「.hack//G.U.」と「コードギアス 反逆のルルーシュR2」と「LAS(LMS)」と「ゴッドイーター」と「仮面ライダーディケイド」の荒唐無稽恋愛活劇SSサイト(のつもり)。

『悟空が居たから楽しかった。
 ドジで明るくて。
 優しくて。
 そんな悟空が、みんな大好きだったから。これで、ドラゴンボールのお話は、おしまい』
                                            
                                               【ドラゴンボールGT 最終回「さらば悟空…また逢う日まで」(1997年11月19日放送) より】

凡ての状況は帰結した。
AIDAによる全宇宙を巻き込んだ壮大かつ遠大なフォモール族復活計画は、ハセヲの活躍によって見事打ち砕かれたのだった。
楚良と融合(フュージョン)、太陽の子―――――――R:Xthフォームへと化身したハセヲ。
7年の時を経て“本当の三崎亮”を取り戻した現在(いま)、再び楚良とハセヲの2人に別れることはないだろう。
3日間におよぶ悪夢は、遂に終わったのだ。


「なんか……2年くらい闘ってた気ぃするな」
「ハセヲも? 実はあたしも」


ハセヲの隣に佇むカールが小さく哂う。
その姿は最早、楚良を取り戻すという妄執に取り憑かれB-stフォームと化し、心を黒く染め上げた獣ではない。
純白、そして無垢なる白。
かつてネットスラムを統べた闇(ダック)の女王を彷彿とさせるパールカラーのドレスを身に纏っていた。
カールもまた、7年前《The World》に置き去りにしていた自分を取り戻したのだ。
観世音菩薩(アヴァローキテーシュヴァラ)。
断末魔、AIDAがカールを、その名で呼んでいた真意は理解(わか)らない。
だが、しかし。
今のカールは、聖女を思わせる神々しさを合わせ持っていることだけは、確かだった。


「ハセヲ君!」
「ハセヲさ〜ん!」
「よぉ。おつかれさん」


天狼、揺光との試合を終えたカイトとなつめが駆け寄ってくる。
姿形が試合前と大分異なったハセヲを見て、なつめはかなり驚いているものの、その隣のカイトは凡てを理解しているようだった。
そう、凡ては、この瞬間の為に在った。
カイトの持つ腕輪と、八枚の碑文と癒着、更に三崎亮としての自分を取り戻したハセヲ。
完全なる2つの“黄昏を開く鍵(キー・オブ・ザ・トワイライト)”が揃った今こそ、
新たな世界、理想郷(アヴァロン)への扉が開き、摩訶不思議な冒険(アドベンチャー)が始まるのだから。


「カイト……このヤローが。
 ……最初から全部識ってて、俺のチームに入りやがっただろ?」
「あはは。まあね(苦笑)」
「すっかり騙されたぜ。ったく……やっぱヤな野郎だ、アンタ」
「ま、記憶を取り戻せたみたいでよかったじゃない」


笑顔を浮かべるカイトだったが、その身なりは天狼との闘いでボロボロだ。
彼のトレードマークたる紅い帽子も作務衣も、何百発という天狼の音速の拳によって穿たれ、所々に傷やほつれが見てとれる。
それ程の相手だったということだ。
無論、カイト自身のブランクが長かったこともある。まだ彼は“この世界に馴染めていない”のであろう。


『あの、えーっと……み、皆さん』
「あん?」


そんな時、審判席からジャッジマンの物入りが。
他の観客達も一体何が起きたのか、唖然としたまま、この状況に見入っていた。
だって、そうだろう。
試合中、突如としてハセヲがジョブエクステンドを果たし、
続いてカールも獣の様な邪悪な姿から一転、聖女を思わせる白く高貴な姿へとジョブエクステンドを果たした。
それだけではない。
根絶したと思われたAIDAが試合中に何千何万と集合、まるで巨大な1つの怨念の如き様相となってハセヲ達を襲い、
しかしハセヲとカールは眩い光を2人で放ったかと思うと、AIDAを完全に消滅させてしまったのである。
イベントの演出どころの騒ぎではなかったのだ。


