葛生化石館ボランティアのページ - 最古の化石 ストロマトライト

最古の化石 ストロマトライト




※以下はKen McNamara著ストロマトライトを抜粋、再編集しました。


(1)微生物が造りました。


ストロマトライトは地球の一番古い岩石から発見されただけでなく、いまでも世界の数ヶ所でまだ生きているのです! 微生物の世界の生きているすばらしい化石なのです。微生物の世界は大変入り組んだ生態系です。微生物は広い多様性で構成され、光合成の原核細胞(それはバクテリアの様に核および他の細胞器官との境界となる細胞膜に欠けている細胞です。動物と植物の細胞は真核細胞であり核および他の細胞器官を持ちます。)から小さな藍藻まで各種の他の微生物に及んでいる非常に複雑な生態系です。この生態系の支配的なメンバーはシアノバクテリアと呼ばれる簡単で単細胞光合成の原核細胞です。大気中の酸素量を1%以下から今日の21%のレベルに増加させたのはシアノバクテリアです。彼らの存在は化石として残っている岩石中だけでなく、ごく普通に彼らが造ったストロマトライトと呼ばれる堆積した円柱状の丸い複合体の構造物として存在しています。


図―1 ハメリン プール遠景)

西オーストラリアのピルバラ地方にあるBIF(縞状鉄鉱層)と言われる、シアノバクテリアが光合成をした結果、酸素を放出して出来たと言われる酸化鉄の巨大な鉱床は25億年前に出現したことを示し、今日では多くの国の鉄鉱石の供給源となっています。



(図―2 BIF)




2)Shark Bay  現生のストロマトライト

オーストラリア西海岸のほぼ中央部にあるHamelin PoolはShark Bayの東側の入り江の最南端に位置し、Perthから北に約800キロの所にあります。ここでは波はやさしく砕け、カリフラワーの密集した列の様に並んでいるストロマトライトがあります。
これらのドームの幾つかは高さ約30cmぐらい盛り上がっています。海面から上は、硬く茶色で、そして平らな石灰に舗装された石作りの様な強固な構造物です。潮汐の状況により海水に部分的に浸かり、水面下に沈んでいるあいだは、ぼんやりした輪郭がみえます。
ストロマトライトは無生物の岩の様に見えますが、顕微鏡で表面の一片を調べると、それが生命で満ち溢れていることを示しています。
昼間、太陽の光をあびて、プクプクと酸素を放出している映像をみたこともあるでしょうね。

(図―3 ハメリン プールのストロマトライト)

以下は微生物がストロマトライトを造る2つの方法です。一つの方法は、個々の細胞が分泌する粘液のねばねばした皮膚に細かい沈殿物を閉じ込め、そして海水から沈殿した炭酸カルシュウムといっしょに沈殿物粒をつけます。シアノバクテリアは光合成で、光の方向へ動くことができるので蓄積沈殿物に遅れないようについていくことができます。従って、それらはいつもストロマトライトの外の表面に残留します。Shark Bayのストロマトライトはこの方法により、おもに形成されます。
ストロマトライトを造る2番目の方法は、シアノバクテリア自身が炭酸塩の骨格を沈殿することと、少しの堆積物の結合によります。湖で成長しているストロマトライトの多くはこの方法で造られます。
ほとんどのストロマトライトは極めてゆっくり成長します。年あたり1mm未満の最大の成長率がハメリン プールで記録されました。オーストラリア国立大学の科学者による研究では、成長率が一年当たり0.4mm程度であるかもしれないことが示唆されました。
それらから計算すると、ハメリン プールで現在私たちが見るストロマトライトの内の幾つかが最高1000歳であるかもしれません。 
ハメリン プールのストロマトライトの内部構造は海岸線と関連し、生息場所によって変化します。これは微生物の種類により異なった水深でストロマトライトを造るからです。潮間帯で「のう胞マット」と言われるストロマトライトは主に円形ストロマトライト によって形成されます。これらのシアノバクテリアは未薄板状(未層)であり、はっきり明瞭に境界を示さない内部構造を持っています。潮間帯域の下から上までは「スムースマット」と言われるストロマトライトが造られます。これらは、糸状のシアノバクテリアがより優位をしめ、そして薄板状ではっきり境界の分るマット状の組織および滑らかな外表面を持って、群落を作ります。最も深いところでのストロマトライトは、最高1mの高さで弱い薄板状のきめの荒い構造の「コロフォ−ドマット」と言われるストロマトライトで、約3.5mの深さに見つけることが出来ます。
Shark Bayは海水の循環は乏しく、塩分レベルは季節的に高いかもしれません。(正常な海水塩分の最高2倍に)従って、ストロマトライトを造る微生物とわずかの有機体のみが生存することができます。大型の腹足類(各種の巻貝、うみうし等)やウニなどの捕食者の不在ゆえ、ストロマトライトのみがそこに存在していると長い間、考えられてきました。(小魚が泳いでいるのを見ましたが、シアノバクテリアを食料としないのでしょう。)
5〜6億年前に動物の増加があり、ストロマトライトの大きな衰退がありました。この衰退は、現在Shark Bayに見られる状況と相似し、増大する捕食者が原因とされています。しかしストロマトライトは超塩水水域に限定されません。実の所、ストロマトライト(藍藻)は信じられない環境と広い範囲で記録されています。これらの内のいくつかのストロマトライト(藍藻)は他の生活方式の存在に制限される極めて不利な、たとえば南極大陸の氷の湖や米国のイエローストン国立公園の火山性温泉などにも見られますが、通常の海の状態、たとえばバハマでも見ることが出来ます。西オーストラリア州では、ストロマトライトは塩水湖、やや塩辛い湖および淡水湖で発見されています。
10億年前から始まったストロマトライトの絶滅は、新たに進化した無脊椎動物の捕食者の増加だけでなく、他の多くの要素(特に栄養物の上昇)も部分的に影響したに違いありません。

