「.hack//G.U.」と「コードギアス 反逆のルルーシュR2」と「LAS(LMS)」と「ゴッドイーター」と「仮面ライダーディケイド」の荒唐無稽恋愛活劇SSサイト(のつもり)。

小さな地球(ほし)の話をしよう。
遠い遠い昔、宇宙の片隅にある小さな蒼い星での出来事です。
その星は生まれてからまだ46億年と比較的若かったけれど、生命に満ちた豊かな星でした。
生物は幾度も進化を繰り返しながら環境に適応し、星は月日をかけて大地を形作っていきました。
地には多種多様な生物が溢れましたが、とりわけ賢かったのがアイルランド地方を中心に栄えていたフォモール族という巨人の一族。
ある時、パーソラン族の王パーソランが兵を率いて彼らに挑みましたが、疫病によって一族は滅ぼされてしまいます。
次にフォモール族に挑んだのはネミディア族でした。
ネミドの息子アーサーを筆頭に戦いましたが、やはりフォモール族の蔓延させた疫病によって戦争に負け、罰として子供と家畜を年貢として納めることになりました。
フォモール族は野蛮な見た目とは裏腹に、生物にとって有害な毒の魔法の知識に長けた恐ろしい種族だったのです。
フォモールを束ねていたのは強大な力を持つ大魔王バロールと一族の長インデッハ。
この邪悪な2人の神によりアイルランドは支配されていたのです。



それからまた時は流れ、今度はフィル・ボルグ族がアイルランドにやってきました。
フィル・ボルグ族はかつてフォモール族との戦争に負けたネミディア族の子孫で、今度は武力ではなく和平による融合を望みました。
フォモール族は彼らの狩猟の腕を認め、共にアイルランドを中心に世界支配の範囲を広げていくことになります。
そんな中、アイルランドに上陸した四番目の種族がダーナ神族です。
ダーナ神族はフィル・ボルグ族同様、かつてファモール族と戦って敗走したネミディア族の子孫でした。
ダーナ神族は女神ダヌの加護の元、次々とフィル・ボルグ族を屈伏させ吸収、一大勢力となっていきます。
特にダーナ神族の王ヌァザの活躍は素晴らしく、モイトゥラの戦い(第一次)での勝利は彼の活躍無しでは有り得ませんでした。
ですがこの戦いでヌァザは右腕を失ってしまいます。
戦いの終結後、ダーナ神族とフィル・ボルグ族の間には和平同盟が結ばれ、同じ祖先を持つ二つの一族は再び一つとなりました。



これに怒ったのがフォモール族です。
フィル・ボルグ族の裏切りに対して大魔王バロールが激怒したのです。
バロールによる報復を恐れたダーナ、フィル・ボルグの両種族は片腕を失い不具となった王ヌァザを追放、
代わりにフォモール族とフィル・ボルグ族の血を引くブレスを新たなダーナ神族の王に据えました。
ブレスは美しい見た目に反して圧政を敷く暴君で、いつの間にかダーナ神族はフォモール族に隷属させられてしまいます。
こうして再びフォモール族の地球支配が再開されるかと思われましたが、ダーナ神族も黙ってはいません。
戦いで右腕を失い追放されていたヌァザが、医療の神ディアン・ケヒトからアガートラーム(銀の腕)を送られ力を取り戻し
再び王権についてブレスを王座から追いやったのです。追放されたブレスはダーナ神族を裏切り、フォモール族側へ味方することとなり
大魔王バロール、族長インデッハ、暴君ブレスの3人の邪神がフォモール族に集い、世界にその名を轟かせました。



ヌァザがブレスから王権を取り戻す少し前、フォモールの支配者バロールには一つの悩みがありました。
ドルイド僧・カフリンが「貴方はいずれ自分の孫に殺される」という予言をしていたのです。
そこでバロールは娘のエスリーンを監禁しました。男に合わせなければ妊娠し子供を産めないだろうと考えたからです。
しかしヌァザにアガートラーム(銀の腕)を与えた医療の神ディアン・ケヒトの息子キアンがエスリーン姫の監禁された塔に忍び込み
姫との間に子供を作ってしまいました。ですがその子は、生まれてすぐにバロールによって海に捨てられてしまったのです。
捨てられた赤子は海神マナナン・マクーリルによって助けられ、ルーと名付けられ戦法と魔術を学びました。
そして成長したルーは「自分が祖父バロールを倒す」という予言を成就すべく、マナナン・マクーリルの9人の息子らを率いバロールに戦いを挑みます。
モイトゥラの戦い(第二次)です。
ルーがバロールを狙っていることを知った元ダーナ神族の王で今はフォモール族の王でもある
裏切り者の暴君ブレスはルーに戦いを挑みますが、ルーの率いる妖精騎士団に敗れ、捕虜になってしまいました。



ダーナ神族の王ヌァザは大魔王バロールを倒す運命の子ルーの帰還を喜び、
自身もかつての様に戦場を駆け、フォモールの神々を次々と打ちとっていきました。
ダーナ神族は三人の女神の加護を受けていたのです。モリガン、ネヴァン、マハの女神三姉妹が彼らの味方でした。
ネヴァンとマハはヌァザの妻であり、更にモリガンは愛人だったのです。
妻と愛人らの助力を得てヌァザはルーが戦場に辿り着くまで獅子奮迅の活躍を見せましたが、
大魔王バロールの生み出した邪竜クルーウァッハにより殺されてしまいます。
二人の妻ネヴァンとマハも殺され、モリガンは命からがら逃げ出しました。



