「.hack//G.U.」と「コードギアス 反逆のルルーシュR2」と「LAS(LMS)」と「ゴッドイーター」と「仮面ライダーディケイド」の荒唐無稽恋愛活劇SSサイト(のつもり)。

『人間っていうのは、あのぉ、所詮、えー、愛というものの、えー、奴隷であり、えー、それに踊らされる、えー、獣である』
                                                                                     【松山洋  サイバーコネクトツー代表取締役】

なまじ感覚が優れていたことが災いした。
今のハセヲは8つの碑文全てを内包する存在。
即ちエンデュランスの碑文マハの触覚とパイの碑文タルヴォスの嗅覚も持っていることになる。
Xthフォームとなるまでは持っていなかった能力(チカラ)は、時にハセヲ本人に苦痛を齎す。
よりにもよってこんな時に、だ。


「ぃぎっ……! はっ、はぁっ……何、しやがる……っ!?」


左腕の切断面にカールの軟らかい唇が触れたかと思うと一気に歯が突き立てられ、
強引にテクスチャごと肉を喰い千切られてしまった。
女に腕を噛まれた経験など亮には当然無い。
ましてや腕の切断面に残った肉片を喰い千切られるなど。
あまりの激痛にコントローラーから右手を離して左腕を押さえ、亮は自室で声にならない叫びをあげる。
歯をガッチリと食いしばり、あたかも身を丸めたイモムシの如く床に転がりながら呻く。
クーラーで部屋の気温は下げているはずなのに、どうにも左腕が焼けるように熱かった。
そして鼻をつく異臭。
カールが作り出した憑神空間は血と石油に酷似した瘴気を孕んでいる。
この異臭はAIDA特有の匂いだと、以前パイに教えられたことがある。
長時間嗅ぎ続ければ鼻どころか神経までどうにかなってしまいそうな死の匂い。
パイはこんな耐え難い匂いの中で戦っていたのだ。
加えて幻痛(ファントム・ペイン)。


「っざけ……やがって……っ!」


見ろ、目の前の女を。
あんなに美味そうに何度も何度も噛み締めながら、俺の肉を喰っている。
仕舞いには床に這い蹲って、零れ落ちた血まで舐めあげているじゃないか。
美しい獣。
銀色の髪、端麗な顔、
紅く変色した黒衣に血が付着するのも気にすることなく、女は一連の動作を続けていた。



「美味しい……美味しい……。
 はぁ……はぁ……ホントに美味しいよ……。
 こんな美味しいもの……あたし、今まで一度も食べたコトない……あぁん……」



飛び散ったハセヲの血飛沫を指で掬い、ペロペロと厭らしく舌で舐りながらカールが薄く哂う。
この光景は明らかに異常だ。
通常、食人行為というものは遭難などの極限状態でも無い限りは誰も思いつかない。
現代に生きる人間には、人が人を喰うという概念などありはしないからだ。
しかしながら時に暴走した愛情が食人行為を起こすことは稀に有る。
愛する者を喰い、体内に納めることで、独占欲をも越えた性的快感を覚えると言うのだ。
カールの場合はまさにそれに該当される。
どうあってもハセヲは楚良だった頃の記憶を取り戻す気配がない。
それどころか、7年間の彼女の想いを否定するかのような態度すらとっている(とカールには見える)。
楚良を再誕させることが望みだったカール。
だから力を欲した。
AIDAにすら感染を赦したというのに、この仕打ちはあんまりだと。
手に入らないのなら……いっそ、大好きな楚良ごとハセヲを喰ってしまえばいい。
そうすれば永遠に彼は自分のものになる。
殺したい程に大好き。大好き過ぎて殺したい。
彼女は“境界”を越えたのだ。
純粋過ぎるが故に。
人としての境界すら越えねば、手に入らないモノがあるから。


「……ッ!?」


歯を食いしばりながらやっとコントローラーを手に取り
再度ハセヲがカールを凝視した時、とある変化が起こっていた。
全身に紅い紋様が走ったかと思うと彼女の纏うドレスの各所に生えていた突起が
メキメキと音を立てて蠢き、更なる変形(へんぎょう)を遂げようとしている。
カール自身もそれに気づいたのか、ほんの一瞬だけ驚いたような顔を見せた。
だがそれは蚊の命程の短さで消え入り、また飛び散ったハセヲの血の処理作業に戻ってゆく。
身を屈め、手を床にぴったりと這わせて、小さな舌先でゆっくり、丹念に大好きな彼の血を舐めて、舐めて。


「(何つー……嬉しそうな顔して舐めてやがんだ……カールのやつ……!)」



舐め続けている間にも彼女の変化は止まらない。
特に背部の変化が著しく、大きく隆起した3本の突起物がズルリとその先端を覗かせ
ついには巨大な尻尾を思わせる長さにまで到達、それぞれが意志を持つかの様に鋭利な紅い先端をボウッと輝かせた。
異形。
今この時、カールのAIDA侵食率は80%を突破した。
それに伴うB-stフォームの進化。
彼女の意志とは関係なしに、だ。


「(……俺を喰ったから!?)」


八相の碑文全てをそのPCボディに宿すハセヲ。
もしそれをAIDAが喰ったとしたら……今まで何度も見てきたではないか。
パイも、エンデュランスも、アトリも、朔も、オーヴァンも……碑文使いという器を得たAIDAの凶暴性を。
AIDAは電気信号の中に巣食うコンピューターウイルスにして知的生命体。
人間の心、精神もまた脳内を飛び交う電気信号によって構成されている。
AIDAが人間に興味を持つのは遅かれ早かれ必然的だったのだ。
かつてエンデュランスに憑依したAIDAがミアの姿を模し、彼の傍に居たように
カールもまたAIDAにとっては居心地の良い宿主と呼べるのかもしれない。
そしてAIDAは進化する。
寄生したカールがハセヲの血と肉を取り込んだことで、彼女の中のAIDAは新たな碑文の力を得た。
その結果があの姿。尻尾が3本も生え、ドレスの各部位から突起を生やした獣の姿。
カールが自ら望んでそうしたのか、彼女の中のAIDA……トライエッジがそうさせたのかは定かではない。
或いは互いの利害が一致しただけか。
ならば彼女とトライエッジの関係は良好と言える。
オーヴァンがトライエッジを危険な友人と呼んでいたように、彼はAIDAを完全にコントロール・共生できてはいなかった。
絶えずAIDAの侵食と戦いながら妹アイナを救う手立てを模索していた。
だが今回のカールとトライエッジの関係はまるで……。


「この子も……きみが欲しいって……そう言ってるよ……ハセヲ」


カールの左肩で蠢くトライエッジ。
やはりハセヲのPCを一部とは言え喰った影響か、目に見えて先程より活性化している。
あれはオリジナルなのかそれともコピーなのか。
いつカールはAIDAに感染していたのか、など……もうどうでもいい。
今この状況がとてつもなくヤバいことに変わりはないのだから。


「……とんでもねぇ女に好かれたな」
「きみのせいだろ。きみがあたしのコト忘れちゃうから……いけないんだ」
□□□□……!!!!』
■■■―――――――――――――――!!!』


互いの憑神を従え、見合う。
左腕を押さえつけながら、何度気を失いそうになったか分からない朦朧とした意識の中で
ハセヲはふと、これまでに戦ったPKやトーナメントで競い合った者達の顔を思い出した。
こんな時に何でこんなコトを思い出してんだ、俺は……と気を取り直そうとした時、理解する。
もし走馬灯などという現象が実在に起こり得るのだとしたら、今のがきっとそうなのだ、と。                                        【 TO BE CONTINUED... 】

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