「.hack//G.U.」と「コードギアス 反逆のルルーシュR2」と「LAS(LMS)」と「ゴッドイーター」と「仮面ライダーディケイド」の荒唐無稽恋愛活劇SSサイト(のつもり)。

『世の中は何色ですか。見えてますか。ぴったりですか。あまってますか。
 くすぐったいですか。かゆいですか。酸っぱいですか。痺れますか。
 あなたは大きいですか。かくばってますか。硬いですか。へにゃへにゃですか。
 急いでいますか。笑っていますか。好きですか。嫌いですか。 
 それはほんとうですか。リアルですか。フェイクですか。夢じゃありませんか。
 夢って何ですか。呪文を覚えていますか。』                        【横手美智子 「.hack//ZERO Vol.1 ファントム・ペイン」(2003年初版発行)あとがき より】

楚良と融合することで本来の自分、
即ち三崎亮を取り戻し、太陽の化身“R:Xthフォーム”へと変神を遂げたハセヲ。
涅槃寂静(ハイパークロックアップ)により《The World》内の時間を支配したハセヲは、直接カールの精神世界へ救済(ぐさい)に赴いた。
君の声聞いた気がして、失われた時間彷徨う。
存在さえ忘れられた、この想いは何処へ続くの?
ZEROへの回帰―――――――――――――――三崎亮と仁村潤香の7年に及ぶ因縁に終止符が打たれる時、迫る!









2016年―――――――――――――――――――


「あっ、あのっ、アタシ……」
「半端にウロウロするなら、何もせずにじっと見てなっ!」


胸元の大きく開いたコスが印象的な赤髪の双剣士(ツインソード)が、あたしの後ろで喚く。
ボロボロだった。
今にも泣きだしそうな表情(カオ)で、あたしを見つめている。
ついでに、イロイロとやかましい。
なので少しキツめに怒鳴り付けると、やがて、その子は大人しくなった。


「その女は俺達の獲物だぞ、邪魔すんじゃねェ!」
「お前ハンター、アルか? その真っ黒なドレス……もしかして“喪服の魔女”のカール?」
「おんやぁ? ……あたしを知ってるんだ?」


下衆の勘繰りに付き合う程、あたしも暇じゃない。
だがコイツらの言っていることは概ね正しかった。
このゲームでのあたしは、仁村潤香じゃあなく、《カール》だ。
つい先日ハンター登録のイベントを終えたばかり……PKKからハンターへ鞍変えしたばかり、の。
そして“喪服の魔女“、それがPKK時代の、あたしの通り名。


「そーいうアンタ達は、
 カオティックPKの“嘘憑き”ミク、それに“泥喰らい”ピロ2……違う?」
「違わないアルネ」
「俺達を狩りに来たのか? あん!?」
「別に。たまたま通りがかっただけ」


嘘偽りの無い事実だった。
何となくランダムでエリワワードの生成をしたら、ここに来てしまっただけ。
でなきゃ誰がこんな低レベルなエリアになんか来るもんか。
PK2人組に襲われてる子を遠目から見つけた時だって、本当はシカトしてプラットホームに戻るハズだったのだから。


「ま、たまたまついでだ。死んでよ」


PK自体、今の《The World》では珍しくない。
今やCC社公認だし。
あたし自身、7年、よくやっていたコトだ。
何も知らぬ初心者を甘言でエリアに誘い出し、手にした重斧で切り捨て御免。
ただ、手に持つ獲物が重斧から大鎌へ変わっただけ。
根本的に、あたしは何も変わってはいなかった。


「でも最初に言っておく。
 ……あたしは、かーなーり、強いよ?」
「イカレ女が……こーゆー奴、見てるとムカついてくるアルヨ!」
「結局やりあうんじゃねーか! たまたまついでで倒せると思ってんのかよ、俺達をよォ!?」


あたしが大鎌を顕現させると、すかさずミクとピロ2も各々の武器を持って身構えた。
殺意が高まっていく。
最初は、あたしの後ろで震えているコに向けられていたものが、今度は、あたしへと。
ディスプレイ越しに、その感情に身を委ねる2人のPKを見、あたしもまた自ずと臨戦態勢に入った。