『し、試合の方はどうなったのでしょうか……?
 い、一応、カイト選手と天狼選手の試合はカイト選手が勝利、なつめ選手と揺光選手の試合はドロー(引き分け)、
 残るハセヲ選手とカール選手の試合結果如何で延長か、もしくはハセヲチームの優勝が決まってしまうのですが……』
「あ、そーなんだ。じゃ、あたしの負けでいいよ」
『いいっ!? よ、よろしいのですか、カール選手っ!?』
「よろしいも何も、あたしが良いって言ってんだから、いーに決まってんじゃん。バカ?」




『こっ、ここで試合終了ォ―――――――――――――――――ッ!!!
 第1回《The World》トーナメント、決勝戦を制し、優勝を為し遂げたのはハセヲチームッ!!
 長い、本当に長い闘いだったと言う他はありませんッ、とにかく長かったァ―――――――――――――!!!』
『かっかっ。随分凝った演出もあったけどよ、結構面白かったじゃねェか』




観客席から湧き上がる歓声。
怒号と悲鳴も入り混じっての狂喜乱舞(揺光チームに賭けていた賭け師達の怒号・悲鳴であろう)。
闘争都市ルミナ・クロスのアリーナは今、そんなプレイヤー達の喜怒哀楽の感情に溢れ、満ち満ちていた。
これこそがハロルド・ヒューイックの求めていたモノ。
2000万から1200万へと数は減らしたものの、日本という土壌を選択した彼の得ようとしていた答えが、此処に、在る。


「んふふ」
「んだよ、カール。気味悪ぃ声で笑いやがって……」
「だって。コレでハセヲと正式にイチャイチャ出来るようになったし?」
「イチャイチャって……」


何十万人というプレイヤーが見ているエキシビジョンマッチ。
なのにカールは人目も憚らず、笑顔でハセヲの首に手を廻し、妖艶に微笑む。
白いドレスと共に聖女の清らかさをも纏っていたのは、つい先刻(さっき)までのこと。
やはり彼女の本質は仁村潤香であり、いつもの、ちょっと不思議な雰囲気を湛えた年上のお姉さん。
銀色の髪が靡き、香を炊いたような甘い匂いが至近距離からハセヲの鼻孔を擽ってくる。
ハセヲの胸に思い切りわざとらしく押しつけてくる大きな胸も、無論顕在だった。


「楚良……ううん、ハセヲ。大好き……」


大きめにエディットされたカールの胸が、ハセヲの腕にこれでもかと押し付けられる。
碑文の影響で触覚が発達しているせいで妙に感触が生々しく、ハセヲはいてもたってもいられない。


「ばっ、馬鹿っ! 見てる、皆が見てるだろーにっ!」
「見せつけちゃえば……いーじゃん、いーじゃん」


すげーじゃん……とは、さすがに行かない様で。


「くぉらぁぁぁあああああああああっ!!!」
「うぉっ!?」
「あぅん? 今いいトコなのに……」


ハセヲとカールの桃色空間を引き裂く、双剣による一撃。
そう、カールは肝心なコトを失念している。
ハセヲはエンゲージ(婚約)済み、つまり、既に彼には妻たるプレイヤーが存在しているというコトを。


「さっきから黙って見てれば……じゅ、潤香っ! ハセヲとくっ付き過ぎっ!!」
「あ、なんだ。智香ちゃん居たんだ? ちっこくって、あたし全然分かんなかったw」
「ハッ、ハセヲはアタシとエンゲージしたんだぞっ! だからアタシのなんだ!!」


揺光こと、倉本智香の乱入攻撃だった。
神速の反射でハセヲの首から手を離し、回避行動を取ると共に大鎌を顕現させる辺り、カールの勘は冴えている。
けれど揺光の動揺も無理は無い。
傍から見れば、ハセヲとカールが公衆の面前でイチャついているようにしか、見えなかったのだ。


