「.hack//G.U.」と「コードギアス 反逆のルルーシュR2」と「LAS(LMS)」と「ゴッドイーター」と「仮面ライダーディケイド」の荒唐無稽恋愛活劇SSサイト(のつもり)。

『大きな過ちを多く犯さないうちは、どんな人間でも偉人や善人にはなれない』
                                                                                  【ウィリアム・グラッドストン  イギリスの政治家】

「エマ・ウィーラントは20歳の誕生日に体調不良に陥り、以降は南フランスの療養所で過ごす。
 療養所内での生活中、エマはその後の人生を左右する神秘体験を得た。
 その体験こそが彼女にネット叙事詩『The Epitaph of the Twilight』……
 『黄昏の碑文』の執筆を思い立たせた要因であることは間違いないだろう。
 だが……神秘体験とは何だ? 
 エマに何が起きた? 
 クソ、資料が少なすぎる……」


幾つものPCと配線コードが犇く研究室に歳若い男が1人。
何かに取り憑かれたかの様に一心不乱にPCモニターに羅列された文章を読み取りつつ、思考を巡らせていた。
部屋から出るのも億劫なのか、既にゴミ箱の中には携帯食の箱や袋が散乱、
いかに彼が長い日数をこの研究室で過ごしていたかを静かに物語っている。


「しかし……確かに神秘体験でもしなきゃ、こんなイカれた叙事詩は書けない。
 ハロルドもよくゲーム化を試みたものだ……恋は盲目? 
 ハッ、くだらない」


エマ・ウィーラントとハロルド・ヒューイック。
どちも故人ではあるが、その道の者ならば知らぬ者はいない天才だった。
けれどエマは交通事故で死亡、ハロルドもCC社にエマの執筆した黄昏の碑文をゲーム化した
『フラグメント』を売り込んだ直後に失踪(恐らくもう生きてはいまい)と、彼らに関する資料は少ない。
ただその名前だけが伝説となって一人歩きしてしまっていた……あたかも、絶対に越えられぬ壁の如く。


「見ていろ……私の方が利口だということを教えてやるよ。
 頭の硬い上層部の奴らにも、番匠屋さんにも、私の誘いを断った馬鹿勇者にも……
 RA計画が成功すれば全てが上手くいく……天才ハロルドに、私の知恵が通用すると分かれば……ハハッ」


計画は順調だ、問題はない。
既に2015年春の段階でモルガナ因子、即ち八相の碑文の回収には成功している。
あとはRA計画を実行するために碑文使いPCと、そのPCを操るプレイヤーを選出せねばならないが……。


「せっかくスケィスの碑文使い候補として声をかけてやったのに……
 やはり精神的にガキだったなァ、彼は。
 マハが消えたくらいで何を怒っていたんだか……。
 勇者と言えども仲間が居なければ何も出来はしない……カイト、アレはもう要らない」


その後もスケィスを操れるだけの人材探しは続けたつもりだった。
既に他のモルガナ因子を宿したPCの作成は終了、操作するプレイヤーも用意出来ている
(その中の1人、【第七相 復讐する者 タルヴォス】の適合者が番匠屋だと言うのが気に食わないが……)。
だがどうしてもスケィスの碑文使いだけが見つからないのだ。
何故だ、どうしてスケィスだけはこうも特別なのか?
資料によるとモルガナがアウラをデリートするために仕向けた刺客の様だが、
勇者カイトとそのパーティによって撃破されるまで何人もの未帰還者を生み、
また撃破後も被害はそう大きくなかったがネットワーククライシスを引き起こすなど、
まるでモルガナの怨念が詰まっていたかの様ではないか。


「碑文使い候補……。
 スケィスの関係者で……最も適合に相応しいのは……」


スクロールする画面に見入りつつ、机の上に置いてあった携帯食を齧り、貪る。
モゴモゴと口を動かしながら資料を見続けるうち、1人の少女の名が彼の眼に止まった。
……良い。
すごく良い。
プレイヤーの個人情報はいかにCC社社員と言えどもプライベートなことまで閲覧することは
許されていないが、彼となれば話は別。
彼は特別なのだから。