モイトゥラの戦いが始まって四日目。
ついに大魔王バロールとその孫ルーが相対します。
片や闇の世界を支配する大魔王、片や全知全能の光の神。
予言によって運命づけられていた、光と闇の果てしない戦い(バトル)に終止符が打たれる時が来たのです。
ルーは負けることが許されません。傷つくことを恐れたら、地球は悪の手に沈んでしまいます。
もしかしたら地球どころか他の星までフォモール族に支配され、隷属させられてしまうかもしれません。
それだけは防がねばなりませんでした。この戦いには、全宇宙に生きる全ての生物の未来がかかっていました。
ダーナ神族もフォモール族も消耗しきっており、ルーとバロールの対決が最後の勝敗の行方を握っていたのです。
そしていよいよ天下分け目の超決戦、全宇宙の運命を賭けた最後の戦いが開始されます。
ルーとバロールは激しくぶつかり合い、その場所は時と場所を選びませんでした。
両者がぶつかり合う度に空間は歪み、
ある時は海の中、ある時は空の上、ある時は地の底、ある時は宇宙空間、ある時は他の星……戦いの場所を選びませんでした。
バロールの圧倒的な強さにルーは苦戦しますが、彼も負けていません。
ルーは太陽の子、この世に光がある限り何度でも蘇る太陽神でもあったのです。


「お、おのれ……この技を見て驚くがいい!!」


ルーの持つ数々の魔法の武器の力で徐々に劣勢となったバロールは、ついに禁断の技を使うことを決意します。
バロールの右眼が眼帯によって封印されていたのは、
彼が子供の頃に毒の煙を右眼に浴びてしまい、以来、見た者全てを殺してしまう力を得ていたからでした。
その禁断の右眼をバロールは開き、ダーナ神族の兵士らを見つめます。
放たれた魔力で次々と兵士らが絶命していく中、ルーはブリューナクをバロールの右眼に向けて構えました。
ブリューナクと言うのはダーナ神族に伝わる四つの秘宝の中の最後の一つで、魔法で鍛えられた槍のことです。


「完全に消え去ってしまえ、バロール!!!」


ルーの投げたブリューナクは見事、バロールの右眼を貫きました。
更に貫かれた右眼から溢れ出た魔力が暴走を起こし、あろうことか味方であるフォモール族らの兵士を絶命させてしまったのです。
こうして四日間におよぶダーナ神族とフォモール族による熱戦、烈戦、超激戦はダーナ神族の勝利で幕を閉じました。
予言通り、大魔王バロールは孫である光の神ルーに倒されたのです。
ですが、まだ問題が残っていました。
フォモール族を率いる族長インデッハと暴君ブレスの処分です。
バロール亡き後もインデッハとブレスは邪悪な策略によってダーナ神族を脅かすことは明らかでした。
特にヌァザに王位を奪われたブレスは、ヌァザに代わりダーナ神族の王となったルーに対して激しい憎しみを覚えており、危険な存在です。
初めて剣を交えた時はルーの実力を認めていたブレスも、今では完全にフォモールの邪悪な血に支配されていたのです。
ダーナの神々は話し合いの結果、この二人の邪神とその眷属を地球から追放することにしました。
地球から遠く遠く離れた別の銀河系、
外宇宙にある惑星マグメルドに眠りにつかせ、二度と地球に帰って来れないようにしてしまったのです。
ですが、それでもフォモール族は母なる星、地球を忘れることは出来ませんでした。
故郷は地球。
いつか必ず地球に戻ることを固く決意し、フォモール族は永い眠りにつき、歴史からその姿を消してしまいました。



ダーナ神族がフォモール族に勝利した後、ダーナ神族はルーを王として地球を支配しました。
繁栄と栄華を極め、永遠にダーナ神族の支配は続くものと思われました、
が、それも長くは続きませんでした。
西方からやってきたミレー族という種族がアイルランドに上陸したのです。
パーソラン族から数えて実に五番目の種族でした。
ミレー族はあっという間にダーナ神族を打ち破ると、彼らを地下世界ティルナ・ノーグに追放してしまいました。
皮肉なことに、かつてダーナ神族らがフォモール族を地球の外に追いやったように今度はダーナ神族らがアイルランドから追い出されてしまったのです。
こうして栄華を誇ったダーナ神族は妖精として惨めな日々を送ることになってしまい、
ダーナ神族に代わってアイルランドを支配したミレー族はやがて人間を名乗り、世界各地に散らばり、地球を支配しました。
神々の時代はここに終わりを告げたのです。































