Rudy Ruckerの同名の著書とは直接関係ありませんが、私の思考の道具箱であることは確かです。大抵のページは書きかけで、内容も不完全ですのでご注意を。

1-1導入


本書の目標は数学の数多くの概念をよりよく理解し活用するための、新しく、基本的な考えを辿っていくことである。それらは単純ではあるが、まだ広く知られているとは言いがたく、習得にも多少の努力が必要である。けれど、あなたの数学的なものの見方を変えることは請け合いだ。

全ての大本になるのはカテゴリーという概念で、「数学的世界」とでも言うべきものだ。対称に応じてさまざまなカテゴリーがあり、あるカテゴリーからもう一つのカテゴリーへと移る方法もまたさまざまである。まず最初は形式を気にせず、例でもってカテゴリーの手引きをしよう。出てくる題材は、対象(object)、射(map)そして射の合成である。カテゴリーというアイデアは、何世紀も明文化されてこなかった。 1945年にEilenbergとMacLaneが革新的な論文general theory of Natural equivalences?]を発表して初めて数学自体とその各分野の関係を分析した結果に明確な言葉が与えられたのである。

1-2 ガリレオによる鳥の飛行の観察


今から4世紀の昔、物体の運動について考えていたガリレオから話を始めよう。彼は空中に放り投げた石や、噴水の正確な運動を調べたいと思っていた。それらが美しい放物線を描くことは、誰でもわかる。しかし、運動とはその軌道だけで決まるものではない。物体の動きとは、それぞれの瞬間、瞬間での位置がわかっていなければならない。それを記録するには、一枚の画ではなくて、映画が必要である。つまり「動き」(motion)とは、時刻から空間への射(map)、いいかえれば関数なのである。

図式的には

TIME ー(鳥の飛行)→ SPACE

のようになる。

ガリレオがピサの斜塔の上から重い錘と軽い錘を落とした実験については誰でも知っているに違いない。当時の見物人が驚いたことには、2つの錘は同時に落下した。物体の垂直の運動:垂直に投げ上げられて、真下に落ちる、もしくは単に落下するだけの運動は、物体の運動の例としては特殊すぎる。石を落とせば真下に、まっすぐに落ちるというのは子どもでも分かる。しかしながら、落下する石の運動は、実はもう少し複雑である。それは落ちるにつれて加速していくのだ。落下のはじめの1フィートよりも終わりの1フィートのほうが、かかる時間は短い。さて、なぜガリレオは物体が垂直に落下するケースに着目したのだろうか?答えは次の簡単な式の中にある。

SPACE(空間)=PLANE(平面)xLINE(物体が落下するときの鉛直線)

コレには少し説明が要るだろう。2つの射像(map)を取り入れる。太陽が頭の真上にあったと想像してほしい。すると、空中の3次元空間のどの点も、水平な地面の上に影を落とすだろう。

SPACE ・p
↓ 影SHADOW ↓
PLANE ・pの影

これがまず第一の射像である。影SHADOWが、空間(SPACE)から平面(PLANE)への射像になっている。次に必要なのは、垂直線、たとえば、地面に立てた棒のようなものをイメージするとわかりやすいだろう。空間のどの点も、この直線(棒)のの上に対応する点(同じ高さ)をとることができる。これを高さ(LEVEL)の射像と呼ぼう。
空間 高さ(level) 棒
SPACE ---------------> LINE

これら2つの射像を繋ぎ合わせると、次のようになる。
高さ |空間|--------|棒| ↓ 影 |平面|

「影」と「高さ」のこれら2つの射像に」よって、三次元空間の問題は、よりシンプルな問題である平面と棒の上の位置に分解されたと言えないだろうか?たとえば、鳥がこの三次元空間の中を飛ぶとき、鳥の影と高さがわかれば、もともとの空間内の位置を割り出すことができる。実は、もっと多くのことが分かる。つまりとりの影の動きと、鳥の高さの変化(鳥の高さを、棒に登って観察している人を撮影しても良い)をともにフィルムに収めることができたならば、これら2つの動画像から、元の鳥の飛行の運動を完全に復元することができる。つまり、運動の位置だけでなく、運動そのものを、平面上の位置と棒の高さに分解することができる。まとめてみよう。鳥の飛行の運動からよりシンプルな水平面での運動と、棒の上の運動に分解される。
|TIME| ---------> |空間| 飛行の運動
運動 高さ |TIME| -------->|SPACE| ------> |LINE| ↓ 影 |PLANE|

これまでに得られた3つの射像を組み合わせると、新たに2つの射像を考えることができる。
運動の高さ成分 |TIME| --------------------------->|LINE| ↓ 運動の影 |PLANE|

