.hack//JOJO ハセヲの奇妙な冒険 - トーナメント編 第32話
トーナメント編も3日目に突入。
これをスレに投下した時点で既に季節は秋になろうとしていたが……トーナメント編が始まったのって春じゃ……。
が、まだ3日目が開始されても全体の半分に差し掛かったくらいで実は3日目が一番長いというオチ。
確かにスレ住人から「いつまでやってんのこれ」「ちょっと場所を間違えていると思う」「まとめないと最初から見てる人以外ついてけないし」と苦情が来るのも頷ける。
俺が逆の立場でも間違いなく「なげーよ!」とツッこんでた。そもそもSS(ショートストーリー)なのにロングストーリーな時点で矛盾しているッ……!

トーナメント3日目、決勝戦開始の十数時間前―――――――――――


「よぉ」
「やぁ。来てくれたんだ?」
「まさか……アンタから呼び出されるとは思わなかったけどな」
「あはは。来てくれて嬉しいよ、ハセラ君」
「……ハセヲだ」


よぉ、俺だ。
トーナメントもいよいよ3日目になっちまった。
今日は夕方くらいまでゆっくり過ごして
晩飯食ってからログインしようとしてた矢先に……コイツからメール貰っちまうとは……。
昨夜、ぶっちぎりの強さでIyotenとアスタを瞬殺した“勇者サマ”にな。
まぁ、まだ決勝始まるまでかなり時間あるから来てやったワケだが……
Δ 隠されし 禁断の 聖域……グリーマ・レーヴ大聖堂に、な。


「で、何か用か? 今夜の決勝の打ち合わせとか?」
「んー。ただ個人的にハヤタ君と話がしてみたいかな、って思ったから」
「(なら名前間違えんなよ……いつから科特隊の隊員になったんだ俺……)」


コイツは……。
なつめと同じくらいにどっかズレてる気がする……。
昨夜の試合を間近で見てなきゃ、未だにコイツが勇者ってのが信じられねー。


「知ってる? ここには昔、少女の像があったんだよ」
「アウラだろ」
「あぁ、そっか。ハセヲ君はもう会ってるんだっけ」
「まーな」


アイナを寄り代に憑依したアウラ。
俺と八咫の前で《The World》に危機が迫っていると告げた女神。
あの時、トライエッジだと思い込んでた蒼炎のカイトから
双剣“虚空の双牙”をもらったんだっけか……コイツ、ホントに本物の勇者なのか、やっぱ疑わしいトコあるよな……。
最近、あっちの方のカイトの野郎も姿見せねぇし(再誕の影響でAIDAが完全に死滅したんだから、駆除すつ必要なくなって、いなくて当然っちゃ当然だが)。


「……ってゆーか。一つ聞きたいことがあるんだが」
「ん? どうしたの改まって」
「隠さずに答えてくれ……本当はテメェがトライエッジなんじゃないのか?




ブーッ ガクガクブルブル よたよた ドンガラガッシャーン




「や、やややや、やだなあぁ、ハセヲ君っっ。そそそそ、そんなコトあるワケがないじゃかいかっっっ!!」
「(わざとらしすぎてどっちなのかわかんねェ……)」


ダメだ、やっぱコイツ苦手だ……。
なつめはこんな奴の何処に惚れたんだ?
まー本人にしか分かねぇコイツの魅力とかがあるんだろうけどさ……。


「そう言えば……なつめから聞いたんだけどさ。
 ハセヲ君は“真・ドットハッカーズ”を名乗ってるらしいね?」
「(うげぇ。あの女、余計なことを……)」
「名乗るのは別に構わないんだよ、うん。
 でも“ドットハッカーズ”の名前の重みって言うか、重圧って言うのかな?
 ハセヲ君達がその名前を背負う覚悟があるのかどうか、知りたいとか思ったり思わなかったり?」
「ハ、ハハハ……」