「きみ」
「な、なに……?」
「……危ないから下がってな」


自分でも不思議だった。
いつものあたしなら、PKに襲われてる初心者のフォローなんてしない。
PKKをやっていた頃は、
PKを蹴散らすついでにPKに襲われていたPCまで“ついでに”殺してしまうコトが日常茶飯事だったし。
でも何故だか、紅い髪の双剣士の少女を気にかける余裕が、今のあたしにはあった。


「へっ、他人を気にしてる余裕―――――――――――――
―――――――――――――――――あるのアルかぁッ!?」


即座にPK達が動いた。
2人がかりなら、あたしに勝てると言う算段での攻撃か。
カオティックPKという称号をCC社から冠せられている以上、コイツらもPKの中ではかなりの手練(てだれ)なのだろうけど。
でも残念。
こっちはね、年季の入れ方が違うんだよ。


「……お馬鹿さん」


コイツらは、今あたしがM2Dを付けたまま嗤っているコトすら気づいていない。
恐怖から来るものじゃない。あたしには力がある。弱者を搾取する圧倒的な強者の力が。
それ故の愉悦から来る嗤いだった。
強き者には強き力。
強き者には強き心。
強き心、強き願い……2つが重なる時、


「かなり強いって、警告してやったのに」


あたしは無敵になる。


「ばっ……みゅんっ!」
「「!?」」


このゲームには骨(コツ)がある。
プレイヤースキルは元より、それ相応のレベルでなければPKやPKKと言ったアンモラルな行為を演じる(ロールする)のは難しい。
だから、あたしは骨を掴んだ。
殺意のコントロールを。どうすれば、より的確に相手を圧倒し、自身の強さを証明せしめるのか、を。
時間さえあれば誰にでも出来るコトだった……人外の魔物(ネットジャンキー)になるコトなんて、簡単だったんだ。


「振り向くな」


踏み込み、間合いを越え、あたしの刃が一閃となってPK達を捉えた。
すれ違いざま、あたしが再び地面を踏み鳴らした後には、自分に何が起きたのか理解出来ず、石像の様に固まった2人のPK。
いや……立っていた、か。


「あ……な……ッ!?」
「な、何が……?」


忠告を無視し連中が振り向いた時には、もう四肢がバラバラに斬り刻まれ、崩れ堕ちていた。
あたしの大鎌によって切断され躰から離れた腕や足が灰色表示となり、
塵が土に還る様にして、消える。
手足を失い、バランスを崩し、ミクとピロ2が地面に倒れ込み、短く唸った。
……だから言ったのに。「振り向くな」って。


「さて、ここでカールちゃんの質問タイム。制限時間は短いんで、慎重に答えてね♪」


やってて「コレ絶対あたしのキャラじゃない」と思いながら、
片輪となったPK2人に、あたしは極上の笑みを向けた。
あたしも滅多に使わない、笑顔の動作(モーション)だ。
いわゆるモーションコマンド、というヤツで、事前に登録しておけばボイスチャットの時なんかに、ある程度の意志表示が出来る。
ちなみに今まで、あたしは使ったことがない。
ずっとソロでプレイするあたしには、話相手と言えばPKしか居ない。
使うだけ無駄なのだ。
大抵……どいつもこいつも、質問前に死んじゃうから。


「……三爪痕(トライエッジ)って知ってる?」


前フリが嘘の様に、マジな声を発する。


「勇者カイトにソックリだって噂のPKなんだけど」


このカオティックPK達は運が良い。
なまじレベルが高めだったおかげで、あたしの攻撃を受けても“手足が斬り落とされるだけで”済んだ。
首まで斬り落としてしまったら会話自体が出来ない。
システム側が死亡(戦闘不能)と判断して、タウンに強制的に戻してしまう。
なので、あえて“首だけ残して”やった。


「アンタ達もさ、弱っちいけどPKの端くれでしょ、CC社公認の。
 三爪痕ってさぁ……聞いたことな〜い?」
「し、知らないアルヨっ!」
「てめえ、そんなBBSの怪談信じてやがるのか!?」
「そう、知らないんだ」


