「.hack//G.U.」と「コードギアス 反逆のルルーシュR2」と「LAS(LMS)」と「ゴッドイーター」と「仮面ライダーディケイド」の荒唐無稽恋愛活劇SSサイト(のつもり)。

『確かにある。あり得ない? 
 いやある。走馬燈のようなもんじゃ。
「死ぬ」って瞬間に時間が超スローになって自分の人生振り返る感覚あるじゃろ? 
 あれに近い。むしろそれより信憑性は測りやすいぞ。
 なにしろ「自分」じゃなく「相手」がその時思っていたことを聞き取るんじゃから。
 本人の他は絶対に知り得ぬ情報を聞くこともあるわけじゃ。互いが証人よ。
 ある武道では心滴拳聴と呼ばれる現象よ。
 誠の強者同士がぶつかり合う瞬間にはよくある時間感覚の矛盾じゃ』
                                                                       【ゼノ・ゾルディック  冨樫義博原作「HUNTER×HUNTER」より】



「きみ」


あたしは、相手の斜め前に立つ。たぶん、利き手じゃないほうの左側。
だけど、相手は眉ひとつ動かさなかった。
まさか、リアルで放りっぱなしにしてあるんじゃ。
そう思いかけたとき、相手がじわりと動いた。
あたしは反射的に後退してしまう。
相手は、ただ顔をあげただけだというのに。バカだ。
顎を胸元にくっつけるようにしていた相手が、背筋を伸ばすと、それは男のPCだということがわかった。
背は高い。
あたしの今の姿は一七六センチ。
女性形だが、けっこうぎりぎりまで高く設定した。
でも、立ち上がったら、あたしよりも高い気がする。
左頬にななめに走る傷痕があった。


「何してんの」


声が喉にひっかかる。
そういえば、誰かに何かを訊くなんて、もうずいぶんなかった。

























……!?
何だ……今のは……。
カールと……もう1人、背の高い男が……。
場所は……グリーマ・レーヴ大聖堂か……?
あの渋柿色の布を全身に巻いた男……俺は識っている。
そしてこの感覚。
アバター同士が干渉が引き起こす、《The World》を介してのプレイヤーの記憶のイメージ化……
これは……カールの記憶か……。
カールが……俺(楚良)と初めて出会った日の……!


































「あたしはカール。きみは?」
「カール……」


男はたどたどしく、その音を舌にのせる。


「それはあたしの名前」
「………」


男はふたたび黙り込む。


「名前」


あたしは男に迫る。
今度は男が後ずさる番だった。動きがぎこちない。
男の片足はよく動かないようだった。ギプスをはめた人間のように、重そうにひきずっている。
さっき、あんなに敏捷な動きをみせたのが嘘みたいだ。
演技だとしたら、すごい。
けれど、残念ながらもう遅い。
さっきの動きの方が彼の本性なのだと知ってしまったからだ。


「……ない」
「嘘」
「忘れた」
「ふざけるな」


あたしは低い声で言う。ぞくぞくしていた。
悦び。武者震い。高揚感。
どれも少しは含まれているけど、もう少し違ったものだ。
文鳥を手にしたときの感じ。
自分の掌のなかにあたたかくてか弱いものがあるときの感じに似ていた。
もちろん、あたしの目の前にいるのは、小さな文鳥なんかじゃないけど。


「名前。じゃなければ、メンバーアドレス」
「友達になりたいの?」


男の問いに、あたしはぎくりと肩を動かす。


「僕と友達になろうってこと?」


男の口調は、その荒んだ外見とは違って、子供っぽいものだった。
だけど、これも演技のうちかもしれない。あたしがそうしているみたいに。


「そう。友達になろうってこと」


おもむろにあたしはうなずく。
友達という言葉がいかにも場違いで滑稽で、こそばゆかった。
男は、不意にあたしを見た。さっきみたいに、単にあたしの姿が視界に入る位置に頭を動かしたんじゃなくて、ちゃんと確実に。
男はあたしに向かって手を出しだす。
あたしはその手に目を落とし、息をのむ。
その手が、いわゆる人間の肌のものじゃなかった。
質感が生身ではなかった。かといって、金属でもない。明るい灰色の、それは石だった。
あたしはその奇妙な質感に立ちすくむ。これは何だろう。


「僕の名前は――――


ソラ。


























「ちょっとは思い出してきた?」
「……!」


どれくらいの時間が経ったのか。
目の前には、ケツから生えた3本の尻尾を順に毛繕いするような仕草でいじるカールと、カールに付き従う紅いスケィス。
俺の隣では左腕を失いながらも臨戦態勢を崩さない俺のスケィスが居た。
互いの憑神を睨ませ合っていたところまでは覚えている。
後は……そう。
カールの憑神空間に長居しちまったせいか、妙なモノを視た。
グリーマ・レーヴ大聖堂で、カールと楚良が出会った時の記憶。
互いの憑神が干渉しちまったコトで、カールの記憶を視ちまったのか……!?
そういやエンデュランスやアトリがAIDAに感染した時も、アイツらの記憶が視えたことがあった……
でも、他人の記憶って勝手に覗き見していいもんなのか? 
俺はする気もねーし、されるのも嫌だぞ。
普通は心に鍵かけて、誰にも見せねェのが普通なんじゃないのか?
ネトゲなら尚更だろうに……なのに、AIDAはそれを曝け出し、人の精神(こころ)に根を張り、癒着する……。
カールだって、本当は――――――――――


「よそ見禁止」
「!?」

















バチッ!!


















