「.hack//G.U.」と「コードギアス 反逆のルルーシュR2」と「LAS(LMS)」と「ゴッドイーター」と「仮面ライダーディケイド」の荒唐無稽恋愛活劇SSサイト(のつもり)。

『刻印とは、あの獣の名、あるいはその数字である。
 ここに知恵が必要である。思慮のある者は、獣の数字を解くが良い。
 その数字とは――――。』
                                                                                        【ヨハネの黙示録 第13章18節 より】



「100歩譲って未来人や超能力者が実在するってんなら……まぁ信じてやってもいい。
 けどな、いくら何でも宇宙人はねーだろ宇宙人は」
「しょうがないでしょ。本当のことなんだから」



カイトとアウラの娘を名乗るゼフィ(ついでに俺とカールの孫でもあるらしいが)。
そのゼフィの口から告げられた衝撃の事実。
AIDAは宇宙人。
大昔にカミサマが戦争を起こして、負けたカミサマが宇宙に追放されて……やべぇ、頭痛ェ。
碑文やら未帰還者やらってだけでも十分イカれてるのに、それ以上話をややこしくしてどーすんだ?
地球が狙われてる? 
ロズウェル事件はマジ? 
外宇宙の邪神の手下がネットに? 
冗談キツイぞ、コラァ〜!


「今まで散々AIDAと戦ってきたけどな……アレが宇宙人? 
 ありえねーだろ……常識的に考えて……」
「常識を疑って」
「……!」


……試合が始まる前。
グリーマ・レーヴ大聖堂でカイトも同じことを言ってやがったな。
まさかアイツもAIDAの正体に気づいてたのか?
娘のゼフィが知ってんなら父親のカイトだって知らねーはずはねーだろうし……あの野郎め。


「……AIDAが宇宙人なら、どうして俺達人間に興味を持つ?」
「人間を識りたいから」
「識ってどーする」
「人間はミレー族の子孫。
 そしてミレー族はダーナ神族を駆逐した種族でもある。
 フォモール族にとっては恰好の研究対象なのよ。自分達ですら勝てなかったダーナ神族を滅ぼした種族……その子孫の生態は、ね」


自分達でも勝てなかった種族を倒した種族……その子孫の生態を研究……?
アレか。
スポーツとかで、ライバルチームに常勝してるチームを研究して勝ち方を模索するようなモンか?
ンなことやられてもな……こっちはいい迷惑だっつの。
人間を何だと思ってやがんだ。


「ンなくだらねぇコトのために……
 智香や志乃……世界中の人間が未帰還者にされちまったってのか!?」
「そうよ」
「《The World》は邪神の脅威から世界を守るためのシステムなんじゃなかったのかよ!
 どうしてさっさとAIDAをブッ倒しちまわなかったんだ!?」
「少なくともママはそうしようとした。
 だからパパのソックリさん達――――女神直属護衛軍を生み出して、AIDA狩りをさせた」
「……三爪痕か」
「でもAIDAも抵抗したわ。オーヴァンを使ってね」


そうか、そういやそうだった……。
オーヴァンは何度も三爪痕……蒼炎のカイトと戦っていたんだ。
俺の知らない所で……とっくに邪神と女神の戦いは始まっていた……!
でも俺達が蒼炎のカイトを倒しちまったせいで駆除が遅れて……AIDAが蔓延した……。
オーヴァンがトライエッジだって分かってりゃ……!