「仁村潤香……元CC社『The World R:1』日本語版移植作業班チーフ・徳岡純一郎の娘……。
 PC名カール……スケィスにデータドレインされ未帰還者になった経験有り……!
 おいおい、どうして誰も彼女の名を挙げない!? 
 信じられない程の上玉じゃないかッ。
 元PK? 
 アウラを連れて逃亡? 
 放浪AIソラ? 
 ここまでモルガナに関わっていたとは……面白い!」


データドレインによって未帰還者になったのなら、CC社が彼女の入院時の資料を持っているはず。
それが元CC社社員で重要なポジションに居た男の娘なら尚更……
かつてはアウラを害悪としか考えていなかった上層部も今ではアウラの《The World》への帰還を望んでいる始末、
そのアウラの関係者とあれば、碑文使いとして最も相応しい人材に決まっている。
どうして番匠屋は彼女をスケィスの碑文使いとして自分に推薦しなかったのだろうか。
八相によってデータドレインされた者、あるいは戦って勝利した者を勧誘するならば
仁村潤香は一度は通る道のはず……あえて誘わなかった? 
馬鹿な、千載一遇のチャンスを、か?


「あった……5年前の資料だが……」


仁村潤香。
当時小学5年生なら、今は15〜16歳と言ったところか。
PKやチーターとして活動していた時期はほんの僅かで、
後は全てアウラ、スケィス、そしてソラという単語が所々に見受けられる。
昏睡状態から回復後は家族と共に引越し、北海道へ……北海道!?


「そういうことか……これじゃダメだ。
 無理矢理にでも東京に連れてくるか、北海道から直接アクセスさせるかなら話は別だが……クソ!」


療養のために仁村潤香は退院後、2011年時点で北海道へと引っ越している。
せっかく見つけた優良な実験対象だったのに……口惜しいったらない。
“第二の黙示録”を開始するには、スケィスを操れるだけの選ばれた天賦の才を持った人間の協力が―――――――――――


「……まぁいい。まだ時間はあるさ」


そう呟きながら男――――――天城丈太郎は。
長い時間を費やした椅子からややよろけながらも立ち上がり、いつの間にか白けていた朝空を
締め切ったカーテンから差し込む光によって確認する。
今日も完徹か。
問題はまだ山積みだが徐々に消化は出来るはず……焦るな。
必ず成功させてみせる。
RA計画……天才の証明!
そして全人類の救済(ぐさい)……イモータルダスク!


「綾香は……僕が蘇らせる……!」


                                                                                                     【A.D.2015年 春】













****************












「3年前はあれ程に『黄昏の再来』を恐れていたCC社が
 今度は逆にアウラを求めるとはな……相変わらず、上の連中のすることは分からん」
「バルは嫌いだったもんな、CC社の上層部」
「辞めてよかったの? 結構高給取りだったんでしょ?」
「人の心は金で買えんよ。幸い、俺以上の適任者も見つかったようだしな」
「フッ……大人になったねェ。バルムンク」
「……今頃になって3年前の嫌味を返すか」


カイト、オルカ、バルムンク、八咫(ワイズマン)。
伝説のパーティ、ドットハッカーズの中核を担った者達が時を越えて集った。
八咫は敢えてなつめ、ぴろし3をハセヲのパーティに組み込むことで
トーナメントを勝ち進ませようと初期段階では考えていたようだが……この3日間の間に状況は一変。
特にカールの異変と深淵(アビス)の勢力。
2つの問題を抱えてしまった今、オルカとバルムンク、フィアナの末裔の2人に助力を求めたカイトの判断はベストと言える。
もし八咫がカイトと同じ立場だったなら、やはり旧友の力を借りただろう。
それ程までに今回のミッション……RA計画の遂行は困難。


「で。俺達は何をすればいいんだ?
 楚良……今はハセラとか言う、そのPCのサポートに回ればいいのか」
「バル、ハセラじゃない。ハセヲだ」
「ケロケロエースと同じ間違いしてる(笑)」
「……そのハセヲが、今回の作戦のカギなんだろう?」
「然り」


八咫の指先に合わせて展開する知識の蛇のモニター群。
これまでに碑文の発掘調査を進めたロストグラウンドの数々、カイトによって発見された旧世界への扉、
出撃の時を静かに待つ闘竜マグメルド、理想郷(アヴァロン)への扉が開くのと同時に
進撃を開始せんと蠢く深淵(アビス)の魔物ども……
今夜決行されるRA計画の全てについて、知ってもらう必要がある。


