「.hack//G.U.」と「コードギアス 反逆のルルーシュR2」と「LAS(LMS)」と「ゴッドイーター」と「仮面ライダーディケイド」の荒唐無稽恋愛活劇SSサイト(のつもり)。

「お前、太白と一緒にトーナメントにエントリーしてたな」
「バイトだよ。『竜賢宮の元宮皇と言えど、今回ばかりは1人でエントリーするほど無謀ではない』ってさ」
「へぇ」


AIDAに感染してた時は魔剣マクスウェルが増幅装置になっててやたら強かったな、太白。
素のアイツとはまだ1度も戦ったことねぇし、トーナメントで当たるのが少し楽しみになったぜ。
痛みの森じゃ戦ってる姿もロクに見てないしな。今度はAIDAとか憑神なしのガチで戦ってみたいもんだ。


「他に強ぇ奴はいっぱいいるのに、よりにもよってお前かよw」
「おいおい、私だってあれから随分レベル上げたんだぞ。
 あんたと会った頃はこのPC、セカンドキャラだったからレベル低いだけだったんだって」
「ふーん」
「それに中年のオッサンPCだけじゃ渋いだけで華がないでしょ?
 マジックショーの時に必ず美人の助手が必ず付き添ってるのと同じ。
 客はオッサンのマジックも見たいし、助手の美女も見たいんだ。つまりは私が華を添えてやってるってワケ」


……コイツ、変わってねぇな。
エキセントリックだか少年ボーイってワケじゃねぇけど、のらりくらりして人を食った様な態度とかさ。


「お前さ」
「なに?」
「情報屋っつーかスパイみたいなことしてたよな。詳しいのか、裏の事情とか」
「んーそこそこ。今だから言うけど、私TaNの暗部だったことあるから」
「……勇者カイトについて、何か知らねぇか」


ダメ元で一応、聞いてみる。
TaNってのは当時の《The World》じゃ最大規模の情報屋ギルドだったって話だし。
まぁ、八咫とパイがギルドを隠れ蓑にするだけして、結局はギルドごとポイしちまったけどな。


「勇者カイト、ね。私に聞かなくても、検索すればいっぱい出てくるじゃん」
「だから、そーいうのじゃなくてもっと詳しい裏事情が知りたいんだよ」
「裏事情……裏事情ねぇ。何か面白いネタあったかな……色々ありすぎて……あ」
「何か思い出したのか」


あまり期待はできそうにないけどな、コイツの場合は……。


「勇者カイトって結構モテたらしくてさ。
 重剣士と重斧使いの彼女2人も作って二股かけてたんだって」
「……聞いた俺が馬鹿だった」
「最後まで聞けって。
 でさ、【Ω 激怒する 合わせ鏡の 聖女】ってエリアでついに女同士のバトルが展開しちゃってさ。
 ダンジョン最深部の宝箱に入ってた斧で、キレた重斧使いの彼女が重剣士の彼女の首を、こう、ズバッと」
「何そのスクールデイズのBAD EDみたいな展開」


って、ありゃ斧じゃなくて鉈か……どっちでもいいけど。


「他にも色んな女性PCとの噂があるんだぞ。ハセヲといい勝負だね〜w」
「ほっとけ」
「とまぁ、勇者カイトには色んな逸話があるワケだ。何せ伝説だから」
「たった7年で伝説も糞もねぇだろ」


どんなにすげぇ奴かと思ったら……妙な伝説作っちまってまぁ。
本人がログインしてたらどー思うんだろうな、その色んな逸話ってのを聞いたら。
って、俺もよくよく考えりゃ同じようなコトしてんじゃねぇか、そう言えば。
少し、今後の在り方について考え直した方がいいかもしれねぇ……。
ログアウトして、メールのチェックでもするか。













*******************











「うん、うん……だから、もう大丈夫だって。お母さんは心配性なんだから……」


今頃になってなつめは良子の気持ちが理解できた。
心配性な親を持つとどうにも嬉しい反面、心苦しいものがあるということを。
この場合はなつめの母親、大黒弥生に該当する。
寺島良子と比べるとさすがに見劣りするもののなつめの大黒家も福岡県内では
それなりの旧家、要するになつめも良子同様にお嬢様と呼ばれる部類に属している(無論、良子には到底及ばないが)。
東京に上京するまでに何度か良子とオフで会ったこともあるが、彼女を護衛する黒服の男達を見てしまうと
やはり生粋のお嬢様と自分では生きる世界が違うんだなぁ、と思い知った程に。


