「.hack//G.U.」と「コードギアス 反逆のルルーシュR2」と「LAS(LMS)」と「ゴッドイーター」と「仮面ライダーディケイド」の荒唐無稽恋愛活劇SSサイト(のつもり)。

『神は正しいと言えるでしょうか?
 正しくなければ神は神でなくなり、従って恐れ服従する必要もなくなります。
 貴女の死の恐怖自体が神への恐怖を否定しています。
 ではなぜ神はこれを禁じたのか。
 唯恐れさせるため、己を拝む者つまり貴女方を無知蒙昧な者にしておくためだけではないでしょうか。
 この果実を食ったその日に、一見明晰なようだがその実曇っている貴女方の眼が、
 完全に開かれ明晰になり、神々と同じ様に善と悪の両方を知ることによって
 貴女方自身が神々の如くなることを、あの神は知っているのです』


【ジョン・ミルトン著 「失楽園」より 】



―――――――――――


機嫌が悪い時はいつも、あたしはここに居る。
別に生理とかそゆんじゃなく、ただ単にイライラしてる程度の機嫌の悪さでも、だ。
『Δ 隠されし 禁断の 聖域』……ここは7年前から変わらない。
聖堂を模してはいるけれど、なにも祀られてはいない。
誰もこない、何のイベントも起こらない、ただあるだけの場所。


「きみと出会った時、子供の頃大切に思ってた場所を思い出したんだ……ここがそうだよ、ハセヲ」


正面の大きな窓から差し込む光。
明星か黄昏刻か……どちらかなんて疑問に思ったこともない。
どちらにしてもこのエリアを作ったグラフィッカーは良い仕事していると思う。
子供の頃はヴァチカンのサン・ピエトロ寺院に行ってみたいと思っていたが、
それも去年、学校の修学旅行で叶ってしまった。
偏食家のあたしにとってイタリア料理はどうにも合わず、殆ど友人達に食べてもらったのを未だに覚えている。


「なんにもない、なんにもない、ほんとになぁんにもない……」


無論、外国からの観光客でごったがえしてたあそこと、
このグリーマ・レーヴ大聖堂を比較しちゃイカンとは思うけど。
だが何もかも変わってしまったこの世界で唯一の不変があるとすれば……それがここなのだろう。



――――名前。

『……ない』

――――嘘。

『忘れた』

――――ふざけるな。名前。じゃなければ、メンバーアドレス。

『友達になりたいの? 僕と友達になろうってこと?』

――――そう。友達になろうってこと。

『僕の名前は―――――――ソラ』



我ながら馬鹿さ加減に呆れてしまう。
でもこれでいい。
この執念こそ今のあたしの活力の総て。
思い出に縋ることの出来るこの場所でなら誓える。
再び巡ってきたこの機会逃したりはしない、絶対に。
思えば智香が――――――揺光があたしとハセヲを惹き合わせたのも何かの縁。
幼い頃に置き去りにしてしまった何かを取り戻せた瞬間……。


「あの日……父さんは来なかった……」


2010年のクリスマス、あたしは病院で目を覚ました。
ベッドの傍らには、眼を赤くしたおばあちゃんとお母さん、看護士と先生。
何が起きているのかサッパリ分からなかった。
なんだか永い夢を見ていた……漠然とそんな気になってたと思う。
けど、その場所にはやはりと言うか何と言うか……お父さんの姿は無かった。
退院するまで先生が色んな質問をしてきたけれど、あたしはただ曖昧な答えを返すしかない。
だって、何も覚えていなかったから。
結局、あたし達は東京を離れて北海道に移った。
意識不明になる直前、あたしはどうやら学校のクラスメイトと問題を起こしていたらしく、
逃げるように年が明けると転校、表向きの理由はもっともらしく“病気療養”。