くそ、なつめとのメールであんなコト書かなきゃよかったぜ……。
顔は笑ってるけど声は笑ってねェ……。


「無理を通して道理を蹴っ飛ばす……それがドットハッカーズ。
 7年前、僕達は世界に挑んだ。
 腕輪の反存在であるクビア、第八相のコルベニクとの戦い……みんな、必死で戦ったよ」
「俺達だって……戦ったさ」
「仲間が居てくれたから、僕は最後まで戦えた。
 みんなと過ごした時間を無駄にしたくなかったし……助けなきゃいけない奴も、居たから」
「……」


アンタも……俺と同じ、か。
いや、違うな。
俺がコイツと同じなんだ。
7年前、カイトがそうした様に……俺も、志乃を、智香を世界から取り戻すために戦った。
だけどアンタは、迷うことなく戦い続けることが出来たのか?
誰かから馬鹿にされたり、蔑まれたりして、迷ったりしなかったのか?
挫折したり、後悔しなかったのか? 精神(こころ)が折れなかったのか?


「ハセヲ君には、一緒に戦ってくれたことを誇れる仲間が居る?」
「……あぁ」


どいつもこいつもお節介な奴ばかりだけどな。
最初はただウザいって思うだけで、ちょっと利用したら
すぐにオサラバしようと思ってた……なのに、いつの間にかギルドマスターにされるわ、
碑文使いにさせられるわ……気がつきゃ、アイツらが居ねぇ《THe World》なんて……想像できなくなっちまって……。
アイツらが居てくれて、良かったって……そんな風に思い始めてたんだ。


「なぁ……アンタは、何のために戦ったんだ?」
「夢だったんだよ。
 こうやって、色んな人達と《The World》を楽しむのが。ハセヲ君は?」
「俺も……似たようなもん、だよ」


時間は夢を裏切らない。夢も時間を裏切ってはならない。
誰の言葉だっけか……。


「にしても……何でココなんだ?」
「ん?」
「俺がいつもここ来てるなんて……なつめにも言ってねぇってのに」
「ここは僕にとっても……色々あった場所だから……かな?」


始まりは、いつもこの場所から……Δ 隠されし 禁断の 聖域、グリーマ・レーヴ大聖堂。
司がガーディアンを自由に操れることをベアに報告した場所。
楚良とBTが異界への扉を開いた場所。
司達がモルガナの放ったガーディアンと戦った場所。
カールが楚良と出会い、アウラを守ると決意した場所。
ブラックローズの弟、カズが未帰還者になった場所。
カイトがバルムンクと出会い、初めてデータドレインをウイルスバグに対して発動させた場所。
志乃がAIDAに感染したオーヴァンにPKされ、未帰還者となった場所。
ハセヲが蒼炎のカイトと戦い(延長線上に居たオーヴァンをDDするための巻き添えとなって)、レベル1に戻された場所。
アイナを寄り代にネットの海から帰還したアウラが、ハセヲ達に世界の真実を告げた場所。


「グリーマ・レーヴ大聖堂……ここから見る夕焼けが、僕は一番好きだな。ハセヲ君はどう?」
「まぁ……嫌いじゃねーけど」


但し、良い思い出よりも悪い思い出の方が圧倒的に多いがな。
けど……なーんか、ココは嫌いになれねぇんだ。
……何でだろうな? 
俺が“楚良だった頃”、よくここに来てたってことか?


「このゲームが《R:2》にバージョンアップしても、1つだけ変わらないことがある」
「? 何だよ」
「僕達の“常識”は……このゲームには通用しない、ってコト」


……確かにな。
ダメージ喰らったらリアルでも痛み感じるとか……普通じゃねーよ。
PKされたらそのまま意識不明になっちまったり……。
でももう、その原因だったAIDAはもう居ねぇ。
オーヴァンがあの時起こした再誕でキレイさっぱり消えちまったんだ。
……消えちまった、はずなんだ。


「アンタ、勇者なんだろ? 知り尽くしてんじゃないのか、この世界を」
「僕にだって……分からないことぐらい……ある、さ……」
「へぇ」
「要するに僕が何を言いたいかって言うとね、“常識を疑え”ってコトだよ」
「常識? ……例えば?」
「例えば……平野綾を主人公の声優として出演させておけば
 フィギュアを始めとするグッズ関連とDVD初回版の売り上げ週間1位は確実、
 京アニ製作のアニメはどれもヒットして当然……そんなくだらない常識は信じちゃいけない、そう言うコトさ」
「何気にアニメ業界批判!?」


と、とりあえずアンタが京アニ信者ってことは理解できた気がする……。
いや、この場合はアンチか? 
分からん!


