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バディミッション BOND

 なんでこれをやったんでしょうね。弟が「やる」と言ったからですね。
 そして弟はなんでこれをやりたがったんでしょうね。イケメンがたくさん出てくるからじゃないですかね。あいつはイケメンに対する造詣が深いですからね。

 ゲームのベースは、サウンドノベルです。すなわち、お話を読み進めるのがメインのゲームです。主人公は、「BOND」というチームを組む4人の男性です。全員が男性です。アニメ絵で描かれた4人のイケメンです(実は、劇中で明確に「イケメン」扱いされるのはこの中の1人だけなんですが、どう見ても4人全員がイケメンです)。4人は全員分かりやすく(時に鼻につくほど過剰に)キャラが立っています。困っている人を放っておけない青臭いほどの正義漢ルーク、近接戦闘に長け目と耳も獣並みに鋭いワイルド野郎アーロン、女好きで惚れっぽい三枚目ながら決めるべき時は決めてくるチョイ悪オヤジのモクマ、芸術に造詣が深く耽美的で意味深な台詞回しの多い詐欺師のチェズレイという4人です。4人のチーム名である「BOND」という言葉は(タイトルにも入っている通り)このゲームのテーマにもなっていまして、お話を通して深まっていく4人の「絆」がストーリーの軸のひとつになっています。
 そして、一番大事なことですが、ゲームの製作には「あの」コーエーテクモが関わっています。

 ここまで読むと、「腐女子向けのゲームかな?」という感想を抱く人がほとんどだと思います。実際、腐女子ウケを狙ったと思しき身体的接触を伴うサービスシーンは多いです。4人の中のカップリングは6通り(ベクトルも考慮に入れるのであれば12通り)あるわけですが、この6通り全ての絡みを描いたサイドストーリーもたくさん用意されています。ただ、そこまで露骨なものはありません。もっと直接的な作品はそれこそ脱衣の状態で絡み合うシーンもあるかと思いますが、そういうのはないです。全員、基本的に服は着ています。
 そのうえ、胸元の大きくあいた女性キャラも何人も出てきます。ルークが女性キャラといい感じになる描写もあります。作中のテキストには割と簡単な漢字にもルビが入っていて(私の記憶している範囲だと、「頼む」や「頑張る」や「炎」にルビが入っていました)、子供向けなのかなとも思わせてくる一方で、CEROのレーティングはC(15歳以上対象)になっており、戦災孤児や人体実験といった重めのテーマも取り扱っています。
 つまり、どの層をメインターゲットに据えているのかがよく分かりません。「浅く広く」を狙ったのかもしれませんが、どうにも中途半端になっている感は否めません。特に作中のルビは「お前らこんな漢字も読めないのか」とバカにされているようで若干イライラします。単純に、画面上の文字量が多くなるのでややこしいです。せめて、ルビのオンオフだけでも設定できるようにしてくれると良かったと思います。

<その他>
・お話は、十分おもしろいです。よく練られています。「過去の事件を現在に絡ませる」というおもしろい話作りのお作法によく則っています。どんでん返しもたくさんありますよ。
・ストーリーを読み進めるパートを除くと、3Dの空間をアクションゲームみたいに操作して進める潜入ミッションパートと、潜入ミッションパートで必要な情報を集めるためにすごろく状のマップをまわって聞き込みを行う捜査パートがあります。
 潜入ミッションパートは、Switchのゲームであることを考慮に入れてもグラフィックがちゃちいです。またこのパートでは色々なパズルを解きながら目的地まで進んでいくことになりますが、パズルの難度も低めです。詰まっても間違えればどんどんヒントを教えてくれます。この難易度の低さはお子様向けの調整かなとも思われるので、メインターゲットの分からなさに拍車をかけています。
 捜査パートも、難度は低いです。聞き込みの際は4人の主人公の中から適切な人選をしないと相手がしゃべってくれないのですが、「誰に聞き込みをさせるか」さえ当てられれば必要な情報は得られます。そのうえ、誰が正解なのかについてもヒントもたくさんあり、1回失敗すれば答えも分かります。それよりも、主人公が相手取っているのは官憲とも癒着した巨大ながら正体不明の犯罪組織なのに、一般人やその構成員までちょっと話をするだけでベラベラと情報をしゃべってくれる展開はリアリティを欠いていると思いました。組織の情報統制がユルユル過ぎると思います。「正体不明」という設定に説得力がなくなります。主人公は(ルークを除けば)揃いも揃って異能の持ち主なので、それを使って(つまり一般人にはできないような形で)情報を引き出す展開がもっと分かりやすくあったらより良かったと思います。その過程をおもしろいゲームとして昇華できれば尚更です。
・お話の舞台は、リカルド共和国という架空の国(序盤のみ)と、ミカグラ島という架空の島です。両者とも英語圏のようでして、作中に出てくる新聞やメールでは英語が使われています。ただ登場人物はずっと日本語でしゃべっていますし、ギャグシーンのセンスも日本人的なので強烈な違和感があります。またサブキャラクターは大逆転裁判みたいに単なるダジャレで命名されたと思しき人がたくさんいるので、この点にも違和感を覚えます。セクハラ常習犯の芸能プロデューサーの名前が「サワール・ムラムラ」ですし、記者の名前が「ネラーエ・トクダ」だったりします。これなら、わざわざ新聞やメールだけ英語にして中途半端にリアリティを出す必要はなかったと思います。中途半端なせいで食い合わせが悪くなっているのです。リアリティを出すならキャラクター全員に「英語圏に実際にある名前」をつけなければならないということですね。まあ、ノンネイティブが「英語圏に実際にある名前」をたくさん考えることの大変さは理解はできますが。

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