「それから7年……」


北海道に越してもあたしの偏食は変わらず、おばあちゃんは手を焼いていた。
基本的にあたしはおばあちゃんが嫌いではない。
むしろ女しかいない仁村の家の大黒柱的存在として尊敬さえしている。
おばあちゃんの言うことはいつも正しい。
だからこそ、それまでのあたしは反発していたのだろう。
まぁ……完全に治ったってワケでもないけど、その頃からあたしはお菓子以外の
食べ物も口にできるようになってゆく。


「嫌いなものがあるとすれば……」


退院してから、あたしは意識的に男の人を避けるようになる。
何と言うか……怖かった。
ヒステリックとまではいかないけど、視界に入ると嫌な気分だったのだ。
父親のT氏(我が家での“父親”を意味する隠語。徳岡の頭文字のT)は
あたし達がこっちに引越しても結局連絡をよこすことはなく、それが拍車をかけて
あたしの中で男への嫌悪感が募っていったのもしれない。
委員会は小学校の頃と同様に図書委員になって図書館に引き篭もることが多くなり、3年間はそうやって過ごす。
事務的なやりとりなら何とか接することができたし、何よりも静かな図書館の中は落ち着くから。


「転機は高校に入ってから……」


女子校は気楽だった。
何よりも日中は殆ど男を見なくて済むし。
その頃になると、もうお母さん1人の収入でも
何とか家族3人で食べていける様になって、おばあちゃんは塾の講師を辞めていた。
あたしは「バイトしようか?」とも言ったが「大学に行くまでは私達が面倒を見るから」と制されてしまう
(校則でバイトは禁止だったから最初から諦めてはいたけど)。
高校に入学した前と後で、変わったものは2つ。
1つは背。小学生の頃はクラスで前から4番目だったけれど、今ではクラスで一番最後。
もう1つは髪。こっちに越して来てからずっと伸ばし続けた髪が、漸く元に戻った。
元々あたしの髪は小学4年まで腰くらいまであったのだが、鬱陶しいので切ってしまって――――――――
それがやっと5年かけて元に戻る。おばあちゃんはあたしの長い髪が好きなので、喜んでもらおうと伸ばし続けた結果だ。
まぁ、不満があるとすれば髪を洗う時に面倒なのと、寝る時くらいか。
特にこれと言ってトリートメントはしてないし……。


「会いたいよ……楚良……」


確信があったワケじゃない。
でもあの錬装士の少年が……ハセヲがかつてあたしが恋焦がれた彼ではないのか
という疑念は常に頭のどこかにあったと思う。
例え智香がハセヲと繋がったとしても、あたしには楚良との繋がりがある。
ひたすらにあたしは彼を求め続けた。
PKK、ハンター、宮皇……できることなら何でもやった。
でも楚良はあたしの前に現れることなく虚しく時間が過ぎてゆく。
そんな時、あの男が現れる。あたしの事情を全部見透かした様な、それでいて人を値踏みする様な目。
オーヴァン。キー・オブ・ザ・トワイライトを捜している「黄昏の旅団」のギルドマスター。
何処から嗅ぎ付けたのかは知らないが、あたしがアウラと一緒に行動していたことまでアイツは知っていた。
そして楚良のことも。あたし以外の人間が、あたしの知らない楚良を知っている……イラっときた。
だが何よりもあたしが危機感を覚えたのは、あの男の左腕。




――――その左腕……。

『君と同じだよ』

――――同じ? あたしと?

『そう。愛し方を知っているのさ、俺も』

……キョーミ無い。

『三爪痕に会いたくはないかい』

――――三爪痕……アンタ、会ったことあるの?

『君にとっても因縁の相手だろう?』

――――会えるの?

