イリヤの奇妙な冒険14
【Fate/kaleid ocean ☆ イリヤの奇妙な冒険】
『14:Nest――巣窟』
【ある魔術師と殺人鬼の会話】
『お前の眼は凶悪だ。どんなものでも殺せる。だがな、忘れるな。眼は眼だ。見ることができなければ意味をなさない』
『ふん? だが、俺の眼は幽霊や、不可視の力でも見ることができるんだろう? 存在する以上は見える。見えれば殺せるはずじゃないか?』
『例外はある。まず、存在しないものは見えない。思想上の概念は、人間の頭の中にはあってもそれ自体は存在していない。言語や哲学は殺せない。また、不確定ないまだに定まらぬ事象は、まだそこにない。まだ生まれていないものは殺せない。未来は殺せない』
『めんどくさいな。だがそういったものと敵対するということがあるのか?』
『可能性は無限だ、なんてな。それよりもう少し現実的な、見えないものをあげるとだ………逃げ隠れしているものは見えない』
『逃げ隠れ? そりゃ確かに見えないようにしているものは見えにくいだろうが、こちらだって探そうとすれば見つかるだろう』
『そう、その場合、どちらが勝つかという話になる。見つかるまいとする執念と、見つけだそうとする執念と――だがね、逃げ隠れする側が、弱い方だと考えるなら、それはやめた方がいい。確かに、逃げ隠れする側は、見つかったら勝てないから逃げ隠れする。その意味では弱いといえるが――逃げ隠れする精神の強さはまた別物だ』
『精神?』
『そう。見つかれば死ぬんだ。まさに死にもの狂いだよ。逃げ隠れの代表格として、例をあげるとするなら………ひとつ、悪霊から逃げ続けた女の話をしてみようか』
『悪霊? お前と出会ったときに襲ってきたアレか?』
『ああ………ただ少し狡猾で、執念深いモノからだ。武器商人の一族を呪った悪霊……それから逃げるために、家を建て続けた未亡人。38年間、約65億円を費やして、必死で逃げ続け、戦い続けた女――サラ・パーディ・ウィンチェスター。そして彼女の邸宅である、カルフォルニア州歴史的名所868番――【ウィンチェスター・ミステリー・ハウス】』
◆
『冬木市民会館』と名付けられた大きな建物があるッ!
総工費80億円あまりを費やされ、駅前センタービル計画と並んで、冬木新都開発のシンボルとなった建築物!!
有名建築家の設計による斬新なデザインは、近代的な公民館というよりは、古代の神殿を彷彿とさせる趣があり、その壮麗さは、当時の新都開発にかける冬木市の意気込みを窺わせるものと言えた!
敷地面積6600平方メートル、建設面積4700平方メートル。地上4階、地下1階の建造物。2階層式のコンサートホールの収容人数は1300人余り!
「これからこの建物は消滅しますわッ!!」
「縁起でもないこと言うなっ!」
ルヴィアの一言に、凛が頭をはたく。
「だってっ、そんな感じじゃないですのっ!」
「言わんとすることはわからんでもない」
「しかしこいつはまあ………」
ルヴィアがわめき、アーチャーとアヴドゥルが、目の前の光景に顔をしかめる。
「わかりやすくていいんじゃない?」
ランサーの物言いどおり、確かにわかりやすくはあった。
冬木会館の敷地内に入り込んだとたん、そこら中から湧いて出てきた竜牙兵が、剣を振るって襲い掛かってきた。
数は十体、二十体、三十体――更に増えていく。
「魔術師かサーヴァントか、一般人と区別して反応するトラップか。あるいはどこかで私たちが来たのを見つけて、送り込んできたのか」
凛が敵の行動を推理する。彼らに共通するのは、焦りは全くないということだ。
「ルビー!」
「サファイア」
イリヤと美遊が、それぞれステッキに呼びかけながら振るう。閃光が放たれ、前衛の竜牙兵が吹き飛ばされた。
「【魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)】!!」
アヴドゥルの放った炎が追い打ちをかけて竜牙兵を燃やし、僅かな撃ち漏らしは、最前列に立つアーチャーが、手にした二振りの剣で切り倒す。
凛、ルヴィア、ランサーに至っては出番すらない。もはや戦力過多なほどだ。100体を超える竜牙兵を鎧袖一触でなぎ倒していく。
「それで? ここがキャスターめの根城であることは証明されたが、キャスターはどこにいると思う?」
十分ほど剣を振るい続けたアーチャーが、竜牙兵最後の一体を切り倒しながら言う。
ついに竜牙兵も尽きたのか、役に立たないと見切りをつけたのか、竜牙兵は現れなくなった。
「私の友人は『物の幽霊を利用する能力』を持っていて、昔、火事で焼けて、今はもう存在しない『部屋の幽霊』の中に住んでいたりしたけど………そんなことをキャスターができない限り、地下が怪しいんじゃない? 市民会館なんて、無関係の人間も多く出入りできる、隠れ住むには向かないところでしょ?」
「確かにもともと住居として作られていない建築物………無理に隠れ住むよりは、新しい住処を造った方が簡単でしょうね。となると……地下の出入り口を探す必要があるわけだけど………」
ランサーの意見に賛同した凛だが、地下に隠れ家があるとしても、そこへ通じる出入り口をどうやって見つけるかが問題だ。
「ふっ、どうやら私たちがやるしかないようですわね。美遊」
「はい、ルヴィアさん」
美遊は、ルヴィアの呼びかけに応じて、カードを取り出す。昨夜手に入れた最初の一枚。『ライダー』のカード。
《ほう、ここで使いますか。イリヤさん、いい機会ですから見ててください。英霊のカードの使い方を》
美遊は、戦車(チャリオット)を駆る鎧騎士の絵柄を施されたカードを、ステッキに当てる。すると、カードが光を放ち、ステッキと融合していく。同時にステッキの形が変化していく。
「クラスカード・ライダー。限定展開(インクルード)――【他者封印・鮮血神殿(ブラッドフォート・アンドロメダ)】」
一瞬、ステッキから紅い光が放たれたかと思うと、冬木市民会館の建物、敷地をまとめて飲み込むドーム状の結界が展開される。その結界こそは、ステッキ――サファイアが姿を変えたものであった。その様は、血走った巨大な眼球に取り込まれたかのように見えた。
「わかった。そのモニュメントの下」
美遊の指さした方向には、女神を象った、2メートルほどの高さのモニュメントが置かれていた。
「ミスター・アヴドゥル。動かしてもらえますこと?」
「任された」
炎の鳥人が、その逞しい両腕をモニュメントにまわし、一気に持ち上げる。モニュメントの下には、穴が開いており、下り階段となって地下へと続いていた。
「なるほど………さっきの宝具は結界をつくるもの。既にキャスターの結界が張られた上に、結界を上書きすれば結界同士が衝突し合う。衝突の感触を、宝具を使った美遊は感じ取ることができる。つまり、違和感を覚えた場所が、結界で隠しているキャスターの工房への出入り口になる………ルヴィアにしちゃ考えたわね」
凛は今行われたことを解析し、納得する。
同時に、周囲に張られた不気味な血の色の結界が消え、サファイアが美遊の手元に戻り、カードがステッキから分離し、弾き出された。
「い、今の何?」
《今のが英霊のカードの使い方。魔力を消費する代わりに、英霊の宝具、英霊の力の象徴をも言える、奇跡をなすほどの強力な兵器を使うことができるというものです。今のはライダー――メドゥーサの宝具ですね》
《はい。かつてメドゥーサが住んでいた島を覆っていたという結界です》
