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完全にネタバレをします。ネタバレされると台無しになるタイプの作品なので、本稿を読むのは作品の読了後をお勧めします。
結末で衝撃を受けるという話を聞いたので、読んでみました。
ガワは、ありふれた恋愛小説です。side-Aとside-Bの二部構成になっており、side-Aでは静岡で大学4年生である主人公・鈴木夕樹と20歳の歯科衛生士であるヒロイン・マユが出会ってから交際に至るまでが描かれます。Bでは社会人になった鈴木が東京に転勤し、マユと遠距離恋愛になってからすれ違っていく模様が描かれます。
ところが最後のネタバラシで、Aの鈴木夕樹とBの鈴木(辰也)は実は別人だったことが明らかになります。しかもAとBは実は同一時期の話で、マユが二股をかけていた(社会人になったB鈴木と疎遠になっていく中でA鈴木と出会った)のです。要は、A鈴木とB鈴木が同一人物であり、しかも時系列的にはAの話の後にBの話が来る、という2点を読者に勘違いさせるための叙述トリックが仕込まれていたのです。
注意深く読むとA鈴木とB鈴木が同一人物ではないことも、ABの話が同一時期の出来事であることも分かるようになっているのですが、絶妙に煙幕を張りつつそういったヒントを伏線として残している技術は見事かと思います。本作の舞台はバブル真っただ中の1987年なのですが、前述の煙幕や伏線も、当時のフレーバーがふんだんにまぶされたものになっています。
ただ、これまでミステリばかり読んできた身としては、少々拍子抜けしたのは確かです。私の手元にある文庫版の裏表紙にも「最後から二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する。『必ず二回読みたくなる』と絶賛された傑作ミステリー」とまで書いてあるので、私はジャンルの垣根を飛び越えて「恋愛小説だと思っていたものが実は猟奇サイコホラーだった」ぐらいの変貌を期待していたのですが、そこまでではありませんでした。恋愛小説が、別の恋愛小説になっただけです。この大オチに至るまでの描写も前述の通りありふれた恋愛小説でしかないので、慣れている人からすれば退屈気味な展開になってしまっていると思います。この退屈に耐えた後の大オチがこの程度だと、コスパが悪いと言わざるを得ません。
マユも、二股をかけていたのは確かですが、遠距離恋愛でB鈴木と疎遠になり、中絶までさせられてからの二股なので、(中絶した子の父親が本当にB鈴木なのかどうかはハッキリ描写されていないとはいえ)同情すべき点はあり、根っからの悪人とは言えません。どうせなら、マユをもっと悪いやつに描いてくれた方が私好みになったと思います。side-AでA鈴木とマユが避妊せずに性交渉をするシーンが描かれているので、せっかくなら時系列をちょっとイジって、中絶した子はA鈴木の胤だったっていうことにするのはどうでしょうか。
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結末で衝撃を受けるという話を聞いたので、読んでみました。
ガワは、ありふれた恋愛小説です。side-Aとside-Bの二部構成になっており、side-Aでは静岡で大学4年生である主人公・鈴木夕樹と20歳の歯科衛生士であるヒロイン・マユが出会ってから交際に至るまでが描かれます。Bでは社会人になった鈴木が東京に転勤し、マユと遠距離恋愛になってからすれ違っていく模様が描かれます。
ところが最後のネタバラシで、Aの鈴木夕樹とBの鈴木(辰也)は実は別人だったことが明らかになります。しかもAとBは実は同一時期の話で、マユが二股をかけていた(社会人になったB鈴木と疎遠になっていく中でA鈴木と出会った)のです。要は、A鈴木とB鈴木が同一人物であり、しかも時系列的にはAの話の後にBの話が来る、という2点を読者に勘違いさせるための叙述トリックが仕込まれていたのです。
注意深く読むとA鈴木とB鈴木が同一人物ではないことも、ABの話が同一時期の出来事であることも分かるようになっているのですが、絶妙に煙幕を張りつつそういったヒントを伏線として残している技術は見事かと思います。本作の舞台はバブル真っただ中の1987年なのですが、前述の煙幕や伏線も、当時のフレーバーがふんだんにまぶされたものになっています。
ただ、これまでミステリばかり読んできた身としては、少々拍子抜けしたのは確かです。私の手元にある文庫版の裏表紙にも「最後から二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する。『必ず二回読みたくなる』と絶賛された傑作ミステリー」とまで書いてあるので、私はジャンルの垣根を飛び越えて「恋愛小説だと思っていたものが実は猟奇サイコホラーだった」ぐらいの変貌を期待していたのですが、そこまでではありませんでした。恋愛小説が、別の恋愛小説になっただけです。この大オチに至るまでの描写も前述の通りありふれた恋愛小説でしかないので、慣れている人からすれば退屈気味な展開になってしまっていると思います。この退屈に耐えた後の大オチがこの程度だと、コスパが悪いと言わざるを得ません。
マユも、二股をかけていたのは確かですが、遠距離恋愛でB鈴木と疎遠になり、中絶までさせられてからの二股なので、(中絶した子の父親が本当にB鈴木なのかどうかはハッキリ描写されていないとはいえ)同情すべき点はあり、根っからの悪人とは言えません。どうせなら、マユをもっと悪いやつに描いてくれた方が私好みになったと思います。side-AでA鈴木とマユが避妊せずに性交渉をするシーンが描かれているので、せっかくなら時系列をちょっとイジって、中絶した子はA鈴木の胤だったっていうことにするのはどうでしょうか。
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