「.hack//G.U.」と「コードギアス 反逆のルルーシュR2」と「LAS(LMS)」と「ゴッドイーター」と「仮面ライダーディケイド」の荒唐無稽恋愛活劇SSサイト(のつもり)。

『誠君を紹介してくれたのは世界さんですよ。
 紹介しておいて今さらずっと誠君のことが好きだなんて、通りません』                                                 【桂言葉  「School Days」より】



「(とは言え……ちょい、無理し過ぎたな……!)」



フィドヘルの第六感強化能力を駆使。
カールの作り出した憑神空間“暗黒天国”を攻略し、五感と光を取り戻せはしたものの。
能力使用の代価は、すぐにハセヲを襲った。
リアル(現実)にてコントローラーを持つ手がブレたかと思うと、これまでに味わったことのない痛みが頭の中を駆け巡るのだった。


「(あぐっ……!?)」


思わず口元を手で覆う。
部屋の中に吐瀉物を撒き散らすワケには……形振りかまっている余裕は無い。
ほんの数十秒とは言え、人間が可能な何百倍、何千倍もの処理を脳内で行い
感覚を強化しつつ闇の中から絶え間なく繰り出されたカールの迎撃したのだ。
今になってそのツケが回ってきたらしい。


「っ……!? 
 はッ……ぎぃ……ッ……!!!」


フィドヘルは本来、八咫の憑神。
第六感の強化と預言能力は八咫にしか扱えない。
フィドヘルの碑文を喰らったスケィスを従えるハセヲが八咫と同じように完全に能力を使いこなせるはずもなく。
案の定、あまりに膨大な情報が能力解除後になってハセヲの脳内に押し寄せ、パンク状態となってしまったらしい。
本家の八咫ならば持ち前の頭脳で上手くこういう事態を回避するのであろうが……ハセヲにとっては諸刃の剣だったようだ。
カールの暗黒天国は光を奪い、音をも遮断していた暗黒空間。
そういった場所であったからこそハセヲの精神集中力は向上し、カール相手に
フィドヘルの2つの能力を駆使して対抗できたのだ。
が、いざ通常の憑神空間へと戻ってしまうと集中力が途切れ、あっという間に能力使用のしっぺ返しが来る。
この能力、恐らく長くて30秒の使用が今のハセヲにとっては限界だろう。
先程の攻防が約20秒程であったので、あれ以上続けていれば頭痛や吐き気以上の症状がリアルのハセヲを襲ったはずだ。
心の隙を見せまいとしていたハセヲも、さすがにこればかりはどうしようもなかった。


「(ハァッ、ハァッ……やべえ。
  頭の中がグルングルンして、気持ち悪ィってレベルじゃねぇ……!)」


余裕がない。
少なくともつい数秒前まではカールを圧倒できていたのだが、また形勢は逆転となった。
今、何かしらの大技を喰らってしまったら確実にヤバイ。
データドレインでもされようものなら未帰還者決定である。
自己防衛の本能が働いたのか、暗黒天国を攻略して通常の憑神空間に舞い戻ったハセヲは
真っ先にカールのスケィスと取っ組み合いを続けているであろう自身の憑神を探すのだった。


「スケィス!」


闇が晴れた憑神空間にハセヲの声が響く。
カールのスケィスに倒されていなければ返事をするはず。
碑文使いと憑神が精神的にリンクしていても先程の暗黒天国では互いに通じ合うことは出来なかった。
だが今なら……スケィスは!?






□□□□……!!!!』
■■……!!』







居た。
左腕を失い、右腕1本になってしまっているがカールのスケィス相手にまだ抵抗を続けている。
カールがB-stフォーム侵食率60%になったことに伴って彼女のスケィスも能力が向上したために
ハセヲのスケィスが押される結果になったものと思われるが、今なら勝てるかもしれない。
勝ち誇っていたカール。
その彼女が自信を持って作り出した暗黒天国を破壊してやったのだ。
いくらポーカーフェイスを装っても精神的に少しは参っているはず。
憑神の強さは碑文使いの精神の強さにも大きく作用される。
現にカールのスケィスが、つい先程強襲してきた時程のパワフルさを持ち合わせていないことを、ハセヲは見逃さなかった。


「スケィス! 競り返せッ!!!」}
『□□□□□――――――――――――――!!!!』


主の叫びに呼応し、憑神が吼える。
残った右腕であらん限りの力を発揮し、徐々にではあるがカールのスケィスを押しのけようと
行動を開始し始めたようだ。
カールのスケィスも負けじと全身の渋柿色の布をハセヲのスケィスの四肢(左腕は失われているから三肢だろうか?)に
巻きつけ、身体の自由を奪おうと必死だった。
どうやらあの紅い布はカールのスケィスのパワーを拘束すると同時に、本性を現した後は攻撃と防御を兼ねた武器としても使用可能らしい。
ハセヲは知らないが、カールは数刻前に朔と彼女の憑神・ゴレと戦闘を行った際、
スケィスに紅布で防御を行わせている。
攻撃を弾く、あるいは敵を束縛する。
用途は自在。
だが、今度ばかりはハセヲのスケィスが一枚上手のようで――――――――――――――――――