話には一応聞いていたが、実際に見せられると、その力に呆然としてしまう。なんの知識もないイリヤでも、さきほどの事象が桁違いのものであることは、言葉ではなく心で理解できた。
あんなことができるカードなら、それは確かに誰もが求めるだろう。
「行きますわよ皆さん!」
ルヴィアが威勢よく言い、自ら先陣切って階段を降りようとする。
「ちょっとこら! 相手はキャスターよ! どんな罠があるかわからないっての!」
「確かにレディファーストの精神を発揮するような場所ではない………ここは私が先に行こう。ランサー、しんがりを頼んでいいかな?」
「わかった。任せて」
アーチャーが前衛を申し出て、ランサーには最後尾の守りをお願いする。ランサーは力強く了承した。
そして、アーチャー、アヴドゥル、凛とルヴィア、イリヤと美遊、ランサーの順で地下へと降りて行った。
「真っ暗だな。私はこの程度ならわかるが………アヴドゥル、一応明かりを用意してくれるか」
「ああ。それとついでに………【魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)】!」
六つの炎の塊が出現し、通路を明るく照らし出す。炎はアーチャーより数メートル先に浮かび、進んでいく。
「この炎は生物探知機だ。人間、動物の呼吸や皮膚呼吸、物体の動く気配を感じ取る。スタンドのエネルギーの動き………サーヴァントもだ。サーヴァントはスタンド以上の強力なエネルギーの塊だからわかりやすい。これを見て進もう」
前後・左右・上下の対となる炎は、それぞれ細い炎の紐で繋がっている。さらにそれら三本の炎の紐は、六つの炎の中央で交わって、一体となっている。
「この六つの炎はそれぞれ前後・左右・上下の方向に対応し、半径15メートルにいるものなら、どの方向にどんな大きさの物が隠れているかわかる」
「凄い便利……炎を操るってそんなことまでできるんだ……」
《チートですねー》
イリヤは感心を通り越して呆れるほどである。
炎を操ると聞き、ただ武器として攻撃に使うだけかと思っていた。昨夜のミドラーとの戦いを見ていても、その強さは理解できていたが、このうえ探索までできるなど反則である。
「褒めてくれてありがたいが、魔術の罠や結界などは門外漢だからな。そちらは頼むぞ?」
「ええ」
「よろしくてよ」
アヴドゥルに言われ、凛とルヴィアは胸を張って頷く。急造ながら、なかなかいいチームになりそうだとイリヤは安心していた。
それから地下へと降り続け、普通のビルであれば地下10階くらいになるまで降りたところで、広い空間へと出た。
「ほう………」
ドーム球場のような広い空間。その中央は盛り上がり、丘のようになっている。その周囲には民家のような、祭りの出店程度の小屋が幾つも建てられているが、それらは規則的に並べられており、その配置には魔術的な意味があると思われた。丘に備え付けられた階段の先、小山の頂点には古代ギリシャのパルテノン神殿によく似た、太い柱が特徴的な、大理石造りの荘厳な建築物が座している。
「これは凄いわね……これをつくったキャスターは、魔術師の中でも相当な有名どころでしょうね。見たままなら、ギリシャ辺りの英霊みたいだけど」
凛の言う通り、もはやこれは工房だの隠れ家だのというレベルではない。キャスターのクラスには固有のスキルとして、【陣地作成】を持っている。自らの有利な陣地を作り出す能力だが、これは度を越している。『工房』どころではなく、まさに『神殿』。
「けど………邪魔も何もなかったね」
地上ではあれほど竜牙兵が湧いてでてきたというのに。
「うむ………自分の陣地に深く誘い寄せて、逃げ場を失くしてから仕留める気かもしれないな」
アーチャーが油断なく、気を引き締めて言う。
そして彼らが丘にまで来た時、ついにアヴドゥルの炎の探知機に反応があった。前方と上方を指し示す二つの炎が、ボウボウと燃え盛る。
「丘の上………神殿だ!」
見上げれば、神殿の前に人影が現れていた。
紫のローブを纏い、顔を隠した謎の人物。キャスターだ。
「―――!」
何かを唱えた。ようだった。
呪文はこちらにまで届かなかった。だが、手を前方にかざすと同時に、キャスターの周囲に十を超える、大きな魔法陣が輝いた。
キュゴッ!!
ガラスを擦る音に似た、しかしより重みのある音が鳴り、同時に無数の光が生まれ、イリヤたちへと放たれた。
「まずっ!」
「魔術障壁!」
イリヤと美遊、凛とルヴィアが急いで魔術の壁を張り、アヴドゥルもとっさに炎を投げつけ、敵の攻撃を迎撃する。
だが、
ドドドドドドドドドッ!!
「ちょっ………なんだかどんどん続いてるんだけどっ!?」
「なんって魔術………!!」
《あれらの魔法陣は現在のどの系統にも属さないものですねー》
《恐らく失われた神代の魔術と思われます。現在の魔術では太刀打ちできません》
いつ終わるかと知れぬ豪雨のような連撃。魔弾の嵐。
だがそれも決して無限ではなく、途絶える時が来た。
「あ、熱いっ! 痛いっ!」
「Aランクの魔術障壁を突破されてるっ!? 次が来たらやばいわよ!!」
イリヤが軽い火傷を負って悶え、凛も焦りに怒鳴る。
「ならば先に討たねばならないな」
アーチャーはその時既に、弓を構えていた。
「I am the born of my sword(我が骨子は捻じれ狂う)」
低い声で厳かな詠唱がなされる。すると虚空より、ドリルのような剣が生み出された。アーチャーはそれを手慣れた動きで弓につがえ、弦を引き絞り、撃ち放った。
ドウッ!!
弓とは思えぬ勢いで、砲弾のように『矢』は発射された。
弓騎士(アーチャー)の名に恥じぬ一撃は、寸分たがわず、キャスターへと突き刺さる――直前、
「消えたっ!?」
キャスターの姿が、瞬時に?き消えた。
標的を失った矢は、キャスターの背後の神殿に突き刺さり、爆発する。屋根や柱が数本圧し折れ、半壊状態となった。
「瞬間移動っ!?」
「魔法クラスの超魔術ですわよっ? どんだけ高位のキャスターだというんですの!?」
イリヤたちは、消えたキャスターを、円陣を組んで探す。
見つからない。
「上だっ!!」
だが【魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)】の炎の探知機には反応があった。
アヴドゥルが叫ぶ。
「「「!!」」」
一同が上を見上げる。そこには10メートルほど上の方に浮かぶ、キャスターの姿。既に自分自身より大きな魔法陣を三つ展開していた。魔法陣はさきほどよりも強力な魔力を内包し、稲妻を周囲に飛び散らせている。
「大規模攻撃が来るわ!! 全力で魔術障壁を!!」
凛はそう言いながらも、理解していた。次の一撃は、カレイドステッキの魔術障壁でも耐えきれないと。
「っ!! 待て、まだ炎の探知機に反応がっ!!」
更に悪いことに、炎の探知機は右後方に、キャスターとは別の何者かの存在を感じ取っていた。
「【魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)】!! クロス・ファイアー・ハリケーン!!」
十字架の上に輪をつけた形。♀マークにも似た、アンク(エジプト十字)に象った、炎の塊を飛ばす『クロス・ファイアー・ハリケーン』が放たれる。凝縮された一極集中の炎の威力は、通常の炎を凌駕する。
ドゴォッ!!
