「.hack//G.U.」と「コードギアス 反逆のルルーシュR2」と「LAS(LMS)」と「ゴッドイーター」と「仮面ライダーディケイド」の荒唐無稽恋愛活劇SSサイト(のつもり)。

このSSは1968年3月24日にTBS系列で放送された特撮ドラマ「ウルトラセブン」第25話「零下140度の対決」のオマージュ作品です。



「わぁ〜。ハセヲさんっ、ほら、雪ですよ雪!」
「……んなの、見りゃ分かるっての」


辺り一面雪に覆われた銀世界へと駆け出していくアトリ。
全くもって元気なヤツだ。
一連の事件を経て結構大人しくなったよーに見えたんだが、基本やっぱアトリはアトリだってコトを再認識させる。
それくらいのはしゃぎっぷりだ。
正直、羨ましいくらいに。


「雪くらいでそんなはしゃぐなよ。小学生じゃねーんだからさ」
「だって、雪って滅多に見れないじゃないですか」
「千葉は何にもねートコロだと思っちゃいたが、まさか雪も降らねーとは驚きだなw」
「千葉にだって雪くらい降りますよーだっ」


クルッと身体をこちらに向け、
舌を出して「あっかんべー」の動作(モーション)をし、アトリは駄々っ子の様に拗ねた。
……表情豊かなもんだな。
碑文使いPCってのは他のPCに比べても動作が異様にリアルだから困る。


「地球温暖化のせいで最近は滅多に雪なんて見れないんですよ? 
 こういう時くらい無礼講ですっ!」
「まぁ、一理あるとは思うが……」


実際、かなりリアルな作りだとは思う。
CC社お抱えのグラフィッカー達が頑張った成果なのか、今回のクエストの為に特別に誂えられた
この雪に閉ざされたエリアは、今まで見たことのない異世界の如き雰囲気を醸し出している。


「(東京は最近、滅多に雪なんて積もらねーしな……)」


厚い雲に覆われた暗霊とした空、深々と降る粉雪、葉も舞い落ちた痩せこけた木々、大地を覆う氷雪……
何処か遠い、北極圏に近い異国の雪野原を思わせるには充分だった。
……なんて、エアコンをガンガン利かせた部屋でコーヒー啜りながら言うセリフじゃねぇけどさw


「昔の《The World》にも雪のエリアはあったんだぞ。今は野原と洞窟と回廊の3つのエリアがデフォだけどな」
「へぇ〜。……何だか、このクエストだけの限定エリアっていうのは勿体無いですね」
「CC社に嘆願書でも書くか? あの連中が採用するかどうかはビミョーだけど」
「ですねw」


CC社、特に上層部のイカレっぷりを識っているアトリも俺も、合わせて自嘲気味に笑った。
勿論パイや八咫の様な奴も居るコトを識っているが、それでも笑わずにはいられない。
事件の隠蔽や自身の保身が最優先な連中だしな。
末端の社員は上層部のそーいう体質に気づいちゃねーんだろうけどさ。


「そうだ。ハセヲさん、雪合戦しませんかっ?」
「おまっ……2人しか居ねーのに“合戦”はねーだろ」
「あー、そうかもですね。
 それにハセヲさんが雪玉を投げたら、きっとすごいダメージ受けちゃいそうですし……」
「だろ」


何だかんだで、今じゃ三爪痕にデータドレインされる前よりもレベル、上になっちまったからな。
もうカンストの150間近だぜ? 
ぶっちゃけレベル100越えてる奴だって、今の《The World》にゃ100万人居ない。
カンストのレベル150間近ってコトはそれだけこのゲームに時間を費やしたってコト。
廃人(ジャンキー)の証ってワケだ。


「他のクエスト参加者に出し抜かれたくねーし、さくっとクリアしちまおうぜ」
「あうぅ。もうちょっと遊んで行きませんか?」
「駄目」
「ハセヲさんのケチんぼ!」
「……ケチで結構だっての」


……と言うよりも、だ。
正直、堪らなかった。
アトリと一緒にクエストやるのが苦痛って意味じゃない。
何つーか……雪の中ではしゃぐアトリがあまりに可愛過ぎて直視出来ねーと言うか……。


「ハセヲさん? どうかされましたか」
「い、いや……何でもねぇ」


雪原のド真ん中で突っ立ったままの俺を、無邪気な顔したアトリが覗き込んでくる。
……近いぞ、オイ。
雪の匂いに混じってアトリの匂いまで嗅げそうな距離だ。


「?」
「(近寄るなっつの……)」


事実、Xthフォームになっちまってからは八枚の碑文全てと融合しちまってるおかげで
パイの固有能力だったタルヴォスの能力《嗅覚肥大》も今の俺には備わってる。
だから、その……あんま俺に近づくな。