(3)化石のストロマトライト 地球の最古の生命





(図―4 ワラウーナ層群のチャートから、バクテリア化石の可能性のある顕微鏡写真(上)とスケッチ(下))

今日、西オーストラリア州の多くの場所でストロマトライトがまだ生きているだけでなく、ストロマトライトの化石がみつかる場所が多数あります。西ピルバラ地方は、世界でも有名で、34億5000万年前から35億5000万年前のストロマトライトを産出しました。これらの化石は、数kmにわたって同じ地層の岩石に発見された微生物とともに、地球の生命の最も古いと確立された証拠を表しています。

(図―5 約35億年前のストロマトライト)

注;この様に古いストロマトライトはシアノバクテリアから出来たのか、疑問を持つ科学者もいる。例えば遠洋のブラックスモーカー起源を想定しているのかもしれない。)

ストロマトライトが存在する岩の地層は、4種類の糸状の(ほっそりした)微化石を含んでいます。これらの化石化された細胞は、今日ストロマトライトを構成する細胞と似ています。しかし、それらが光合成をしたかどうかははっきりしていません。
これらの岩石の長い年代を心に留めて、化石化した残留物が発見されることは信じられないでしょう。この時代の岩石が非常にまれであること、およびそれらが世界の各地で造られても、ほとんどは地球深部に埋められ、そして熱せられ圧力により変形させられました。しかしここ(North Pole)では違いました。ワラウーナ層群は各種の堆積物の岩石で数キロメートルの厚さの火山性岩石(主に玄武岩)から大量に成っています。これらのほとんどのストロマトライトは、近くの火山から噴き出た溶岩がある、広い浅い海で成長しました。散在している火山性の島では、海に溶岩も出しました。これらの最下部の堆積層はストロマトライトが出来た火山性の岩石を相互にはめ込みました。