その爆撃のような炎は、確かに人型を焼き払った。人型は悲鳴をあげる余裕もなく燃え尽き、光と化して消える。
一瞬見えた髑髏の仮面は、まぎれもなくイリヤを襲ったアサシンのそれだった。
「危ないわね………アサシンを盾にしなけりゃ死んでいたわよ」
周囲に並ぶ小屋の一つから、女性が一人顔を出す。
なぜかメイド服を着た、眼鏡の女性。
《あれはこの前のアサシンのマスター………確かセレニケさんとおっしゃいましたかね。キャスター陣営と組んでいましたか?》
彼女、セレニケ・アイスコル・ユグドミレニアはルビーに答えることなく、以前同様、酷薄な笑みを浮かべ、切り札を放った。
「令呪をもって命じる………即参じ、対象を抹殺しなさい!」
その命令はすぐさま実行される。一瞬後、亜光速で転移した何十体もの黒衣の怪人が、イリヤたちを取り囲んでいた。
クラス・アサシン。その真名は決まっている。ハサン・サッバーハ。山の翁。
暗殺者(アサシン)という単語の語源そのものとなった名を、襲名せし者の一人。
「この状況でっ!?」
凛が思わず叫ぶ。
アサシンの集団と、キャスターの魔術。両方に対処している余裕は到底無い。
「さあかかれ!!」
アサシンたちは現れてから一秒もせぬうちに、一斉に攻撃を仕掛けた。
アサシン一体一体はさほど強くはない。元より、サーヴァントとしては戦闘力の低いアサシンが、更に何十体に分裂しているのだ。力も当然、何十分の一ということになる。竜牙兵より多少上という程度か。だがいかに凛とルヴィアが優れた魔術師とはいえ、相手が比較的に弱いとはいえ、多勢に無勢。1体や2体ならともかく10体以上に一斉にかかってこられては、とてもではないが対処しきれない。
アーチャーやアヴドゥルならば瞬殺できるだろうが、彼らは強すぎて、下手をすれば味方を巻き込む。全員を守るには手が足りない。もう一人強い戦士がいればなんとかなるが、ランサーの身体能力では弱い。
何より、アサシンをどうにかできたとしても、もうすぐ降ってくるキャスターの魔術はどうにもならない。
726 :イリヤの奇妙な冒険14:2016/06/24(金) 22:53:24 ID:6mbHc/aQ0
イリヤたちが、迫る死に焦燥を胸に抱いたとき、
「前のいけ好かないマスターには見せなかった私の力………教えそびれていたから、今、見せるわ」
ランサーの背後に、大量の糸が現れ、その糸は蠢き、編み上げられ、やがて人型を形成していく。
髪はなく、耳の部位は突起がついている。サングラスをかけ、肩にはパイソン柄のショルダーパッド、足にはシューズ。胸部以外の全身には鋲を打ったような凹凸が、模様のように散りばめられている。
彼女の能力は、ただ自分を糸状にするだけではない。糸のスタンド――強くしなやか、縦横無尽、自由自在。細く長く、そして時に、太く強い。
彼女の精神の像(ヴィジョン)は、完全な姿でそこに現れた。
今こそ、彼女は己の分身の名を呼ぶ。
「【運命の石牢に自由を求めて(ストーン・フリー)】!!」
人型は拳を放つ。一瞬にして幾発も放たれる連撃。
「オラオラオラオラオラオラオラオラァァァ!!!」
いかに、英霊であろうとも、恐怖を歴史に刻み付けた暗殺者であろうとも、80ほどにも分裂し、力を分散させた状態では、
「オラァッ!!!」
幾度もの危機を打ち破ってきた、彼女の精神力の具現したその拳を受けきれはしない。今、必要な手が足りた。
髑髏の仮面は割れ砕け、黒衣の体は床に倒れる。暗殺者の刃はイリヤたちにまでは届かない。しかし、ランサーは倒れたアサシンにとどめを刺さず、糸によって、2体のアサシンをがんじがらめに縛り上げる。念入りに巻き付いた糸は、さしものアサシンも縄抜けできない。
「あんたたち! さっきのアサシンのマスターと同じことをするわよ!」
「なるほど、そういうことか」
「なるほど……しかし容赦がないな」
アーチャーとアヴドゥルは、ランサーの行動の意味を理解し、自分たちもそれに倣った。
スタンドの赤熱の炎が、アーチャーの技に長けた剣が、次々とアサシンたちを討ち倒す。3体いれば2体は焼くなり斬るなりしてとどめを刺すが、1体は原型を保ったまま、ランサーの傍へと放り投げる。ランサーは飛んできたアサシンを素早く縛りあげる。
「えっ? な、何を?」
完全に倒すのではなく、ただ縛り上げるだけ。その行為に疑問を感じる凛。
そこに、ついにキャスターの魔砲が放たれた。
カッ!!!!!!
雷撃よりも激しい閃光が、イリヤたちに向けて放たれる。
「来ましたわっ!!」
「うわわわわわっ!!」
「っ!!」
イリヤが慌て、美遊が身構える。魔術障壁は張ったが、目に映る極大の光線の前には、なんとも心もとない。
「あんたたちっ! こいつらの影に隠れて!!」
そんな彼女たちに、ランサーが黒いドーム状の物体を指差す。その黒い『かまくら』のようなものは、【運命の石牢に自由を求めて(ストーン・フリー)】の糸に縛り上げられ、動けなくなった十数人のアサシンだった。
「えっ? ちょっ!?」
「ひっ!」
「うえええ!?」
イリヤはもちろん、凛やルヴィア、美遊さえも狼狽の声を上げる。だが、他に手もなく、4人はアサシンでつくられたドームの中に入る。
「まだまだっ!!」
ランサーはそう言って、更に飛びかかってくるアサシンたちを捕え、魔砲めがけて投げ飛ばしていく。アーチャーたちも同様だ。アサシンたちの動きは黒化しているがためか単調で、元よりサーヴァントとしては低い身体能力が、それを使う思考能力を失い、更に弱くなっていた。
とてもアサシンに勝ち目はないが、令呪の命令により『殺せ』と言われた以上、逃げることはできなかった。無為な戦いに、彼らは投入されていく。
そして次々に投げ飛ばされ、キャスターの砲撃の贄となる。そして、アサシンが焼かれるごとに、少しずつ砲撃の威力は弱まっていった。
「これで最後っ!!」
最後に、ランサー、アーチャー、アヴドゥルは、それぞれアサシンを2体ずつ捕え、両手に構えて盾とする。直後、キャスターの砲撃がイリヤたちに届いた。
ズアガァァァッ!!
「うひいいいいいっ!!」
魔術障壁がジリジリと嫌な音をたてて削られる。
ジジジジジジッ!! ズジャッッッ!!
