革命以前、国民が貧困に喘ぎ「パンを! パンを!」と叫んだ際に
王妃マリー・アントワネットは「パンが無ければお菓子を食べればいいじゃない」と発言し
民衆の怒りを買ったとされるが、貴族であったマリーにとっては贅沢な暮らしこそが生まれた時からの現実だったように
そうそう覆るものではないのだ、彼女達の現実(リアル)は。
しかし、だ。
良子の現実は覆った。
カイトという異性の友人を持つことで、彼女の小さな箱庭のような世界は広がった。
良子にとっては自宅の寺島家と学校の2つこそが、今までの世界だった。
ところが《The World》という第3の世界を知ったことで……良子の運命は大きく変わり始める。
世間知らずで方向音痴、PC名もそのまま登録してしまう超初心者の彼女。
後に勇者と称される少年と出会ってから―――――――――――――――彼女の世界が変わったのだ。
彼と一緒に居ると、何もかもが新鮮で。何もかもが楽しく思えた。
自分に無い物をたくさん持っている彼。
同じ人間、男か女か、それしか差異のないはずなのに。
しかも彼は良子より3つも年下だと言う。
良子はカイトに初めて会った時、てっきり自分と同い年か年上だとばかり思っていたが……意外であった。
そして気がつけば、いつの間にか彼に夢中になっていた……と。


「お帰りなさいませ、お嬢様」
「今日は用事がありますので、出来れば早めに帰れるようお願いできますか?」
「畏まりました。シートベルトをお締めください」


後部座席から運転手に呼びかけ、フゥと良子はため息をつく。
学校から家までの道のりが遠いことは重々承知しているが、それがこんなにももどかしいなんて。
彼に会いたい、話をしたい。
そんな気持ちで胸がいっぱいになる……やっぱり自分は病気?
でも全然イヤな感じはしないし……今度、直接カイトさんに聞いたみた方がいいのかもしれない。
恋という名の病は寺島良子嬢の心の中で絶賛進行中であった。
恋……と言えば学校のお友達からは、


「下級生の○○という子が可愛らしい」

とか


「上級生の○○というお姉様が凛々しくて素敵」


と言った話をよく聞かされるが……良子はそういうものに全く興味が無いのも大きい。
そう言う意味では良子の恋愛感は正常であると言える。
温室で大切に育てられた花であっても時には外界の空気を吸いたくなるだろう。
カイトは良子にとって、そんな存在だった。
彼の見せてくれる世界ならば、全て良子は見てみたかった。そんな純粋な気持ち。
好奇心? それもある。
だが一番の理由は……彼の傍に居ると、不思議と暖かい気持ちになる。
それが心地よくて。
ネットゲーム、互いに相手の顔すら見えていないと言うのに。
本当に不思議な人。
明らかに今まで良子の周囲に居たどの殿方とも違うタイプ。
単にカイトがまだ子供だから……と言ってしまえばそうかもしれないが、けれども
何か彼には説明しがたい不思議な、人を惹き付ける魅力があるのもまた事実。
女の子であれば一生に一度くらいはお嬢様やお姫様などに憧れるもの。
良子の場合は既に「お嬢様」であるので選択肢は必然的に「お姫様」一択になってしまうが……。
【Σ 心広き 困惑の 聖女】でモンスターの一撃から助け出してくれた時のカイトの横顔は、絶対に忘れない。
まるで遠い遠い国の英雄譚に出てくる王子様のようだった。
良子を両手に抱え、キッと目前のモンスターを見据えていた、良子だけの王子様……
あの時のことを思い出すだけでポッと頬が赤く染まってしまう辺り、良子嬢の病はかなり進行していると判断できる。
「良子だけの王子様」の辺りで特に。


「ふぁ……」
「お嬢様? どうかなされましたか」
「いえ。少し眠ろうと思いますので、おうちに着いたら起こしてください」
「畏まりました」


今日最後の授業のバレーボールの疲れか、或いは車内の緩やかな揺れのせいか。
こっくり、こっくりと何度か頭を垂れた後、良子は静かに寝入る。
自宅に着いたら早速、明日の授業の予習と復習、課題をやっておこう。
……カイトはもう学校を終えただろうか? 仲の良い友人と遊んだりしているのかもしれない。
なら、イベントに参加するならば夕食以降がベストだろう。
彼にも彼の都合があるだろうし。
そんなことを考えながら、自宅に着くのを楽しみに、良子は眠りに落ちていった。                                           【 TO BE CONTINUED... 】

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