「.hack//G.U.」と「コードギアス 反逆のルルーシュR2」と「LAS(LMS)」と「ゴッドイーター」と「仮面ライダーディケイド」の荒唐無稽恋愛活劇SSサイト(のつもり)。

『女性に立ち向かう武器は思いやり。最後の残酷な手段は忘却である』


【イワン・アレクサンドロヴィチ・ゴンチャロフ  ロシアの作家】


『ゆっ、勇者と申しますとアレですかっ!?
 BBSなどの噂で、7年前の事件を解決したと言われる伝説のパーティの……
 ドットハッカーズのリーダーだった、あの勇者カイトのコトでしょうか、大火様っ!?』
『って言ってもワシも実物拝むのは初めてだがよ。
 おでれぇた、ホントにおでれぇた……アイツの覇気で、コントローラー持ってる手がガタガタ震えてくらぁよ!
 おい母ちゃん、酒持って来い! 酔いでもしなきゃ震えが止まる気しねぇぞ、こりゃ!!』
『みッ、皆さん、お聞きになりましたでしょうかァ―――――――――――!?
 ハセヲチームの窮地に突如として乱入した謎の選手はッ、
 あの伝説のプレイヤー、勇者カイトご本人だそうで――――――――――――――――――すッ!!!』


わっと巻き起こる歓声。
声を上げることさえ忘れて10数秒間の攻防を見守っていたアリーナに集う観客達が、一斉に声を出すことを思い出したかの様に狂喜した。
理由は分からないが、あの伝説のプレイヤーが自分達の目の前にいる。
ただその事実さえあればいい。
それだけで、こんなにも胸が、心が、熱くなる。
勇者は希望を与える存在たり得るから勇者なのであり、
勇者とは勇気を与える存在たり得るから勇者なのだと――――――――――


「勇者だぞぉ、シラバス! 勇者、勇者〜!」
「ほ、ホントにホントに本物っ!? 本物の勇者カイトっ!? す、すごい、UMAクラスの大発見だぁ〜!^^」
「な、なつめサンの言ってたコト、マジだったんだ……」
「(八咫様の仰っていた通り、勇者カイトは現れた……。これも碑文のシナリオだと言うの……?)」

  
四者四様の思惑はあるだろうが、その場に居た全員が驚きを隠せないでいる。
いや、四者と言うのは語弊がある。
正確には、彼女を入れて5人なのだから。


「ふぅん」
「! カール……」
「貴女、今まで何処に行……!?」
「あいつまで……戻って来たんだ……」


阿修羅の形相をした女が、そこに居た。


「な、何で勇者がハセヲチーム助けてん!? 
 い、いや、そりゃ負けてもろたら困るけど、あーもうワケ分からんよぅになってきたわぁ!!!」
「懐かしい……匂い」
「エ、エン様……? 勇者のこと、何か知ってはるん……?」
「……古い友達」


この頃はハセヲのことで頭がいっぱいだった薫。
されど、かつての友のことは忘れてはいない。
ミアが興味を示していた素敵な腕輪の持ち主、最初の彼への認識はそれ。
ミアを殺した張本人、それが次の彼への認識。
そして、共にミアを救い出した唯一無二の友。
全ては失われてしまったワケじゃないと、ハセヲと出会ったことで変われた薫。
だって目を閉じれば、彼と共に彼女を救い出したあの時の記憶を鮮明に思い出せる。
そうだった。
彼が勇者と呼ばれる所以ゆえん
どんな時も決して諦めず、最後まで希望を与え続けてくれた彼は、いつも強かった。
自分にない強さを持つ彼……かつてのエルクはもしかしたら、彼に成りたかったのかもしれない。


「……おかえり、カイト」




『ハセヲチーム、一気に形勢逆転で――――――――――す!
 突如として現れた勇者カイトの活躍により“がび”チームに大打撃! 
 これだから実況は辞められないッ! 剣よ舞え! 拳よ唸れ! 転身だァァッ! 気力だァァッ! 
 私もみ・な・ぎ・っ・て・まいりましたァ―――――――――――――!!!!!』
『(……このままでも合計HP差分でハセヲ達の勝ち……が、それを許す“がび”じゃねぇだろうよ)』


勇者が、俺の目の前に居る。
一度でいいから戦ってみたい、会って話がしたいと思っていた相手が。
なつめが言っていた通りの奴が。
……けど奴は本気なんざちっとも出してない。
まるで自分の力を試してるみたいな様子だった。どーいうコトだ……!?