「冬にはそっちに帰るつもりだから……はい。おやすみなさい」


弥生が心配するのはちゃんとした理由がある。
なつめは春頃に実家の福岡に里帰りした際、自室で《The World》をプレイしていて意識不明となり
三ヶ月程寝込んでいた経緯があるからだ。
が、母の弥生としてもまさか旧家である大黒家の娘がゲームをプレイ中に意識を失ったなどと
他人様に言えるワケもなく、家名や世間体を気にしてか入院ではなく自宅療養扱いとした。
結果的になつめは夏になって意識を取り戻し、再び元のアパートへと戻ったのだが
前にも増して母親が心配性になったのが今一番大きな悩みだとか。


「良子さんもお父さんに心配されてた時はこんな気持ちだったのかな。
 でも私の家は黒服のボディガードさんなんて雇ってないし……うーん」


考えるだけドツボだろうし、これ以上は考えないようにしよう。
思えば昔は簡単に「私、今日から変わります!」などと言っていたが現実は厳しかった。
変わろうとする度に空回りしてしまい結果的に誰かに迷惑を……そんな日々。
だが少なくともなつめにとってカイトとの出会いが人生の岐路だったことも確か。
変わることも大事かもしれないけれど、自分自身を大事にすることを教えてくれた初めてのヒト。


「(今頃、何してるんだろカイトさん……)」


7年前は頻繁にメールを送っていたのだが、最近はご無沙汰。
当然、カイトはなつめが三ヶ月間意識不明となって寝込んでいたことも知らないはずだ
(ぴろし3は知っているはずだが、彼の性格から言ってカイトに言伝ているとはまず考えられない)。
かと言って自分から「なつめ、意識不明になっちゃいました♪」なんて言って心配されるのも……。
子供の頃は彼に気軽な気持ちで色々と相談できたはずなのに、いつからだろう、言葉を選ぶようになってしまったのは。
思えば跳び箱の跳び方についてメールを彼に送ったり好きな冒険小説について語り合ったりしていた頃が懐かしい。
自分も彼も、まだあの頃は何も知らない子供でいられたから。


「(……もう、ゲームに飽きちゃったんですか?)」


ログインして来ないということは、そういうことになるのだろうか。
2016年の火災事故でデータが失われたために《The World》を離れたユーザーは800万人。
見知った友人達も次々と卒業してしまい、今ではドットハッカーズと呼ばれた勇者のパーティも
なつめとぴろし3しか残っていない(なつめはエンデュランスや八咫がかつての仲間だった事実を知らない)。
ハセヲと初めて出会った時に「ある男を7年もストーカーしている」とぴろし3に言われてしまったが
強ち間違いではないので反論に困ってしまったのも……いや、さすがにストーカーは言いすぎだが。


「(トーナメントで勝ち抜いて、優勝すれば……カイトさん、戻ってきてくれるかな?)」


優勝商品がトライエッジであるかどうかも重要だが、カイトがもしかしたらアリーナに応援に来てくれるかも。
そんな淡い期待がハセヲとトーナメントにエントリーした最大の理由でもある。
遠からずも売名行為に近い気もしなくない、それでもカイトの耳に自分の名が届けば、或いは―――――――――――
今夜は、少し寝苦しい。











**************************









「今後の在り方について考え直した方が……なんて思ったけどよ……」


最近まで忘れてたぜ……俺が欠落者だってこと。
三崎亮は17年生きている。でもそのうち六ヶ月間の記憶が完全に空白になっちまってるってことをよ。
別に赤ん坊の時とかの記憶ってことじゃねぇ。俺が小4の……10歳の時だ。
クリスマスの夜に病院のベッドで目ェ覚ました瞬間は今でも覚えてる。でもその前の記憶が俺にはない。
モザイクのかかった記憶のカケラを1つ1つ繋ぎ合わせて描いていこうにも、ピースが足りねぇから。
両親は俺がこの話をしても全く答えにならない答えで返しやがるし、俺もいつの間にか忘れてたぜ。
俺はその六ヶ月間、何をしていた? 
小学校に久々に行ったらクラスメイトがメチャクチャにビビってたな。
それで俺はやっと六ヶ月間、自分が意識不明になって入院してたって分かったんだ。