「でもハセヲ、あたしのコト好きって言ってくれたもん。この場合、7年前からハセヲとの付き合いのある、あたし優先っしょ?」
「か、カンケーないよ、そんなの!」
「関係ありまくりだし。むしろ、あたしが本妻で智香は……愛人?」
「はぁっ!?」
「ってワケで、あたしがハセヲのお嫁さんになるから」
「み、認めるかぁ〜っ!! ア、アタシだって、ハセヲのお嫁さんになるって約束したしっ!?」
「はいはい。無効無効w」
「うがぁ〜っ!」
「おまえら……な、仲良くしろよ」


こうなると頭が痛いのがハセヲだった。
揺光……智香を好きなのは事実だし、7年越しで想いを通じ合わせたカール……潤香のことも好きなのだ。
ただ悲しいことに日本では一夫多妻の重婚が認められない以上、どちらか1人を選ぶしかない。
まさに文字通り、究極の選択である。


「ハセヲ……アタシ、言ったよね? 
 裏切ると怖いから、って……ハ、ハセヲはアタシを裏切らないよね? ハセヲ、アタシをお嫁さんにしてくれるって、あの時言ったよね?」
「いや、その……」
「ハセヲはあたしのことがずーっと好きだったんでしょ? でなきゃ命張ってまで、あたしを助けてくれないし?」
「それは……当たらずも遠からずと言うか……」


ビアンカと結婚するかフローラと結婚するか……。
どちらか一方を選ばなければならないドラクエ垢亮膺邑になった気分だった。


「DS版はデボラとも結婚できるよハセヲ君」
「アンタこの状況で(; 0M0)ナニイッテンダ!」


カイトの余裕ぶりが憎たらしくもある。
さすが英雄中の英雄、伝説の勇者として数々の女性プレイヤーと浮き名を流しただけのことはある。


「ハセヲ……アタシ、ちゃんとアンタのコト、幸せにするから……。
 ハ、ハセヲが欲しいだけ、赤ちゃん産むからっ!!」
「まぁ……俺も幸せにするって言った手前、嘘付きたくはねーんだけどな……」
「大学に行ったら、あたし、ハセヲの家のそばに住むから。はい決定。
 お泊りしに行っちゃおうかな……ふふふ」
「ちょっ、それ志乃とのメールでの俺のレスだから! ……嬉しいけど」


どちらかを選び、どちらかを切り捨てるなど、まだ17歳のハセヲには
いくら悩んでも到底答えを得ることの出来ない、それも死活問題に近い選択である。
どちらも断れば後が怖いし、かと言って揺光とカールの2人を見捨てるワケにもいかない。
揺光はハッキリした物言いと明るい性格が好ましくもあり、それでいて年頃の少女らしい可愛らしさを垣間見せる辺りが、ハセヲの心を捉えて離さない要因だ。
一方でカールはハセヲ好みの年上の女性、
好きな異性にはとことん尽くす健気さと包容力を兼ね備えた、ハセヲの理想の女性像とも言える存在。
而して、結論は。


「(……ダメだ。どっちもいい!!)」


優柔不断、ここに極まれり。


「「ハセヲ」」
「うっ……」
「「どっちを選ぶの!?」
「……ふ、2人一緒じゃ……駄目、か?」
「「駄目に決まってるでしょーがっ!!」」

















****************************















「ハセヲ君ったら……何やってるんだか」


巻き込まれては堪らないとばかりに、ハセヲ達から離れて状況を見守っていたカイト。
揺光とカール、2人の美少女に左右から両腕を引っ張られているハセヲを見ていると、
まるで自身の若い頃を見ているようで、何だか可笑しかった。


「懐かしいなぁ……。
 僕も昔【Ω激怒する 合わせ鏡の 聖女】で似たようなコトがあったっけ。
 ホント、年頃の女の子って面倒なんだもんなぁ……」


ブラックローズと寺島良子。彼女達は元気にやっているだろうか。
カイトの記憶が確かなら“リアルで会ったのは”もう1年以上前になる。
出来れば旅立ちの前に彼女らに会い“その後の経過”を聞きたかったのだが……。