『俺は彼に追われていてね……俺が誘えば必ず来る。……どうする?』




その後、
三爪痕に完膚なきまでに返り討ちにされたあたしは《The World》を辞めた。
憑神も開眼させて本気で挑んだにも関わらず、だ。
レベル差もあっただろう、ブランクだって6年もあったし、キャラ操作のスキルだって……
開眼したてのスケィスも何故か三爪痕を相手にすると本領を発揮できないようで
あまり意味をなさなかったような気もする、今思うと。
だが腑に落ちないのは、
どうしてオーヴァンはあたしと三爪痕を戦わせようとしたのか……問題はそこだった。
まさか、あたしに三爪痕を倒させるつもりだったのか?
思うにあのオーヴァンも相当の使い手だと感じたし、それに左腕を使えば十分に戦えたはず。
あたしは勇者カイトを恨んでいる、
それを利用して三爪痕を倒させようとしたんだろうか。
結果的にアイツは……三爪痕は勇者カイトではなかった。
彼なら別人だってことくらい、知っていたはず。
オーヴァンが居ない今となっては……もうどうでもいいことだけれど。


ここから先は、仁村潤香も知り得ないコト。


『おかえり。彼女、どうだった?』
―――――
『ダメだったんだね』
『善戦はしていたよ。
 だが倒すには至らなかった。
 彼女ならやれると思ったが……憑神の使い道については、まだ未熟だったようだ』
『ごめんね。せめて私がイニスを開眼できていれば……』
『適格者たる碑文使い全員が憑神を開眼できるとは限らない……志乃のせいではないさ』


かつて旅団の@ホームだった場所。
語らうのは旅団のギルドマスターとその恋人と噂される呪療士の女性PC。
まだそこに、黒い錬装士の少年の姿はない。


『ゴードとBセット、旅団辞めちゃったよ。もうついていけない、って』
『彼女達にもまだ使い道はある。近いうちにまた会うことになるだろう』
『そういうコト、言わない。だから嫌われちゃうんだよ?』
『慣れたさ。だが妹を救うという目的がある以上、好かれようが嫌われようが、それは問題じゃない』
『アイナ……大丈夫?』
『医者の話では、もって来年の夏までだそうだ。それまでに再誕を起こす必要がある』
『でも肝心の第一相の憑神を開眼してた子、負けちゃったんでしょう?』


オーヴァンは全て見ていた。
第八相・コルベニクによって彼の左腕に拘束されたAIDAに惹かれ、
グリーマ・レーヴ大聖堂に現れた三爪痕(蒼炎のカイト)と、第一相・スケィスの因子を宿したカールの戦いを。
彼が志乃に述べた通り、カールは善戦していたと思う。
だが憑神による実戦経験の少なさが災いしてか、
はたまたあの修羅場に現れた赤い髪の双剣士の少女に気を取られたのか……
データドレインが穿たれるか否かの寸前で、彼女は赤い髪の双剣士の少女を連れて大聖堂から敗走してしまった。
オーヴァンとしては残念な結果である。
これからも三爪痕……即ち、追跡者とは顔を合わせることになるだろう。
できる限り時間のロスは避けたかったが……過ぎたことを言っても始まらない。
予備が駄目ならば、本命を使うまで―――――――――――――――――――――――


『心配はいらない。もうすぐ、次の碑文使い候補が現れる』
『前に言ってた、7年前にアウラを追いかけてたって子?』
『どちらかと言えば、彼女よりも彼の方がスケィスとの因縁が強い。
 勇者カイトがスケィスを撃破するまでの約1年もの間、彼はスケィスと同調していた……』
『1年近くも……すごい』
『だが彼の7年前の事件に関する記憶は一切失われていると番匠屋の記録にはあった。
 以前の彼は超人的なスピードを誇るPKだったそうだが、今では初心者同然と言うワケさ』
『……けしかけるんだ、PK。やだな。何か、そういうの』
『彼が旅団に興味を持ってくれないことには……何も始まらない』
『それは判るけど……自演みたいで……』


自分達のやろうとしている行為は最低だと判っていながら、
それでもやらなければならない。
これは壮大な英雄劇ヒロイック・プレイにして悪漢譚ピカレスク・ロマン
オーヴァンの妹、アイナを目覚めさせるために必要なこと。
これより8ヵ月間は幕間劇に興じよう。
その間にできることを全て成し終え、来るべき再誕の日に備えて。
そして願わくば、真の再誕が発動しないことを願って。


