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ワンダと巨像

 PS PlusのおかげでタダでできたのでPS4版をやってみました。

 人喰いの大鷲トリコをプレイした記憶も踏まえて改めて思ったことですが、上田文人の作家性を特徴づける一つの大きな要素は、圧倒的なビジュアルなのでしょう。特に、「高低差の大きい苔むした遺跡」がどの作品にもキービジュアルとして登場しています。このビジュアルの画の力は、確かにすごいのです。ただ逆に、それがゲームのテンポを妨げる要因にもなっています。舞台が広くなるので、単純に移動が面倒なのです。特に本作はファストトラベルもなく、主人公のワンダはダッシュすらできません(また泳ぎはかなりぎこちないので、水を移動する局面では特にイライラが募ります)。一応アグロという馬には乗れますが、操作のクセが大きく、狭い足場や障害物の多い空間ではゆっくりとしか移動できません。まあ、このようなテンポの悪さすら圧巻のビジュアルをプレイヤーに強く印象付けるための要素として働いていると私は思うので、あとは上田文人という作家が好きかどうかという話になってきます。

 さて本作は、そのような舞台を駆け巡りながら巨像と言われるボスを倒していくゲームです。本作の舞台は、トリコの舞台と比較すればオープンですが、ムチャクチャ広いわけではなく、巨像以外に大したものは配置されていません(セーブポイントである祠・ワンダの能力を上げる果実とトカゲ・単なる賑やかし要素でしかない各種動物ぐらい)。巨像も全部で16体しかいないため、ボリュームは少ないです。主人公ワンダは生身の人間であり、巨像は揃いも揃って怪獣並みにでかいため、プレイヤーはその巨体をよじ登って弱点ににじり寄っていくアクションが多くの局面で求められます。このよじ登りアクションはアンチャラスアスに影響を与えたんだろうなあというのが伝わってきますし、オープンワールド全体の空気感はブレワイに影響を与えてそうだなあというのが伝わってきます。
 ストーリーや設定についても詳しい説明がなく、想像や考察の余地が大きいのも上田作品らしいです。総じて上田文人というクリエイターの作家性が存分に出ている作品なので、好きな人はやるべきですし、そうでない人も勉強のつもりでやってみてください。

 本作には各種タイムアタックも実装されていますが、巨像の挙動はランダム性が大きいので、RTAガチ勢泣かせの作品だなあとは思いました。


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