そしてついにカレイドステッキの魔術障壁が破られた。更に第2の壁となった、縛られたアサシンを襲う。
「―――――ッ!!」
アサシンが焼かれる悲鳴があがる。敵とはいえ身代わりにするのは非道の極みと言えたが、正直イリヤにそこまで気にする心の余裕はない。
そしてついに、アサシンの身が砕かれ、砲撃がイリヤたちの身を直接焼かんとする。
「も、もう駄目っ!?」
「諦めないでっ!!」
悲鳴を上げるイリヤに、ランサーの叱責が飛ぶ。
(いざとなったら、私の宝具を使うしか………!)
ランサーが内心覚悟を決めた瞬間、キャスターの魔術の力が途絶えた。本当にギリギリで、魔術に耐えたのだ。
「た、助かった!」
「まだよっ!」
安堵するイリヤに、再度、ランサーの叱責がかかる。安心した瞬間が最も危ないのだ。
ランサーは、砲撃の壁にしたアサシンを投げ捨てる。アサシンは既に限界であったらしく、床に倒れたと同時に光の粒子になって崩れ消えた。残ったアサシンは20体程度。
「キャスターはっ!」
見上げれば、魔法陣はもう一度、魔力を貯めているようだった。次の攻撃は防ぎきれない。
「やらせないっ!!」
イリヤが飛んだ。数の減ったアサシンではそれを止められない。高速で、キャスターの浮かぶ上空にあがると、
「狙射(シュート)!!」
ルビーを振るい、全力の魔力弾を放った。
だが、
ドバァァァァッ!!
魔力弾が障壁に阻まれて、はじき返される。魔力指向制御平面――魔力の流れを制御する魔法陣である。どれだけ魔力弾を撃とうと、この防御の前には受け流されて反射されてしまう。
728 :イリヤの奇妙な冒険14:2016/06/24(金) 22:56:33 ID:6mbHc/aQ0
キャスターは魔術の狙いを変更し、イリヤを攻撃しようとして、
「狙射(シュート)!!」
防御の無い背後からの攻撃を、まともに受けた。
「!!?」
キャスターは吹き飛び、弧を描いて落下する。
それをなしたのは、美遊。キャスターの浮かぶよりも更に高みから、昨夜のライダー戦のイリヤのように、攻撃を行ったのだ。
「美遊さん! 飛べるようになったんだ!!」
「正確には違うけど………空中戦はできる」
美遊は、ランサーの助言、『逆に考えてみる』からヒントを得て、考えた。『飛べないのなら、飛べなくてもいいや』と。
魔力を固めて上空に足場をつくり、それを使って『跳ぶ』。ジャンプを繰り返し、高みにいたれば、飛ぶのと同じ効果を得られるという寸法だ。
―――実は考えた方法は『もう一つ』あったが、今回は使わなくて良さそうだ。
「まだ終わってない」
「うんっ!! 行くぞぉっ!!」
イリヤと美遊は共にステッキを掲げ、
「「砲撃(シュート)!!」」
とびきりの砲撃を放った。
落下するキャスターに向かい、二重の一撃が襲い掛かる。
ドゴゴゴォォォォッッ!!!
丘の周囲に建てられた小屋を五つほど吹き飛ばしながら、キャスターを撃ちすえた。
「ちっ………まさかアサシンを盾に使うなんて……こんなことならアサシンを使わなければ………いえ、アサシンの足止めがなければ、魔法陣が発動する前に空中戦でやられていたか………どっちにしろ………」
セレニケは令呪をかざし、
「令呪をもって命ずる。私が逃げるまでの時間を稼ぎなさい!」
そして、メイド服を翻し、背を向けて走り出した。
「待ちなさいこのっ!!」
凛が人差し指を伸ばしガンドを放つ。指差した相手に病をもたらす呪い。凛のそれはあまりに強力がゆえに、物理的な破壊力を伴う。だが、
ドウンッ!!
「は! 効かないわねっ!」
セレニケのメイド服は傷一つ負わなかった。そのまま、彼女は小屋の影に隠れて逃げ去っていった。
「何あれっ! あのメイド服は魔術礼装だっていうの!?」
「だとすれば、つくった奴は相当の趣味人だな」
アーチャーは追おうするが、アサシンに阻まれる。20体のアサシンの力は、アーチャーたちを殺すには至らないが、足止めならば正しく行えた。ランサーが最後の一体を殴り倒し、アサシンのカードへと転じた時には、セレニケを追える時間はなくなっていた。
「凛さーんっ!!」
「申し訳ありませんルヴィアさん………キャスターの姿がどこにも………」
アサシンを倒し終えたとき、イリヤと美遊が戻ってきた。
《どこに行ってしまったのか影も形もないですねー。カードも見当たらないので、あのまま消滅したわけでもないでしょう》
《残念ながら、逃げられましたね。転移も使える魔術師なら、逃げる方法はいくらでもあるでしょうし》
「くっ………せめてこの神殿を調べれば………」
ルヴィアが丘の上の、アーチャーに爆破された神殿を見上げたと同時に、周囲がグラグラと揺れだし、地響きが起き、小屋や床に罅が入り、頭上から岩の欠片が落ちてきた。
「どうやらそんな余裕はないみたいね。悪役のアジトの定番。証拠隠滅ってとこかしら」
「悔しいがそのようだな。早く逃げねば生き埋めだ」
「ルヴィアくん、ここは脱出しよう。アサシンのカードは手に入った。それで我慢しよう」
「………仕方ありませんわね」
凛たちは勝利しきれなかったことに歯噛みしながらも、走り出した。
瓦礫が落ちる音に急かされ、全力で走る。
どうにか地上に出るとほぼ同時に、地下への階段も崩れ落ちた。
まさにお約束の展開である。
「セーフ?」
《ギリギリの滑り込みセーフでしたねー》
イリヤはほっと一息つく。
一方、凛とルヴィアは、
「ちょっと! あんたんとこはもうライダーのカード持ってんでしょ! アサシンのカードはこっちに渡しなさいよっ!!」
「そもそも私たちが地下への出入り口を見つけたから手に入ったんですのよっ!! アサシンのカードは私の物ですわっ!!」
またいつものように言い合いと殴り合いを行っていた。これもまたお約束である。
「余裕をもって優雅………とは言えないな。仕方ない。挨拶はできないが、私はここで去るとするよ」
「あ、はい、今日はありがとうございました!」
「なに、お互いさまだ。ではまた、良い共闘を」
アーチャーは礼を言い、頭を下げるイリヤに笑って手を振り、その場を後にした。
その後、どうにか凛がアサシンのカードを勝ち取り、その夜の戦いは終結したのだった。
『ライダー(真名:ハサン・サッバーハ)………消滅(リタイア)』
『カード入手』
◆
【CLASS】アサシン
【マスター】セレニケ・アイスコル・ユグドミレニア
【真名】ハサン・サッバーハ
【性別】‐
【属性】秩序・悪
【ステータス】筋力C 耐久D 敏捷A 魔力C 幸運E 宝具B
【クラス別能力】
【保有スキル】
【宝具】
◆妄想幻像(ザバーニーヤ)
ランク:B
種別:対人(自身)宝具
レンジ:‐
―――単一の個体でありながら複数に分断された魂を持つことで、自らの霊体ポテンシャルを細分化し、複数のサーヴァントとして現界できる。
最大で80人にまで分裂可能。
さらに無自覚な自我が出現する可能性もある。
……To Be Continued
『14:Nest――巣窟』
【ある魔術師と殺人鬼の会話】
『お前の眼は凶悪だ。どんなものでも殺せる。だがな、忘れるな。眼は眼だ。見ることができなければ意味をなさない』
『ふん? だが、俺の眼は幽霊や、不可視の力でも見ることができるんだろう? 存在する以上は見える。見えれば殺せるはずじゃないか?』
『例外はある。まず、存在しないものは見えない。思想上の概念は、人間の頭の中にはあってもそれ自体は存在していない。言語や哲学は殺せない。また、不確定ないまだに定まらぬ事象は、まだそこにない。まだ生まれていないものは殺せない。未来は殺せない』
『めんどくさいな。だがそういったものと敵対するということがあるのか?』
『可能性は無限だ、なんてな。それよりもう少し現実的な、見えないものをあげるとだ………逃げ隠れしているものは見えない』
『逃げ隠れ? そりゃ確かに見えないようにしているものは見えにくいだろうが、こちらだって探そうとすれば見つかるだろう』
『そう、その場合、どちらが勝つかという話になる。見つかるまいとする執念と、見つけだそうとする執念と――だがね、逃げ隠れする側が、弱い方だと考えるなら、それはやめた方がいい。確かに、逃げ隠れする側は、見つかったら勝てないから逃げ隠れする。その意味では弱いといえるが――逃げ隠れする精神の強さはまた別物だ』
『精神?』
『そう。見つかれば死ぬんだ。まさに死にもの狂いだよ。逃げ隠れの代表格として、例をあげるとするなら………ひとつ、悪霊から逃げ続けた女の話をしてみようか』
『悪霊? お前と出会ったときに襲ってきたアレか?』
『ああ………ただ少し狡猾で、執念深いモノからだ。武器商人の一族を呪った悪霊……それから逃げるために、家を建て続けた未亡人。38年間、約65億円を費やして、必死で逃げ続け、戦い続けた女――サラ・パーディ・ウィンチェスター。そして彼女の邸宅である、カルフォルニア州歴史的名所868番――【ウィンチェスター・ミステリー・ハウス】』
◆
『冬木市民会館』と名付けられた大きな建物があるッ!