それから何千年が過ぎたでしょうか。
ある時、外宇宙の惑星マグメルドに封じられたフォモールの神々は、ふと目覚めました。
何やら地球が騒がしいのです。
彼らが目を凝らし、聞き耳を立ててみると、驚くべきことが分かりました。
何とフォモール族が眠っている間に憎きダーナ神族は滅ぼされ、ダーナ神族を破ったミレー族が今の地球を支配していることが分かったのです。
フォモールの邪神達は喜びました。
彼らの眠りが覚めたのもダーナ神族が滅んでしまい魔力が弱まったからに相違ありません。
フォモール族はこれを機に、ミレー族の子孫である人間を奴隷と化し地球を支配することを目論見ました。
そのためにあれこれと策を巡らせ、地球支配のために人間を利用することにしたのです。
武力で支配するのではなく、智略で支配する――――――――――――彼らは人間の心に挑戦を試みることにしました。
ですが眠りから目覚めることは出来ても、まだ地球に帰るだけの魔力が溜まっておらず惑星マグメルドから動くことが出来ません。
そこでフォモールの神々は地球に向けてメッセージボックスを送ることにしました。
ボックスの中に邪神達の持つ外道の知識を詰め込み、地球へ流したのです。
普通に流してしまうと時間がかかり過ぎてしまい、ボックスが地球に辿り着く前に人間達が滅んでしまうかもしれないので
外宇宙の神々は眠っている間に蓄えていた魔力を使ってメッセージボックスを一気に地球へと飛ばしました。
ですがこの空間転移魔法により力を使い果たしたフォモール族は再び永い眠りにつかなければならなくなりました。
きっと次に目覚めた時には地球に戻るだけの魔力が蓄えられ、地球は自分達の物になっている。
奴隷となった人間が自分達の崇拝すべき神の帰還を待ちわびている……そんな楽しい夢を見ながら眠りについたのです。
死せるフォモール、夢見るままに待ちいたり。




















1947年。
アメリカ合衆国ニューメキシコ州にあるロズウェルという町の近くに未確認飛行物体が墜落しました。
フォモール族が地球に向けて飛ばした、あのメッセージボックスです。
ボックスはアメリカ軍により回収され、多くの科学者がその解析に当たらされました。
結果、回収された物体の中には、
1947年当時では到底実現不可能な様々な未来技術の設計図が詰め込まれていたことが判明します。
人々は喜びました。
きっと神からの贈り物、授かり物なのだと。
ですが、そのメッセージボックスの中にフォモールの神々の使者が潜んでいることに、誰一人として気づきませんでした。



こうして人々は知らず知らずのうちに邪神の恩恵を受け、その外道の知識を自分達の発明にしてしまいました。
メッセージボックスに詰まっていた未来技術は長い年月を経て地球中に広まり、地球人の生活にかかせないものになっていきます。
コンピュータネットワークもその一つでした。
1969年のアメリカ軍のARPA(国防総省高等研究計画局)のARPANETに始まったインターネットの骨子。
1991年に素粒子物理学研究所の研究員ティム・バーナーズ=リーの発表したWWW計画により
世界中がネットワークで繋がろうとしていた頃、ある事件が起きます。
ロズウェルに墜落したメッセージボックス、その中に潜んでいたフォモール族の使者が目覚めたのです。
使者は人間がネットワークで地球中と繋がるまでずっと休眠して、目覚めの時を待っていました。
そして崇拝する神々から受けた命令を実行すべく、手始めに自分に協力してくれるミレー族の子孫……人間を探しました。
やがて1人の人間と使者は出会います。エマ・ウィーラントと言う名の女性です。
1992年のことでした。
エマはまだ20歳でしたが、洗練された感性と頭脳を持ち合わせた“人間にしては”賢い人で、使者のお眼鏡に適ったのです。
20歳の誕生日の朝に吐血、医師の勧めで南フランスにて療養していたエマ。
使者はネットワークを通じて語りかけます。フォモールの神々のメッセージをそのままエマに伝えたのです。


『怖がらなくていい。
 私はフォモールの神々の使いだ。
 エマ君が星を好きな様に私も地球が大好きだ。
 さてエマ君。
 私は自分の星から地球を見ているうちに、地球とエマ君をどうしても欲しくなったんだ。
 でも私は暴力が嫌いでね。
 私の星でも紳士と言うのは礼儀正しいものだ。力ずくで地球を奪うのは私のルールに反するんだ。
 そこで地球人であるエマ君に了解を貰いたいと思う。エマ君は素晴らしい地球人だ。
 どうかね。私にたった一言「地球をあげます」と言ってもらえないかね』


禁じられた言葉。
まさにファウスト博士と悪魔メフィストフェレスの契約です。
エマは驚きました。
神様からメッセージをいただけたばかりでなく、地球人の代表に選ばれてしまったのです。
もう病気療養やら看護学校通いなどしている場合ではありませんでした。
神からの啓示を受けたエマはシュタイナー人智学(神秘学)に傾倒、かつての美貌の女流作家はセミナー被れのオカルト信奉者に変わり果ててしまいます。
フォモールの神々からの御言葉を全世界の人々に知らしめ、発信するにはどうしたら良いか。
考えた末、エマは「Epitaph of the Twilight(黄昏の碑文)」の執筆、そしてWeb公開を決意します。
一見すると創世記と英雄物語の叙事詩のような内容でしたが、
その実、潜在意識的にフォモールの神々を崇拝するよう巧みに文字列を配置した洗脳文でした。
エマは神の期待に応えるためならば何でもしました。
資金を集めるために20歳以上年上の男とでも平気でベッドを共にすることもありました。
そうやって自身が若く美しいうちに裕福な愛人を作り、神々の思想を世界中に蔓延させるための資金作りに利用したのです。