『カイト―――――――――――――ッ!!!』
『カイトさ――――――――――――ん!!!』
「……えっ?」


鼓膜に響く、2つの懐かしい声。
少女から大人へ変わってしまっても決して忘れることのない声の持ち主2人が、アリーナの観客席に佇んでいた。


「ブラックローズ……良子さん……?」
「あーっ! 
 ブラックローズさーん! 良子さーん! 来てくださったんですねー!!!」


ヒョコっと。
カイトの隣からなつめが顔を覗かせ、観客席のブラックローズ達に大きく手を振った。


「……なつめ? どういうコト?」
「はい! こんなコトもあろうかと、
 なつめがブラックローズさん達にメールしておいたんです! ちゃんと来てくれましたー!!」
「そっか……」


思わぬサプライズに自然とカイトの顔も綻んでいた。
彼女達には“迷惑をかけてしまっていた”から……ずっと気になっていたのだ。


『カイト〜っ! 
 アンタちっとも連絡よこさないんだからっ! 両親説得するの、大変だったんだからねっ!?』
『お久しぶりです、カイトさん。
 母が、カイトさんによろしく、と。父は未だに認めてくれていないのですが……』
「あはは。2人とも元気そうで良かったよ。
 あ、2人じゃなくて……4人、かな? もう安定期なんだっけ」


カイトの意味深な言葉に思わず顔を見合わせ、顔を赤らめるブラックローズと良子の2人。
いったい4人とは何のコトなのか。
なつめがカイトにそう尋ねようと思った、まさに次の瞬間。
新たな来客が、アリーナに現れる。
天壌の調と淡い光と共に―――――――――――――――――――――女神が。


「あれは……」
「……Aura(アウラ)」


カールは直観する。
自我を亡くし、一度ネットの海へと還ったアウラの帰還。
それが新たな闘いの幕開けであることを――――――――――かつて女神の母だった少女は悟った。


「……かあさん」
「しばらく見ない間に随分育ったもんだ」
「かあさんも」
「まーね」


光臨するアウラ。
ハセヲ達の前に降り立つと、彼女は静かに口を開いた。
それに呼応し、カールの指先がアウラの頬に触れ、やがて、その銀色の髪をクシャリと撫でるのだった。


「(……こーして見ると、ホントそっくりだな)」


銀色の髪と白いドレス。
カールの胸で目を閉じ、幸せそうに微笑むアウラと、アウラ同様に目を閉じて、しっかりと彼女を抱きとめるカール。、
カールとアウラこそ、聖母子と呼ぶに相応しい。
何故だか、ハセヲはそんな気がした。


「……カイト」
「や。アウラ」


地面から数十センチ浮いたまま、方向を変えてカイトへ近づくアウラ。
以前アイナを介して《The World》に権化した時とは異なり、今度の彼女にはちゃんとした肉体が存在していた。
弥勒菩薩から釈迦如来へ。至高の悟り、自己犠牲をカイトによって学び、究極の存在へと涅槃を果たし、Auraへと変容した彼女。
そのアウラが、再びカイト達…….hackersの前へと現れたのだ。
……此処に、約束は果たされた。


「行きましょう……カイト」
「あれ? もうそんな時間なの?」 
「私の手を、取ってください」


自分の手を取るよう、アウラはカイトに言う。
するとカイトは躊躇することなく、アウラの手に自身の手を重ねるのだった。
誰にも悟られぬようアウラが仄かに顔を赤らめていたことは、カイトしか知らない。


「僕、ちょっと行って来るね!」


そう言うや否や、謎の少女の光臨で更に呆気に取られていた観客達の見守る中、
カイトは宙にその身を躍らせるのだった。


「待ちやがれ! カイト、アンタにはまだ聞きたいコトが沢山あんだよ!!」


楚良と融合(フュージョン)したことで2010〜11年の間に起きた件(くだん)の事件について
全容を理解したハセヲだったが、まだカイトが何を考えているかまでは理解出来ていなかった。
彼がこれからしようとすること、彼が何処から来て、何処へ行くのかも。
ハセヲは、凡てを識りたかった。