「それと、もう一つ」


解せねぇのは何で両親がそれを必死で俺に隠してたんだ、ってこと。
退院して自分の部屋に戻った時、感じた違和感もそうだ。
いつもの俺の部屋なのに、何かが足りないと思った。
誕生日に親から買ってもらったパソコンも一応は調べてみた。
結果、分かったことがある。何かが、アンインストールされてたってこと。
それが何だったのか……未だに分かんねぇ。
当時の俺、10歳そこそこのガキにしちゃそれなりのPCスキル持ってたはずなんだがな……。
何でだろ。何処かに大事なもんを置き忘れてきた……そんな感覚に一時期陥ってたんだ。


『くっくっく……やば、おかしいw』
『あのなぁ……お前が言えっつったんだろうが』
『や、すまんね。ハセヲが何となーく昔好きだった子に雰囲気似てたから、もしかしてー?って』
『あん?』
『ソラって子だったの。字は楚良。
 最初に会った時は松尾芭蕉の弟子の曽良が由来って言ってたのに、実際は違う字だった。
 あの時は『やられた〜』って思ったね』
『……』
『んで、ハセヲ。芭蕉って俳号は芭蕉(はせを)とも読めるっしょ?
 だからね、きみの噂を聞いた時にもしかしたらアイツが戻ってきたのかな?って思ったの』


カールとグリーマ・レーヴ大聖堂で戦った時、こんなことを言われた。
どう考えても人違いだろ、俺がこのゲームを始めたのは8ヶ月前。
初心者狩りのPKにカモにされちまう程のヘタレ野郎。
なのに、なのに何で……揺光の紹介でカールと初めて会った時、あんなに懐かしい気持ちになったのか……。


「分かんねぇ……ことだらけだ……」


今になって何で思い出したんだろうか、こんなこと。
なつめから勇者カイトの話を聞いた辺りからか?
馬鹿らしい、俺はそんな奴と会ったことすらねーってのに。
けど勇者カイトがネットに名前を知られるようになったのが2010年、俺が意識不明になったのも2010年だ……。
はは、関係あるはずねーよなぁ。

















――――――――――――――――











『亮? どしたのさ』
「いや、智香が元気にしてるかな、って……」
『な、何だよー。今までそんなんで電話してきたことあったっけ』
「彼氏が彼女の心配しちゃいけねーってか」
『あー……そういう意味の電話だったんだ?』


女々しいな、俺。
こういう用件ならメールでも済むだろうに、つい電話で智香に愚痴っちまう。
でもまぁ、智香が心配だったのはホントだしな。たまにはゲームじゃなくて電話越しでもいいだろ。


『あのさ。前に亮のとこ行ったじゃん? ま、また行ってもいいかな……』
「いいに決まってんだろ。……俺もまた智香に会いたいし」
『そ、そお? へっ、へへへ……今日の亮は優しいね。どしたの?』
「そーいう日もあんのさ」


マジレスすると気分がちょっとブルーになってるってだけだがな。
智香からすると優しく思えるらしい。
じゃあ毎日ブルーな気分で……いるのは無理だ、うん。


「あとな、ちょい聞きたいこともあるっつーか……」
『いいよ。何?』
「カールのことなんだけどよ……何で俺に紹介しようって思ったんだ?」
『えっ……』


おいおい、何でそんな驚くよ。
別にアイツにそういう気があるってワケじゃねーぞ。
浮気は文化かもしれねぇけど、俺はんな器用なコトできやしねーんだから。


『あー、うーん。何て言えばいいのかなぁ』
「言いにくいのか?」
『潤香にはさ、仲介を頼んだって言うか……』
「仲介?」
『りょ、亮との仲、取り持ってー……みたいな?』


……取り持つどころか、逆にややこしくしてね?