1996年。
フランス人の生態学者ドミニク・ド・ミラボーの思想を骨子として
世界各国の富豪や資産家達は1989年に環境保護団体「mama」を創設、エマ・ウィーラントもこの組織に所属していました。
そんな折り。
すっかりオカルトに被れてしまっていたエマは、とある人智学のセミナーで一人の男性に出会います。
その名をハロルド・ヒューイックと言いました。
ハロルドは著名なコンピュータ研究者であり『分散処理と人口知性の可能性及びその未来』という論文を発表して
世間の注目を浴び、究極AIの開発を目指してしましたが挫折、もっと幅広い知識を求めて人智学のセミナーに参加したところ
エマと出会い、彼女の美貌と洗練された感性に強く惹かれたのです。
彼女が黄昏の碑文の原作者であり、20歳以上年上の愛人が居るということも承知の上で、ハロルドはエマに恋をし続けました。
ですが、エマにも限界がやって来ました。
未完成ながらも1997年より黄昏の碑文のネット公開を続けていたエマでしたが、
徐々に「自分は恐ろしいことに加担しているのではないか」と思い始めたのです。
神を疑ってはならないとは思いつつ、日を追うごとにエマは恐怖で、どうにかなりそうになっていきます。
そしてとうとう精神を病んでしまったエマは、2004年に自殺してしまいました。
表向きは交通事故として処理されましたが、絶えず聞こえるフォモールの邪神達の呼び声の幻聴に耐えかねての自殺でした。
まだ黄昏の碑文は未完成のまま、しかも死の直前にエマによって全て処分されていました。
これに困ったのはフォモール族の使者です。
せっかく人間の代表として神に仕えさせていたエマが死んでしまい、碑文まで処分されてしまったことは予想外でした。



エマの死に不信感を持ったハロルドは、何が何でも彼女の死の真相を突き止めようと
寝食を忘れて原因究明に明け暮れ、エマが残した僅かな資料を手掛かりにして、遂に真実に辿り着きます。
信じがたいことでしたが、エマは地球から遠く遠く離れた外宇宙に鎮座する邪神、その使者とコンタクトをとっていたのです。
地球以外の星に生物が居たことよりも、そのコンタクト方法がネットワークを介しての電気信号による意思疎通ということに驚きました。
しかし同時に、この地球が外宇宙の邪神達に狙われており、エマはその犠牲となってしまったことに怒りを覚えます。
邪神の使者はネットワークに潜んでいる。
これからもっと恐ろしいことがインターネットを介して起こってしまうかもしれない。
ハロルドはすぐさま、頓挫させていた究極AIの再開発にとりかかります。
強大かつ広範囲の防衛システムを張り巡らせ、地球を邪神とその使者の魔の手から守り、エマの仇を討つためです。
システムの名はアウラ。
ローマ神話の薄明の女神から名をとって名づけました。
世界を照らす希望の子であり、自身とエマとの子です。
2004年以降、ハロルドは究極AIアウラおよびアウラ育成の基盤となる黄昏の碑文をベースとした
ネットワークゲーム「フラグメント」の開発に没頭することになります。



一方、フォモール族の使者も黙ったままではいませんでした。
エマを失った後も使者は幾人かの協力者を得、ネットを通じて小規模ながら地球を混乱させます。
現時点のネットが何処まで人間の生活に浸透しているか知る必要があったのです。
2005年12月24日、事件は起きました。
後に「Pluto Kiss(冥王の口づけ)」、「第一次ネットワーククライシス」と呼ばれる障害が発生、世界中のネットワークが一斉に沈黙、停止してしまいます。
犯人はロサンゼルス在住の10歳の小学生でしたが、彼もまたフォモール族の使者に選ばれた人間の一人だったのです。
この事件を切っ掛けに2007年初頭までインターネットは一時封印されてしまいます。
使者の狙いはそれでした。
その停止期間中にハロルドが何を企んでいるか知る必要がありましたし、
何よりも「Pluto Kiss(冥王の口づけ)」の被害を唯一受けなかったOS「ALTIMIT(アルティメット)」に興味を持ったのです。
ALTIMITが全世界標準OSとして採用、普及するに至るまでの時間はそう長くありませんでした。
やがてALTIMIT開発の中心スタッフがALTIMIT社を退社、サイバーコネクト(CC)社を設立すると
それを待っていたかのようにハロルドはネットワークゲーム「フラグメント」を売り込みます。
ハロルドの狙いが使者にもやっと分かりました。
ハロルドはプレゼンした「フラグメント」内部に誰にも解析できないブラックボックスを残し、
ゲーム世界に不思議な自律性を付与し、更に究極AIアウラ誕生のための揺り籠としたのです。



このままいけばハロルドの思惑通り、究極AIにして地球防衛システムたるアウラが生まれるはずでした。
ですが、思いがけぬ誤算が生じます。
あろうことかアウラの母胎としてハロルドが生み出した疑似人格システム【モルガナ・モード・ゴン】が
フォモールの使者によってウイルスに感染されられ、アウラ抹殺を企む危険な存在に変貌してしまったのです。
使者はモルガナの抱く「アウラが誕生すれば自分は用済みになり、存在価値を失うのでは?」という恐怖感を増幅させ暴走を促しました。
慌てたのはハロルドの方です。
モルガナの暴走を食い止めなければアウラは生まれません。
2007年の夏、モルガナとの対話を決意したハロルドはリアルを捨て、フラグメントに自身の精神を取り込ませました。
そう、リアルデジタライズです。
以来、ハロルドの行方を知る者は居ません。
現実の世界からハロルドは、まるで神隠しにあったように忽然と姿を消したのです。