「やっと全部思い出せたってのに、
 このままじゃ―――――――――カ、カイト……アンタ……!?」
「しーっ。じゃあね、ハセヲ君」


口に人差し指を当て、カイトはハセヲの言葉を遮る。
自分よりも年上のはずなのに、不思議と彼だけ時間が止まり、6年前と……少年の頃のままの彼のような、そんな感じがした。


「あ。そうだ」


アウラの手を取り、さあ出発という刹那。
何かを思い出したように、カイトは徐に被っていた帽子を脱いだ。


「ブラックローズ!」






パシッ!






『え……。カイト……コレ……?』
「預かっといてよ。失くしちゃうと困るからさ」
『わ、わかったわよ。
 ……けど、ちゃんと後で……絶対、引き取りに来なさいよっ!?』
「はいはい(苦笑)」


カイトから渡された帽子を抱き締めるブラックローズ。
その隣で良子が羨ましそうに帽子を見つめている。


「良子さんも元気でね」
『はい。……ずっと、お帰りをお待ちしております』


ブラックローズと良子の満足げな様子を見届けると、


「いこっか。アウラ」
「はい……」


カイトはアウラの手を取ったまま、ルミナ・クロスを飛び立った。
瞬きする間もなく、本当にあっという間に。


「結局、何だったのかしら。キー・オブ・ザ・トワイライトって」
「キー・オブ・ザ・トワイライト……ですか。
 そう言えば、ダンジョンの奥深くでカイトさんと出会って、全てはそこから始まったのですね。
 あれから、どれ位経ったのかしら……長いお付き合いです」
「カイトと、そしてあの腕輪と出会ってから……本当にイロイロなコトがあったわね。
 思い返せば、どれもロクなコトじゃなかったけど」
「でもカイトさんの腕輪が無ければ、今のカイトさんや私達の成長や出会いも無かった。
 たった1つの腕輪から凡てが始まり、そして世界を守った……そう、思いませんか?」
「……かも、ね」


ルミナ・クロスの夜空の向こうに消えたカイトとアウラを、いつまでの2人は見守っていた――――――――――――――――



























「ねぇアウラ。僕、寄り道したいところがあるんだけど、いい?」
























*******************************












「やぁ」
「おいおい、カイトじゃんか。どうしたんだ、まだ理想郷(アヴァロン)に行く時間じゃないだろ」


カイトからの召集に応じ、バルムンクと共に来たる「理想郷(アヴァロン)争奪」に備えていた
フィアナの末裔の1人、蒼海のオルカ。
タルタルガに籠城しての交戦が、彼に課せられた任務だった。


「そう言わないでよ、ヤスヒコ。あ、タルタルガも元気?」
「はは。昔に戻ったみたいだな」


7年の歳月を経てネットスラムと化したタルタルガのコクピットに立ち、
夕暮れの空を見つめるカイトとオルカ。
そうなのだ。「.hack」の物語は、カイトがオルカを救おうと決意したところから、凡てが始まったのだ。


「思い出すなぁ。中学の頃、俺達いつも競争ばっかしてたんだよな。
 給食の五目チラシの早食いしたりしてよ……負けた方はエビフライ没収だった」
「ヤスヒコはズルばっかりしてたっけ(苦笑)」
「ははは! ホント、お前はすっかり中学ん時みたいだし、バルの奴も昔と変わらない……。
 何か俺だけ歳とっちまったようになって……すっかり変わっちまった」


二度と戻ることのない青春時代に思いを馳せているのか、オルカは感傷的だった。
目の前に何処までも広がる夕日が彼をセンチメンタルな感傷に浸らせているのだろう。
いつの間にか、カイトもオルカも……大人になってしまっていた。


「ね、ヤスヒコ。久々にひと勝負やってみない?」
「おいおい、よせよ今さら。かなう訳ないじゃないか」


唐突なカイトからの提案。
オルカが制止する間もないまま、カイトは2本の双剣を背中の鞘筒から引き抜くと、構えた。


「いいから。かかってこいって」
「変なヤツだなぁ……恥かかすなよ?」


カイトの余興に付き合うカタチでオルカも剣を構える。
やがてどちらともなく踏み出し、間合いを詰め、剣を交え始めた。


『(カイト、お主……)」』


この時。
カイトの身に起きた異変を、冥府の亀となったタルタルガだけが気づいていた。









バキッ!








