「.hack//G.U.」と「コードギアス 反逆のルルーシュR2」と「LAS(LMS)」と「ゴッドイーター」と「仮面ライダーディケイド」の荒唐無稽恋愛活劇SSサイト(のつもり)。

『人間はその潜在能力を引き出すことで、素晴らしく変化する』


【広岡達郎  元野球監督】

「……無茶しちゃって」
「だってさ……。
 こうでもしなきゃ……あんたに近づけないもん……」
「だからって、やりすぎ」


近付く程に痛む恋の重さのせいで、離れすぎてた胸を自由と呼んでいた。
……かどうかはともかく。
三郎はカールに抱かれるようにして寄りかかっていた。
身体には無数のダメージ痕。
恐らく、カールの放ったレイザスの雨を防御することなく突進、
彼女の元に辿り着いた結果なのだろう。
三郎とて無知ではない。
カールが“魔女”の異名で知られるPKK兼ハンター、
更に元碧聖宮宮皇だと言うことも考慮し、事前に呪紋攻撃を半減させる「鉄亀の甲骨紋」を防具にカスタマイズして備えていたから出来た無茶。
しかし。
半減させてもあれだけの数のレイザスを受けてしまうのは、やはり無理があったようだ。


「けど……これで、しばらくはカールも動けない……」
「……みたいだね」


しかしカールも無事ではなかった。
ガクリと膝をついて全く動こうとしないのだ。
何故? 
答えは明白。
HP0になる直前、三郎最後の一撃がカールを掠めていた。
たいした攻撃ではない。
大剣の切っ先が僅かに掠った程度だった。
与えられたダメージは2ケタ。
だが。
カールの頭部にバッドステータスを示すアイコンがいつの間にか現れている。
三郎が大剣にカスタマイズしていたのは「眠虫の粉」。
対象の動きを封じる「睡眠」のバッドステータスを与える素材。
アリーナでの戦いにおいて「封印」「睡眠」「麻痺」以上に嫌な状態異常もない。
仲間が敵と交戦中で治療の暇もなければ尚更のこと。


「これで私は負けだけど……。
 あとは太白センセが何とか……してくれるっしょ……たはは」
「あたしの睡眠が解ける間に、揺光と電柱狼が太白を倒せば問題ない」
「酷っ。
 私の苦労、水の泡にしちゃうようなセリフ禁止……。
 ま、その方が……カールらしくて……好きかな……」
「……どーでもいいけど、瀕死のロールやって楽しい?」
「あ、下手? いや、雰囲気出そうと思ってw」
「バカ」


ゴースト状態となった三郎を抱きながら、カールは揺光らと対峙する太白を見やる。
三郎の言う通り、睡眠でしばらく動けない。
無謀なことに、カールはバッドステータス対策を何一つ用意していなかったからだ。
スケィスゼロに無理にでも解除させるか? 
いや、明日の決勝に備えて余力は残しておきたい。
それに、あまり無理をすると巫器化させたスケィスゼロにも負担がかかり結果的にパワーダウンを招いてしまうだろう。
今日の試合で既に2回も高度呪紋を使ってしまっている……
無理はしない方がいい、明日のために。


「あれ? 行かないの?」
「あたしはあんたとの戦闘担当。揺光と天狼は太白担当」
「そーだけどさぁ」
「太白を越えるのがあの子と、電柱狼の目標だったからな……邪魔しちゃ悪いだろ」


2人だけの静かなチャット。
すぐ向こうでは太白、揺光、天狼らの一歩も譲らない戦いが続いていると言うのに。
何故か。
今この瞬間だけはカールと三郎だけの時間のようにも思えた。


「だから決着つくまでは……ここで見物」
「優しいんだ? よし、やっぱ私ら付き合――――――
「ちょーし乗るなネカマ」
「あうw」



『あ、あのぉ……カール選手と三郎選手? 
 睡眠と戦闘不能で動けないのは分かりますが……ずっと寄り添いあったままなのはいかがなものかと……』



後日。
カールらの試合観戦中に意識不明になったプレイヤーが数名出たと報道された。
AIDAとの関連も指摘されたが、
回復したプレイヤーの1人(20代・女性)はサルバドル愛原のインタビューに対し