□□□□―――――――――――!!!!』
■■……!?』



ハセヲのスケィスの背部には光の翼が7枚備わっている。
普段は飛翔の際くらいにしか用途がないが、翼の向きや光の出力を変えることで
自身を守る鋭利な刃物の如く使用することが可能となっている。
その光の翼の出力を上げ……紅布の拘束を……斬り解く!
光の刃によって紅布は斬り裂かれ、カールのスケィス自身も完全には回避しきれなかったようで
紅布を切り離す際に身体のあちこちを光の刃によって傷つけられ、ダメージを負ったようだ。
もしかすると、この決勝戦が始まって初めてカールのスケィスを負傷させれた……のだろうか。
そうだ。
つい憑神の戦いばかり集中してしまっていたが……カールは? カールはどうなったのだろう。
スケィス同士の戦いに気を取られて警戒を怠っていたが……彼女からの攻撃は、未だに無い。
まだ頭痛は僅かながら続いている。
自分に攻撃するなら今こそまさに千載一遇の好機だったはず……抜け目ない彼女がそれを怠るとは思えない。
自分を追い詰め、そして楚良が助け舟となって現れるのを懇願していたのは彼女のはず。
なのに……どうして、攻撃をして来ない!?


「(……カール?)」


吐き気はやっと治まってきた。
これで頭痛が治まれば次の攻撃に移ることができる。
未だにグルングルンとミキサー状態で目まぐるしく回り続ける重たい頭を上げ、ハセヲはカールが居るであろう空間を見遣った。
彼女は、確かにそこに居る。
だが特に何をする、と言うこともなくただ、じっと佇んでいた。
……いや。
ただ、じっと佇んでいるというのは表現がおかしいだろうか。
少なくとも「ただ事」には視えない。
彼女はハセヲの方を見るでもなく、またスケィス達の戦闘を見るでもなく。
虚空に向け、何かを呟いていた。
身体をワナワナと震わせるワケでもなく、髪を振り乱して鬼女の如く怒り狂うワケでもなく。
焦点の合わない視線を虚空に向けながら、呪詛の言葉を吐いている。
“ただ”それだけ。


「……どうして」


やっと聞き取れた彼女の言葉。
「どうして」……その続きは何だろうか。
ずっと頭に走る痛みを解消できずあぐねいていたハセヲだったが、彼女のその一言で
一瞬にして頭の中でクリアになった。
正確にはまだ頭痛は続いているのだが、それ以上に彼女の発した声が全身に産毛が逆立って
背中やら首周りやら耳の裏やらが一瞬にして冷や汗を発汗する程に凄みがあり、
一瞬ではあるがハセヲは痛みを感じることすら忘れ、彼女の声に耳を傾けてしまう。
……それが間違いだった。


「あたしが一番……世界中の誰よりもきみのこと……大好きなのに……。
 きみはあたしのコトなんて……全然覚えてくれてなくて……あたしが知らない間に違う女のコト好きになってて……。
 やっときみを取り戻せると思ったら……きみは智香と付き合ってて……。
 こんなのってないよ……おかしいよ……」



















ズズズ...  ズズ...  ズズズズ...
















カールの左肩に生えたトライエッジが大きくうねり、蠢いている。
蠢き、肥大……そう、巨大化している。
既にカールの身の丈の3〜4倍はあろうかと言う大きさだ。
エッジ(刃)部分の大きさはスケィスの腕と同じか、
それ以上の大きさ……彼女の負の感情を喰らい、更に進化を遂げているのだろうか。
AIDAはこれまでも天狼、ボルドー、榊、アトリ、朔と言った者達に感染し、その心の中に埋没していた
あらゆる負の感情を喰らい、増幅させて暴走させ続けていた。
そして今回は。
カールは一見、実に巧みにAIDAを操っている様に見える。
しかし。
AIDA、トライエッジがカールに制御されていたフリをしていたら?
強靭な精神を持つオーヴァンもトライエッジに感染、制御していたが完全ではなかった。
希望は絶望を引き立てる最高のスパイスと言っていたカール。
だが結果はむしろ、彼女の絶望を引き立ててしまったのでは……薄ら寒い何かが、ハセヲとスケィスの全身に走る。
戦慄から起こる奮え? 
違う……純粋な恐怖によるものだった。


「きみと一緒に居られるから……
 だからあたし、あの時データドレインされてあげたのに……。
 勇者の馬鹿が余計なコトして、あたし達をリアルに戻した時だって……あたし、きみを止めたのに……。
 リアルにあたしの居場所なんてない……きみが一緒に居てくれればゲームの中でも良かった……。
 あたしは望まれて生まれたんじゃない……父さんは、あたしが未帰還者になった時だって帰って来なかった……。
 世界で初めて……あたしを好きになってくれたヒトが……きみだと思ってたのに……
 あたしを裏切らない……あたしを受け止めてくれる……あたしが信じられる唯一のヒトだと思ってたのに……。
 ひどいよ……ひどい……ひどい……。 
 あたしの7年分の想いを……どうしてそこまでして否定するの……? 
 ねぇっ、楚良ァッ!?」
「……!」