俺の思考の隙を掻い潜り、カールが眼前まで迫る。
それと同時に、3本の尻尾のうちの1本で、


「あがっ!?」
「今のあたしは、全身が凶器――――見て分かんないかな?」


顔面を思いっきり引っ叩いてきやがった……!
野郎、首ごと撥ね飛ばす気かよッ!?
とっさに残された右腕で受身を取り、跳ね飛ばしてくれやがったカール本人をキッと睨み返す。
すると、カールは俺に追い討ちをかけるでもなく、2本のシッポを地面に突き立てながら宙に浮き、
今しがた俺の頬を打った尻尾に手を伸ばし、付着した俺の血を指で掬い、舐めとっていた。
確認すると、確かに俺の頬はカールの尻尾の先端部(あの燈色に光ってる部分な)に大きく切り裂かれ、血を垂れ流している。
……腹にブッ刺せば、一撃で終わってたんじゃないのか? 
弄んでやがるんだとしたら……悪趣味だぜ。


「きみはさっき、あたしの記憶を視たんだろう?」
「……あぁ」
「あれはね、わざわざ“視せてやった”の。だって、きみ全然思い出さないから」
「ショック療法にしちゃ……ちょっと手荒いんじゃねぇか」


わざわざ手の込んだコトしやがって……。


「AIDAはお前の精神を蝕み続けるぞ……俺は、そんな奴等を何人も見てきた……。
 そのB-stフォームとか言うのも、AIDAがお前に与えた“力”なんだろ……?
 ……お前は十分に強かっただろうが!
 ンな糞みたいな奴に頼ってまで、俺(楚良)を取り戻したいのかよッ!?」
「きみだって、三爪痕を倒すためにスケィスを開眼させたでしょ? あおいこ」
「!」
「あたしがこの力をどう使おうが、あたしの勝手。
 あたしはあたしの使いたい時にAIDAの力を使う……ねぇ、きみもそうだったんだろう?」
「……お前、俺の記憶を視たのか」


返事は無い。
だが、カールの口元が小さく哂ったのを見れば結果は明らかだった。
成る程な、俺がアイツの記憶を視た時、アイツも俺の記憶をスケィスを通して視たってワケだ。
……確かに、憑神の力に目覚めた頃の俺は今のカールと同じ。
やっと力を手に入れて、三爪痕と戦うだけの力を持って……志乃を助けるためなら、何をやっても構わないと思ってた。
カールが、楚良を手に入れるためにAIDAに身を委ねたように。
いや、むしろAIDAの方が、より甘美な夢を見せてくれるのかもしれない。
麻薬のように依存させ、望むものを見せ、弄んで……エンデュランスが猫に擬態したAIDAに、ずっと紅魔宮で戦わされていたように。
アトリが榊に心の隙を突かれ、月の樹のサーバーを飲み込む程の憎悪を増幅させられたように……。


「せっかく力を持ってたって、使い方を知らなきゃ宝の持ち腐れだよ。
 目の前に求めていた力があるのなら、飛びつくのがフツーの反応だと思わない?
 例えソレがルール違反だろうと、外道の知識だろうと。
 言っただろ……あたしは、楚良を取り戻すためなら……なぁんでもやるって……」
「モノは言いようだな……まぁ……俺も全面否定はしねぇ。
 ……けどよ」


長いお喋りのおかげでフィドヘルの能力(第六感増幅)使用の副作用も薄らいできた。
カールの尻尾で顔をブン殴られた時はどうなるかと思ったが、おかげで今まで焦点合わずにクラクラしてたのも
ハッキリバッチリ見えるようになってきやがったからな……目ェ覚めたぜ、いい意味で。


「その程度の覚悟じゃ……勝てねーぜ、お前は」
「……ハァ?」
「独りよがりも大概にしとけよ……。
 AIDAにいいように使われてる時点で、お前はもうお前じゃなくなっちまってるんだよッ!!!
「ハハハッ。使われてる? 
 このあたしが? いいね、大いに結構!!
 だからあたしもAIDAを使ってる! これって理想的なギブアンドテ〜クだと思わない!?
 AIDAはあたしって実験体(モルモット)を手に入れ、あたしはAIDAって力を手に入れることが出来たんだから……さッ!!」
















ガ ッ !!