「密かに2人を応援していたので感極まって気絶した。2人のリアルの性別はともかく、幸せになってほしい」

と答えたとか答えなかったとか。

























「(カール……!)」


揺光・天狼と太白の攻防は続く。
空間を突きぬけ、ガードも無視してダメージを与える魔銃シュレディンガーを自在に操る太白に対し、
ひたすらに攻撃を避け続けながら接近を試みてはいたが――――――――



『き、気を取り直しましてっ!  
 あちらが光の雨ならばこちらは銃弾の雨ッ!
 太白選手の放つ銃弾の雨霰を揺光選手と天狼選手、避けています、避けていまぁ――――す!
 が、しかしッ! 
 まだ決定的なダメージを与えるどころか近づくことさえできておりませ――――――――ん!!!!』
『ありゃ並のボタン連打じゃねぇな。
 リロードの時間もほぼ一瞬……高橋名人も腰抜かす速さだぜ、かっかっ!』 


揺光も天狼も超人的な動体視力で太白の攻撃を避けてはいるが、時折ダメージも受けている。
元宮皇2人相手にしてのこの余裕。
太白という男、やはり底が知れない。
ハセヲに敗れたとは言っても元竜賢宮の宮皇、《The World》最強とまで言われただけはある。


『おめえ、トール・ノーレットランダーシュってデンマーク人の作家、知ってるか?』
『は? い、いえ、存じませんが……』
『奴ァ、その代表的な著書『ユーザーイリュージョン 意識という幻想』の中で
“意識は0.5秒遅れてやってくる”って説明してる……脳が発する電気信号のタイムラグのことだぁな』
『は、はぁ……』
『0.5秒……口に出すのは簡単だがよ。実際にはシビアな数字とは思わねぇか?
 例えばスポーツ……陸上や水泳じゃ0.1秒のロスが試合を左右することだって珍しくねぇだろ』
『た、確かに!』
『時にこのゲーム。
 オーソドックスなボタン入力による操作方法が採用されちゃいるがよ、リアルのプレイヤーがボタンを動かせばPCも勿論動く。
 だがよ。プレイヤーの脳が発した信号で指がボタンを動かす時間と、
 PCがそれに従って動くっつープロセスには、僅かながらのラグも生まれんだ……だが太白にはそれがねぇ!』


大火の指摘は正しい。
太白はまるで揺光らの動きを予測しているかの如く攻撃を見舞っている。
しかも魔銃シュレディンガーは“何処から弾が跳んで来るか分からない”。
それは攻撃している太白にとっても“何処に着弾するか分からない”ことを示す。
にも関わらず。
性格に揺光と天狼の2人を相手に身動きを封じる銃捌き。



『これぁワシの予想だがよ。
 太白の奴ぁ、言ってみれば『0.5秒だけ先が見えてる』んじゃねぇか?
 勿論、予知能力とかそんなんじゃなくてよ。
 アイツの頭ン中で描いたイメージの中でな。
 ファミコン全盛期、かの高橋名人は1秒間にボタンを16連打できたって言われてる!
 0.5秒なら約8連打ってとこか……今のアイツなら、0.5秒に限り、何でもできるんじゃねぇか?』
『よ、よく分かりませんが、とにかく太白選手がスゴイということは分かりました!』



間違ってはいない。
日本有数の脳外科医として腕を揮う太白のリアル・黒貝敬介。
彼にとって0.5秒は貴重な時間だった。
1秒を争う医療の現場において培われた経験。
コンマ単位の遅れが患者の命を左右する修羅場。
他人の頭の中を。
言わば心を覗く行為を生業としている黒貝は手術中、常にイメージを働かせる。
カメラで脳内を見ながらメスを動かすのにも限界がある。
それより先はイメージ。
「腫瘍はここにある」と頭の中で患者の脳内の構図を描きながら、自身の勘を信じる。
故に、いつの間にか……黒貝は“先が見える”ようになった。
飽くまで「こう動くだろう」という予測に過ぎないが……揺光らの僅かな動作が、それを彼に教えてくれる。


「(職業病とは恐ろしいな……気がつけば私は、また高みを目指している……)」


故に、最強。


【 TO BE CONTINUED... 】

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