「失われた10年〜Lost Generation?」

2007/1/13放送「失われた10年〜Lost Generation?」


出演:鈴木謙介、仲俣暁生、森山裕之

※以下の発言まとめは、正確な番組での発言とは異なる場合があります。

MP3その1


鈴木:この正月から朝日新聞が特集してきた「ロストジェネレーション」。25〜35歳の、不況の時に世に出た世代。失われた10年が今日はテーマだけど、サブカル中心に。

〜曲:SMAP「夜空ノムコウ」

鈴木:ロストジェネレーションっていうテーマに決めた理由は、仲俣さんがブログに書いてたことがきっかけ。ロストジェネレーションってどういうこと?

仲俣:朝日の正月の記事についての感想を書いたんだけど、もともとはアメリカ文学の世代を指す言葉、ヘミングウェイとかフィッツジェラルドとか、第一次大戦で青春期、その後パリに渡ったアメリカ人達を指すんです。「a lost generation」は、普通「失われた世代」と訳すんですけれども、この言い方が「失われた10年」という言い方と、印象的に重なるので、朝日では使ったのかなと。

鈴木:次は森山さん。ど真ん中ですよねロストジェネレーション。

森山:今日、誕生日で33になりました。朝日新聞にも書かれているような、踏み台にされた世代、いいことなかったな、っていうのは普通に感じてた。

鈴木:森山さんにとっての青春だったサブカルの話もさせてください。

森山:次のQJがゼロ年代の表現者の特集なんで、それとも絡めていこうと思います。

鈴木:よろしくお願いします。さて、あらためて紹介しておくと朝日の特集、1月1日の朝刊の一面から11回にわたって連載されていたもので、色んな生き方を「〜〜世代」みたいな形で特集しているんですけど、その最終回、「創造世代」というところに登場した、劇団チェルフィッチュの岡田利規さんからメールが来ています。ご本人で間違いないそうです。

先日の新聞記事「ロストジェネレーション」ですが、これには正直参りました。なんだか自分が苦労人になったみたいで、自分でも記事を読みながら、なんだかこの人大変だなと思ってしまいました、苦笑の事態だったです。
小劇場演劇をやってる人間にとって、大学を出て、23歳から10年間バイトするなんてのはごくごく当たり前のことで、断言しますがこれは世代とは関係ないです。ロストジェネレーションの企画意図の説明と友に取材依頼が来たとき、僕が昨年末にフリーターのことをテーマにした演劇を上演したので、その文脈でこの依頼が来たのだろう、公演のことがフィーチャーされた記事になるのだろうというつもりで取材に答えました。
確かにこれまでの自分のことも聞かれたので話しましたが、まさかあそこまで僕自身がフィーチャーされた記事になっているとは思いませんでした。読んだときは、恥辱を受けたといっていいような感情を覚えました。しかしそれが、雑誌などと違って、取材を受けた側が校正させてもらえない、新聞というメディアの特性なのですよね。いまはうかつだったと後悔しています。
小説家の中丸文則さんの「損してる世代だと思う」という発言が記事の中に使われていますが、たとえば僕は取材の時、僕らより上の世代はいったんバブルの恩恵を受けて、その後ずどんと地に落とされて、それって辛いんじゃないかと思うけど、僕らは最初からそんな恩恵を受けてないから、逆にそういうつらさはない分ラッキーだと思う、というようなコメントをしたりしています。でもそれは使われませんでした。
もうひとつだけ言わせてください。取材の日、僕の家の側の駅で新聞社の方と待ち合わせをしました。そこには黒塗りのハイヤーが止まって僕を待っていました。いつも自分が散歩してるエリアを、そのハイヤーに乗って移動して、海沿いで写真を撮ったり、公演で写真を撮ったりしました。取材してくれた記者の方は、綺麗なスーツを着て、ブランドもののバッグを持っていました。車に乗るときも、車から降りるときも、白い手袋を着けた運転手がドアを開けてくれました。そんな風にして、あの記事は書かれています。