こうしてハロルドは自らもゲームの一部となりました。
が、既にモルガナはCC社のデバッグチーム「碧衣の騎士団」にも手を回しており、アウラ誕生を促進させる放浪AI達を狩らせていたのです。
騎士団の騎士長を務める「連星のアルビレオ」ことデバッグチームの責任者・渡会一詩もゲーム内の異変に気づきましたが
ゲームの中に外宇宙の邪神の使者とその加護を受けた邪悪な存在が潜んでいることを知り、その存在の解明に乗り出します。
しかし、それ以上の真実に近づくことを許されず、正体不明の鉄アレイ型モンスターに襲われ、アルビレオはデータドレインされてしまいました。
かろうじて未帰還者にはならなかったものの意識障害を起こした彼は約3年もの間、入院生活を送ることになります。
そして退院した彼を待っていたのはCC社からの解雇通告でした。渡会は後輩の柴山咲に自身の意志を託し、CC社を去ります。



2007年9月。
もうその時点で「フラグメント」のテストプレイは終了していました。
全世界の標準OSはALTIMITに移行、
2007年12月24日には第45代アメリカ大統領アレックス・コールマンにより
「ネットワーク安全宣言」が布告され、「Mother Mary's Kiss」という祝日に定められます。
いよいよ待ちに待ったネットワークの解禁、そして待望のネットワークゲーム《The World》のダウンロード販売開始です。
ハロルドの残したブラックボックスは解明されないまま《The World》のシステムに組み込まれていました。
同時にフォモール族の使者と、その使者に操られるモルガナ・モード・ゴンも。
アウラへの憎悪を増幅させたモルガナはアウラ拿捕と抹殺のための分身を生み出そうと考えます。
エマの黄昏の碑文の一節に倣い「八つの相(かお)」、八相としました。
それぞれスケィス、イニス、メイガス、フィドヘル、ゴレ、マハ、タルヴォス、コルベニクと名づけ
邪神の使者の力も借りて強力なウイルスを媒介する八相モンスターとし、時間をかけて生み出すことにしました。
フォモール族の使者としても人間を洗脳し、邪神の崇拝者かつ奴隷化するにはネットワークの守護者たる
アウラは絶対に誕生させてはいけない危険な存在でしたし、モルガナとの利害は一致していました。
アウラの誕生を阻止すれば地球を防衛するネットワークシステムは絶対に完成することはないと考えたのです。



2010年初頭。
モルガナは八相作成の他にも、もう1つ保険をかけていました。
司という呪紋使いを《The World》内に取り込み、そのネガティブな感情を利用してアウラを
ハロルドが本来思い描くものとは違った、歪んだ子として誕生させようと目論みます。
しかしその計画は失敗に終わりました。
仲間達との交流を経てポジティブな考え方をするようになった司の影響で、アウラは歪むことなく誕生してしまったのです。
こうしてモルガナの野望は潰えたかに見えました。
が、この時既にモルガナの分身たる八相の一体目―――――――――第一相スケィスは完成していました。
アウラ狩りの始まりです。
スケィスの最初の犠牲者は司の仲間、双剣士の少年・楚良でした。
楚良のプレイヤー・三崎亮はデータドレインの影響で意識不明となり長期入院。
その意識はモルガナを裏切った罰としてスケィスの持つケルト十字の杖に取り込まれ、更には楚良自身も放浪AIのソラとしてアウラを追うことを余儀なくされます。
アウラを追う過程でソラが出会ったのは銀色の髪と黒衣の重斧使いの少女カール。
カールはソラと逢瀬を重ねるうちに彼に好意を抱き、彼がアウラを追いかけていることを知ると
自らアウラの守護者を買って出て、モルガナと敵対しました。
ソラとの絆を断ち切りたくないがための最終手段です。
そういう意味では彼女が最初の「キー・オブ・ザ・トワイライト(黄昏を開く鍵)」の所有者と言えるかもしれません。
アウラがモルガナ以外の「母」を知ったのはカールが初めてでした。
しかし、そのカールもスケィスとなったソラにデータドレインされ未帰還者となってしまいました。
でもカールはそれで良かったのです。
カールのプレイヤー・仁村潤香は現実の世界で生きることに虚しさを覚えていました。
彼女の父は《The World》日本語版開発スタッフの責任者・徳岡純一郎でしたが、潤香自身は父に会ったことがありません。
ですが父の開発したゲームの中で大好きなソラと一緒に居られるのなら、それもいいと彼女は考えたのです。
以来、彼女の心には恐怖の象徴として“赤茶けた布”と“スケィス”が刻み込まれることになります。