案の上だ。
最初(ハナ)っから期待もしていなかったけど。


「じゃ、バイバ〜イ」


馬鹿2人を、あたしは思い切り蹴飛ばしてやった。
くるぶしを隠す長い漆黒のスカートの下には、これまた漆黒の具足(グリーブ)を穿いている。
拳術士(グラップラー)程の威力は無いけど、瀕死のPK達のHPを削るには充分効果的。
漆黒と言うよりは群青色だけど。
絵具で最後まで持て余す、あの色だ。


「はぁっ!!!」


ドカン。
最後はメバククルズでフィニッシュ。
掌に収束した雷の粒子が球となって放たれ、轟音と共に着弾、ミクとピロ2の躰を焼き焦がした。
あたしの銀色の髪が爆風で大きく靡き、やがてパサリと音を立て、定位置に戻る。
“いつもの動作(モーション)”だった。


「……かなり強いって言ったろ?」


鎌闘士(フリッカー)のあたしでも、初級魔法なら全て使用可能だ。
金さえあれば魔法屋で本を買い、習得できる。
本来なら魔法を使って戦うのに不向きな職業(ジョブ)でも、
イベントなんかで入手できるステータスアップアイテムを使えば上昇しにくい魔力値を上げることだって容易だもん。
そういうの、すごく面倒だけど、あたしはやった。
だから鎌闘士なのに魔法が得意になった。
初級のものしか使えないけど、攻撃も回復も補助も、全部自分で出来る。
その全能さ故か――――あたしはPKKの頃から“魔女”、そう仇名されていた。


「……コレじゃ、どっちが弱い者イジメしてんのか分かんないな」


カオティックPK達を斬り捨てた大鎌を
円い刃を指でなぞる動作(モーション)と共に、あたしは小さく嗤う。
自嘲の嗤いだ。
あたしと連中のレベル差は明らかだった。
《The World》でプレイしている1200万のユーザーのうち“レベル100”を越えている者は、その5%にも満たないと言われる。
いわゆる廃人(ヘビー)プレイヤーってヤツだ。
時間と生活を、このゲームに捧げた、馬鹿の中の馬鹿。
……悲しいコトに、あたしも、その1人だけど。


「あの……さぁ……」


また三爪痕に関する情報は得られなかった。
蛇の道は蛇、PKを狩っていれば、そのうち三爪痕に辿り着けると思っていたけど、なかなか道は険しい。
もし三爪痕が勇者カイト本人なら……きっと楚良の行方を知っている。
奴が2011年以降、楚良と一緒にパーティを組んで活動していた、という話が本当なら。
楚良自身、当時はそこそこ名の知れたPKだってハナシだし……必ず、手がかりを掴めるはずなのだ。


「ねぇ、ちょっと……ねぇってば!」
「……なに?」


あたしの思考を、邪魔する声。
さっきまで後ろで震えてた、おっぱい大きめの双剣士の少女だった。


「あの、助けてくれて……アリガト」
「……きみ、初心者?」
「は、始めて、1週間くらい……だけど」
「……レベル低いくせに、パーティも組まずにソロ? 
 ……馬鹿? だからPKに目、つけられるの。分かる?」
「わ、分かる、よ……」


脆弱だ。
明らかに弱い。レベルは10にも満たない。
あたしのデコピン一発でも、この双剣士の少女は即、戦闘不能になってしまうだろう。


「初心者は初心者らしく、マク・アヌでパーティ組んでくれる奴、探してればいい」
「……アタシ、別にパーティとか組みたくない」
「(……へぇ)」


少し、虚を突かれたかも。
このテのレベルの低い初心者は十中八九、
まずマク・アヌのカオスゲート辺りやギルドショップ辺りをウロウロし、
自分と同じくらいのレベルのプレイヤーを誘って、レベルの低いエリアで地味〜にレベル上げ、ってのが常なのに。