岡田さんには是非今度は電話なりスタジオなりで話をうかがいたいですね。
他にもメール、31歳男性、日本の景気回復に貢献したのに、その恩恵を受けるのは、不況の原因を作った世代と、景気回復後に社会に出る世代。まさに踏み台の貧乏くじ世代。
メール、31歳男性。去年辺りから就職バブル。ほんの数年前は圧迫面接といわれ、何社受けても内定なんてもらえなかった。今の世代はそれを、生まれた時代がよかったとかじゃなく、当然のことだと思ってる。調べてみたら、今は「フリーター=努力しなかった人」と教えているそう。氷河期があったことを知らされていない。

パーソナリティとしては中立であった方がいいと思うけど、怒りを抑えきれないところもあって。下から「バブル待ち」とか言われると、心がちくっと痛む。森山さん、ど真ん中の世代としてどうですか。

森山:やっぱ学生のバイトがいるんですけど、ばっちり内定決まってるんですよ、いくつも。ほんとに僕の時にはなかった。僕らの後って公務員になる人も多かった。そこにも違和感を覚えたけど。

鈴木:「安定」っていうのもずっと言われてた。専業主婦になりたい人も増えたし。安定っていいながら、安定することが難しくてフリーターとか。
この特集、25〜35って括りがどうなのってのはあると思うけど、朝日の意図は明確で、彼らは被害者だってこと、しかも2000万人もいるんだから、なんとかしなきゃだめじゃないか、そういうつもりでやったんだと思う。憤っている人たちはいると思う。仲俣さんは?

仲俣:正月から読んでたんだけど、4日の記事、フリーターを体験取材した記事があって、まあそういうのはあっていいと思うけど、気になった表現、正規雇用についてない人は、社会からはじきだされてる、って書いてる。それには違和感を感じる。社会には非正規雇用も含まれているはず。

鈴木:記事にされる側が「被害者作り」に利用される。メール、あの企画には苛立ちを禁じ得ない。一見大事なことに触れそうなんだけど、都合よく切り取られた感じ。でも、このポスト失われた10年の気分が大事なのに、ロストジェネレーションがますます社会から切り離されていくんじゃないのか。

仲俣:ちょっとした上の世代との感覚の違いっていうのを強調するのは、前からあった。だから先行世代からの切り離しはあっていい。そもそもロストジェネレーションっていうのは、彼らに向かって、ちょっと上の世代のガートルード・スタインが「ダメな世代、自堕落な世代」って意味でいったもの。それをヘミングウェイが発憤材料にして「日はまた昇る」を書いて、冒頭に掲げたという。
そういうことはあっていいんだけど、朝日の名付けが、失われた10年との語呂合わせ以外の意図が読めないよね。

鈴木:あんまり朝日叩きしてもしょうがないからヘミングウェイの話すると、アメリカのロストジェネレーションと、日本のロストジェネレーション、何の共通点もないかっていうとそんなこともないんじゃないかって、仲俣さんはブログに書いてましたけど。

仲俣:そうなんですよ。失われた10年って問題は大事だと思う。若い世代の生き方と文化の問題は関係あると思う。東京新聞の4日の記事で、ファウストの編集長太田克史氏が、今の若手作家が、日本のロストジェネレーションになる可能性があるって言ってるんですね。アメリカのロストジェネレーションは第一次大戦によって傷ついて、何らかの表現をしていくけど、90年代半ばに青春を送った人たちが、同じような形で表現に向かっていくっていうのはあると思う。

鈴木:作品だと?