「マグメルド……お前、あんなのと1人で戦ったのか?」
「結構苦戦したよ(汗)」
「なんだ、まだまだ現役じゃないか」
「ヤスヒコも勘、取り戻しといた方がいいかもよ?」
「おまっ、ゲームの時はヤスヒコ禁止だってガキの頃からいつも言ってるだろうに……」
「アハハ」


カイトがコシュタ・バウアから上空に浮かぶマグメルドの封印を解き、戦力として従属させたことは大きい。
一応は八咫も敵勢力との戦いに備えて鉄巨神シリーズなるメカを
マク・アヌのドクター・ケペルに開発を依頼、更には紋章砲まで装備させるに至ったが、それでも不安要素はあった。
だがいける。
オルカとバルムンクも賛同してくれた今、作戦成功率は更にグンと上がったはず。
あとはハセヲだけ。2本のキー・オブ・ザ・トワイライトが揃わなければ
理想郷(アヴァロン)への扉は開かない。
今夜の決勝、カールとの戦いの最中に楚良としての記憶を完全に取り戻してくれさえすれば……
いや、油断は出来ない。
もしもカールが怒りに駆られてハセヲを殺してしまったら、それこそ全ては台無しだ。
今の彼女はどうやったかは知らないが、以前よりも遥かに強い力を手に入れている……。


「ハセヲ君は、きっと大丈夫」
「カイト……」
「あの子が……絶対に守るから」
















*******************














「(右目のダミー因子が疼く……この反応は……仁村潤香……カールか)」


灰暗い深淵の闇。
玉座に踏ん反りかえって頬杖を付いていた隻眼の少年は、偏頭痛の如く疼き始めた右目を
抑えつつも自嘲気味に笑って見せた。
この痛みはスケィス成長の証……いずれダミー因子に変わり手に入るスケィス因子の産みの痛み。
そのためにも、もっとカールのスケィスには闘ってもらわなければ。
出なければ彼女にAIDAを仕込んだ意味がない。
全ては順序良く、完全な旋律……そう。
完全調和(パーフェクト・ハーモニー)を奏でるように美しく。


「ハヴシー。アンクウ。クルーウァッハ」
「はっ!」
「ははっ」
「お呼びでございますか、バロール様!」


バロールと呼ばれる少年の呼びかけに呼応して駆け寄る3体のヴァイタルビスタ。
かつて幾度と無くハセヲによって暗黒神の復活を邪魔された、あの3人の闇の呪紋使い達である。


「理想郷(アヴァロン)侵攻計画はどうなっている?」
「只今、深淵(アビス)より最後の亡者の軍勢を蘇らせている最中でございます」
「今夜中に全ての復活は完了いたしまする」
「“天落とし”についても準備は万全、後は奴らが扉を開くのを待つだけかと……」
「結構。下がれ」
「「「ははっ!」」」


理想郷(アヴァロン)……何かがそこから始まる場所、境界線。
そこに行けば完全な存在が待っている。
女神アウラをも超える存在として、この世界に君臨し、ネットワークに安定を齎す自分が……!


「(2年……長かった……。あと数時間だと言うのに、待ちきれない……“第二の黙示録”の開幕ッ!)」


マントを翻しつつ、呪紋使いらによって次々と蘇ってゆく魔物達を遠目で見ながら
バロールは口元を押さえ、必死で笑いを堪えているように見えた。
どういう経緯でこのバロールが3人のヴァイタルビスタを従え、
かのケルト神話における大悪神と同じ名を名乗っている以外は得たいが知れないが……これだけはハッキリ言える。
この少年のもう片方の瞳に宿った野心と悪意は類を見ない程に邪悪で歪、
カールも目的達成のためならば手段を選ばないが、バロールの前ではそれも霞むだろう。
それ程の悪意。この世界の悪徳の権化とも呼ぶべき存在が、
カイト達と同じように理想郷(アヴァロン)を目指しているのだ。
いや、目指すと言うよりも横取りに近い。


「(もうすぐ……もうすぐだ。綾香……綾香さえ復活させるコトが出来れば……)」


トーナメント決勝戦開始まで、あと3時間――――――!                                                           【 TO BE CONTINUED... 】

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