「ほら。さくっとクリアしちゃうんじゃなかったんですか?」
「……わーってるよ」
「ではでは、行きましょう!」


隣に立ち、俺の手を取って雪原の奥へとアトリは進んでいく。


「(……やーらかいな、コイツの手)」


それに、すごく暖かい。
前述した嗅覚に加えてエンデュランスの碑文の能力、マハの《触覚肥大》も今の俺には癒着しているせいもあり、
普通のPCにゃ何でもない雪原行脚であっても、俺にとっちゃ薄着で雪山を歩いてるよーなもんだからな。
つまり、要約すると……滅茶苦茶に寒ぃってコトだ。
特に耳。もう感覚が無ぇっぽいし……。


「アトリ……」
「はい?」
「お前の手、あったけーのな」
「い、いきなりどうしたんですか?」
「……泣けるぜ」


突き刺す様な冷気が剥き出しになった肩や腹の辺りを襲っていたトコロに、思いもよらないアトリの温もりの救援。
一応、もう12月なもんで部屋のエアコンつけながらゲームしてたんだが、
今の俺はコントローラー持つ左手をプルプル震わせながらプレイしてたりする。
けど、アトリと繋がれた右手は暖かかった。


「やっぱ、さっきのナシ」
「さっきの?」
「いーから。……もっと引っ付け」


グィッとアトリを引き寄せ、腕の中にすっぽりと納めてやる。
帽子の下の金色の髪が揺れて、振り向いた顔は驚きに満ちていた。
……何だよ。俺がこーゆーコトするの、意外か?


「ちょ、ちょっ……ハセヲさん? は、恥ずかしいです……」
「どーせ誰も見てねぇって」


即席の人間ホッカイロ、ゲットだぜ。
アトリだって肩が剥き出しのコスのくせに全然寒がってねぇのは、正直不公平だと思う。
なので少し困らせてやる。


「アトリは……あったけーなぁ」
「あぅっ……」


俺がアトリの肩に手を回すと、やがて躊躇い気味だったアトリの方も俺の意図を理解したのか、おずおずと俺の腰に手を回してきた。
さっきまで元気良かったはずが急に黙り込んで俯いてやがるのな。


「あのぅ……。ハセヲさん……」
「あん?」
「……寒いんですか?」
「メチャな」
「だ、だからって、こういうのは、その、私、何と言いますか……」
「(……可愛いな)」


さながら今日のアトリはティンカーベルの様だった。
ティンカーベル、識ってるよな? 
ディズニーアニメの「ピーター・パン」に出てくる、あの妖精のティンカーベルな。
オーヴァンの野郎はやたらと「白雪姫」の話をしたがってたけど、俺は断然ピーター・パンだ。
どっちかっつーと本家より「ハウス世界名作劇場」の「ピーターパンの冒険」の方が好きだけどな!
まぁ何が言いたいかっつーと、金色の髪にグリーンのコスチューム、
それと背中の羽飾りのせいで、アトリがティンクに見えちまったと言うか何と言うか云々……
って、それじゃディズニー版のティンクか……。


「アトリと2人きりになるの、久しぶりだったし?」
「せ、節度があると思います! ……セクハラですよ」


俺の腕の中で、羞恥に頬を染めたアトリが小さく抗議する。
……その気になれば俺を突き飛ばすコトだって出来るだろうに。
ソレをしないってコトは……なぁ?


「俺に『私、ハセヲさんにふさわしい女の子になります!』ってメール送ってきたの、何処の誰だっけか」
「私、ですけど……ほっ、殆ど脅迫じゃないですかぁ〜っ!?」
「迂闊に返事しちまった、お前のミス」
「うぅ……やっぱりセクハラです……」


やべぇ、超面白ぇw
それに何のかんの言って、ちゃんとアトリも俺の身体しっかり抱き締めてくれてるしな。
これでとりあえずは凍死の心配は無くなったワケだ。


「アトリはふわふわで、ぷにぷにで……やーらかいな」


女ってのはマジで軟体動物かよ、ってくらいに軟らかい生き物だ。
抱いてるだけでこっちまで暖かくなってくる。
……それでも肩やら首は相変わらず寒いけどな。
飽くまで個人的な勘だが、このエリアの気温、マイナス10度よりもっと低い気がする。
寒風が吹く度に突き刺さって来るからな、冷気が。
畜生め、マハの碑文だけ外せねーのかよ……無理だろうけどさ。