「今やここは、AIDAの実験室」
「実験室……」
「邪神達は使者に対して、人間の生態と価値を調べるように命じていたの。
 自分達の奴隷と化すに値する力と知恵を、人間が持っているかどうか……AIDAに探らせていたのよ。
 だから色んな人に取り憑いて精神(こころ)を探ったわ。とことんね。
 普段その人が見せないような深い場所まで犯して……秘部を曝け出して。
 オーヴァンの様に一部の強靭な精神の持ち主は何とか耐えられたけど……後は、ね。
 おじいちゃんなら理解(わか)るでしょう?」
「……まーな」


エンデュランス、アトリ、朔、天狼、ボルドー、太白、榊……どいつもAIDAに憑かれておかしくなっちまった。
弱い部分につけ込まれて、幻想を見せられて……アレもAIDAの実験だってのか?
ミレー族とやらの子孫の人間を、試すための実験?
俺達人間が動物を檻の中に入れて道具を与え、
どういう反応をするのか、その動物の知能はどの程度なのかを調べるみたいに?
そんなコトを宇宙規模でやるか、フツー? 
おいおいおいおいおいおい……。


「でもAIDAにも誤算があった……碑文の存在!」
「……」
「碑文――――モルガナ因子は7年前、
 この《The World》のシステムとして稼働していたモルガナが生み出したもの。
 八つの相(かお)、八相。
 モルガナの分身達。
 私のママ、アウラを殺すために生まれた死刑執行人。
 でもモルガナだけの力で生み出すことは出来なかった……八相の誕生には邪神の使者、AIDAも関わっていた。
 フォモール族は生物にとって有害な毒素を操る技術に長けた種族……だから八相にデータドレインされた人達は――――――――
「未帰還者になった?」
「そう。
 そしてパパが八相を全滅させ、モルガナは滅んだ。
 パートナーを失ったAIDAは次に人間がどう出るか、様子を見たわ。でも数年は何も起きなかった。
 私を産んだ後、ママが自我を失ってネットに溶け込んだ時は相当焦ったみたいだけど」


AIDAはアウラの誕生を阻止できなかった。
アウラはネットに溶け込んで本来の任務を遂げようとする……邪神の脅威から地球を守るための防衛システムの構築。
ハロルド・ヒューイックはエマとの娘を創りつつ、地球を包囲する巨大ネットワークも創ろうとしていた。
全ては復讐のため。
邪神に狂わされたエマの仇を討つため……執念だな。
独りで戦い続けたのか……。


「ママが《The World》から居なくなって一番焦ったのはCC社。
 そこで八相の碑文を集め、ママの偽物を創ろうとした。
 でも八相の碑文には邪神の力が宿っている……無理に計画を実行すれば反存在クビアが生まれる危険性を孕んでいた。
 クビアはママが生まれる過程で偶然生まれた、碑文の影。生まれながらの蛭子(ヒルコ)。
 そもそも、そんな危なっかしいモノでママを創ろうとか思うこと自体が間違ってたのよ。
 土壇場で間違いに気づいた人も居たけどね……」
「番匠屋淳……パイの兄貴か」


その兄貴も結局死んじまったんだよな。
人間がカミサマ創りの真似事なんかするもんじゃないんだ。
昔から言うだろ。触らぬ神に祟りなし、ってヤツだ。
アウラは自分の仕事をするためにネットに還ったってのに……会社の利益のためにCC社が余計なコトしちまったせいで……。


「碑文は邪神の力を秘めていると同時に、邪神を打ち破る力も秘めていた。
 目には目を、毒には毒を、ってね。
 八相のデータドレインの力はAIDA自身にとっても致死性の高い毒だった。
 かつて光の神ルーが大魔王バロールを倒した時、バロールの眼の力で同族のフォモール族まで殲滅した様に。
 でもせっかく揃えた碑文は実験失敗で散逸、《The World》のデータは約80%が消失……これはママにとって痛手。
 その隙にAIDAもママに駆除されないよう細心の注意を払いながら、本格的に人間観察を始めた。
 もうその頃になるとAIDAは70年前に地球にやって来た最初の1匹から、何千何万もの群体生物のような存在になっていたわ。
 全は一、一は全。
 効率よく観察するために分裂を繰り返して自分のコピーをどんどん創って……
 その中で最も凶暴でフォモールの邪神の性質を強く受け継いでいたのが―――――――――――――――――
「トライエッジか……!」
「AIDAにも一応、穏健派と過激派が居たの。
 トライエッジは過激派、それも超が付く。
 観察対象である人間を使って、フォモールの神々が地球に帰還する前に地球を自分達で支配してしまおうと考えた。
 少なくともトライエッジはそうすることが主たるフォモールの神々への奉公に繋がると思っていたの。
《The World》をプレイしている人は1200万人。その全てがAIDAに感染して、フォモールの邪神達の下僕になったら? 
 地球はおしまい。
 あっという間に、頭の中をAIDAに支配された人間達に支配されてしまう」
「俺達がクビアと戦った時みてーに原発をハッキングしてメルトダウンさせりゃ、人類の全滅なんてチョロいもんだろーからな」


