「.hack//G.U.」と「コードギアス 反逆のルルーシュR2」と「LAS(LMS)」と「ゴッドイーター」と「仮面ライダーディケイド」の荒唐無稽恋愛活劇SSサイト(のつもり)。

『勇者とは勇気ある者ッ!! 
 そして勇気とは打算なきものっ!!
 相手の強さによって出したり引っ込めたりするのは本当の勇気じゃあないッ!!!』
                                                       【ダイの大冒険(TVアニメ版) 第16話「ふるい起こせポップ! ひとかけらの勇気を!!」より】




『て、天狼選手とカイト選手、互いに睨み合ったまま、こう着状態が続いております!
 い、一体いつまで続くのでしょうかッ!?』
『ゾクゾクすらぁ……。
 互いが必殺の一撃を出し合う瞬間の、この“空気”……!』



「(……この一撃で決めるッ!)」
「(……来るッ!)」


まず最初に、再確認しておかなければならないことがある。
それはカイトがプログラムの天才でもなければ、重度のネトゲ信者でもない、普通の青年であるということ。
2010年、14歳にして初めて《The World》に触れ、年内にクビアを撃破し、
アウラを再誕させ、未帰還者をリアルに復帰させ、伝説のパーティ・ドットハッカーズのリーダーとして勇者と呼ばれるようになった彼だが、
決して非凡なる才能の持ち主であった、というワケでは、ない!
ひとえにバルムンクやワイズマンと言った、優秀なプレイヤーらが彼を支えたからこその偉業。
彼がカイトとして《The World》に登録したのは2010年の夏であった。
2010年12月24日にクビアを消滅させたことを視野に入れると、
彼は半年もしないうちに世界に完全順応した計算となるものの、彼の活躍は“月の裏”でのミア救出劇以降不明。
一部では2011年初頭、既に解約し、ゲームから去ったとされている。
2015年に天城丈太郎がカイトにRA計画への助力を求めているが、彼はそれを断っていた。
もう自分は《The World》に必要ないと思ったから。
大丈夫、もう《The World》に勇者はいなくてもいい。
だが、世界は再び彼を欲した。
また、彼の勇気が必要になったのだ。
あれから7年の歳月が流れ、彼は21歳になっていた。
照れる様に「もう勇者って歳でもないから」と笑っていたのを、覚えているだろうか。
だが、それはカイトの誤解である。
勇者とは、勇気ある者。
皆の心に勇気と希望を与える存在、それが勇者。
まだ世界は彼の勇気を必要としている。蒼い炎は勇者の証……友との絆の色。
勇者最大の武器は勇気と希望、そして友情!


「(僕は最初、天狼との勝負はどうでもいいと思っていた。
  今夜ハセヲ君がキー・オブ・ザ・トワイライトとして覚醒して
  アヴァロンへの扉が開けば、僕自身は勝っても負けてもどうでもいいと……)」
「(片方の剣を捨てた……ッ!?)」

  

『こ、これはどうしたことでありましょうか!?
 カイト選手、双剣のうちの1本を捨て、残った1本の剣を逆手で右手に持ちつつ、
 上半身を時計回りに捻って……こ、この独特のポーズはまさかッ!?
 かつて、全国の少年達がリコーダーやホウキで真似をしたと言われる、
 伝説のオーヴァン流盗撮法……もとい、アバン流刀殺法・最高奥義ッ、アバッ、アバンストラッ――――――――――――――――もががっ!?』
『試合に集中できねぇだろうが! 
 にしてもあの野郎、何つぅ後光(オーラ)だ……底なしか……!?』 



恐らくあと0.5秒足らずで、間合いに踏み込んだ天狼の拳が飛んでくるだろう。
それも今しがたカイトの頬を掠った数十倍の威力を持った剛拳が。
残念ながらスピードは完全に天狼の方が上。
更には近距離の格闘戦もやや天狼が有利。
カイトに残された選択肢のうち、勝利を得るためのものは限られている。
それでなくとも昨夜、来たる深淵(アビス)の軍勢との戦いに備え、コシュタ・バウア古戦場上空に浮かぶ闘竜マグメルドを従えるため、
彼(か)の竜と戦った影響が尾を引いているようだ。
絶好調を100とすれば、今のカイトは60〜50……いや、下手をすれば40未満の可能性もある。
ブランク期間が長かった影響と《R:2》に移行してのシステム変更など、彼に課せられた枷は多い。
だがそれでも尚、彼をこうやって突き動かす信念。
理想郷を、目指す。
《The World》の新たな可能性が待っているかもしれないロストグラウンド……エマとハロルドの、アウラへの最後の遺産。
そのアヴァロンに辿り着くまでは――――――――――――――――