「あ、そうそう。忘れるところだった」
「あん?」
「コレ。ずっと借りっぱなしでゴメン」










【『楚良の双剣』をプレゼントされました】









「! おい、これって……!?」
「僕のPCデータ、所持アイテムもプロテクト対象だったみたいでさ。
 1年前の火事も平気だったみたい。
 アイテム欄を見てたら7年前、ハセヲ君にコレを借りたの思い出して……だから返すよ」


それは……今じゃ珍しい腕に仕込むタイプの双剣だった。
初めて見る武器のはずなのに……初めてじゃない気がする……どうして?
俺がコイツに貸した? 
7年前? 
それは俺じゃない、てか武器の名前からしてまんまだろ、おい……!


「あの時、放浪AIだった君は……僕の腕輪を欲しがってたね? 
 どう? 今でも欲しい?」
「(コイツ……コイツも、楚良のこと、知ってるってのか……!? 
  そうだ、コイツ初めて会った時だって俺に『久しぶり』って……!)」


カール以外にも、俺が忘れちまった昔の俺……
楚良を、知っている奴が……居る!


「アンタ……俺の何を、知っている?」
「それは……」
「それは……?」
「禁則事項♪」
「……殴っていいか?」
「待つんだハセヲ君。暴力はイックナーイ(笑)」
「やっぱ知ってんじゃねーか!!!」


今の「イックナーイ」っての、楚良の口癖だろーが(カールもよく使ってるが)!
コ、コイツ、俺を何だと思ってやがるんだ……?
おちょくるために大聖堂まで呼んだんじゃねぇだろうな!?
これだから「ハルヒやらき☆すた厨にはロクなのが居ねぇ」って、放送から10年経った今でも言われんだよ……。


「って言うよりもね、僕が話してもダメだと思うんだ」
「……どーいうこった」
「ハセヲ君自身が真実に気づかないと、意味がないんじゃない?」
「……!」


俺自身が……?


「気づかない? この場所には……色んな思い出が詰まってることに」
「大聖堂に、か……?」
「ここに眠る真実の行方……こんなにも傍にいるのに……」
「……テメェには視えてるんだな? 俺の中の楚良が!」
「『腕輪。それ、イケナイPCの証拠。うっらやっましー』
 ……7年前、ハセヲ君が僕に言った通りだよ。
 僕は腕輪を通して他の人達が視えないものも視ることができる……世界の総て、とはいかないけど」
「邪気眼か」
「中二病患者じゃないってば(苦笑)」


俺には楚良が視えねぇ。
声しか聞こえねぇってのにコイツには視えるってのか……。
オリジナルの腕輪持ちと、一歩劣る碑文使いの差ってやつのせいか?
でも俺だって八相の碑文をスケィスに喰わせてキー・オブ・ザ・トワイライトになったんだぞ。
なのに……どうして、どうして俺には、楚良が視えない……?


「時間はかかるかもしれないけど、ゆっくりと思い出せば?」
「時間がねぇから焦ってんだろうが! 
 今夜の決勝、カールの奴が楚良を再誕させようって狙ってんだぞ!?」
「カール……あぁ。
 八咫が言ってた『ハセヲ君以外にスケィスを使役できる』って女の子?」
「俺本人がこういうこと言うのもアレだけど……カールは、マジで楚良のこと好きなんだ。
 それこそ狂信的っつーか盲目的っつーか……とにかく、普通じゃねぇくらいに愛してんだ……」
「(僕と八咫を恨んでる、ってのは教えない方がいいかなァ……話こじれるのも面倒だし)」


何だよ……
やっぱ俺は、楚良になるしか道は残ってねぇってコトなのかのよ……?