仲俣:舞城王太郎、西尾維新、佐藤友哉、清涼院流水とか、ミステリーから出てきた人たち。もっと下の世代へのエールもあるんだけど。

鈴木:あとフィッツジェラルドの「グレート・ギャッツビー」は、最近村上春樹が新しく訳したんですよね。

仲俣:不思議な巡り合わせがあってね。60歳になるまでに訳したいってずっと言ってたんですが、去年それを出したと。その少し前にはサリンジャーの「キャッチャー・イン・ザ・ライ」、今年はチャンドラーの「長いお別れ」が出るそうです。なんでこの時期に新しい役を手がけるのかって考えたことがあって、当時の問題を、今の若い世代に伝えることが大事なんじゃないか、って思ったんじゃないかと。

鈴木:当時の気分とかが、今の世代にとって新鮮だろうと。

仲俣:当時の世代の痛みとかが、今の世代の傷ついた感じに、文学作品として機能するんじゃないかなと。

森山:僕も「グレート・ギャッツビー」を村上さんが訳したいって言ってたのは、ずっと前から知ってたけど、この本が出る直前か直後、新聞各紙でインタビューに出たんですよね。

仲俣:普段は出ないんですけどね。それに最初からペーパーバックの安いバージョンも出てるし。若い世代に届けたいんだと思う。

森山:ちょっと前に出た「en taxi」で坪内祐三が、なぜグレート・ギャッツビーを今訳すのかってことに違和感をもつって書いてる。グレート・ギャッツビーっていうのは、バブルの真っ最中、終わったくらいが、1920年代と一番近いはず、というところを強調している。バブルのときにこそ出すべきだったって。

鈴木:グレート・ギャッツビーっていうのは、バブル時のパーティーみたいなことをしますよね。

仲俣:アメリカの世代との照らし合わせでいくと、1920年代は空前の大好況だった。当時はラジオのブームで、ITとかのはしりみたいな。それがなんとなくズレて今の時代っていうのは、何かの意図があるのかなあと。

鈴木:僕も思うところはあるんだけど、村上春樹が、さっきかけた夜空ノムコウの作詞、スガシカオをすごい評価している。彼の喪失感っていうのがキーになると、単にバブルの浮かれ気分に対する警鐘という意味だけじゃなく、この作品を読んだんだろうなというのは思うんですけどね。

〜曲:くるり「ワールズエンド・スーパーノヴァ」

MP3その2


鈴木:メール、失われた10年は小学校から高校、モデルとしてミスチルの「雨のち晴れ」があった。前半はそれなりにいい時代だった?
メール、25歳、失われた10年と言い出したときは高校生。「失われた10年」って言葉に一番苛立っていた。平凡でも幸せだったんじゃないか。全てなかったことにして、勝手に総括するのは腹が立つ。「失われた」っていう受動態が無責任。大人達が失わせたんじゃないか。
言葉は過激だけどこの気持ちは分かるよね。日本の経済が失われたはずなのに、俺たちの人生がなかったことになってる。
メール、21歳だけど、何が失われたのかピンと来ない。エヴァとか黒沢清とかあって、文化的には充実してたんじゃ?

森山:エヴァとか黒沢って、暗いよね。表現として。

鈴木:95〜6年あたりから、テレビドラマも暗くなっていく。野島伸司脚本のドラマとか。「星の金貨」とか「ひとつ屋根の下」とか。

森山:あの暗さって何だろうね。

鈴木:世の中が悲しいことを前提にして、何か幸せを見つけようみたいな。逆境にめげず、っていうのは「星の金貨」とかね。

森山:確かに経済も暗かったし、震災、オウムっていうのがあったしね。90年代の後半の暗さっていうのはそこにあったけど、「失われた」って話があったけど、田舎の高校生だったら、そんなのわかんないと思うんですよね。テレビとかマンガを通じて暗いのは分かっただろうけど。

鈴木:森山さんはどういうのに影響を受けました?

森山:野島脚本の作品は大好きだった。「世紀末の唄」とか。世紀末の暗い人びとを描いたドラマなんだけど。

鈴木:それで思うんだけど、90年代後半から00年代前半は、暗いものが多い。97年が劇場版のエヴァで、酒鬼薔薇事件、自殺率も上昇。「夜空ノムコウ」が98年で、切れる少年の時代。でも00年代に入ってから、新しいものが出てくる。02年に「木更津キャッツアイ」が始まって、何もない日常を楽しく過ごせればいいじゃん、みたいな。

仲俣:ITバブルもあったしね。あと世紀末までは、ノストラダムスの大予言じゃないけど、世紀末的な雰囲気があった、けど、世紀が変わって、やっぱり何も変わらないっていうか、ずるずるっと、失われた感がね。