総工費80億円あまりを費やされ、駅前センタービル計画と並んで、冬木新都開発のシンボルとなった建築物!!
有名建築家の設計による斬新なデザインは、近代的な公民館というよりは、古代の神殿を彷彿とさせる趣があり、その壮麗さは、当時の新都開発にかける冬木市の意気込みを窺わせるものと言えた!
敷地面積6600平方メートル、建設面積4700平方メートル。地上4階、地下1階の建造物。2階層式のコンサートホールの収容人数は1300人余り!
「これからこの建物は消滅しますわッ!!」
「縁起でもないこと言うなっ!」
ルヴィアの一言に、凛が頭をはたく。
「だってっ、そんな感じじゃないですのっ!」
「言わんとすることはわからんでもない」
「しかしこいつはまあ………」
ルヴィアがわめき、アーチャーとアヴドゥルが、目の前の光景に顔をしかめる。
「わかりやすくていいんじゃない?」
ランサーの物言いどおり、確かにわかりやすくはあった。
冬木会館の敷地内に入り込んだとたん、そこら中から湧いて出てきた竜牙兵が、剣を振るって襲い掛かってきた。
数は十体、二十体、三十体――更に増えていく。
「魔術師かサーヴァントか、一般人と区別して反応するトラップか。あるいはどこかで私たちが来たのを見つけて、送り込んできたのか」
凛が敵の行動を推理する。彼らに共通するのは、焦りは全くないということだ。
「ルビー!」
「サファイア」
イリヤと美遊が、それぞれステッキに呼びかけながら振るう。閃光が放たれ、前衛の竜牙兵が吹き飛ばされた。
「【魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)】!!」
アヴドゥルの放った炎が追い打ちをかけて竜牙兵を燃やし、僅かな撃ち漏らしは、最前列に立つアーチャーが、手にした二振りの剣で切り倒す。
凛、ルヴィア、ランサーに至っては出番すらない。もはや戦力過多なほどだ。100体を超える竜牙兵を鎧袖一触でなぎ倒していく。
「それで? ここがキャスターめの根城であることは証明されたが、キャスターはどこにいると思う?」
十分ほど剣を振るい続けたアーチャーが、竜牙兵最後の一体を切り倒しながら言う。
ついに竜牙兵も尽きたのか、役に立たないと見切りをつけたのか、竜牙兵は現れなくなった。
「私の友人は『物の幽霊を利用する能力』を持っていて、昔、火事で焼けて、今はもう存在しない『部屋の幽霊』の中に住んでいたりしたけど………そんなことをキャスターができない限り、地下が怪しいんじゃない? 市民会館なんて、無関係の人間も多く出入りできる、隠れ住むには向かないところでしょ?」
「確かにもともと住居として作られていない建築物………無理に隠れ住むよりは、新しい住処を造った方が簡単でしょうね。となると……地下の出入り口を探す必要があるわけだけど………」
ランサーの意見に賛同した凛だが、地下に隠れ家があるとしても、そこへ通じる出入り口をどうやって見つけるかが問題だ。
「ふっ、どうやら私たちがやるしかないようですわね。美遊」
「はい、ルヴィアさん」
美遊は、ルヴィアの呼びかけに応じて、カードを取り出す。昨夜手に入れた最初の一枚。『ライダー』のカード。
《ほう、ここで使いますか。イリヤさん、いい機会ですから見ててください。英霊のカードの使い方を》
美遊は、戦車(チャリオット)を駆る鎧騎士の絵柄を施されたカードを、ステッキに当てる。すると、カードが光を放ち、ステッキと融合していく。同時にステッキの形が変化していく。
「クラスカード・ライダー。限定展開(インクルード)――【他者封印・鮮血神殿(ブラッドフォート・アンドロメダ)】」
一瞬、ステッキから紅い光が放たれたかと思うと、冬木市民会館の建物、敷地をまとめて飲み込むドーム状の結界が展開される。その結界こそは、ステッキ――サファイアが姿を変えたものであった。その様は、血走った巨大な眼球に取り込まれたかのように見えた。
「わかった。そのモニュメントの下」
美遊の指さした方向には、女神を象った、2メートルほどの高さのモニュメントが置かれていた。
「ミスター・アヴドゥル。動かしてもらえますこと?」
「任された」
炎の鳥人が、その逞しい両腕をモニュメントにまわし、一気に持ち上げる。モニュメントの下には、穴が開いており、下り階段となって地下へと続いていた。
「なるほど………さっきの宝具は結界をつくるもの。既にキャスターの結界が張られた上に、結界を上書きすれば結界同士が衝突し合う。衝突の感触を、宝具を使った美遊は感じ取ることができる。つまり、違和感を覚えた場所が、結界で隠しているキャスターの工房への出入り口になる………ルヴィアにしちゃ考えたわね」
凛は今行われたことを解析し、納得する。
同時に、周囲に張られた不気味な血の色の結界が消え、サファイアが美遊の手元に戻り、カードがステッキから分離し、弾き出された。
「い、今の何?」
《今のが英霊のカードの使い方。魔力を消費する代わりに、英霊の宝具、英霊の力の象徴をも言える、奇跡をなすほどの強力な兵器を使うことができるというものです。今のはライダー――メドゥーサの宝具ですね》
《はい。かつてメドゥーサが住んでいた島を覆っていたという結界です》
話には一応聞いていたが、実際に見せられると、その力に呆然としてしまう。なんの知識もないイリヤでも、さきほどの事象が桁違いのものであることは、言葉ではなく心で理解できた。
あんなことができるカードなら、それは確かに誰もが求めるだろう。
「行きますわよ皆さん!」
ルヴィアが威勢よく言い、自ら先陣切って階段を降りようとする。
「ちょっとこら! 相手はキャスターよ! どんな罠があるかわからないっての!」
「確かにレディファーストの精神を発揮するような場所ではない………ここは私が先に行こう。ランサー、しんがりを頼んでいいかな?」
「わかった。任せて」
アーチャーが前衛を申し出て、ランサーには最後尾の守りをお願いする。ランサーは力強く了承した。
そして、アーチャー、アヴドゥル、凛とルヴィア、イリヤと美遊、ランサーの順で地下へと降りて行った。
「真っ暗だな。私はこの程度ならわかるが………アヴドゥル、一応明かりを用意してくれるか」