『彼が旅団に加わると同時に、俺はキー・オブ・ザ・トワイライトの本格的な探索を始めるつもりだ。
 恐らくCC社からの横槍もあるだろう……旅団と彼は、君に任せる』
『大役だね。
 本当は、誰も傷つかないのが一番いいんだろうけど……時間、もうないんだもんね』
『世界の全てを敵に回してでも、やり遂げなければならないことがある……俺は先に進むしかない』
『うん……でもね、これだけは忘れちゃダメ。
 オーヴァン……私も、共犯だから。だから、だからね……どんな時でも貴方は、1人じゃないよ』


三崎亮ことハセヲが《The World R:2》にログインするのは、これより一ヶ月後のことである―――――――――――
























*************************


















「くぁ……ぅっ……ま、また……っ……!!!」


このエリア『Δ 隠されし 禁断の 聖域』ことグリーマ・レーヴ大聖堂を
訪れると極稀にカールに起こる症状がある。
幻痛ファントム・ペイン
悲惨な事故に遭遇し、その事故現場を訪れた被害者が気分を害するのと同様に
この大聖堂はカールにとって良くも悪くも思い出が多すぎて、時にこんな痛みを感じる。
肉体ではなく精神の痛みが、あたかも古傷が疼くように彼女を蝕むのだ。


「はぁっ、ぁっ……おばあ、ちゃ……!」


居間で夕飯の後片付けをしている祖母のタキ江を思わず呼びそうになるが、必死で堪えた。
またこのゲームが原因で失調を起こしたとなると、今度こそ取り上げられる。
2年前にこのゲームを再開しようとした時だって少なからず反対はあった、
だが今度はダメだ。
ハセヲを、楚良を取り戻さなければならない。
こんなくだらないコトでゲームを中断されてたまるか。


「あたしは……あたしは……きみを取り戻すまで……負けない……っ!」


群青色のドレスに皺が入るまで胸を押さえつけるカールの叫びが大聖堂に木霊する。
オーヴァンがかつてAIDAの侵食を驚異的な気合のようなもので抑制していたのに対し
カールもまたハセヲ、つまりは楚良への想いだけで痛みを押さえつけようとしていた。
いや、むしろこれは幻痛と呼ぶよりは副作用に近いのかもしれない。
ハセヲが正式に第一相こと“死の恐怖・スケィス”の碑文使いとして開眼している以上、
カールと彼女の駆る紅いスケィスはこの世界にとっては紛い者の碑文使いと憑神に他ならない。
本物に勝る紛い物などあってはならない。
アウラが消え、その加護すらなくなったこの世界にとって、例えアウラの第二の母親とも言える
カールでも不純物扱いなのだ。どうやら彼女が知らない間に、世界からの侵食は既に始まっていたらしい。


「治まっ、た……」


トーナメントが終わるまでこのPCは持つだろうか。
あの幻痛を止める方法はたった1つ。
紅いスケィスを、碑文たるモルガナ因子を放棄することのみ。
他でもない、スケィス自身がそう言っている。だがカールには更々そんなつもりはなかった。
トーナメント3日目、つまりは決勝戦までスケィスを温存しておく必要があるから。


「……ねぇ、楚良。
 きみを手に入れるためなら、あたし……なぁんでもやるよ」


志乃を意識不明から救うため《お前を取り戻すためなら、俺は何度でも修羅になる!》とまで言ってのけたハセヲ。
ならばカール自身もハセヲと同じことをすればいい。彼は結果的に志乃を取り戻せた。
ならば自分とて楚良を取り戻せるはず。彼にできて自分にできない道理はない。
ハセヲが修羅なら、自分は何だろう。
夜叉? 般若? 
いいや、違う。
今のあたしは、阿修羅姫――――――――――――


【 TO BE CONTINUED... 】

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