森山:バブルのある種のキラキラした時代を生きた人が、90年代の暗さの中で、暗い表現をしていくっていうか、それはあったと思うんですよ。それを高校生とかで受け取った浅野いにおは、00年代に、さらに暗い話を書くんですよ。僕、朝日新聞の記事の中で思ったのは、「まじめ世代」ってのが出てくるんですけど、01年からQJの編集長を初めて、00年代のカルチャーを作ってきた人たちと一緒に、雑誌を作ってきたって思いがあるんです。そこで一番感じるのは、ミュージシャンにせよ、マンガ家にせよ、みんな真面目なんですよ。お酒呑まないし、朝型だったりするし。

鈴木:昔の無頼な感じとは違いますよね。それで言うと、毎年TBSではJ-POP批評っていうのを、宮崎哲弥さん、宮台真司さんでやってるんですけど、それ、ダウンロードして聞いたんですね。そこで最初に言ってたのは、今はバンドが流行らない、モテない時代になってて、それはなんでかっていうと、デスクトップミュージック、打ち込みが流行って、人とコラボレーションする能力がなくなり、自家中毒に陥った、ある種、ライトのベルのセカイ系みたいなミュージシャンが増えてきたんで、バンドっていうのがダメになって、自分の中に閉じている表現しか出てこなくなったって文句を言ってるんですよ。
これ、僕からすると、まったくの間違いで、どういうことかっていうと、順番が逆なんですよ。ダウンサイジングは確かに90年代に起こったんですよ。それによって何が起こったかというと、若手のスタジオミュージシャンの職がなくなるんですよ。大物に、少なく、大きく仕事が回っていく状態になる。若手はどうなるかっていうと、アイドルの後ろのあてぶりみたいな、演奏印税の入らない仕事ばっかりになって腐っていくんですよ。で、そうやって腐っていきながらも、何か手に職を付けなきゃってことで、打ち込みに走る。スタジオミュージシャンになる能力のない奴が増えたから音楽がダメになったみたいな言い方は、「怠け者のニートのせいで日本経済がダメになった」っていうのと同じ、悪質な印象操作なんですよ僕に言わせれば。

仲俣:ほんとそうだと思うよ。バブルが崩壊して、でもそのとき働き盛りの人たちは、よくも悪くも既得権持つわけですよね。それは手放されないし、チャンスがそこにはある。何が失われたっていえば、若い世代のチャンスが失われたっていうのはある。

鈴木:失われて、上の世代からは「使えない若いのが増えた」とか言われつつ、実際は仕事を与えられてないだけだ、っていう構造はあった。でも、お前らはニートだロストジェネレーションだって言われると、あ、俺そうかも、って思う人も出てくるんですよ。だから宮台さんだけが悪い訳じゃなくて、宮台さんが言ってるようなことに当てはまっちゃう奴も、後から出てくるんですよ。

森山:でもその宮台さんの言ってることは、まったく逆だと思う。僕の感覚だと、バンドやる人がすごい増えたと思う。90年代はみんな、音楽をたくさん知ってる人が、その知識をもとにDJみたいなのだった。でも今だと音楽やりたい人はバンドにいってる。知識がなくても表現に向かうことのできるバンドにね。

仲俣:それは感じるな。小説もそうかもしれない。データベース的な、教養を利用したコラージュ感覚っていうのは90年代にあったと思うけど、たとえば小説について言うと、新人賞の応募もすごく増えてる。ダメなものもあるし、小説を読まずに書くことに対する批判もあるけれど、でもやっぱり、文章はうまくなってきてる。それも真面目さと裏表なのかもしれないけれど。