「来年、千葉行ってやろうか」
「えっ? で、でもハセヲさん、確か『千葉、何もねーし』って馬鹿にしてませんでした? 浜崎先生の漫画版で」
「したけど……いーじゃねぇか。俺だって気が変わるコトくらいあるんだよ」
「なら……いい、ですけど」
「決まりな」


フーッと白い息を吐き散らしつつ、肩を抱いた手を離して、俺はアトリの頭を帽子ごとポンポンと撫でた。
同時に、帽子に降り積もった雪も払ってやる。


「……こういう時だけ優しいんですから」
「俺はいつでも優しーぞ」
「……ホントかなぁ」


疑問の声を上げるアトリに、俺は真っ向から意見する。


「当然だ。何故なら俺は“本当の紳士”を目指しているからな」


と。


「本当の紳士は、女の子を捕まえてこんな密着しないと思います!」


などとアトリが言ってるが、雪が耳に詰まったフリしてスルー。
因みに俺の頭も積雪警報出した方がいいくらいに雪が積もっちまってるが、元々白髪みたいなもんだし、あんま気にならない。
ブルブルと頭を振れば除雪完了だしな。


「もーすぐ冬休みだよなぁ」
「ハセヲさんは来年、3年生なんですよね?」
「まーな」
「受験、大丈夫ですか? 成績がガタ落ちして、夏の間ずーっと塾通いさせられてたってボヤいてましたけど」
「成績は何とか持ち直した。多分……冬は塾、行かされずに済むと思う」
「じゃあ冬休み、いっぱい遊べますねっ! ……ディズニーランドに行きたいなぁ」
「……期末の結果次第だな」


正直、手応えはあった。
未帰還者事件が終わった後、とにかくがむしゃらに勉強しまくったからな。
おかげで、もう俺を「ジャンキー」だの「向こう側に行くなよ!」などと茶化す奴も居ない。
ヒス気味の母さんもやっと落ち着きを取り戻したし、何とか以前の……“平穏な生活”ってのに戻れた(と思う)。


「そう言えば……シラバスさん、来れなかったの残念でしたね」
「アイツも来年から大学2年だからな。単位取るのに忙しいんだろ」
「今回の『雪男を捕獲せよ!』のクエスト、すごく楽しみにしてたのに……」
「シラバス、雪男とかネッシーとか大好きだしな」


都知事の石原慎太郎みたいだな……。
あのオッサンも若い頃、ヒマラヤに雪男、ネス湖にネッシー探しに行ったんだよなぁ。
何つー金の使い方してんだか。


「ま、結果オーライだ」
「どうしてですか?」
「アトリと2人きりになれたから」
「……恥ずかしい会話、禁止です」
「いーじゃん、いーじゃん」


すげーじゃん。


「そーやって私のコト、わざと困らせて……小学生はどっちですかっ!?」
「身体は大人、頭脳は子供だからな」
「開き直らないでくださいっ!」


俺に密着したまま、顔を真っ赤にしながら猛抗議してくるアトリ。
煮え切らない奴だな、お前も……。
俺に引っ付き過ぎて胸の感触までダイレクトに伝わってくるせいか、真顔で説教されても全然迫力が無い。
逆にアトリが声を強めるごとに胸が、より腕に押し付けられて……いいぞ、もっとやれ。


「ハセヲさん、聞いてるんですか!?」
「あぁ、聞いてるぜ。
 深夜アニメは視聴率低くてもDVDと関連グッズが売れれば、そこそこヒットするって話な」
「全っ然聞いてませんね……」


呆れ顔のアトリの口から、小さな溜息が一つ。
吐かれた息は即座に銀世界へと吸い込まれてゆく。


「ハァ……。志乃さんを助けようとしてた頃のハセヲさんは、あんなにカッコよかったのに……」
「過去は捨てたんだ。俺はもう“死の恐怖”には戻らねぇ」
「すごくカッコいいコト言ってるつもりかもしれませんが……私の身体に引っ付いた状態で言っても説得力無いですよ、今の」
「いいんだよ。今は、お前のコト好きなんだから」
「……ど、どうも」


我ながら勝手な言い分だってのは分かってる。
まー、アトリと最初に会った頃は志乃と同型のPCだったせいもあって、随分邪険に扱っちまってたからなぁ。
酷いコトもいっぱい言ったし、何度コイツを傷つけたか数えきれねぇ。