「えっ?」


オルカの大振りな剣の一撃がカイトを薙ぎ払った。
意外なほど簡単にカイトを倒せたことに、思わず面食らうオルカ。
床に転がりつつ受け身を取り、上半身を起き上がらせ、カイトはそんなオルカを笑い、健闘を讃えた。


「はは、昔のままだ。ちっとも変わってないや、ヤスヒコ」
「そ、そうか? 実は今でも時々バルの奴に……あ、あれ?」


少しオルカが目を離した隙に、もうカイトの姿はタルタルガ内の何処にも無かった。

 
「……カイト? どこ行っちまったんだ!? おーいっ!!!」
『(カイト。ハロルドに伝えてくれ……キー・オブ・ザ・トワイライトを有難う……とな)』























****************************















「はぁっ!!!」


前人未到のロストグラウンドの何処かで、人知れず異形の怪物達と戦う男が1人。
騎士然とした風貌もさながら彼の背中の白い翼を一目見れば、かつては誰もが、その名を頭に思い浮かべていた。
フィアナの末裔の1人、蒼天のバルムンク。
かつてCC社に属する管理者として、2014年に起きた小さな事件を解決に導いた功労者。
だが今の彼は、もうCC社の幹部ではない。


「世界に仇為す魑魅魍魎ども……その命、女神に返すがいい」


一閃。
バルムンクの太刀に斬り捨てられ、深い谷底へと落ちていく異形の者達。
行先は奈落か。彼の前では、魔王バロールの生み出した無限の兵隊クビアレギオンすら、物の数ではないらしい。
―――――――――――と。


「やるなぁ。バルムンク」
「カ、カイト!? お前、どうして此処に!?」


作戦の予定には無いカイトのロストグラウンド来訪。
いや、それ以前に。バルムンクは、全くカイトの気配を感じなかった。
ただでさえ戦闘の最中、感覚が普段以上に研ぎ澄まされた修羅場にも関わらず、だ。
しかし。
カイトはそんなバルムンクの動揺を気にすることもなく、彼の眼前へと手を差し出すのだった。


「な、何だ?」
「いいから。握手しよう、バルムンク」


不思議に思いながら、カイトの申し出を受け、手を差し出すバルムンク。
すると握手の瞬間、カイトのグラフィックがザザッと音を立て、ブレた。
バルムンクの腕にも小さな電流のようなものが流れ、今、カイトの身に何か尋常でないコトが起きているのを、感じずにはいられなかった。


「カイト、お前……!」
「君には世話になりっぱなしで、借りを返せなくてごめんね。バルムンク、君の事は一生忘れないよ」


握手を終え、カイトは笑った。
そして謝罪すると、バルムンクの横を通り過ぎ――――――――――――――


「カイト!」


バルムンクが振り向くと、もうカイトの姿はそこになかった。





























**************************








再びルミナ・クロスのアリーナ。
ハセヲチームの優勝と、揺光チームの健闘を讃える万雷の拍手の雨が降っていた。
無論、これまでの長い戦いを見守ってきたクーンとアトリも例外ではない。


「クーンさん……。アウラさん、本当に居なくなっちゃったんでしょうか……?」
「アトリちゃん……多分、俺達は試されてるんだと思う。
 これからはアウラに頼らずに俺達の力で、この世界を……この《The World》を良くしていくんだ。
 それを認めてくれた時、またきっと必ず……アウラは現れてくれるんじゃないかな」
「そっか……そうですよね!」


