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めぞん一刻


 Δ殿が、「言うほどよくなくね?」と評してました。あの人は、4年生とかの背筋がゾワゾワする感じが好きだと言っていたので、こういう最終的にハッピーエンドになる作品は性に合わないのでしょう。
 筆者は、ミスター平均値とでもいうべき極めて普通の人なので、こういう普通のエンターテインメントにはすごく感受性が豊かなのです。だから、すごくおもしろかったのです。一気読みしてしまったのです。父が買ってきたから。
 もうね、普通のエンターテインメントとしては、すごくウマいのです。五代くんは響子さんに惚れている。響子さんも満更ではない。2人の間に何らかのトラブルが起きてちょっと揉める。それが解決し、雨降って地固まる形で2人の仲がちょっと進展する。基本的にはひたすらその繰り返しで腹ボテエンドまで話が進んでいきます。こうやって書いてみても、極めて普通のお話です。普通過ぎて、話の部分はほとんど編集者が考えているのではないかと疑いたくなるくらいです。多分そうなんでしょうけど。
 でも普通の筆者はこの普通の話にいとも簡単に振り回されるわけです。2人の間にトラブルが起きて2人がちょっと険悪になると、もう筆者の心の中も土砂降りで、ハートが掻き乱されること甚だしいです。自分のハートを土砂降りのまま放っておくわけにはいけないので、続きを読んでしまいます。トラブルが解決して2人が仲直りした状態になるまで、読んでしまいます。なまじ話の中身が前述のような繰り返しであるだけに、読み進めれば筆者の心に平穏が訪れるということは分かっています。だから読んでしまいます。1つのエピソードが終わって、筆者も晴れやかな気持ちになったところでやめればいいのですが、いったん落とされてから持ち上げられるという飴と鞭の快感にもう虜になっているので、自分の心が掻き乱される瞬間があることは分かっていても、また次のエピソードに手を出してしまいます。ほんとシャブみたいなもんです。
 ただまあ、世の中こういうパターンの作品ばかりではないわけです。落としたら落としっ放しというお話もあるわけです。元来筆者は感受性が強すぎるのか自分の心が掻き乱されるのは嫌いなので、テレビのドラマとかはあまり見たくありません。あれは、大抵は視聴者の心を引き裂いてくるような瞬間があるのです。あまちゃんだって半沢直樹だって。
 めぞん一刻と違って、「一気読み」みたいなことはできないので、一つのエピソードの解決が複数話にまたがってしまったような場合、最低でも1週間を心が乱されたまま過ごさなければなりません。これを避けるためには、DVDみたいな感じで全話を用意して、十分に覚悟を醸成したうえで挑みかからねばなりません。ほんま難儀なやっちゃ。
 何の話だったかと言うと、もう一回このシャブへの耐性がさほど形成されていない頃に戻って、注射をしてみたいということです。そんな話じゃないっけ。あああ。

追記
 朱美さんの名字はずっと「六浦(むつら)」がいいなあと一人妄想していたのですが、蓋を開けてみれば「六本木」でした。ひどく落胆しました。

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