「アトリも俺のコト好きだろ」
「す、好きですけど……。
 自意識過剰と言いますか、自信過剰と言いますか……ハセヲさんって実は俺様系だったんですね」


俺様系、なぁ……ちょっと違うな。


「そりゃ誤解だ。俺の師匠に当たる人が、ちょいそういう感じだっただけだって」
「師匠? ハセヲさん、大火さん以外にも、お師匠様が居らしたんですか」
「あぁ。あの人がフランスに豆腐を買いに行っちまったきり、会ってねーけどな」
「な、何故わざわざフランスまで、お豆腐を……」


天の道を往き、総てを司る。
今頃何処で何やってるんだろうな……あの人。
師匠を語る上でどうしても外せないのが、あの忌まわしい「ワーム事件」なんだが……
それについては話し始めると長くなっちまうんで、また別の機会にさせてもらうぜ。


「とにかく、ルートタウンに着いたら離れてもらいますのでっ!」
「へーいへいへい」


口じゃ、そんなコト言ってるクセにアトリだって俺から離れようとしねーじゃねぇか。
俺が最初に肩を抱いた時だって嫌がらなかったし。
結構節操は弁えてる様で、興味が無ェってワケでもないらしい。
ま、俺が健全な高校生男子ならアトリも健全な高校生女子だしな。
ハルヒで「恋愛は精神病なんたら」と言っていたが、今なら頷ける気ぃするし。
明らかに、今の俺は今まで培ってきた俺のイメージをブチ壊すくらい、キャラ違うし。


「……けど、裏を返せば……ルートタウンに戻るまでは、引っ付いてていいってコトだよな?」
「そ、そういう解釈も、出来ないコトもないですね」


だって恋愛ってこんなもんだろ? 
男女が見つめ合い、互いに頬染め合って、ボーイ・ミーツ・ガールすんのが醍醐味だろ?
オーヴァンの野郎は厭味ったらしく「それでフラグが立たなきゃだいぶ気を削ぐなw」とか言っちゃいたが、そりゃ個人の自由だろうが。
つーかあの野郎、志乃に告白しといた挙句、俺にエラソーに説教垂れてやがったな……26にもなって、やることがセコ過ぎだぜ。
大人で、俺に無いもん全部持ってて……とか思ってた自分が虚しい。


「うーし。絶対に雪男、捕まえるからな」
「ハ、ハセヲさん? さっきまであんなに寒がってたのに……燃えてますね」
「無性に熱くなってきてよ……。熱い、熱くて死ぬぜ……うぉーっ、あっちー!」
「だだっ、大丈夫ですかっ!?」


つーか、ホントに熱かったんだが!


「あ、何かと思ったら……飲んでたコーヒー、気づかないうちに床に溢してた」
「……拭きましょうよ」
「そーする」


布巾は台所か……やれやれだぜ。


「ちょいタンマな。台所に布巾、取りに行って来るわ」
「ハァ……分かりました。その間、私が見張っておきますから」
「独りで大丈夫か?」
「呪療士(ハーヴェスト)ですけど、私もレベル100越えプレイヤーですから」
「ん。なら、へーきか」


そんじょそこらのPKじゃ、もうアトリをPKすんのは不可能だろうな。
本来は後方支援型で、攻撃呪紋も初歩的なモンしか使えねーけど、
アクセサリなんかで強化してるせいでやたら強いんだよなぁ、コイツ。
脚も速けりゃ呪紋の詠唱も速いし、ロストウエポンもレベルマックス。
何つーかもう“約束された勝利の剣(エクスカリバー)”って感じ。
どこの剣のサーヴァントですかってくらい、今のアトリは強いワケで。


「すぐ戻ってくっから」
「はい」


M2Dを外し、コントローラーを机の上に置いて、俺は席を立った。
感覚が戻って来る。
ついさっきまでゲームの中じゃ極寒地獄を味わってたってのに、ちゃんと俺は自分の部屋に居て、エアコンの恩恵を賜っていた。
地球温暖化だの何だの言われてるが、科学の力、万歳と言わざるを得ない。
この調子で雪男もとっ捕まえてやるぜ。


「さて……布巾布巾と」


クエストの目玉の「雪男」の存在が少々気にはなったが、
今はコーヒー塗(まみ)れになった床拭きのための布巾探しを優先しねーと。


「(今夜は鍋食いてーな……冷蔵庫に材料あっかな?)」


なんて、どーでもいいコト考えつつ。
温室の様な自室のドアを開け、冷え切った階下の台所へと、俺はそそくさと向かうのだった。                                    【 TO BE CONTINUED... 】

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