「ああ。それとついでに………【魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)】!」
六つの炎の塊が出現し、通路を明るく照らし出す。炎はアーチャーより数メートル先に浮かび、進んでいく。
「この炎は生物探知機だ。人間、動物の呼吸や皮膚呼吸、物体の動く気配を感じ取る。スタンドのエネルギーの動き………サーヴァントもだ。サーヴァントはスタンド以上の強力なエネルギーの塊だからわかりやすい。これを見て進もう」
前後・左右・上下の対となる炎は、それぞれ細い炎の紐で繋がっている。さらにそれら三本の炎の紐は、六つの炎の中央で交わって、一体となっている。
「この六つの炎はそれぞれ前後・左右・上下の方向に対応し、半径15メートルにいるものなら、どの方向にどんな大きさの物が隠れているかわかる」
「凄い便利……炎を操るってそんなことまでできるんだ……」
《チートですねー》
イリヤは感心を通り越して呆れるほどである。
炎を操ると聞き、ただ武器として攻撃に使うだけかと思っていた。昨夜のミドラーとの戦いを見ていても、その強さは理解できていたが、このうえ探索までできるなど反則である。
「褒めてくれてありがたいが、魔術の罠や結界などは門外漢だからな。そちらは頼むぞ?」
「ええ」
「よろしくてよ」
アヴドゥルに言われ、凛とルヴィアは胸を張って頷く。急造ながら、なかなかいいチームになりそうだとイリヤは安心していた。
それから地下へと降り続け、普通のビルであれば地下10階くらいになるまで降りたところで、広い空間へと出た。
「ほう………」
ドーム球場のような広い空間。その中央は盛り上がり、丘のようになっている。その周囲には民家のような、祭りの出店程度の小屋が幾つも建てられているが、それらは規則的に並べられており、その配置には魔術的な意味があると思われた。丘に備え付けられた階段の先、小山の頂点には古代ギリシャのパルテノン神殿によく似た、太い柱が特徴的な、大理石造りの荘厳な建築物が座している。
「これは凄いわね……これをつくったキャスターは、魔術師の中でも相当な有名どころでしょうね。見たままなら、ギリシャ辺りの英霊みたいだけど」
凛の言う通り、もはやこれは工房だの隠れ家だのというレベルではない。キャスターのクラスには固有のスキルとして、【陣地作成】を持っている。自らの有利な陣地を作り出す能力だが、これは度を越している。『工房』どころではなく、まさに『神殿』。
「けど………邪魔も何もなかったね」
地上ではあれほど竜牙兵が湧いてでてきたというのに。
「うむ………自分の陣地に深く誘い寄せて、逃げ場を失くしてから仕留める気かもしれないな」
アーチャーが油断なく、気を引き締めて言う。
そして彼らが丘にまで来た時、ついにアヴドゥルの炎の探知機に反応があった。前方と上方を指し示す二つの炎が、ボウボウと燃え盛る。
「丘の上………神殿だ!」
見上げれば、神殿の前に人影が現れていた。
紫のローブを纏い、顔を隠した謎の人物。キャスターだ。
「―――!」
何かを唱えた。ようだった。
呪文はこちらにまで届かなかった。だが、手を前方にかざすと同時に、キャスターの周囲に十を超える、大きな魔法陣が輝いた。
キュゴッ!!
ガラスを擦る音に似た、しかしより重みのある音が鳴り、同時に無数の光が生まれ、イリヤたちへと放たれた。
「まずっ!」
「魔術障壁!」
イリヤと美遊、凛とルヴィアが急いで魔術の壁を張り、アヴドゥルもとっさに炎を投げつけ、敵の攻撃を迎撃する。
だが、
ドドドドドドドドドッ!!
「ちょっ………なんだかどんどん続いてるんだけどっ!?」
「なんって魔術………!!」
《あれらの魔法陣は現在のどの系統にも属さないものですねー》
《恐らく失われた神代の魔術と思われます。現在の魔術では太刀打ちできません》
いつ終わるかと知れぬ豪雨のような連撃。魔弾の嵐。
だがそれも決して無限ではなく、途絶える時が来た。
「あ、熱いっ! 痛いっ!」
「Aランクの魔術障壁を突破されてるっ!? 次が来たらやばいわよ!!」
イリヤが軽い火傷を負って悶え、凛も焦りに怒鳴る。
「ならば先に討たねばならないな」
アーチャーはその時既に、弓を構えていた。
「I am the born of my sword(我が骨子は捻じれ狂う)」
低い声で厳かな詠唱がなされる。すると虚空より、ドリルのような剣が生み出された。アーチャーはそれを手慣れた動きで弓につがえ、弦を引き絞り、撃ち放った。
ドウッ!!
弓とは思えぬ勢いで、砲弾のように『矢』は発射された。
弓騎士(アーチャー)の名に恥じぬ一撃は、寸分たがわず、キャスターへと突き刺さる――直前、
「消えたっ!?」
キャスターの姿が、瞬時に?き消えた。
標的を失った矢は、キャスターの背後の神殿に突き刺さり、爆発する。屋根や柱が数本圧し折れ、半壊状態となった。
「瞬間移動っ!?」
「魔法クラスの超魔術ですわよっ? どんだけ高位のキャスターだというんですの!?」
イリヤたちは、消えたキャスターを、円陣を組んで探す。
見つからない。
「上だっ!!」
だが【魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)】の炎の探知機には反応があった。
アヴドゥルが叫ぶ。
「「「!!」」」
一同が上を見上げる。そこには10メートルほど上の方に浮かぶ、キャスターの姿。既に自分自身より大きな魔法陣を三つ展開していた。魔法陣はさきほどよりも強力な魔力を内包し、稲妻を周囲に飛び散らせている。
「大規模攻撃が来るわ!! 全力で魔術障壁を!!」
凛はそう言いながらも、理解していた。次の一撃は、カレイドステッキの魔術障壁でも耐えきれないと。
「っ!! 待て、まだ炎の探知機に反応がっ!!」
更に悪いことに、炎の探知機は右後方に、キャスターとは別の何者かの存在を感じ取っていた。
「【魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)】!! クロス・ファイアー・ハリケーン!!」
十字架の上に輪をつけた形。♀マークにも似た、アンク(エジプト十字)に象った、炎の塊を飛ばす『クロス・ファイアー・ハリケーン』が放たれる。凝縮された一極集中の炎の威力は、通常の炎を凌駕する。
ドゴォッ!!
