.hack//JOJO ハセヲの奇妙な冒険 - トーナメント編 第48話
『贋作が本物に劣ると誰が決めた』                                                                  【衛宮士郎  「Fate/stay night」より】

イニス。
本来ならばアトリの有する憑神であるが、
先の事件において自身以外の七人の碑文使い全員と交戦、データドレインにより各憑神の碑文を喰らったスケィス。
その全ての碑文を喰らったスケィスを従えるハセヲこそが
「黄昏を開く鍵(キー・オブ・ザ・トワイライト」であるとオーヴァンは語った。
結果、ハセヲは碑文の反存在たるクビアに勝利。
一連のAIDA関連の事件を仲間達と共に集結へと導くことが出来た。
もう憑神を使うこともない。
これからは元通りの《The World》に戻る……そう考えていた頃も、あった。
チートだの何だのと言われようと、志乃と揺光を未帰還者から救えるならば何と呼ばれようが構わない。
ただ、全てを成し終えたら……もう憑神を使うのは止めよう。
これからは普通に遊ぶのだと……そう決めていた。
しかし、だ。
不測の事態というのはいつ起こるか分からないもので……いや、だから不測と呼ばれるのだろうけれど。
今もこうして……ハセヲは、憑神と共に……戦っている……!


「(スケィスゼロにも察知されず、あたしの背後に回るとは……ね。
  アレもイニスの能力……? ま、どうでもいいか……)」


左腕を斬り落としたくらいでハセヲの戦意を奪えるなどとカールも思うはずもなく。
他の憑神の能力を使用してくることも予想の範囲内。
何せ、彼はキー・オブ・ザ・トワイライト(黄昏を開く鍵)。
朔のゴレ、エンデュランスのマハの2体と戦闘経験はあるものの残り6体の憑神の能力は未知のもの。
今しがたハセヲが見せた、イニスによる幻惑効果に不覚にも騙されてしまった。
他にはどんな能力があるのか?
スケィスの能力もカールの使役するものとは別物であろう。
だが……そんなものは、戦っている間に見切ってしまえば問題ない。
でなければ何のためにB-stフォームの力を手に入れたのか、理解(わか)らないではないか。
侵食率だ。
侵食率をもっと上げて……AIDAの感染を進行させ、感覚を強化する必要がある。
今現在の侵食率は40%と言ったところ。
これを……60%まで……上げる!



「(! 憑神空間が……!?)」



最初に変化があったのはカールではなく、憑神空間の方だった。
紅く染まった、まるで胎内に居るかのような錯覚すら覚えたカールの憑神空間が、徐々にその色合いを変え始めている。
同時にボコボコと同空間内を浮遊するAIDAの黒泡(バブル)。
あのボコボコとした黒点はAIDAが空間から空間を移動している証。
憑神空間が……別物に、切り替わろうとしている……!?


「(ヤな予感が……してきやがった……!)」


カールが侵食率を上げている最中も、
彼女のスケィスゼロが壁となって立ちはだかっているために攻めるに攻めれない。
が。
一つ腑に落ちない点がある。
先程ハセヲとハセヲのスケィスがイニスの能力でカールを欺き背後に回った時、彼女のスケィスゼロはハセヲらを迎撃しなかった。


「(……何故だ?)」


あれだけ接近していたにも関わらずに、だ。
通常、憑神同士の戦闘において敵憑神の気配を見逃すことなど有り得ない。
しかもここはカールの憑神空間なのだ(ハセヲも憑神空間を展開したが、カールに競り負けたので現空間の主導権は彼女にある)。
もしかしたら……何か穴があるのだろうか。
リスク無しにB-stフォームのような強大な力を奮えるはずもない。
見逃してしまっているだけで、何か……致命的な弱点のようなものがあるのでは……?


「(楽観視してる場合じゃねぇな……こりゃ)」


目の前の女をどうにかしない限り、自分に未来はない。
コントローラーを握る右手の震えもだいぶ収まり、逆に。
この緊張感が心地いい程であった(左腕は相変わらずメチャクチャに痛いが)。
この震えは武者震いの震えだ。
閉めきってクーラーを効かせた部屋に居るのに、背中に嫌な汗が流れたりしているのも全部気のせい。
自分は……ビビってなど、いない。
















              

                                 


                                           

                                                      



                                                             


                                                    
















空間内がいよいよ騒がしくなってきた。
同時にカールも更に異形の存在へと変化を完了しつつある。
群青色に紅い血管が走ったかのようなドレスは更に紅いラインが増え、より禍々しさが増していく。
それだけならまだしも、AIDAがカールの頬や腕を黒く染め、侵食していく過程を直視したくなかった。
あれは……AIDAに感染したボルドーや榊によく似ている。
けれど目を逸らすことは出来ない。
ここまで彼女がやるのも、彼女の覚悟の証なのだから。
彼女に戦いを挑まれた者の責任として見届ける義務がある……だからハセヲは見守り続けた。
カールが、より狂っていく様を。


「お待たせ」


ようやく。
戦いは次のステップに進むらしい。
見ればいつの間にか紅く染まっていた憑神空間の色は黒へと変化。
所々のひび割れから光が漏れているといい、随分と歪な印象を受ける世界へと仕上がっていた。
他の碑文使いとの戦いで見せられた憑神空間とは全く違う、未知の空間。
そう、認知外空間を移動している時の感覚によく似ている。
あの空間の中にも所々にAIDAが居たが、まさにAIDAの腹の中に飲み込まれてしまったかのような……
そんな怖気にも似た気味悪さを感じる。
これが、更に侵食率をあげたカールの……深層世界なのか。


「別に待っちゃ……ッ!?」


何だ……この既視感……!?
今まで無かったものが……カールの左腕に……ある!


「どした? ハトが豆鉄砲食らったようなカオしちゃって」
「まさか……」


いや……正確には、腕ではなく肩。
彼女の左肩から……ハセヲもよく見知ったアレが……生えている……!
ハセヲがずっと志乃の仇だと思い、追い続けていたあの敵。
ハロルドの部屋にてオーヴァンに感染、彼の妹アイナをPKさせ、AIDAによる未帰還者を生み出した原初の存在。
AIDAの中でも並々ならぬ強い悪意と狂気を秘めた特異中の特異。
その影響は全AIDAに及び、それまで無害な存在であったAIDAを一斉に人類の天敵へと変質させた……ハセヲの宿敵。
その宿敵が……あろうことかカールの左肩に蠢いている。
彼(か)のモノの名を、彼はいつもこう呼んでいた。


「トライエッジ……!?」


ハセヲに呼応するように。











■■■■■―――――――――――!!!』
□□□……!?』








捉えきれる限界を凌駕した速度で接近してきたカールのスケィスゼロ。
その腕に握られたケルト十字の杖先が、ハセヲのスケィスを穿つ!
本能的にハセヲのスケィスもとっさに防御態勢となり十字杖による攻撃を受け止めているが……。
あきらかな不意打ちだった。
しかしながら戦いにおいては立派な兵法。
互いの実力が拮抗していれば尚更のこと。


『■■……■■■……!!!!!』
『□□□―――――――――――――――――――――――――!!!!』
「俺のスケィスが……押し負けてる……!?」
「固定観念はイクないよ。パチモノがホンモノより強いのがダメって……誰が決めた?」                                           【 TO BE CONTINUED... 】

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