彼らも感じていた。碑文が世界に還されたことに。
もう自分達は碑文使いではないこと、もう憑神を喚ぶことが出来なくなってしまったことを。
胸にポッカリと空いた喪失感が……碑文が世界へと還ったことを、克明に告げていた。
鍵は、扉を開くことも閉じることも出来る。
クーン達の物語もまた、終わった。しかし、それは始まりでもある。
彼らが、この《The World》で過ごした思い出は、決して消えることはない。
思い出は――――――――――――――――――――――――未来の自分への手紙なのだから。


「さて。メンドクセーけど……表彰式、出るか?」
「ハ、ハセヲさん……ボ、ボロボロじゃないですかっ!?」
「愛が痛いぜ……」


結局、話し合いの結果。
揺光とカールの2人がローテーションを組み、交互にハセヲと付き合うことになったらしい。
最初にハセヲとエンゲージしていた揺光はかなり渋ったが、結局は潤香が親友ということもあり、折れたとのこと。


「言っとくけど、潤香に亮は渡さないから」
「はいはい。智香ちゃんは口だけは達者ですねぇ」
「だから……。ケンカすんなよ、おまえら……」


前代未聞の二股生活、スタートである。
友人から一転、恋のライバルと化してしまった2人は互いに牽制し合いながら、控え室へと戻って行った。
そんな揺光とカールの背中を、期待と不安の入り混じった複雑かつ微妙な表情を浮かべて見送るハセヲ。


「……俺達も行くか」
「あ、ハセヲさん、待ってくださいよぉ! ……えっ?」


ふと、なつめはステージに落ちていた、ある物に目を止める。
それは彼女もよく見知った、彼のもの。
カイトの、ボロボロになった紅い作務衣だった。


「な、何で? だって、確かに今、カイトさんはアウラさんと一緒に……」
「……その服、後でブラックローズに渡してやれ」
「えっ?」


ハセヲはそれだけ言い残し、控え室へと戻って行った。




「カイトさん……?」




カイトの作務衣を抱き締めながら
明けることのないルミナ・クロスの夜空を、なつめは見上げるのだった。
















***************************




















黄昏の空を飛翔する女神。
その女神に胸に抱かれ、カイトは目を閉じ、幼子のように夢現の最中(さなか)にあった。
柔らかなアウラの身体は最上級の眠り心地をカイトに与えてくれる。
彼女の指がカイトの碧色の髪を撫でる度、彼はくすぐったさで身をよじり、彼女がまだヒトの心を捨てていないコトを実感させる。


「あったかいなぁ……アウラは」


頬をアウラの胸に擦り寄せ、心地良さそうにカイトが呟く。
アウラもカイトを優しく抱き寄せ、身を任せてくる彼を慈愛の笑みを浮かべながら受け止めている。
至福の時間。
だが、カイトの目が開くことはもうない。
順を追って彼の身体にある異変が起こり始めた。
カイトの頬に刻まれた勇者の証たる紋様(ウェイブ)が薄らと消え始めたかと思うと、
山吹色に染まっていたカイトのズボンの色が、初めに《The World》に登録した時と同じ、碧色へと戻っていく。
やがて彼の右腕が一際大きな光を放ち、薄明の腕輪も夕日の空に砕けて消えた。


「カイト……?」


そして。
何処からともなく飛んできた、碑文使いPC達の躰に内包されていた八つの碑文(モルガナ因子)。
カイトとアウラの周りをクルクルと舞いながら、1つ、また1つ。
カイトの躰に吸収されていくのだった。


「……おつかれさま、でした」


最後に。
第一相スケィスの碑文がカイトの頬に吸いこまれると。
凡てが、黄昏の空の中へと還って往った。
もうアウラの姿も、カイトの姿も、《The World》の何処にも無く。
ようやく、あの夏の日。
不思議な運命の糸に手繰られ出会った、少年と少女……小さな勇者と小さな女神の物語に―――――――――――――――――――――幕が下りた。



































