その爆撃のような炎は、確かに人型を焼き払った。人型は悲鳴をあげる余裕もなく燃え尽き、光と化して消える。
一瞬見えた髑髏の仮面は、まぎれもなくイリヤを襲ったアサシンのそれだった。
「危ないわね………アサシンを盾にしなけりゃ死んでいたわよ」
周囲に並ぶ小屋の一つから、女性が一人顔を出す。
なぜかメイド服を着た、眼鏡の女性。
《あれはこの前のアサシンのマスター………確かセレニケさんとおっしゃいましたかね。キャスター陣営と組んでいましたか?》
彼女、セレニケ・アイスコル・ユグドミレニアはルビーに答えることなく、以前同様、酷薄な笑みを浮かべ、切り札を放った。
「令呪をもって命じる………即参じ、対象を抹殺しなさい!」
その命令はすぐさま実行される。一瞬後、亜光速で転移した何十体もの黒衣の怪人が、イリヤたちを取り囲んでいた。
クラス・アサシン。その真名は決まっている。ハサン・サッバーハ。山の翁。
暗殺者(アサシン)という単語の語源そのものとなった名を、襲名せし者の一人。
「この状況でっ!?」
凛が思わず叫ぶ。
アサシンの集団と、キャスターの魔術。両方に対処している余裕は到底無い。
「さあかかれ!!」
アサシンたちは現れてから一秒もせぬうちに、一斉に攻撃を仕掛けた。
アサシン一体一体はさほど強くはない。元より、サーヴァントとしては戦闘力の低いアサシンが、更に何十体に分裂しているのだ。力も当然、何十分の一ということになる。竜牙兵より多少上という程度か。だがいかに凛とルヴィアが優れた魔術師とはいえ、相手が比較的に弱いとはいえ、多勢に無勢。1体や2体ならともかく10体以上に一斉にかかってこられては、とてもではないが対処しきれない。
アーチャーやアヴドゥルならば瞬殺できるだろうが、彼らは強すぎて、下手をすれば味方を巻き込む。全員を守るには手が足りない。もう一人強い戦士がいればなんとかなるが、ランサーの身体能力では弱い。
何より、アサシンをどうにかできたとしても、もうすぐ降ってくるキャスターの魔術はどうにもならない。
726 :イリヤの奇妙な冒険14:2016/06/24(金) 22:53:24 ID:6mbHc/aQ0
イリヤたちが、迫る死に焦燥を胸に抱いたとき、
「前のいけ好かないマスターには見せなかった私の力………教えそびれていたから、今、見せるわ」
ランサーの背後に、大量の糸が現れ、その糸は蠢き、編み上げられ、やがて人型を形成していく。
髪はなく、耳の部位は突起がついている。サングラスをかけ、肩にはパイソン柄のショルダーパッド、足にはシューズ。胸部以外の全身には鋲を打ったような凹凸が、模様のように散りばめられている。
彼女の能力は、ただ自分を糸状にするだけではない。糸のスタンド――強くしなやか、縦横無尽、自由自在。細く長く、そして時に、太く強い。
彼女の精神の像(ヴィジョン)は、完全な姿でそこに現れた。
今こそ、彼女は己の分身の名を呼ぶ。
「【運命の石牢に自由を求めて(ストーン・フリー)】!!」
人型は拳を放つ。一瞬にして幾発も放たれる連撃。
「オラオラオラオラオラオラオラオラァァァ!!!」
いかに、英霊であろうとも、恐怖を歴史に刻み付けた暗殺者であろうとも、80ほどにも分裂し、力を分散させた状態では、
「オラァッ!!!」
幾度もの危機を打ち破ってきた、彼女の精神力の具現したその拳を受けきれはしない。今、必要な手が足りた。
髑髏の仮面は割れ砕け、黒衣の体は床に倒れる。暗殺者の刃はイリヤたちにまでは届かない。しかし、ランサーは倒れたアサシンにとどめを刺さず、糸によって、2体のアサシンをがんじがらめに縛り上げる。念入りに巻き付いた糸は、さしものアサシンも縄抜けできない。
「あんたたち! さっきのアサシンのマスターと同じことをするわよ!」
「なるほど、そういうことか」
「なるほど……しかし容赦がないな」
アーチャーとアヴドゥルは、ランサーの行動の意味を理解し、自分たちもそれに倣った。
スタンドの赤熱の炎が、アーチャーの技に長けた剣が、次々とアサシンたちを討ち倒す。3体いれば2体は焼くなり斬るなりしてとどめを刺すが、1体は原型を保ったまま、ランサーの傍へと放り投げる。ランサーは飛んできたアサシンを素早く縛りあげる。
「えっ? な、何を?」
完全に倒すのではなく、ただ縛り上げるだけ。その行為に疑問を感じる凛。
そこに、ついにキャスターの魔砲が放たれた。
カッ!!!!!!
雷撃よりも激しい閃光が、イリヤたちに向けて放たれる。
「来ましたわっ!!」
「うわわわわわっ!!」
「っ!!」
イリヤが慌て、美遊が身構える。魔術障壁は張ったが、目に映る極大の光線の前には、なんとも心もとない。
「あんたたちっ! こいつらの影に隠れて!!」
そんな彼女たちに、ランサーが黒いドーム状の物体を指差す。その黒い『かまくら』のようなものは、【運命の石牢に自由を求めて(ストーン・フリー)】の糸に縛り上げられ、動けなくなった十数人のアサシンだった。
「えっ? ちょっ!?」
「ひっ!」
「うえええ!?」
イリヤはもちろん、凛やルヴィア、美遊さえも狼狽の声を上げる。だが、他に手もなく、4人はアサシンでつくられたドームの中に入る。
「まだまだっ!!」
ランサーはそう言って、更に飛びかかってくるアサシンたちを捕え、魔砲めがけて投げ飛ばしていく。アーチャーたちも同様だ。アサシンたちの動きは黒化しているがためか単調で、元よりサーヴァントとしては低い身体能力が、それを使う思考能力を失い、更に弱くなっていた。
とてもアサシンに勝ち目はないが、令呪の命令により『殺せ』と言われた以上、逃げることはできなかった。無為な戦いに、彼らは投入されていく。
そして次々に投げ飛ばされ、キャスターの砲撃の贄となる。そして、アサシンが焼かれるごとに、少しずつ砲撃の威力は弱まっていった。
「これで最後っ!!」
最後に、ランサー、アーチャー、アヴドゥルは、それぞれアサシンを2体ずつ捕え、両手に構えて盾とする。直後、キャスターの砲撃がイリヤたちに届いた。
ズアガァァァッ!!
「うひいいいいいっ!!」
魔術障壁がジリジリと嫌な音をたてて削られる。
ジジジジジジッ!! ズジャッッッ!!
そしてついにカレイドステッキの魔術障壁が破られた。更に第2の壁となった、縛られたアサシンを襲う。
「―――――ッ!!」
アサシンが焼かれる悲鳴があがる。敵とはいえ身代わりにするのは非道の極みと言えたが、正直イリヤにそこまで気にする心の余裕はない。
そしてついに、アサシンの身が砕かれ、砲撃がイリヤたちの身を直接焼かんとする。
「も、もう駄目っ!?」
「諦めないでっ!!」
悲鳴を上げるイリヤに、ランサーの叱責が飛ぶ。
(いざとなったら、私の宝具を使うしか………!)