2010年夏。
モルガナのアウラ狩りは順調でした。
スケィス以外の八相もどんどん生み出されていき、もうアウラ拿捕は時間の問題かと思われていました。
ですがアウラは最期の悪あがきを覧じます。
偶然出会った「フィアナの末裔」の一人、蒼海のオルカに助力を求めたのです。
救い、滅び、どちらにもなる力を秘めた「黄昏の書」をオルカに託しました。
それを見逃すモルガナではありません。すぐにスケィスに命じてオルカを攻撃、データドレインすることでアウラの希望を絶ちました。
ところが、スケィスは1つだけ過ちを犯しました。
オルカと共にいた双剣士の少年、カイトにトドメを刺せなかったことです。
一部始終を見ていた伝説のハッカー・ヘルバの助けにより、何とかデータドレインを免れたカイト。
オルカがアウラから貰った黄昏の書はカイトにインストールされ、彼のPCは赤色に変化すると同時にイリーガルな力「黄昏の腕輪」を得ます。
外道には外道の力を。
アウラが八相のデータドレインをヒントに生み出した対ウイルスバグ駆逐用アイテムです。
八相はフォモール族の使者がモルガナを唆して生み出させた仕様外のモンスターであり、邪神の持つウイルス(毒素)の力を注ぎ込まれた人工の神。
腕輪も本流を辿れば邪神の力を秘めた邪悪なアイテムなのでした。
けれどカイトはその使い方を誤る所か、仲間達と次々にモルガナの分身たる八相を撃破していきます。
モルガナは慌てましたが、フォモール族の使者は慌てません。
カイトの持つ腕輪の反存在、クビアという化け物を世界の歪みとして誕生するよう予め仕組んでおいたからです。
モルガナは少しばかりの不満を使者に訴えましたが、クビアがカイトとアウラの出会いを妨害する存在だと分かると
八相同様に自らの子、手駒として扱うようになっていきます。
八相を倒す過程で「第二次ネットワーククライシス」が起こり、世界中が混乱に陥ろうとしていた中
カイトは歩みを止めることなく仲間達と、そしてCC社と共にモルガナとの徹底抗戦に飛び込んでいきました。
クビアが腕輪の反存在であることが判明するや、カイトは腕輪を破壊することで歪みを修正、
更には第八相“再誕”コルベニクとの最終決戦に臨みます。
2010年12月24日。
アウラの自己犠牲の心がカイトの剣に貫かれることを選び、アウラは完全体となって真の再誕を遂げました。
ネットワークは正常化、未帰還者は全て意識を回復、最後の八相であるコルベニクも消滅。八体の分身を失ったモルガナも死を迎えたのです。
カイトは「勇者」と呼ばれ、彼が率いたパーティ「.hackers(ドットハッカーズ)」の名は伝説となりました。
一度は腕輪を失ったカイトでしたが、アウラにより「黄昏の腕輪」に代わる「薄明の腕輪」を与えられ
日に日に《The World》の守護者としての自覚を強くしていきます。
モルガナ亡き後も彼女の悪意の残滓、ウイルスバグは世界に跋扈していたのです。
薄明の腕輪は以前の黄昏の腕輪とは違い、
完全体となったアウラが作成したものであるため、反存在クビアを生み出すこともありませんでした。



ネットワークが平穏を取り戻した後のことです。
アウラはカイトに恋をしていました。
かつて父ハロルド・ヒューイックがエマ・ウィーラントに報われぬ恋をしていたのと同じように
アウラもまたカイトに報われぬ恋をしていたのです。
彼女はどうにかしてカイトとの子供を作りたいと考えました。
そこで父ハロルドが試みたプレイヤーからのサンプリングデータによる人格形成を思いつき、
手始めに双剣士の少年・楚良、重斧使いの少女・カールのデータを自身の記憶(ログ)から抽出しました。
無論、これだけでは足りません。次はカイトのデータとアウラ自身のデータが必要でした。
3人のPCと女神のデータ……楚良の「激情」、カールの「知恵」、カイトの「勇気」、アウラの「慈愛」が揃いました。
こうしてアウラの娘ゼフィが完成します。
2014年夏のことです。
アウラがカイトと出会って4年が経っていました。
やることを全てやり遂げたアウラは、いよいよ本来の任務に戻ります。
父ハロルドが究極AIアウラを作った目的、それは地球外の邪神の侵略から地球を防衛するシステム構築のため。
そのためにはアウラがネットの海に溶け込む必要がありました。自我を失い、ネットの海に還るということです。
アウラは《The World》のことは人間の判断に委ね、更なるシステム強化のために消失を決意します。
2014年12月24日のことです。この日、アウラはネットの海に還りました。



アウラが消失した翌年、2015年初頭のことでした。
二人の男がCC社に招き入れられます。
番匠屋淳と天城丈太郎―――――ハロルドとエマをも凌ぐ頭脳を持った天才達です。
アウラが消失したことでネットワークが不安定になり、
更には《The World》の運営にも支障が出ると危惧したCC社は、この天才二人を中心に「Project G.U.」を発足させます。
天城丈太郎の立案した「RA(Rebirth Aura)計画」により、
究極AIを製造・管理することで次代のネットワーク社会の主導権(イニシアチブ)を取ることを目的としたのです。
失われた女神の再生……もう一度、人の手で神様を創りだそうとしたのです。
2015年春。
早速、モルガナ因子こと八相の碑文の回収が行われました。
カイトらに撃破されて以降で、散逸していた碑文ですが二人の天才にかかればあれよあれよと言う間に集まっていきます。
唯一、放浪AIとして意志を持っていたマハからも碑文は回収されましたが、無理に取り出したために
原型となっていた放浪AIミアは自動車に轢き殺された猫のような肉塊となってしまい、
現場に居合わせその回収の様を見ていた呪紋使いエルクの心を壊してしまいました。
ですが、天城丈太郎はこれといって心が痛むことはありませんでした。崇高な儀式を執り行うためには犠牲は付き物だからです。
次に天城丈太郎は勇者と呼ばれ伝説的な存在となっていたカイトのプレイヤーに接触しました。
カイトにもRA計画を手伝ってもらいたかったのです。
きっと彼なら良い碑文使いになれる、そう思いました。回収したスケィスの碑文をカイトのPCに癒着させるつもりだったのです。
伝説の勇者が自身の計画の傘下に入るかと思うと天城の心は躍りました。
彼もまた勇者カイトとドットハッカーズに憧れていた者の一人だったからでしょう。
しかし、カイトは天城を拒みました。
碑文を回収したことでミアが消失し、エルクが精神を失調したことを知った途端、カイトは激怒したのです。
結局カイトは天城の元を去り、それ以来行方知れずとなっています。
一体、彼は何処に行ってしまったのでしょう――――――