「……殺すの?」
「は?」
「アタシも、アイツらみたく、殺すのかって聞いてるんだ!」
「……殺さないよ。やっぱ馬鹿?」


このコは、あたしを無差別殺人鬼か何かと勘違いしているのだろうか。
まー、実際それに近いコトは何度もやってるんだけども。


「あたし、ハンターだし。ハンターはカオティックPKを狩るのが仕事。そゆこと」
「……PKKじゃないの?」
「元、ね。
 ハンターのライセンスがあれば、いくら殺(キル)そうが文句言われないし。
 どゅーゆーあんだすたーん?」
「え、英語、苦手だから」
「……そういう“設定”?」
「違うよっ!」
「芸風としちゃ0点」


演技(ロール)じゃなく、素で“お馬鹿”な子なのか。
おっぱいのおっきな女は、昔から馬鹿って言うしね(あたしは違うけど)。


「ふーん。……きみ、揺光っていうの」
「! な、何で分かるのっ!?」
「……説明書、読んでないだろ」
「???」


コントローラーで対象プレイヤーをターゲットすれば、相手の名前が自動表示される。
そんなコトも知らずにプレイしてたのか。
……やっぱり馬鹿?
あたしの一番苦手で、なおかつ一番嫌いなタイプのプレイヤーだ。
こーいうコは、人の話を全く聞かない。
多分、リアルも女だろう。
コレは、あたしの女としての勘と言うか本能。
ま、ネカマでも別にいいけど。


「にしても」
「な、何だよ……?」
「……チビだねぇ」
「アンタがデカ過ぎるんだ!」
「おっぱいはデカめなのに(苦笑)」
「うるさぁ〜いっ!!」


あたしの身長は176僉
勿論、リアルではなく、このゲームの……カールの身長でのこと。
小学生の頃も、やっぱり、あたしはカールの名でプレイしていたけど、その時も身長は176僂世辰拭
女性型PCの身長設定ギリギリの範囲。
それに対して、この揺光という双剣士の身長は150僂△襪ないか……あたしとの身長差は、歴然。
まるで大人と子供だった。……どう見ても、あっちがガキだけど。


「きみ、リアルの身長もそんな感じ?」
「どーして初対面のアンタに、そんなコト教えなきゃいけないのさ!?」
「助け(ヘルプ)てやったじゃん」
「うっ……!」
「命の恩人に対して、そーいう振る舞いは……イックなぁ〜い」


と。
あたしがネチケについて説くのも、何だかすごくビミョーなんだけれども。


「……戻る!」
「何処に? 未来に? デロリアンは?」
「ルートタウンにだよっ!」
「そのボロボロの躰で?」
「そっ、それは……」
「その分だと、ロクに呪紋も覚えてないみたいだね。
 ……回復アイテムは?」
「……襲われた時、全部使った」
「ダメじゃん」


ダメダメだ。
この口調からして、勝気な性格なのだろう。
レベルに見合ったエリアを選択していないのが、いい証拠だった。
武器も防具もショボそうなのだし、パーティ組まずにソロのせいでレベルも低いとあっては、救いようがない。


「しょ〜がないにゃ〜。ついて来な」
「えっ?」
「ルートタウンまで送ってやるよ。“ついで”だし」
「……アンタ、変。さっきまで平気で他のプレイヤー、殺してたのに」
「あたしに求められてるのはケレンだし」


戦闘以外で笑顔の動作(モーション)をしてみせたのは、このコが初めてかもしれない。


「おいで。揺光」
「あ……」


あたしは揺光の手を取った。
実際に彼女の手に触れたワケじゃない。
ディスプレイの向こうの、あたしの分身たるカールにそういう動作をさせただけだ。
PK達に絶命寸前まで嬲られ、回復アイテムも尽きてボロボロの身なりとなった、双剣士の少女に、手を差し伸べただけ。


「ルートタウン、戻らないの?」
「……戻る」


そうして揺光も、あたしの手を握り返す動作を見せた。
ぎこちなく、笑顔の動作もやや遅れて。
律儀なコだ。


「ねぇ。メンバーアドレス、ちょうだい」
「えっ?」
「揺光のメンバーアドレス」
「ど、どうして? アタシ、初心者だよ……?」
――――――――――――――――あたしと、お友達になろーよ」


マイクを通して発せられたあたしの声は、あたし自身が驚くくらい、喜々としたものだった。                                         【 TO BE CONTINUED... 】

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