ランサーが内心覚悟を決めた瞬間、キャスターの魔術の力が途絶えた。本当にギリギリで、魔術に耐えたのだ。
「た、助かった!」
「まだよっ!」
安堵するイリヤに、再度、ランサーの叱責がかかる。安心した瞬間が最も危ないのだ。
ランサーは、砲撃の壁にしたアサシンを投げ捨てる。アサシンは既に限界であったらしく、床に倒れたと同時に光の粒子になって崩れ消えた。残ったアサシンは20体程度。
「キャスターはっ!」
見上げれば、魔法陣はもう一度、魔力を貯めているようだった。次の攻撃は防ぎきれない。
「やらせないっ!!」
イリヤが飛んだ。数の減ったアサシンではそれを止められない。高速で、キャスターの浮かぶ上空にあがると、
「狙射(シュート)!!」
ルビーを振るい、全力の魔力弾を放った。
だが、
ドバァァァァッ!!
魔力弾が障壁に阻まれて、はじき返される。魔力指向制御平面――魔力の流れを制御する魔法陣である。どれだけ魔力弾を撃とうと、この防御の前には受け流されて反射されてしまう。
728 :イリヤの奇妙な冒険14:2016/06/24(金) 22:56:33 ID:6mbHc/aQ0
キャスターは魔術の狙いを変更し、イリヤを攻撃しようとして、
「狙射(シュート)!!」
防御の無い背後からの攻撃を、まともに受けた。
「!!?」
キャスターは吹き飛び、弧を描いて落下する。
それをなしたのは、美遊。キャスターの浮かぶよりも更に高みから、昨夜のライダー戦のイリヤのように、攻撃を行ったのだ。
「美遊さん! 飛べるようになったんだ!!」
「正確には違うけど………空中戦はできる」
美遊は、ランサーの助言、『逆に考えてみる』からヒントを得て、考えた。『飛べないのなら、飛べなくてもいいや』と。
魔力を固めて上空に足場をつくり、それを使って『跳ぶ』。ジャンプを繰り返し、高みにいたれば、飛ぶのと同じ効果を得られるという寸法だ。
―――実は考えた方法は『もう一つ』あったが、今回は使わなくて良さそうだ。
「まだ終わってない」
「うんっ!! 行くぞぉっ!!」
イリヤと美遊は共にステッキを掲げ、
「「砲撃(シュート)!!」」
とびきりの砲撃を放った。
落下するキャスターに向かい、二重の一撃が襲い掛かる。
ドゴゴゴォォォォッッ!!!
丘の周囲に建てられた小屋を五つほど吹き飛ばしながら、キャスターを撃ちすえた。
「ちっ………まさかアサシンを盾に使うなんて……こんなことならアサシンを使わなければ………いえ、アサシンの足止めがなければ、魔法陣が発動する前に空中戦でやられていたか………どっちにしろ………」
セレニケは令呪をかざし、
「令呪をもって命ずる。私が逃げるまでの時間を稼ぎなさい!」
そして、メイド服を翻し、背を向けて走り出した。
「待ちなさいこのっ!!」
凛が人差し指を伸ばしガンドを放つ。指差した相手に病をもたらす呪い。凛のそれはあまりに強力がゆえに、物理的な破壊力を伴う。だが、
ドウンッ!!
「は! 効かないわねっ!」
セレニケのメイド服は傷一つ負わなかった。そのまま、彼女は小屋の影に隠れて逃げ去っていった。
「何あれっ! あのメイド服は魔術礼装だっていうの!?」
「だとすれば、つくった奴は相当の趣味人だな」
アーチャーは追おうするが、アサシンに阻まれる。20体のアサシンの力は、アーチャーたちを殺すには至らないが、足止めならば正しく行えた。ランサーが最後の一体を殴り倒し、アサシンのカードへと転じた時には、セレニケを追える時間はなくなっていた。
「凛さーんっ!!」
「申し訳ありませんルヴィアさん………キャスターの姿がどこにも………」
アサシンを倒し終えたとき、イリヤと美遊が戻ってきた。
《どこに行ってしまったのか影も形もないですねー。カードも見当たらないので、あのまま消滅したわけでもないでしょう》
《残念ながら、逃げられましたね。転移も使える魔術師なら、逃げる方法はいくらでもあるでしょうし》
「くっ………せめてこの神殿を調べれば………」
ルヴィアが丘の上の、アーチャーに爆破された神殿を見上げたと同時に、周囲がグラグラと揺れだし、地響きが起き、小屋や床に罅が入り、頭上から岩の欠片が落ちてきた。
「どうやらそんな余裕はないみたいね。悪役のアジトの定番。証拠隠滅ってとこかしら」
「悔しいがそのようだな。早く逃げねば生き埋めだ」
「ルヴィアくん、ここは脱出しよう。アサシンのカードは手に入った。それで我慢しよう」
「………仕方ありませんわね」
凛たちは勝利しきれなかったことに歯噛みしながらも、走り出した。
瓦礫が落ちる音に急かされ、全力で走る。
どうにか地上に出るとほぼ同時に、地下への階段も崩れ落ちた。
まさにお約束の展開である。
「セーフ?」
《ギリギリの滑り込みセーフでしたねー》
イリヤはほっと一息つく。
一方、凛とルヴィアは、
「ちょっと! あんたんとこはもうライダーのカード持ってんでしょ! アサシンのカードはこっちに渡しなさいよっ!!」
「そもそも私たちが地下への出入り口を見つけたから手に入ったんですのよっ!! アサシンのカードは私の物ですわっ!!」
またいつものように言い合いと殴り合いを行っていた。これもまたお約束である。
「余裕をもって優雅………とは言えないな。仕方ない。挨拶はできないが、私はここで去るとするよ」
「あ、はい、今日はありがとうございました!」
「なに、お互いさまだ。ではまた、良い共闘を」
アーチャーは礼を言い、頭を下げるイリヤに笑って手を振り、その場を後にした。
その後、どうにか凛がアサシンのカードを勝ち取り、その夜の戦いは終結したのだった。
『ライダー(真名:ハサン・サッバーハ)………消滅(リタイア)』
『カード入手』
◆
【CLASS】アサシン
【マスター】セレニケ・アイスコル・ユグドミレニア
【真名】ハサン・サッバーハ
【性別】‐
【属性】秩序・悪
【ステータス】筋力C 耐久D 敏捷A 魔力C 幸運E 宝具B
【クラス別能力】
- 気配遮断:A+
【保有スキル】
- 蔵知の司書:C
- 専科百般:A+
【宝具】
◆妄想幻像(ザバーニーヤ)
ランク:B
種別:対人(自身)宝具
レンジ:‐
―――単一の個体でありながら複数に分断された魂を持つことで、自らの霊体ポテンシャルを細分化し、複数のサーヴァントとして現界できる。
最大で80人にまで分裂可能。
さらに無自覚な自我が出現する可能性もある。
……To Be Continued
2016年07月12日(火) 00:12:39 Modified by ID:nVSnsjwXdg