鈴木:世代の方、言われた奴に返って来ちゃう話でいうと、メール。この10年で失ったのは自信。就活の時、自分の長所だけ答えられずに就職浪人。今は再チャレンジの機会をうかがっています。再チャレンジ支援の政策からフリーターやニートが除外されるとの報道に怒りがこみ上げてきた。情報提供元がR25だっていうのが怒りを倍増させる。
R25はリクルートですからね。フリーターっていう言葉を作った張本人。
自信をなくさせておいて、っていうのでいうと、あえて言うと、朝日がやりたいのは、2000万人もいるんだから、政治的意味があるって主張したいんだろう、っていうのはさっきしました。で、その裏にあるのは何かっていうと、「権力と闘おう」ってことだと思うんですよ。『週刊金曜日』の特集、「私たちはどう生き、どう闘うか」っていうのに現れてるけど、要するに、君たち被害者なんだから、僕らと団結して、安倍政権と闘おうよ、って言ってるわけですよ。つうかさ、まずそれがおかしくて、何でお前らに動員させられて闘わなきゃいけないんだよ!って話なんですよ。それこそ戦前と一緒だろ!って僕は思うわけ。動員のために、お前らロストジェネレーションなんだ、被害者なんだ、自信なくしてるんだって、散々言っておいて。俺らが欲しいのは全然そんなもんじゃねえよ!そういう、否定の言葉を並べといて、一緒に闘おうとかってふざけんなよ!って、すごい思いますよ。

仲俣:直感的なところだけど、07年っていうのは、団塊の世代の定年退職が始まる年なんだよね。マスコミとかにもいっぱいいるそういう世代が引退をしていくっていうときに、ちょうど、その子ども達の世代に動員をかけてるっていうのはあるよね。

鈴木:メールでもあったり、森山さんもさっきおっしゃったかもしれないけど、フリーターって、最初は普通に入っていったんですよ。で、なんで今それが問題なったかっていうと、フリーターのボリューム層が30代に入ったからですよね。で、30過ぎたとたんに、その道ところでノーフューチャーだけど、って言われて、そんなこと入るとき言ってくんなかったじゃん!って起こってるんだと思うんですよ。だから30過ぎて突然そういう問題を作ったんですよね。そのことも僕は卑怯だなと思うけど、だからっつって、それを使って人を動員しなくてもいいだろうと思う。
それとね、もう一つ、もっとポジティブな話をするべきだと思う。さっき、くるりの「ワールズエンド・スーパーノヴァ」をかけたけど、歌詞の中に「絶望の果てに希望を見つけたろう」ってのがあるんだけど、やっぱり、希望の話をした方がいいと思う。
この番組のサイトに「ネガカルチャー」って言葉で表現した文章を載せてるんだけど、それでは、否定の言葉でしか自分の位置を描けない、あいつとは違う、みたいな形でしか自分の位置を決められない俺たち、っていう話なんだけど。最近それが、誰かを幸せにするとか、1月1日の放送で古谷実の「わにとかげぎす」の話をしたけど、もうそろそろ、幸せになっていいんじゃね?っていう希望の話が出てきている気がするんですよ。闘いとか、否定とか、あいつぶっ倒せとか、もうそういうのはホントいいから。俺はもうほんと素朴に幸せになりたいだけだから。だったら、その話だけすりゃいいじゃんと思うし、古谷は90年代から00年代、ホントに暗い作品も書いたけど、今やっと、希望の話ができるようになったのかなって。

森山:ヒミズやシガテラっていうのは、自分の殻に閉じこもっていくって話ですよね。今回の「わにとかげぎす」っていうのは、閉じこもっていた自分を一回リセットして、コミュニケーションしていこうって話ですよね。

鈴木:それは辛いって言われるかもしれないけど、今更って言われるかもしれないけど、でも、少なくとも、安倍政権と闘うために連帯しようぜっていうくらいだったら、俺は素朴に幸せになりたい、って、それでいいと思う。
何でその話をしたかっていうと、次にかける曲が、そういう曲なんですよ。正月もかけたけど、RADWIMPSってバンドを僕はいますごく買っていて。そのRADWIMPSのアルバムの曲なんですけど、「こんなに人を好きになっていいんですか?」っていう問いかけに対して「あなたが選んだ人ならいいんですよ」って答える曲を、若い子が普通に歌えるようになったのは本当にいいことだなと思って、今日はその曲を選びました。というわけで聞いてください。

