重傷を負いながら生き残ることが出来たという疑問 
| 東中野修道『「南京虐殺」の徹底検証』P245 第七に、銃剣で「重傷」を負った八歳の少女が何とかショック死を免れた。しかし、傷を負った身で、十四日間も生き永らえることができた。それはなぜか。 |
銃剣で3ヶ所も刺されるという重傷を負いながら、14日間も生きながらえることが出来た理由は、医学的にはいくらでも説明のつくことであろうし、一般的に言うならば「運が良かった」と言うしかない。
ところで、この疑問自体はまったく無意味なものではあるが、その疑問の内容には非常に示唆の富んだものであることに気付く。
東中野は『徹底検証』P243の「マギーの説明に基づく家族構成」や、P246-247に記述されている第九の疑問点を見ても分かるように、祖父や他の姉妹と共に暴行を受けた「��七、八歳になる妹」と「��その八歳の少女 the 8-year old girl 」とは別人だと主張する。
「��七、八歳になる妹」は「銃剣で突き殺（された）」のだから、生き残った「��その八歳の少女」とは別人だということである。
この点については第九の疑問の部分で詳細に批判を加えるが、結論としては「bayoneted」という英文の誤訳に基づく間違いだったということが判明している。
さて、もう一度、上記に示した「第七」の疑問を記した文章を見ていただきたい。
東中野は、この「第七」の疑問の文中に『銃剣で「重傷」を負った八歳の少女』という表現をしている。
この中の「八歳の少女」は「十四日間も生き永らえることができた」と書いていることから、東中野が翻訳した南京ドイツ大使館公文書綴「日支紛争」における「��その八歳の少女 the 8-year old girl 」のことを指している。
その「��その八歳の少女」については、「日支紛争」（東中野訳）の後半部分から登場するのだが、この少女の傷の状態に関して注目しつつ、再度、「日支紛争」（東中野訳）を読み返してもらいたい。
この少女の傷について触れられているのは「��その八歳の少女 the 8-year old girl は傷を負った後、母の死体のある隣の部屋に這って行った」という部分だけである。
ところが、東中野が第七の疑問として書いた文章には『銃剣で「重傷」を負った』と記されている。つまり、その傷は銃剣によって負わされたものであり、その状態は重傷である、ということになる。
一体、この2点の情報はどこからやってきたものなのだろうか？
普通に考えれば、これは「��七、八歳になる妹」の怪我の状況から判断したことだと考えうことができるだろう。
しかし、東中野は「��七、八歳になる妹」と「��その八歳の少女」は別人だと主張するのだから、その主張に沿うならばこれでは矛盾ということになる。
東中野はわざわざ誤訳して「��七、八歳になる妹」と「��その八歳の少女」は別人だと主張しながら、さらに間違えて両者の怪我の原因・状況を同一視したのである。
このようなことから、東中野の「誤訳」自体に意図的なものを感じざるを得ない。東中野の弁明を待ちたいところである。