「答えはハセヲ君自身が見つけなきゃいけないけど……どうしてもダメな時は、バカになればいいじゃない」
「バカ……?」
「『ま、いんじゃないの。つまんない正直者よりおもしろいバカのほうがさ』……ってね。
 7年前の君なら、きっとそう言ったと思うな。
 考える過ぎるよりバカになった方がさ、楽でいいじゃない。
 今のハセヲ君を否定するつもりは毛頭ないけど……1人で背負い込む必要は、ないんじゃないかな」
「けど、けどよ……!」
「運命に負けてしゃがみ込むなんて、つまんないよ。
 それじゃ、カッコ悪いよ?」
「……」
「仲間、居るんでしょ? 
 だったら頼ろうよ。僕だって……仲間が居てくれなかったら……1人じゃ戦えなかった」
「(クーンは……『自分に挑め』って……『楚良を認めてやれ』って……。
  智香は……『信じてるから』って……シラバスも、ガスパーも、アトリも、エンデュランスも、パイも……皆が……)」


そうだ……俺は……1人じゃなかった!


「それにさ」
「……?」
「僕も居るし」
「なッ……!?」


コ、コイツ、まさかエンデュランスと同じでそっちの気が……!?


「お友達になろーよ、って言ってきたの、ハセヲ君だし(苦笑)」
「……と、友達?」
「僕が腕輪をどう使っていくのか……ちょっと楽しみ♪って言ったのもハセヲ君だったよね?」
「だっ、だから、それは俺じゃなくて楚良が……!」
「勇者は友達を見捨てたりはしないよ」
「……チッ。勝手にしろ!」
「うん。そうさせてもらうつもり」


妙に馴れ馴れしいと思ったら……そ、そういうコトかよ。
7年前からコイツと知り合いだったのか、楚良の奴?
寄りにも寄ってこんなのとお友達になってどーすんだよ……あ、頭痛ェ……。
そうか、コイツ……昨夜の試合でなつめを助けに来たとばかり思ってたけど……俺(楚良)も、助けに来てたんだ……。


「ハセヲ君は相変わらず面白いね」
「う、うっせーな!」


……待てよ。
確か三郎から聞いといたコイツに関するとっておきのネタがあったはずなんけど……何だっけか。
スクールデイズのBAD ENDみたいな感じの話だったような……えーと……あ、思い出した。


「……そう言えばアンタ。
 7年前に重剣士と重斧使いの女2人に二股かけてた……そーじゃねーか」
「うッ。な、何のこと……?」
「トボけんなよ、ネタは上がってんだ。
 【Ω 激怒する 合わせ鏡の 聖女】でその2人が大喧嘩したんだろーが」
「(あ、晶良と良子さんのコトだ……! 
  ヘルバにBBSの書き込み全部削除してって頼んでたのに……け、計算が違った!)」
「どーなんだ? オイ」
「そ、そんなコトどうでもいーじゃん、いーじゃん!」
「すげーじゃん? とか言って誤魔化せると思うなよコラ」
「アハハ……それはまた後日、ってコトで……」


勇者、敗れたり。
これでとりあえずは俺も安泰だな、コイツの冗談は笑えねぇから怖い。
あー清々したぜ。
へっ、勇者にだって弱みの一つくらいあるもんだな、やっぱ。


「……まぁいいか。おい、もう用がねぇなら俺はタウンに戻るぞ」
「あ、そだね。僕はもうちょっとここに居るから」
「ん、じゃあな。……俺も疑ってみるわ、常識」
「うん……ルミナ・クロスで会おう、ハセヲ君」


同じ境遇で戦い続けたカイトに影響されたのか……
ハセヲは心の内の一部を彼に語った。
7年の月日がハセヲから―――三崎亮から楚良としての記憶を色褪せさせてしまっている。
カイトが共に同じ時間を過ごした楚良は放浪AIだったのかもしれない。
けれど……あの時共有した互いの意志は、本物であると信じたい。
ミアの救出に向かった【Ω 隠されし 月の裏の 聖域】……今は何もかも、みな懐かしい。


「これで良かったんだよね……アウラ……?」                                                               【 TO BE CONTINUED... 】

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