アレはAIDAじゃなくてクビアの仕業だったけどな……。
いや、クビアも元々はAIDAが原因で生まれたんなら直接じゃないにしろ、やっぱAIDAが関わってることになるのか?
とりあえず糞面倒な野郎だってことは理解できたぜ、AIDAがな。


「奴隷となる人間は多ければ多い方がいい。生かさず殺さず。
 オーヴァンに憑いたトライッジは順調に仲間を増やしつつあった。
 でもトライエッジにとって全く予想だにしていなかった事態が起こる。
 おじいちゃんがキー・オブ・ザ・トワイライトになって、オーヴァンの再誕を起こす切欠となったこと!
 再誕から逃れる術は無い……オーヴァンに憑いていたトライエッジをはじめ、AIDAは全て滅んだ。
 70年もかけて人間を観察していた邪神の使者にしては、随分と呆気無い最期じゃない?」
「でもトライエッジは生きてた……今度はカールに憑いて」


そこが一番のネックだ。
カールは俺が志乃を助けるためにログインし続けていたこの九ヶ月、一度もこのゲームにログインしていなかったはず。
なのに「オーヴァンから(トライエッジ)をもらった」なんて抜かしていた……。
俺はカールと入れ違いになるカタチでこのゲームを始めてる。
カールは……俺よりも前にオーヴァンと会っていた……?


「なぁ……カールのトライエッジって……」
「……おばあちゃんの言っていた通り。アレはオーヴァンからの贈り物」
「マジなのか……」
「オーヴァンはおじいちゃんに憎しみを贈った。おばあちゃんには悪意を贈った。
 彼にとって、おばあちゃんはおじいちゃんの代わり。
 最初はおばあちゃんを旅団に誘って、おばあちゃんに七体の憑神を倒してもらって、再誕を起こしてもらおうと考えていたの」
「んな……!?」
「水鳥って、泳いでる姿はとても綺麗だけど……実際は必死になって短い足を水の中でバタつかせてるだけ。
 オーヴァンもそうよ。
 妹を助けられるなら、どんな小さな可能性にも縋った。
 もがいた。
 小細工をした。
 人間ってそういう生き物なんでしょう? 
 人は所詮、愛に踊らされる奴隷。そして獣。
 だからAIDAの興味を惹く。
 おばあちゃんはどうしても三爪痕に会いたかった。会って、おじいちゃん……楚良の方ね。
 楚良の行方を聞きだしたかった。でも普通のPCのままじゃ三爪痕は相手にしてくれない。
 だからオーヴァンはおばあちゃんにあげたの……トライエッジの種子を」
「俺を探すために……自分からAIDAに感染したのか……!」


俺ならどうする……!?
志乃を助けるために力を欲しただろうか。
……どう考えてもカールと同じコト、してただろうな。
チカラ……チ力ラ、チカラ、チカラ、チカラ、チカラ、チカラ!!!
志乃を救える力だけを求めていたあの頃の俺なら、AIDAに縋っててもおかしくねぇ。
カールがなっちまったB-stフォームなんつう化け物みたいな姿になって……オーヴァンに挑んでたかもしれねぇ。
邪神が地球を狙ってるっつーコトも知らず、ただただ戦い続けてたかも……しれねぇな。