『だって、亮ってばメールでアタシに告白した割には素っ気無かったし……』
「まぁ、お前がその後すぐに未帰還者になっちまったからな……その件に関しちゃ悪ぃって思ってる」
『……ホント?』
「お前だって『アタシ、裏切ると怖いから!』とか、しれっとメール最後尾に書くのはどうかと思うけどな……」
『だ、だってその頃は憑神とかAIDAのコト知らなかったし、ハセヲのイカサマ野郎疑惑が晴れてなかったじゃん!』


そりゃちゃんと説明しなかった俺にも非があるわな。
天狼がAIDAに感染してたこと、コイツには一切伏せたままアリーナに登録しちまってたし。
いざ付き合ってみると互いが秘密にしてたことが次から次に出てくるから困る。
一難去ってまた一難、ぶっちゃけありえねぇ。


『えーっと。とにかく、潤香が色々とサポしてくれたってことだから!』
「そっか」


悪い奴じゃねぇんだよな、カールは。
俺もそれは分かってる。智香にとっても大事な先輩なんだろうよ。
あの2人の仲の良さはシラバスとガスパーとはまた違った感じだけど。
……それに、明らかにカールが俺と接する時の態度は他のPCと違うことも知ってる。
アイツはいつも何かを期待してるような目で俺を見てる。
三郎が俺を監視してた時とは全然違う、奇異や好奇とかじゃなく、もっと別の何か。


『……潤香は』
「?」
『きっと亮のこと、好きだよ』
「マジか」
『うん』


……何となく気づいちゃいたけど。
でも、それって何か自惚れっぽくて自分じゃなかなか言い出せねーだろ。
自分から相手に「お前、俺のこと好きだろ」なんて言えるのはよほどの自信家かナル野郎かクーンくらいだ。
俺にゃ、まず縁のねぇセリフ。つーかカールも態度で示しても言葉じゃ示さねぇ女だし……。


『けどね、アタシにだって譲れないモノあるんだよ。だから潤香に亮は渡さない。
 成績も、背も、顔もアタシは潤香に負けてるかもしれないけど……亮への想いだけは、絶対に負けてない』
「……」
『けけけ、結婚式イベントの時、亮を幸せにするってアタシ、言っちゃったから!』
「……」
『だから亮も、アタシを幸せにしてくれなきゃ困るんだっ!』
「……はは。
 そーだったな、智香は……そういうヤツだった……忘れてた」


何か、弱気になってた自分が馬鹿らしくなってきた。
1人で考えることなんてない、俺には智香がいるじゃねぇかよ。
周りから見りゃただの結婚式ゴッコだったかもしれないけど、俺と智香にとっちゃあれは……。
最初から回りくどいこと言わずにストレートに腹割って話してりゃ良かったんだ。
どーにもブルーな気分が先行し過ぎて、弱さと怒りが姿なき敵状態になってたみたいだな。やっと目が覚めた。


『亮、もしかしてソレ聞くために電話してきたの?』
「もっと違うこと聞く予定だったんだけどな……智香と話してたら、どーでもよくなってきた」
『……ホントに幸せにしてくれる?』
「嘘だったら目でピーナッツ食ってやるよ」
『いーや、鼻でスパゲティ食いの刑だ!』


幸せの定義ってのがまだよく分かんねぇ部分もあるけど、
今の所は一緒に居られるだけで満足って感じなんだよなぁ、俺らの場合。
これが大学進学とか就職とか同棲とかなるとまた違った意味合いの幸せを求めるハメになるんだろうけど。
ま、これで心置きなく宣言できるってもんだ。


「……トーナメント、勝ち残れよ。俺も出るからにゃ優勝目指すぜ」
『こっちのセリフだね。もしアタシらと当たっても恨むんじゃないよ』
「言ったな?」
『言ったさ!』
「智香」
『……うん?』
「戻って来てくれて……ありがとな」


志乃を取り戻せるなら何だって利用してやる、そんなことを考えてた俺を
正してくれたのはお前の真っ直ぐな気持ち、他人を思いやれる心……教えられたぜ、色々と。
だからまた智香に会えた時、もう一度礼を言うよ。眠ってた分の利子も付けてな。


【 TO BE CONTINUED... 】

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