ハセヲに暗黒天国を看破され、プライドを傷つけられたカール。
それだけならまだマシだったかもしれない。
どうやら、かなりまずいスイッチが入ってしまったらしい。
これまでにAIDAに感染した女はパイ、ボルドー、朔、アトリとかなり見てきたが、ここまで症例が酷いケースは無かった。
彼女に憑いているのは、AIDAの中でも最狂のトライエッジ。
突然変異で生まれた、生まれながらにして《The World》全てのAIDAの頂点に立つ悪意の権化。
そのトライエッジに感染してしまったカール。
彼女の7年分のハセヲ(楚良)への想いが、ついに最悪のカタチで暴走した。
彼女の怒鳴り声1つとっても尋常じゃない。
クビアと戦った時もここまでの絶望感は無かった。
それ程の恐怖。怖い。女という生き物はここまで一途に異性を愛せるものなのだろうか。
肝心な時に限って楚良は現れない。
立ち向かうしかない……ハセヲとして。


「……自分が世界で一番不幸みたいな言い方してんじゃねぇ。
 俺だって――――――――ッ!?」


ハセヲの言葉は途中で途切れた。
最後まで言葉を発し終わる前に“何か”が飛び掛ってきて、彼の口を塞いだから。


「っ……!」
「んっ……んっ、ん……」


言わずもがな。カールだ。
文字とおり獣(B-stフォーム)の如く。
再度の迎撃を試みる間も与えず、遠く離れた距離を跳躍した彼女は。
寸分の狂いも無くハセヲの眼前にまで迫ると。
「俺だって……」と言いかけたハセヲの唇に自身のそれを重ねると、彼の両肩の爪を食い込ませ
動きを封じ、乱暴に彼の口を蹂躙、貪った。
引き離そうとするも、左腕を失い右腕となったこの状態ではこう近づかれると思うように動けない。
更には彼女の左肩に蠢くトライエッジの異様さ。
ハセヲがスケィスに助けを求めようものなら、今すぐにでもハセヲの腹を突き破らんとばかりに下腹部を這っている。
カールとの初めてのキス。
絡みつくように舌を動かしながら唇を押し付けてくる姿は、まるで餌に飢えた雌豹の如く。
実際にはそうしていないにも関わらず、彼女の唾液が喉元に流れ込んでくる気さえする。
無論、一般PC同士ならばこういった行為は不可能。
だが碑文使いPCとなると動きがより現実(リアル)に近づき、
互いの体温や感触を感じることが出来るようになることがCC社の調査で判明している。
なら何故今になって彼女はキスなどという行為に及んだのか。
仮にも今は戦闘中、それも互いの生死を賭けた天下分け目の決戦のはず。
いよいよ楚良への気持ちが抑え切れなくなったカールの暴走?
……否。
むしろ、その方が良かったかもしれない。


「ずっと……きみとね、こうしたかったの……」


ビクッ。
リアルで、ハセヲのプレイヤー三崎亮は奮えた。
目の前の女の異常なまでの美しさも宛ら、長い髪を掻き分ける仕草や
唇を離して自身の唇の周りを舌なめずりする仕草、
血と石油のような鼻をつく匂いを遮るが如くカールから香る蜜の匂い……今が戦闘の最中であることを失念する程に、身体の芯が奮えた。
―――――――――――――


「ッ……!?」
「嗚々……。やっぱり……きみの肉って…………美味しいね……」


切断されたハセヲの左腕。
唇を漸く離したカールは間髪いれずハセヲの左腕、その切断面に喰らいつき、思い切り喰いちぎった。
クチャクチャと喰いちぎったハセヲの左腕の肉を何度も舌の上で転がし、頬っぺたを押さえながら至福の笑みを浮かべる。
本当に幸せそうな顔。
唇から血が滴り零れても、むしろその血がドレスに染み込むことにすら快感を覚えている様。













「ぎっ……あ……あ……あぁあああぁぁあぁああぁっ!!!」











喰いちぎった瞬間.
ベリッとか、そういう類の、とにかくあまり聞きたくない音が憑神空間に木霊する。
やられたハセヲの方は堪らない。
麻酔も無しにいきなりメスで身体を裂かれたかのような、叫ばずにはいられない程の痛みがこみ上げてくる。
頭痛やら吐き気やらフィドヘルの能力使用の副作用で苦しんでいたが、左腕の痛みも継続していた。
そこに、傷口に噛み付いて肉を喰い千切るというカールの暴挙。
左腕を押さえつけ、ハセヲは……三崎亮は自室にて低く、それでいて痛烈な叫び声を上げる。
痛い。痛い。痛い。
焼けるような痛み!
シャレにならない。
ここまでリアルに作らなくてもいいではないか。
あの暗黒天国は、自分を恐怖に飲み込むための空間だったのではない。
むしろ……本当の恐怖は、ここから。


「ちょうだい……もっと……きみを……
 あたしが……楚良ごと……ハセヲ……きみを……喰い殺してあげる……
 そうすればずっと……きみと一緒……あたしのなかで……だから……もっとちょうだいっ!!!」                                    【 TO BE CONTINUED... 】

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