「おばあちゃんに憑いたAIDAの匂いにつられて、パパのソックリさんは現れた。
 おばあちゃんは歓喜に打ち震えたわ。
 やっと会えたんだもの、大好きな楚良を知っているかもしれない相手に」
「……あん時の俺と同じだな」
「オーヴァンの狙い通り、その時の戦いでおばあちゃんは憑神を……スケィスを開眼させた。
 でもそのスケィスはオーヴァンの望んでいたスケィスじゃなかった。
 偽物だったの。
 おばあちゃんのPCに宿っていたのはモルガナ因子じゃなくて、誰かが事前に仕込んでいたコピー因子。 
 だからアレは原初(ゼロ)のスケィス――――スケィスゼロ。
 コピー因子では再誕を起こせない……オーヴァンはおばあちゃんを見限った。
 同時に後悔する。
 もうおばあちゃんは用済みなのに、AIDAの――――――トライエッジの種子を与えてしまったことを」
「カールはそのまま引退しちまって……」
「そう。
 再誕が起きた時、おばあちゃんは《The World》に居なかった!
 これまでAIDAに感染してしまった人は皆、場所や施設は違えどネットに繋がっていたわ。
 病院に入院していれば回線を通じて《The World》に繋がり、再誕が起きた時にAIDAは駆除される!
 でもおばあちゃんは再誕の時、ネットに繋がっていなかった……。
 AIDAに憑かれた人に共通して出来る脳内の腫瘍……おばあちゃんはトライエッジに感染してたのに、それが無かった。
 ハッキリとした原因は私にも理解(わか)らないけど……電気信号として人の脳に留まれるAIDA……
 トライエッジにとって、おばあちゃんはとても居心地の良い寄生者だったのかもしれない。
 母親の子宮で育つ胎児の様に……ずっと眠り続けていたんだわ。
 だからオリジナルのトライエッジが滅んだ後も―――――――――――
「また俺の前に現れた、ってか」
「あのトライエッジは、おじいちゃんが相手をしたのと似て非なるもの。
 完全におばあちゃんの味方よ。互いに共生関係にあると言っていい」


なるほどな……よーやく理解できたぜ。
ったく、自分の使命忘れてりゃ世話ねーっての。
……尤も。
俺自身も他人をとやかく言えねぇんだけどな。
まだ俺には、やることが残ってる。
楚良だった頃の自分自身を取り戻す……取り戻さなきゃいけねぇ。
元はと言えばカールがそんなコトになっちまったのも俺のせいなんだ……。
俺が何とかしなきゃいけない。
俺が救ってやらなきゃいけない。
俺が巻き込んだんだ。
俺がアイツを……守ってやらなきゃいけねぇのに……! 
なのに。
今の俺には……力が無い……!!!


「今のおじいちゃんじゃ、トライエッジにもおばあちゃんにも勝てない」
「……」
「断言するわ。
 必ず殺される。今度はおじいちゃんが未帰還者にされちゃうよ? もう碑文は無いんだから」
「……1stフォームじゃな」


ラスボス相手にひのきのぼうで立ち向かうようなモンか。
以前、AIDAに感染した太白と竜賢宮で戦った時……俺はAIDAに感染しかけた。
その時は何とか気合いで浸食を撥ね退けたけどよ……今はどうかな。
ちっとばかりショックなコト多すぎて……撥ね退ける気力があるかどうかも怪しい。
碑文使いは憑神が居るからAIDAに対してもそれなりの耐性がある。
でも今の俺には憑神は居ない。スケィスはさっき、カールにデータドレインされて石人形になっちまった。
そのせいか、碑文とのリンクが切れた俺もXthフォームから1stフォームに逆戻り……初めて蒼炎のカイトと戦った時みたいだな。
せっかくゼフィに左腕を治してもらったってのに、これじゃ……。


「手がないこともないけど」
「……何っ!?」
「途切れてしまったスケィスとの精神リンクを、もう一度繋ぎ直すの。
 AIDAに対抗するには憑神の力は必要不可欠……おじいちゃんのPCとスケィスの碑文を再融合(リフュージョン)させる!」
「復活のフュージョン……か」
「ちなみに失敗したら死ぬけどね」
「なッ……!?」