「勇者か……面白い(^ω^)」
「行かせるかよッ!」


確かにもう試合終了まで残り30秒足らず。
このままでも合計人数差で“がび”チームには勝てる……でもそれじゃ勝ったとは言えねぇ、逃げだ。
このケモノオヤジの実力はオーヴァンも認めてたんだ……
“がび”を越えられないようじゃ、オーヴァンだって俺は越えることができねぇってことになる!


「アンタの相手は俺だろうが……間違えてんじゃねーぞ!!!」
「おぉぅ!?」
「(試合終了まで残り30秒を切ってる……!)」


完全勝利のための30秒。
俺との戦いを放棄して勇者の方へと足を向けようとする“がび”の前に立ち塞がり、構える。
行かせねぇっつただろうが。
アンタは俺が――――――――――――――




―――――ねーねー。僕ちんも戦っていーい?

楚良!? おまっ、こんな時に……! 今の今まで何してたんだよ、お前っ!?

―――――戦力分析♪ ね、ね、もう時間ないんだしぃー、僕ちんが代わりに戦ってもいーでしょ?

馬鹿言え、お前がアイツ倒しても意味ねーんだよ! “がび”は俺が……!

―――――いーじゃん、いーじゃん!

待てっ……!













「むぅ……!?」
「へっへぇ〜ん! 僕ちん、シュシュッと参上〜!」
《このっ、待てって言っただろうが!》


眼前の少年の雰囲気がガラリと変わったことに“がび”は内心の驚きを隠せない。
ハセヲとはそう面識はないものの、
人間行動学、文化人類学、動物生態学、社会心理学を極めた“がび”のプレイヤー・大山和重からすればその行動を予測するのは容易い。
それこそ青春真っ盛りであろう子供ならば尚更。
二児の子供を成人まで育て上げた彼にとっては造作もないこと。
だが、目の前の彼はなんだ? 
まるで異質な雰囲気を持つ、この少年は?
明らかに今までの彼ではない。
目つきが先程と全く違うのだ。
まるで、無邪気な子供のよう。


「っつ〜ワケでぇ、いっくよぉ〜ん?」
「ぬぅっ!?」
「ばっ……みゅんっ! ちゅばっ!!!」


『キ、キタキタァ――――――――――――――――
 ハセヲ選手、昨日の試合を彷彿とさせる超スピードで“がび”選手を翻弄しておりますッ!
 奥歯に加速装置でも仕込んでいたのかッ!? “がび”選手、全く対応できずにメッタ斬りにされております!!!
 速いっ、速すぎるッ! 
 あれは何だ!? 何なんじゃ〜!? 忍者、忍者なのでしょうかァ―――――――――――ッ!?』
『(確かにとんでもねぇ速さだ……あの速度じゃ、いくら“がび”でも眼が追いつかねぇだろう……!)』


大火の予想は間違ってはいない。
既に“がび”のプレイヤーである大山は68歳。
老眼が必要な年齢に達している(大学教授時代から論文や小説を書いていたことを考慮すれば、一般の68歳よりも視力は低いかもしれない)。
それでいて、楚良が憑依したハセヲのこの超スピード。
ガードが間に合わず、双剣のコンボを次々と喰らっていく。
既に世間一般では老人と呼ばれる程にまで歳を重ねた大山には、捉えきれるものではない。
加えて、《R:1》の頃から神出鬼没さとスピードを売りにPKを重ねてきた楚良の見切りのセンス。
試合中ずっとハセヲの呼びかけに応じなかったのも“がび”を観察して太刀筋を見極めるための策。