〜曲:RADWIMPS「いいんですか?」〜

MP3その3


鈴木:メール、43歳、あの時代はホントに失われてたの?バブルだっていいことなかったし、その後も別に何もなかった。メール、既得権益を手放さない段階vs割を食った団塊ジュニアっていう世代間闘争は問題を矮小化している。

仲俣:対立を作って分かりやすくするのは愚かなことだよね。問題の本質を見失わせるし。あと、失われた10年の間に失われたのかっていうこと。そういう短期間の問題として扱うことに違和感がある。バブルの頃から残っている色んなものがある。高度成長の頃からずっとあるのかもしれないし。

鈴木:正社員じゃないと社会から弾き出されるっていう価値観は高度成長期にできたし、格差が広がるっていうのは、バブルの時の話なんですよね。社会問題はあるんですよね。さっき、動員すんなよってキレちゃったけど、ホワイトカラー・エグゼンプションとか、その前提にはサービス残業、派遣社員化っていうのがある。「ハケンの品格」とかね。あそこまでいくと、笑っていいのかどうか。

森山:逆に言うと、動員なんかされないよね。25〜35って。むしろ僕なんかの方が動員される気がする。若い人はもっと冷静ですよ。ミュージシャンの人と付き合ってても、インディーの後はメジャーだ、みたいなのは考えてない。もっと自分のやりたいことがちゃんとできて、生活も豊かにして、みたいな。家庭を大事にするし。

鈴木:さっき紹介したRADWIMPSも、あまりメディアに出ないっつってるし、あと今かかってるチャットモンチーなんかも、ミニマムな幸せって描いてますよね。

森山:こういうのを描くって、今まで実はあまりできたことがなかったんじゃないか。それが自然にやれてるっていうか。チャットモンチーは僕、大好きなんですけど。

鈴木:バンドでいうと、こだわりはないんだけど、好きなことだけやりたいっていうのは増えましたよね。さっき言った、希望とか幸せの問題に繋がるのかも。労働経済学者の玄田有史さんが「希望学」っていうのを東大でやろうってゆってて、その前には山田昌弘さんの「希望格差社会」があって。でもその考え方も僕は変だなと思ってて。「希望を持ってなきゃだめだ、もっと希望を持とう」みたいになってて。いや別に絶望してないんですけど、みたいな。もっと頑張ろう、正社員目指してカーニヴァルしましょうっていうのは分からないなあ。それでいいのかなって。
森山さん、ゼロ年代アーティストの特集をやるんだって話がありましたけど、90年代とは違う何かがあるんですよね。

森山:絶対違うと思う。みんなエモーショナルですよ。それを一番最初に感じたのはサンボマスター。すごいストレート。なんでそうなったのかなあ。90年代までは、すごい知識があって、斜に構えて、分かる人には分かるように反体制なことを言うっていう。それがどこかで変わったのかな。

鈴木:世代論にしてもしょうがないってさっきメールにもありましたけど、90年代のくるり、サンボマスターは僕と同い年。同じ年でも90年代的な人と00年代的な人っていうのがいるんだから、これは世代論じゃなくて時代の気分だと思う。

仲俣:時代に触れて感覚が変わっていくこともある。希望、幸せになりたいのはみんなそう。

森山:サンボマスターは、だから90年代に出てこれなかった。エモーショナルで、コミュニケーション志向な表現が増えてきている。これからそういうのが増えてきてるんじゃないか。

鈴木:それをある種の退化だと思う人も出てくる。その時に変な名前を付けられると、それが影響しちゃう可能性もあるよね。元旦にはセカイ系の話もしたけど、便利な言葉なわけじゃないですか、若者をひとくくりにして、批判するなり可哀想だって言うなり。そういうんじゃない形で使っていくのって、言葉である以上は難しいんだけども。ラジオってそういうところを工夫しながら喋らないとね。

「失われた10年〜Lost Generation Part2」
2007年02月05日(月) 11:17:22 Modified by ID:pYp5FHWYpg




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