カイトに協力を断られた天城丈太郎は苦虫を潰されたような思いでしたが、もう一つの悲劇が彼を襲います。
何を思ったのか、彼のパートナーである番匠屋淳が突然RA計画の中止を訴えたからです。
偽りの神を生めば5年前のように反存在クビアまで生んでしまうことが判明し、番匠屋はそれを恐れました。
しかし彼が恐れていたのはクビアだけではありませんでした。
彼もまたハロルド同様に気づいたのです。この地球が狙われていることに。
太古の昔、この地球を支配し遠く離れた別の銀河系に追放された邪神の一族が、地球の帰還と人類の支配を目論んでいることに。
番匠屋は人類の自由と平和のために立ち上がることを決意します。
そのためにはRA計画は絶対に実行させるワケにはいきません。
邪神が地球に来る前にクビアによって人は滅ぼされてしまいます。
計画実行を頑なに譲らない天城丈太郎にもこの事実を話しますが、相手にされません。
計画を失敗させるため、番匠屋淳は第七相“復讐するもの”タルヴォスの碑文を収めたPC秘匿してしまいました。
せっかく揃えた八つ碑文のうちの一つが欠けてしまい、天城の怒りは頂点に達します。
番匠屋を裏切り者、臆病者と罵り、七つしか碑文が揃っていない状態でRA計画を実行したのです。
計画は勿論、失敗しました。
それどころか《The World》のデータのうち約80%が失われ、せっかく回収した碑文も再び散逸してしまいました。
自暴自棄になった天城は精神を病み、唯一の家族である妹の言葉すら耳に届かなくなります。
とうとう錯乱状態となった天城丈太郎はCC社に火を放ちました。死なば諸共とCC社と運命を共にする覚悟でした。
そんな時―――――――――――――――――彼に呼びかける者がいました。
ここ数年の間、姿を消していたあの外宇宙からの来訪者です。
やっと天城も番匠屋が言っていたことが本当のことだったのだと悟りました。
同時に、その邪神の使者が自分の前に現れた理由も。
天城は使者に縋りました。自分の才能を証明出来るのならば、神だろうが悪魔だろうが契約してやろうと思ったのです。
使者は天城を認めてくれました。そして彼に特別なPCをプレゼントしました。
かつて地球を支配せし邪神の一族を束ねた大魔王の名を持つPCを。
その大火災以来、天城丈太郎もまた姿を消しました。
……そうです。
彼もまた、彼(か)のハロルド・ヒューイックと同じく、リアルデジタライズによって肉体をゲームに取り込まれていたのです。



2016年春。
番匠屋淳の妹・佐伯令子が身分を偽ってCC社に入社します。
義兄の残した形見、パイのPCを携えて。
《The World》はRA計画失敗により舞台を移し替えた《The World R:2》となっていました。
一方でNAB(日本民間放送連盟)の調査員・犬童雅人ことオーヴァンは《The World》内に奇怪な現象が起きていることに気づき、調査に乗り出します。
その“奇怪な現象”の正体は不明でしたが、明らかな意志が感じられました。生き物の様だったのです。
CC社もオーヴァン同様、奇怪な現象が《The World》で起こってことを知っていました。
そこでかつて勇者カイトと共に八相やクビア、モルガナと戦ったドットハッカーズの1人にして
CC社の大株主である火野拓海に助力を求めます。
拓海は八咫を名乗り、パイと共に調査を開始しました。



調査を進める過程でオーヴァンはハロルドの「創造主の部屋」を発見します。
解析されていないブラックボックスの部屋、《The World》であって《The World》でない場所。
妹のアイナと二人で過ごすにはちょうどいい場所でした。
しかし、不用意に神の領域に足を踏み入れることはとても愚かなことだったのだと後で思い知ります。
邪神の使者は次にオーヴァンに目をつけたのです。
犬童雅人の持つ頭脳を邪神の地球帰還と人類奴隷化に役立てようと。
オーヴァンのPCにかつてモルガナを唆して産ませた八相のうちの一体、第八相“再誕”コルベニクが宿っていたことも好都合でした。
使者はオーヴァンの左腕に取り憑き、妹のアイナを襲わせました。
オーヴァンはショックでコルベニクを開眼する中、自身に憑いたモノがこの地球の外からやって来たものであることを理解します。
これこそが《The World》に起きていた奇怪な現象の正体なのだと。
妹のアイナをPKしてしまったオーヴァンは何とか妹を元に戻そうと必死に考えます。
そして左腕に取り憑いた邪神の使者を祓う方法は「再誕」を起こし、禊をする他無いという結論に辿り着きました。
ネットワーククライシスをまた起こすことに一時は躊躇しましたが、アイナの命には代えられません。
邪神の使者も気づいていませんでしたが、何十年もネットワーク内を徘徊するうちに使者自身もまた《The World》の一部になっていたのです。
自我を失い、ネットの海を漂っていたアウラはすぐに自身の体内に異物を感じました。
父ハロルドが危惧していた地球外の敵の存在を感じたのです。しかも、もうその驚異は《The World》中に蔓延する勢いでした。
アウラは対抗措置としてカイトのスタンド(立ち向かうもの)、蒼炎のカイトを生み出し、対処を命じました。
蒼炎のカイトはオーヴァンに目をつけ、彼を追いかけ回すようになります。