《おい! 楚良っ、暴れすぎだ!》
「いーのいーの、僕ちんに求められてるのはケレンだから♪ アバれた数だけ優しさを知るって言うしぃ〜」
《“がび”相手にここまで戦えるのは、確かにすげえと思うけどよ……!》


ハセヲと楚良の対話は続く。
昨夜クーンに言われた通りに楚良を理解することで「自分に挑む」と決めたハセヲ。
楚良を許すことで自分の一部として受け入れると。
だが、子供を相手にしているようで話が全く噛み合わない。
これが本当にもう1人の俺なのか、という疑念がひたすらに浮かぶ。
今だって、自分のPCを勝手に動かして戦っているではないか。


「それにぃ、あのヒトも見てるし♪」
《あの人……?》


客席から感じる数多のプレイヤー達の視線。
その中で、一際自分達を射抜くように見つめる者がいる。
試合終了まで残り20秒足らずだと言うのに刹那、ハセヲはその視線に釘付けとなった。
彼方の客席に佇む黒衣の少女。
銀色の髪を湛えたその顔は、これまで見たこともないような満面の笑みを浮かべている。
狂喜と狂気が入り混じったその顔の、何と美しくそして可愛らしいこと。
だが明らかに彼女はハセヲを見ているワケではなく、ハセヲを通して別の人間を見ていた。
その動き、一挙一動を懐かしみ、そして慈しむように。その視界に彼しか映らないように。


――――カール……!


舞台に足が減り込む程の速度で急ブレーキをかけ、彼女の視線と向かい合う。
ほんのわずかな出来事だったが、それでも彼女の口元が僅かに動いたのが分かる。
刹那の邂逅と、彼女からのメッセージ。






あ・た・し・は・こ・こ・に・い・る・よ。






いつも意味不明な冗談でハセヲを困惑させて楽しむ彼女。
唇の動きだけで声は聞こえないはずなのに、その笑顔は優しくて、それでいて背筋が凍るようで。
綺麗すぎて怖い。
気高すぎて怖い。
一途すぎて怖い。
確証がある訳でもないのに、
彼女が自分に(正確には楚良にだが)向けて呟いたのが見えた気がする。


「さ〜て。そろそろキメちゃおっかな〜?」
《……カール》


客席からはケストレル5000人の団員らの野次とブーイングの嵐。
それはそうだろう、自分達のギルドマスターがよりによってPKKの“死の恐怖”こと
ハセヲにいいように嬲られているのだから(傍目から見ればカナードとケストレルのギルマス対決でもあるが)。
元からケストレル内でも賞金首扱いの彼が“がび”を圧倒し、メッタ斬りにしているこの現状を見れば
彼らの反応も仕方ない。
また余計な敵を作ってしまわなければ良いのだが。


「……やっぱりだ(^ω^)」
「あっはぁ〜ん? なにがぁ?」


“がび”は満身創痍。
双剣から双銃にメインウエポンをチェンジした白髪の少年が迫る。
たった10秒程度の攻防で一気にHPは削られ、遥か年下の少年に圧倒されているというのに“がび”の心は穏やかだった。
将来が楽しみな面白い素材ではあると思っていたが、今の彼はそれ以上の存在。
何をやらかすか判らない危険と期待に満ちたトリックスター的な存在であることを、この戦いで思い知るとは。


「オーヴァンの言っていた通り……お前は面白い」
「そ〜ぉ? これが僕ちんの芸風だしぃ、むしろ面白ぇ〜のが当ったり前なんだけどねぇ」 
「お前がこれからどんなコトをしでかすか……今後の楽しみがまた一つ増えた(^ω^)」
「うん、そゆことで!」


BANG-BANG!と二丁拳銃のトリガーが引かれ、耳を劈く銃声と共に獣王がその場に崩れ落ちる。
直後、終了する試合。
試合はまたしてもハセヲ達の勝利。
圧倒的不利な状況をひっくり返した2人の相反するプレイヤー。
カイトと楚良、どちらが“機械仕掛けの神”なのか。


「う〜ん。やっぱ僕ちんってば、つんお〜いっ♪」


【 TO BE CONTINUED... 】

目次に戻る】【第18話

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

管理人/副管理人のみ編集できます