死ぬ、って……おいおい。


「これはおじいちゃんの物語よ」
「……ゼフィ?」
「おじいちゃんの旅はまだ終わっていない。
 語り手と、読み手。その垣根って、実はとても曖昧なの。
 わたしはもう語ったよ。
 今度はおじいちゃんが、わたしに続きを読んで聞かせる番じゃない?」
「……」


答えられなかった。
意識不明から回復した志乃が、大聖堂で呟いた言葉が頭を過ったから。


「私達、まるでオーヴァンの物語の中で生きてたみたい」


志乃はそう言っていた。
アイツは語り終えた。
例え望まれない物語だとしても、多少(全然多少じゃねーけど)強引なやり方で語り終えた。
読み終えた。書き終えた。
俺にもオーヴァンみたいにやれってのか。
アイツは色んなもんを背負って、独りで戦えるほど大人だった。
俺はどうだ? 
三崎亮(ハセヲ)にはそんな覚悟があるのか?
何だかんだ言って、いつも口先だけカッコつけて心の中でビクついてるだけなんじゃないのか?
いや、自分の心にも嘘をついてるかもしれない。
心の中でカールを助けたいとか、智香との約束があるから死ねないとかブツブツ言ってるだけで……俺は“何も出来ていない”。
だって、現に、こんな小さな女の子との問答で押し黙っちまってるじゃねぇか……。


「怖いのね? 失うことが怖い? 死んでしまうことが怖い? 両方?」
「今さら怖くなんざ……」
「嘘。怖がってる」
「怖くなんてねぇっつってんだろうが!!!」
「わたしを怒鳴っても何も解決しはしない。要はあなたにやる気が有るのか、無いのか。それだけ」
「ッ……!?」
「世界を変えるのは強い思い……皆、乗り越えてきたわ」


強い思い……。
かつてカイトが未帰還者になった友達を助けようとした時みたいに……
オーヴァンがアイナを助けようとした時みたいに……
俺が志乃を助けようとした時みたいに……強い思いさえあれば、もう一度スケィスと一緒に戦える……?
そうなのか……? 
なぁ、ゼフィ……。


「概念の軛なんてプチグソにでも食わせちゃえばいい。
 おじいちゃんはもっと輝ける存在……あなたの元型(アーキタイプ)の可能性を信じなさい。
 口では何とでも言えるけど、まだおじいちゃんは自分の過去と向き合うことを恐れているわ。
 最後に帰結するのはおじいちゃん自身の過去との繋がり。 
 あなたは希望なの。
 世界(《The World》)と世界(現実)、表と裏、ウチとソト、自分と他人。
 頑なにならないで……。
 より高次の存在へ、より高次の次元に登り詰めるコトの出来る人なのに、祝福を拒まないで」
「お前、なに言って……」
「楚良」
「!」
「おじいちゃんはおじいちゃん自身を恐れているのね。
 でもそれは馬鹿げている。自分とケンカするなんて無意味な話だと思わない?
 怖がることはない。どんな姿形をしていても、おじいちゃんはおじいちゃん。 
 獣の姿をしているのは、おじいちゃんの激情の現し身だからよ。
 あなたの精神(こころ)の刻印……封印された記憶。
 それは嫌なもの? 思い出すだけでも反吐が出るもの? 
 違うでしょう?
 彼はいつだってあなたと一緒に居たじゃない。
 今さら受け入れるのが怖いなんて……可笑しいわ」
「俺は……」













そうだ。













「俺は……」














理解(わか)ってたんだ。


















「俺は……ここにいる……!」

















だからお前も、ここにいるんだろう……?


