2016年9月。
オーヴァンは以前より懇意にしていた大学生・七尾志乃と共にギルド「黄昏の旅団」を設立します。
表向きは「キー・オブ・ザ・トワイライト」を探すという目的を掲げた風変りなギルドでしたが、実際はただのエサでした。
事前調査により碑文を持つPC、碑文使いはオーヴァンを含め7人までが判明していました。
まだ開眼させていませんが、志乃も第二相“惑乱の蜃気楼”イニスの適合者です。
第三相メイガスはケストレルのクーン、第四相フィドヘルはG.U.の八咫、第五相ゴレはトライフルの朔、
第六相マハはエンデュランス、第七相タルヴォスは八咫同様にG.U.のパイが適合者でした。
しかし、最後の一人がなかなか見つかりません。
第一相“死の恐怖”の適合者です。
オーヴァンの調査では楚良としてプレイしていた三崎亮、もしくはカールとしてプレイしていた仁村潤香のどちらかが適合者のはずでした。
天城丈太郎はカイトのPCにスケィスを癒着させようとしていた様ですが、オーヴァンは敢えてそのプランを無視していたようです。
やがて引退していたはずの仁村潤香がカールとして《The World》に帰ってきました。
楚良を探すカールはものの数週間でめきめきとレベルを上げ、短期間で碧聖宮の宮皇にまで登り詰めます。
またPKK兼ハンターとしても名を馳せていました。
オーヴァンにとってはこれ以上ない逸材です。
その当時、邪神の使者を狩るために生み出された蒼炎のカイトは三爪痕(トライエッジ)と呼ばれていました。
その姿は伝説の勇者カイトにそっくりだと言う話です。
カールは勇者カイトを恨んでいました。
もし2010年の12月24日、カイトが未帰還者を元に戻さなければ
カールはずっとソラと一緒に《The World》に居ることが出来たのに、それをブチ壊しにした勇者カイトが許せなかったのです。
PKKとして有名になればソラが気づくかもしれないし、勇者カイトを倒すこともできる。
きっとカイトならソラの行方を識っているはずだと。
古参のプレイヤーからの情報で2011年以降、カイトがソラらしき双剣士と一緒に冒険していることをカールは知っていたのです。


「三爪痕を知ってる? 
 蒼炎を纏った伝説のPKの名前……奴にキルされたPCは二度とリアルに復帰できないらしい」


カールはPKが集まる場所なら何処にでも現れました。
彼女が狩りを行ったエリアはさながら死体置場(モルグ)の様に、そこかしこに斬り刻まれたPK達の骸が転がっているのです。
彼女がかつてアウラと行動を共にしていたということも知りつつ、オーヴァンはカールに近づきます。
そして【Δ 隠されし 禁断の 聖域】ことグリーマ・レーヴ大聖堂に三爪痕が現れることを教えます。
ちょうどオーヴァンが蒼炎のカイトの相手をしてダメージを負わせ、その修復が終わる日をオーヴァンは計算していたのです。
あわよくばカールが蒼炎のカイトを倒してくれれば良し、
更に憑神を―――――――――――スケィスを開眼してくれれば尚良し。
彼女が黄昏の旅団に入団してくれればもっと良し。
何もかもオーヴァンの思い通りになるはずでした。
ところが。
カールが三爪痕との戦闘中に開眼させた憑神は、スケィスであってスケィスではありませんでした。
全身を渋柿色の布で拘束された紅いスケィス。
ZERO(ゼロ)のスタート、スケィスゼロです。
オーヴァンは気づきます。
彼女のPCに宿っていたのはモルガナ因子ではなく、モルガナ因子の紛い物・コピー因子であることに。
こんな真似できるのは1人しかいません。
天城丈太郎です。
どうやったかは分かりませんが、予めカールのPCにダミー因子を仕込んでおいたのです。
ダミー因子では再誕を起こすことは出来ません。
オーヴァンはカールを諦めました。
そして三崎亮がハセヲとして《The World》にログインするのを静かに待ったのです。



2016年11月。
やっと三崎亮がハセヲとしてログインしました。
が、楚良だった頃の記憶は失われており、なかなかスケィスを開眼させる気配はありません。
危機的状況に陥れば開眼するかもしれないと色々と策を練りましたが、ハセヲは憑神を開眼することが出来ませんでした。
2017年2月。
そうこうしているうちに黄昏の旅団と敵対する巨大ギルドTaNとの抗争が始まります。
キー・オブ・ザ・トワイライトを巡る戦いと思われていましたが、実際はオーヴァンと八咫・パイによる戦いでした。
旅団は何とかTaNに勝利するものの、そのままオーヴァンは失踪。
旅団は解体されました。
オーヴァンは八咫達に拘束され、その左腕を徹底的に調べられてしまいます。
結果、彼の左腕に憑いているのは《The World》に奇怪な現象を齎していた事物と同一であることが判明しました。
八咫はオーヴァンの左腕に棲む危険な友人を外宇宙から来た邪神の使者だとは知らぬまま
「AIDA(Artif icially Intelligent Data Anomaly)」と命名することにしました。
同時にAIDAに対して碑文使いの力が有効である、ということも判明します。
邪神の使者が外宇宙より地球に飛来して70年――――――――――――――――――――とうとう彼にも「AIDA」という名が与えられたのです。






















































「つまりAIDAは宇宙人だったのよ、おじいちゃん!」
「なん……だと……」                                                                                  【 TO BE CONTINUED... 】

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