「(退かない……!)」


既にカイトの間合いへの踏み込みを開始していた天狼にも理解(わか)った。
眼前の少年の瞳に宿った、力強い輝き! 
彼は勝利への執念に燃えている。 
天狼も同時に自身の拳の闘気の鋭さを増し、征く。
……勝つために。
互いに攻撃態勢に入り、あとコンマ数秒で決着が着こうとしている中、
カイトと天狼の体感時間は非常にゆっくりとしたスローモーションのようなものであった。
交通事故などにあった際、動作や時間を極めて遅く感じることがあると言う。
それは脳の処理による誤差である。
それでなくとも天狼は昨夜の準決勝にて0.5秒先の未来を予測する太白に痛烈な一撃を見舞った実力の持ち主。
それに対抗するためカイトも自らの一挙一動を0.5秒以内に限定、
それでもなおここまで対等に戦えるのは賞賛もの。
勇者の称号に全く固執しないカイトと、宮皇の座に執着したがためにAIDAへの感染を許してしまった天狼。
両者が戦うのは勇者としてとか元宮皇としてではなく、漢の意地のぶつかり合い。
性欲にも勝る原始の闘争本能! 
故に。
男は女以上に強い者に惹かれる……ただそれだけのこと。


「八咫……(大地を斬り――――)。
 オルカ……(海を斬り―――――)。
 バルムンク……(空を斬り――――――)。
 みんなの力……今だけ僕に!!!(そして、全てを斬る――――――!)」


カイトの蒼炎(オーラ)が剣に蓄積されてゆく。
その間0.1秒未満と言ったところか。
一般的なプレイヤーがスキルアーツを発動させるよりも遥かに早く、発動!
だがそれでも尚、まだ攻撃を仕掛ける時ではない。
アリーナに集った観客達にとってカイトの実力は全くの未知数。
しかしながら彼も勇者と言う名の想像を遥かに越えた――――――――――怪物。
7年前に怪物・クビアを倒した時より。
深淵を覗いた彼もまた、怪物の仲間入りを果たしていたのだ。


『怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ。
 おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ』


ドイツの哲学者フリードリッヒ・ニーチェ著「善悪の彼岸」の一節。
カイトの敵は大悪神バロール率いる深淵(アビス)の軍勢。
どちらも人智を超越した至高の存在であるが故、相容れること、無し!
今回の理想郷(アヴァロン)争奪は言わば、カイトとバロールの私闘。
アウラを守護する者と、アウラを越えようとする者。
そのどちらも自らが正義であることを信念とし、行動している。
まだ目的の達成はされておらず、その過程での妥協は遠からず敗北を意味する。
故にカイトは自身を律し、この決勝で負けることを……良しとしないのだ。
アウラが見ている前で……彼女の期待を裏切りたくはない。
それもある。
けれどこの大観衆の声援を聞いて初めて実感できたことがあった。
自分は「勇者」。
皆に希望と勇気を与える存在。
どれだけのことが自分に出来るかはカイト自身にも分からない。
だが……一度始めた以上、途中で放棄はしたくなかった。
彼もまたオーヴァン同様に物語の編纂に情熱を燃やす人間の1人だったから。
彼を非難する人間も当然のことながらいるだろう。目障りだと思っているはずだ。
それでもいい。
文句は終わった後に、幾らでも聞いてやる。
今は……この試合に勝利することだけに集中したい。
天狼が間合いに踏み込むまで、あともう少し。
常人からすれば瞬(まばた)きした瞬間に決着がつくであろう刹那の刻。
己の体感時間を極限にまで凝縮したカイトにとっては気の遠くなる程の思考時間。
必殺の一撃を天狼に叩き込まんとする絶妙のタイミングがやって来るまで、ただひたすらに。
大地を斬り、海を斬り、空を斬り、そして全てを斬る……その瞬間が、今!






























三 爪 炎 痕 !!!




























直後ッ。
閃光。静寂。
あれだけ騒がしかったアリーナが、僅かな時間だが静まり返った。
攻撃を仕掛けた天狼と迎撃したカイト。
両者はいつの間にか、コンマ数秒前まで立っていた場所から姿を消し、全く別の場所に瞬間移動したかのように佇んでいる。
カイトは剣を振り切り、天狼は拳を突き出したまま、まるでそのまますれ違ったかのように微動だにしない。
このたった1秒にも満たない静寂の何と不気味なこと。
観客達は唖然。もはや勝敗の行方さえ、気にするのを忘れていた。
何か、自分達はとんでもないものを見てしまったのではないかという
心を根元からグサリと突き刺すような恐怖すら感じる不思議。
やがて……カイトと天狼、両者がすれ違って1〜2秒経っただろうか。
観客らにとっても、とてつもなく長い時間に思えたそれは、まるでゼンマイを巻かれた時計の針が回り始めるが如く――――――


「……見事だ」


天狼の一声によって、破られた。                                                                           【 TO BE CONTINUED... 】

戻る】【最終話

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

管理人/副管理人のみ編集できます