「来い……来いよ……!」


























ゼフィはこの空間を“時間の流れが外界とは根本的に違う隔絶空間”だと言っていた。
《The World》であって《The World》では無い場所、とも。
だが妙な確信があった。
アイツは必ず来ると……。
カールにデータドレインされて、青カビの生えた石人形になっちまっても……アイツは来てくれると。
アイツは俺。
俺はアイツ。
常に一つ。
不具は無い。
欠けた所を常に互いで補ってきたのが俺達だった。
この3日の間に働いた狼藉には目ェ瞑ってやる……だから……来い。
……来いよ。




























「来いよっ!! 楚良ァァァァァァァァ!!!!」































無我にして夢中。
あらん限りの声を喉の奥からこれでもかとばかりに絞り上げ、俺は叫んでいた。
ビリビリとゼフィの隔絶空間が揺れ、俺の絶叫が轟く。
何処までも続く白い地平に染みいっていく。
俺が求めるのは楚良。
使うべき力じゃない。
欠けた心。
俺(三崎亮)の前世。
ハセヲでもなく、三崎亮でもなく、俺はただ、楚良を求めている。
向こうにも俺の声が届いているのなら、きっと楚良も俺を求めるはずだと勝手に思い込むのはアリだろうか。
共鳴し合い、どくんどくんと忙しない鼓動を全身と血液に刻む。これが俺の響き。
近づいている。
アイツはもうすぐ傍まで来ている。
カールとの戦いじゃ全然姿を見せなかったはずのアイツが。
これは目覚めのために必要な行為なのだと俺は思う。
目覚めろ、其の魂。
……アイナを救うために再誕を起こした時のオーヴァンもこんな気分だったのだろうか。
俺にはオーヴァンの真似事は出来ない。
けどオーヴァンの真似事をする必要は微塵もない。
俺は俺のやり方で、俺の大切なものを……救って、取り戻してみせる。
アイツにとっちゃ甘ちゃんの戯言に聞こえるだろうけどな……俺には俺のやり方しか出来ない。
だから……俺は俺のやり方でオーヴァンを……越えてみせる。


「……来た!」


小さな罅割れ。
やがて大きな亀裂となって四方八方に走る。
ガラガラと音を立てて、かつてスケィスだったモノが地面から突起する。
ゼフィが形成していた隔絶空間のデータを侵食し、現れ出でる、物言わぬ俺の戦友。
見慣れた姿とは随分と変わってしまっていたが、カールにデータドレインされて初期状態に戻されちまったスケィスに相違なかった。
スケィス。
第一相“死の恐怖”。
俺の元型(アーキタイプ)。
邪神の力を受け継ぐ者の一体。
石の巨人。
四肢はだらりと力無く項垂れている。その目に光は燈っていない。
いや……燈さなきゃいけねぇんだ、俺が!


「……ようやく、ここまで漕ぎ着けた」
「ゼフィ?」
「おじいちゃんは自分と向かい合う覚悟を決めた。だから応えてくれたのよ、もう一人のおじいちゃんも」
「……お前の言う通りだったな。俺は……受け入れるのが怖かったんだ」
「死の恐怖でもビビるのね」
「まーな」


あれだけ大声出した後だってのに、不思議と晴れ晴れとした爽快な気分だった。
自分じゃ気づけないもんなんだな……やっぱ。
誰かに言われて初めて気づくコトってのは、さ。
……んじゃ。


「やんなきゃなんねーコト……やらなきゃな?」


話し合いと行くか。
自分と。
さっさと精神リンクを修復してトライエッジの野郎をブッ倒さなきゃなんねーからな。
一応、喚ぶことは喚べたけど……まだ俺の心は満ちていない。まだ何かが足りねーんだ。
だから直接、アイツと話す。
俺と一緒に、戦ってくれ……って。
だろ、ゼフィ。


「ゼフィ」
「うん?」
「どうしてお前は……俺を助けようと思ったんだ?
 お前の身体を構成してるデータって楚良のなんだろ? なら、俺はお前の本当のじいちゃんじゃ……」
「ふふ。答えは単純(シンプル)」


俺とスケィスの間に佇立し、サフラン色の髪の少女は旻(そら)を仰ぎ、風に乗せて呟く。


「そろそろ――――ハッピーエンドが見たいだけよ」

と。                                                                                           【 TO BE CONTINUED... 】

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