(4)ストロマトライトの進化



始生代の長い間と原生代の始まり(25億年前)まではストロマトライトはまれでした。しかし約23億年前、広く安定した大陸に浅い海の環境が発達した時から、ストロマトライトはその種の数と多様性について非常に増加しました。始生代初期の単純なドーム状から、枝を出したり、円錐形や、回転楕円体や平面体、そして波状の形状に発展しました。ストロマトライトは非常に拡大し、岩礁にまで発展しました。5億4000万年前までの原生代ではストロマトライトが地球上で支配的であり、最大の多様性は約10億年前に訪れました。微化石は西オーストラリア州の各地で古代の岩石に発見されました。
ピルバラ地方の28億年前の地層からストロマトライトのチャートから微化石は見つかりました。これらは現代のシアノバクテリアと多くの点で同様です。しかし、この微化石がこの時に酸素放出の光合成バクテリアに進化したことを意味しているかどうかは簡単には決定できません。酸素を作る光合成バクテリアの存在はより間接的な方法で推論できます。ピルバラ地方にある縞状鉄鉱層(BIF)の大きな塊状鉱床は、これらの岩石の形成時に酸素を生産する微生物の活動を推測することが出来ます。ピルバラ地方のもっとも古い縞状鉄鉱層は約32億年前です。世界のもっとも古い縞状鉄鉱層はグリーンランドのイスア地方で発見されたで38億年前の岩石です。
海のこの環境において最初に進化した有機体は生きるために酸素を必要としなかった種だったでしょう。光合成による酸素廃棄物が海水にとけた酸化第一鉄と化合することによって、酸化第二鉄は作られ、沈殿して縞状鉄鉱層を造ることになりました。そして海水に溶けた鉄のイオンの全てが酸化鉄に変換され、その後に残りの酸素は大気の中に蓄積され始め、赤色岩層を造り始めました。
このことは、たぶん酸素なしで存在した全ての微生物にとって不運であったことでしょう。それらの廃棄物は彼ら自身をだいなしにすることであり、酸素が全然ない場所を見つけることができるか、又はそれを新陳台謝させることが出来るように進化した微生物のみが生き延びられました。
ストロマトライトの構造の多様性の増加は、それらを構成した細菌の種類の増加とサイズの増大にあったようです。約20億年前、単細胞と繊維状細胞は約6ミクロンから7ミクロンまでの直径でした。しかし約10億年前ごろには繊維状細胞は直径20ミクロンに及び、原生代末の7億年前ごろには、いくつかは100ミクロンを越しました。

(5)ストロマトライトから分かる一日の長さの変化
一日の長さの理解は化石のストロマトライトの成長線の分析により成し得ます。この方法は化石のサンゴや二枚貝、および腕足類に対しても使われました。これらの無脊椎動物の成長と発展は、毎日のリズムや潮汐の活動そして季節変化などの要素により影響されることが知られています。成長線のその結果はこれらの動物に行われた一種の精密な年輪の記録として認められます。木が季節の変化だけを記録するのに対して無脊椎動物は毎日を、毎月を、一年の事柄を記録します。
3億7000万年前の化石サンゴについてなされた1960年代の研究は、約400日の成長リングが毎年形成されたことを示しています。これは3億7000万年前の一日はほんの21.9時間の長さであったに違いないことを意味しています。(公転周期は変化しない前提です。)約7500万年前の二枚貝の化石での同様な研究によると一年が約371日であることが明らかにされました。ストロマトライトは同様の計測に使えます。なぜならストロマトライトを構成する光合成バクテリアは日中のみ活動し毎日沈殿物または炭酸カルシュームの付着の痕跡を残すからです。年間の周期は、円柱のストロマトライトの傾向を分析することで識別できます。光合成の微生物の生成物であるストロマトライトは太陽の方向に成長(これは向日性として知られています)し、空を横切る太陽の年間の動作に追従します。そして季節により太陽高度が変わることにより円柱のストロマトライトの成長が変わります。これらの条件の下で成長したストロマトライトを調査のため細かく分け、沈殿物の層を数えることによって一年の日数を見積もることが出来ます。約8億5000万年前の原生代末期にオーストラリア北部で生きていたストロマトライトが一年は約435日であると計算されました。これは一日の長さが約20.1時間であったことを意味しています。ストロマトライトと海洋無脊椎動物からの発見は最近の8億5000万年の間に、一日の長さの増加と一年の日数の減少の結果は地球の自転の速さの減少があった事を暗示しています。この減少は潮汐の摩擦のために起こったと考えられます。
もし私達が時間を戻す方法を見つけられると推定するならば、今から46億年前に地球が形成されたすぐ後には一年が今の2倍の日数があったことが分かるでしょう。同様に私達は何時、地球が回転を止めるか推定できます。この数字は万事が同じであるとし、古生物学の証拠に基づく計算により、実際の日付は西暦4,384,794,990年であると示しています!!


<終わり>