不思議なことに、元からあった「空間」の要素が消えている。つまり、ガリレオの発見したことというのは、複雑な3次元の運動を、2つのよりシンプルな運動(影の動きと高さの動き)から完全に再現できるということである。また、影の動きと高さ方向の動きが連続(とびとびになっていない)であれば、もともとの3次元空間内での運動も連続になめらかにつながる。この発見のおかげで、ガリレオは運動の研究を、水平面内のものと、垂直な動きという2つの特殊なケースに限ることができたのである。彼のすばらしい実験とその成果についてすべてをここに述べる余裕はないが、是非文献を一読してみることをお勧めする。ところで、空間と平面と高さの2つの射像おn関係を次のような式にすることは正しいだろうか?
空間 = 平面 x 高さ

2つの写像は、この「x」の掛け算とどのような関係があるだろうか?他にもっと例をあたってみることにしよう

1-3対象の掛け算(直積)の例
対象の掛け算の形は、よく「独立した選択」(直積)という言葉であらわされる。レストランのメニューで例を占めそう。あるレストランで、食事を選ぶときに、オプションのメニュー1とオプションのメニュー2があったとする。そして、どちらのオプションからも1品を選ぶことができるようになっている。オプション1はスープ、パスタ、サラダから1品選べるオプション2はステーキ、焼肉、チキン、魚 から1品選べる。従って、たとえば、スープとチキンの組み合わせは可能だが、焼肉とステーキの組み合わせはできない。これをこれまでの射像の図にしてみると次のようになる。
    食事
スープ、ステーキ | パスタ、ステーキ |サラダ、ステーキ | ステーキ| スープ、焼肉 | パスタ、焼肉 |サラダ、焼肉 ---> |焼肉 | |チキン| |魚 | ↓ |スープ、パスタ、サラダ|

これを、ガリレオの運動の図式と対比させれば、次のようになる。
|食事| ---> |オプション2| |空間| -------> |高さ| ↓ ↓ |オプション1| |平面|

こういった、3つの対象と、2つの射像(プロセス)の図式は、対象の積の概念をよく表している。そして、非常に多様なバリエーションを目にすることになるだろう。積の概念はどのケースでも同じである。幾何で例をとってみよう。segment(線分)と円盤(disc)の積を考える。この場合、積は円筒になる。円筒の中身までぎっしり詰まっていることを考えれば、円盤の面全体と線分との掛け合わせになることはわかるだろう。円筒は、円盤と線分の積なのである。逆に言えば、円筒から円盤と線分を取り出す2つの射像があるということである。つまり、空間の運動から、平面と高さが取り出せたのと同じことである。円筒上のどの点も、同じ高さの点を、線分の上にとることができる。また、どの点も、対応する影を円盤の上にとることができる。逆に、線分上の位置=高さと、円盤上の影の位置が決まれば、円筒の中の1点が決まる。これまでの章にならえば、円筒の中を飛ぶハエの動きを、線分上の高さと円盤上の影に分解することができるのである。

論理学の積の例というと、and(∧)で示される論理積との関係が思い浮かぶ。「AかつB」という命題(例えば「ジョンは病気、かつメリーは病気」)から、Aという命題も、Bという命題も導くことができる。
ジョンは病気、かつ、メリーは病気 ----> メリーは病気 A and B B ↓ ジョンは病気 A

類似点はこれだけではない。もし、ある命題Cから、AとBが直接導けるのであれば、
C → B ↓ A

C⇒(A かつ B)も導けるのである。これは、先に見た
|TIME| ----> |SPACE| ----> |LINE| ↓ |PLANE|

とまったく同じである。

最後にもうひとつ。これがもっとも単純なものだが、数の掛け算につながるものである。
level高さ 2 6 -------> 2 6 * * * ---> * | * * * ---> * shadow 影 ↓ ↓ ↓ 3 * * *

6つの点の高さと影の射像をとってみたものである。

これらの図が理解の助けになっただろうか?実はこれから、こういう図を理解と検証のための精密な道具として使うことを学んでいくのである。
  • 演習1 2つの対象を結びつけて、もう一つの対象を作り出す例を示せ。そのうちのいくつかは、ここでとりあげたケースと一致するだろうか?すなわち、3つの対象のうち、他の2つが導かれるような射像があるかどうか、確認してみると良いだろう。うまい例が思いつかなければ、日常生活で、掛け算をして結果を数えるケースを探してみよう。ただし、いつも掛け算と関係があるとは限らない。
  • 演習2 本書で触れたガリレオの実験はごくかぎられた空間(ピサの斜塔の周辺)についてのものだった。例えばでこぼこのある地面の上で観測をするとした時、どうやって同じ高さ、というものをを決めたらよいだろうか。その方法について「仮想的な平面からの高さ」について考えること無しに述べてみよ。できるだけありふれた道具で実現できるようにしてみよ

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