カイトが居たから楽しかった。



















































カイト:相田さやか

アウラ:坂本真綾

ブラックローズ:浅野真澄

寺島良子:名塚佳織

バルムンク:檜山修之

オルカ:増谷康紀

ミストラル:榎本温子

ミア:高山みなみ

エルク:斉賀みつき

ぴろし:小野坂昌也

なつめ:坂本真綾

ガルデニア:冬馬由美

砂嵐三十郎:増谷康紀

マーロー:檜山修之

レイチェル:久川綾

月長石:増谷康紀

ワイズマン:山崎たくみ

カズ:斉賀みつき

ジーク:櫻井孝宏

ヘルバ:冬馬由美

リョース:西村知道

ハロルド:山崎たくみ

タルタルガ:西村知道

水無瀬舞:小林沙苗

香住智成:櫻井孝宏

牧野雅也:保志総一郎

徳岡純一郎:江原正士

相原有紀:千葉紗子

遠野京子:久川綾

佐藤一郎:関俊彦


















































ドジで明るくて。



















































司:斉賀みつき

昴:名塚佳織

ミミル:豊口めぐみ

ベア:中多和宏

BT:平松晶子

クリム:三木眞一郎

楚良:家中宏

銀漢:千葉一伸

A-20:榎本温子

モルガナ:(田中理恵)

シューゴ:皆川純子

レナ:中原麻衣

ミレイユ:松岡由貴

鳳花:甲斐田ゆき

ほたる:川澄綾子

レキ:保志総一郎

神威:玉川紗己子

マギ:白倉麻子

コミヤン3世:菊池正美

モルティ:坂本真綾

美智:浅野真澄

克幸:山本泰輔

隼人:仲西環

大輔:川田紳司



















































優しくて。


















































ハセヲ:櫻井孝宏

揺光:浅野真澄

カール:三宅華也

アトリ:川澄綾子

クーン:三木眞一郎

エンデュランス:斉賀みつき

朔望:豊口めぐみ

パイ:小林沙苗

八咫:山崎たくみ

オーヴァン:東地宏樹

アイナ(AINA):榎本温子

シラバス:阪口大助

ガスパー:矢島晶子

アウラ:坂本真綾

葬炎のカイト:相田さやか

葬海のオルカ:増谷康紀

葬天のバルムンク:檜山修之

がび:石井康嗣

ボルドー:平松晶子

ネギ丸:岩田光央

グリン:宝亀克寿

Iyoten:浪川大輔

アスタ:本名陽子

欅:木村亜希子

楓:大原さやか

榊:小西克幸

楢:山崎たくみ

柊:松野太紀

槐:桑島法子

松:家中宏

太白:中多和宏

天狼:千葉一伸

大火:辻親八

ぴろし3:小野坂昌也

なつめ:坂本真綾

セルバンテス:岩田光央

ジニーファイブ:青山桐子

ミッチェル:神谷浩史

ゴーリキ:小野坂昌也

番匠屋淳:宗矢樹頼

天城丈太郎:内田夕夜

サルバドル愛原:江原正士

田島ミチル:榎本温子

菅井太一郎:西村知道

川口修:青山桐子

鵜池トオル:皆川純子


















































そんなカイトが、みんな大好きだったから。


















































タビー:豊口めぐみ

志乃:名塚佳織

匂坂:置鮎龍太郎

Bセット:榎本温子

ゴード:家中宏

直毘:山崎たくみ

エンダー:小林沙苗

俵屋(藤太):三宅健太

三郎:伊東静

ピロキオ:松田祐貴

イータ:陶山章央

オチ:金丸淳一

フィロ:滝口順平

なすび:千葉一伸

清作:置鮎龍太郎

英世:菅沼久義

ウール:川澄綾子

カシミア:斉賀みつき

碧:雪野五月

フリューゲル:杉田智一

チェロ:釘宮理恵


















































これで、.hackのお話は、おしまい。















































































長い間ご愛読ありがとうございました!

カイト君とハセヲ君、そしてカールちゃんを

いつまでも忘れないでね!


































































次。


















































「っていう感じの最終回はどうかな、ハセヲ君?」
「つーか……何でアンタが主人公みたくなってんだよ……。俺が主人公だぞ……」                                                        【 Bad End 】

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