再び距離を詰め、激突。
跳躍した瞬間、とっさに迎撃プランを何パターンか頭に浮かべてみる。
こっちは片腕のせいで小回りが効かない。
大剣で受け止めるのは無理だと判断、とっさに双剣へと武器をチェンジ。
カールの手数の多さは異常だ。
鎌、右肩のトライエッジ、3本の尻尾で武器は計5つの換算。さすがに全てを一つずつ受けてたらキリがない。
かと言って、もうアトリのイニスでの幻惑も通じないだろう。
ここは―――――アイツの能力を借りるしか……!






メイガス!!!」






第三相“増殖”のメイガス、発動!
さすがにオリジナルのクーンのように攻撃を受けた瞬間に患部データを修復なんつー芸当は無理みたいだが
(カールに左腕を斬り落とされた時【増殖】で修復しようとしてみたけど駄目だったからな……相性の問題か……?)
メイガスの基本能力、視力強化は……俺でも使える!
初撃、尻尾のうちの1本を退け、
第二撃、伸縮して攻撃してくるトライエッジを跳ね除け、
第三撃、右手に握った鎌の大振りを受け止め、反撃ッ!
俺の脳が、カールの攻撃を認識できている! 
これ……なら……!?


「覚悟……足りないのは、きみの方なんじゃない?」


な、に……ッ? 
カールの左腕に……もう1本、鎌が……ッ!?


「〜〜〜〜〜っ!?」


あの紅い鎌は巫器(アバター)……! スケィスを武器化して、手元に喚んだのか……!
あまりに一瞬のことで、視界には鎌の柄しか見えなかったが、
やがて順を追って刃の方まで目で辿ると俺の腹に外側の刃が突き刺さっているのが理解(わか)った。
視えなかった……何時(いつ)喚んで、いつ攻撃を仕掛けてきた!?
おい、待て……ってコトは……スケィスは……!?


「きみのスケィス? ま、よく頑張ったけどね……」
















ズチャッ!





















カールの6つ目の武器……憑神鎌の円刃が、俺の腹を凪ぐ。
まだメイガスの能力は解除されていない。
リアルでも腹の辺りを包丁で斬りつけられたような激痛が走っちゃいたが、
それも構わず、ただひたすらに憑神鎌の軌道を見切ることに専念した。
今の俺なら……それが出来る!
鎌が腹の1/3くらいを削ぎ落とす寸前、双剣を間に割り込ませ、歯止めをかける!
チリチリと火花が散り、腹の中から飛び出しそうになる血流にも似た熱いナニかで
気分は再び最悪の極みを見せるも、反動を利用して、何とか片腕だけで鎌を退けることが出来た……が。


「(くッ……“削り取られて”る……!?)」


とっさに後ずさりして、自身の現状を確認する。
まるで蟲喰いの痕。
それもかなり綺麗に喰い散らかしたような。
俺の腹は、そこだけヘラで切り取られた粘土みたいになっていた。
何だ、あの鎌……対象(PC)を削り取る……いや、狩り取る能力でもあんのか……!?


「はは。
 今のはわざと避けやすく斬ってあげたんだよ。
 今の……あたしの攻撃を寸分違わずガードしてたのって、ジークのメイガスの能力だろう? 
 このコが教えてくれたよ。
 感染が進んだせいか、このコとの意思の疎通も大分ダイレクトに伝わるようになってきたから」
「このコ……トライエッジのコトか……!?」


カールの右肩でウネウネと蠢くトライエッジ。
……そもそも、どうしてカールはAIDAに感染してるんだ?
アイツが《The World》に戻ってきたのはAIDAがオーヴァンの再誕で死滅した後……つい最近のはずだろうがよ。
まさか、もうずっと前から感染してたってのか……?
いや、だったら何で発症しなかった? AIDAに感染した奴は漏れなく頭ン中に腫瘍が……。


「識りたい、って貌(カオ)してるね」
「……」 
「教えてあげようか」
「ヘッ、いいのか……?
 自分の秘密やら計画やらを最後になってベラベラ喋る奴に限って……最期に負けんだぜ……?
 俗に言う“死亡フラグ”ってヤツだ……」 


……なんて強がりを言ってみる。
実際、俺は識りたかった。
カールがAIDAに感染した理由、経緯、そして真意。
少なくとも俺の見てきたカールはAIDAに縋る様な女には思えない。
いつも俺と揺光の3人で馬鹿やってた頃のカールなら……トライエッジに心を許したりしないはずなんだ。
トライエッジ……オーヴァンに寄生した、AIDAの中でも突然変異種に位置する最悪の存在。
どのAIDAよりも貪欲に俺達と、この世界を識ろうとする、悪意の塊。
人間の心を玩具としか思っちゃいねぇ糞野郎だ。
あの時、確かにトライエッジはオーヴァンが……。


「ハセヲ。きみもよーく知ってる男の置き土産だ」
「あ……?」


ドクン。
妙な予感に、無意識のうちに心臓が高く鳴った。
同時にコントローラーを持つ手がブルッと震える。
冷房は切ってないのに嫌な汗が急に噴出してきやがった。
おい、やっぱ止めろ……それ以上言うな……。


「このコはねぇ、オーヴァンから貰ったんだ」                                                                    【 TO BE CONTINUED... 】

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